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入学試験で試験官の先生目掛けてお湯をぶちまけてしまいました。

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私はその後、皇太后様のお部屋で、5大公爵家の当主夫人、あるいは前当主婦人の皆様とお茶したのだ。

皆優しくて、孫に対するみたいにしてくれた。

その中でも、急遽領地からやってきたクララ様はとても良くしてくれたんだけど……エイミー始め王宮の皆はそんな私を驚いて見ていた。

そして、それから1週間、私は学園入学準備のための勉強に、礼儀作法に、皇后様とのお茶会と皇太后様の食事会があって本当に大変だった。

皇太后様は、礼儀作法の授業がお昼にあって満足に食べられないと不平を言ったら、じゃあ私達との食事会にしましょうと言って頂けて、お茶会から食事会に変えてくれたのだ。

マイヤー先生もさすがに皇太后様の前では私を注意も出来なかった。

「アオイ、それだけ出来たら十分よ」
「本当にねえ」
王太后様とクララ様がそう言うものだから満足に注意も出来なかったんだと思う。
マイヤー先生の手が怒りを我慢するのに震えていたもの。

その席に呼ばれた公爵家や辺境伯家の夫人や前夫人はこの二人の前では流石に何も言えなかったみたいだ。

その間、クリフとはほとんど会えなかった。なんでも、皇帝陛下の宿題が結構大変なんだとか。
たまに五分くらい立ち話するくらいだった。

そして、入学試験、当日が来た。

私は宮殿から馬車で試験会場まで送ってもらった。

一番目立たない馬車でお願いしたので、皇室のマークは入っていない。お忍び用の馬車だ。お忍び用とはいえ中の装飾は豪華だったけれど……

「それでは、終わる頃にまたここまで迎えに来ますので、変な人について行ってはダメですよ」
「ついて行かないわよ」
エイミーの忠告に私はむっとして応えた。
そんなに子供に見えているんだろうか? 私ももう16だ。そんな子供みたいなことするわけないじゃない!

学園は入り口の門構えからして立派だった。この帝国の最高学府だけはある。宮殿から馬車で20分の所の帝都を見下ろす丘の上にその白亜の建物は聳え建っていたのだ。

まだ、入学式の前なので、皆私服だ。私は出来るだけシンプルなワンピースを選んでもらったのだ。周りの皆もそうだったが、でも、中にはゴテゴテ着飾った令嬢も所々に見られた。所々で早くも女の戦いをしているらしい。まあ、私は無縁だげれど、出来る限り目立たないでいようと思ったのだ。
ミルコーブ辺境伯のところのカロラインとかクララ様の所のコーデリアに会ったら少し嫌だなと思っていたら、試験会場に振り分けられた教室にはいなくて私はホッとした。身分別になっているのかもしれない。

試験内容は筆記試験と魔術の実技試験だと聞いていた。
そもそもこの試験を受ける前に資格審査等結構ふるいにかけられているので、この試験で落とされることは余程の事だと言われていたけれど、私はとても不安だった。
だって高校の入試は結局高熱が出て受けられなくて、内申点だけでいける学校にしたのだった。だから入学試験は初めてなのだ。

その入った高校にもほとんど通えずに終わってしまったし……そう言う面から言うと学園に行くのはとても楽しみだった。

落ちたら洒落にもならないけれど……

絶対に大丈夫だと皆に言われていたけれど、なんかとんでもないことをやるのが私なのだ。

配られた試験はこの国の歴史と地理、簡単な算数と国語の問題だった。
算数と国語は結構簡単だったけれど、この国の地理と歴史はこの一週間で無理やり詰め込んだけれど、なかなか難しかった。


そして、魔術の実技だ。

これは時間が無くて私はヒールでもやればいいかと簡単に考えていたのだ。

「えっ?」
試験官に言われた言葉で私は固まってしまった。

「聞こえなかったのですか? なんでも良いので攻撃魔術を見せてください」
試験官の男は無機質に言ってくれた。

試験会場の訓練場の先に的のようなものが見える。それに向かって攻撃魔術を使って攻撃しろと言うわけだけど、そんなのやったこともない。
ヒール以外にやった事と言えば、生活魔法のお風呂へのお湯張りと髪乾かせるドライヤーしかないんだけど……

まあ、ファイヤーボールは前の人がやっているのを見たからやり方は判るけれど。
やったことは無い。

「さあ、後ろがつかえているのです。早くしてください」
神経質そうな試験官が言ってくれた。

仕方がない。出来るだろう。私は異世界人なんだから。
根拠のない自信をもって私は手を突き出したのだ。

「出でよ! 火の玉」
でも、何も出なかった。まずい。

「出でよ! 火の玉」
全くでなかった。

そんな馬鹿な。前の人は簡単に大きな火の玉を出していたのだ。異世界人でチート能力のある私が出来ないわけは無い。何しろヒールも簡単にできたのだから。

「どうしたのですか? あなたの遊びに付き合う時間は無いのですが」
試験官が更に冷たい声で嫌味を言ってくれるんだけど、

「出でよ! 火の玉」
「出ろ!」
「いい加減にしろ!」
私は必死に叫んだが、火の玉は火の字も出なかった。

「全くできないのならば、失格ですね」
嘘! それはまずい。こんなんだったら無理やりクリフ捕まえて火の玉の練習すればよかった。
私は焦りに焦っていたのだ。

そうだ、別に火の玉でなくても、攻撃魔術に見えたら何でもいいんだろう。
「出来ないのですか」
嫌味が更に私をあおってくれた。

「お湯よ、出ろ!」
私は叫んでいたのだ。

それもあろう事か、そのお湯を嫌味な試験官目掛けて放っていたのだ。
試験官がぐちぐち煩いから思わずそちらに向けて放ってしまったのだ。
決して狙ったわけでは無い!

バシャーん

お湯はそのまま試験官の頭の真上から落ちて、試験官の先生をずぶ濡れにしてしまったのだ。

「先生、すみません!」
私はずぶ濡れになって怒りで震えている先生を必死に温風魔術で乾かした。

「アオイさん!」
先生の罵声が響き、私はそれから一時間くらい先生に怒られる羽目になってしまったのだった……

*************************************
ここまで読んで頂いて有難うございます。
アオイは果たして合格できるのか?
続きをおたのしみに!
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