上 下
22 / 115

胸の大きな公爵令嬢に抱きつかれて皇子は鼻の下を伸ばしていたので無視したら、ホワイトに乗せられて意地悪されました

しおりを挟む
ボールドウィン公爵のこのチーズケーキは絶品で前の世界でもこんなおいしいケーキは食べたことは無かった。
私は馬車の中でも、ボールドウィン公爵に数々のいろんなケーキを出されて、ただひたすら餌付けされたのだ。

本当に美味しかった。


公爵領の領都は帝国の公爵家だけあって結構な大都市だった。

その端に広大な敷地の中に公爵邸は鎮座していた。

「公爵様。流石公爵家。お庭もものすごく広いのですね」
私が驚いて言うと

「そうだぞ。小娘。我が公爵邸の庭の広さは帝国ひろしと言えども王宮に次いで広いからの。なにせ庭の中にまで放牧場が有るのだ」
自慢気に公爵は言ってくれた。

「お庭にまで牛を放牧しておられるのですか?」
新鮮な牛乳が飲み放題ではないか、クリームも美味しそうだ。
私は舌なめずりしそうになった。

「牛だけではないぞ。馬や羊、鶏までいるのだ」
「すごいですね」
「小娘、公爵家の凄さが理解できたか?」
「さすがボールドウィン公爵家ですね。このケーキ絶品です。もう一つ食べてもいいですか」
私は公爵の機嫌が良くなったので、頼んでみた。

「良いぞ良いぞ、いくらでも食べればよい。食べればその分胸も出るのだ」
「本当ですか?」
「そうだ。我が孫娘のを見れば良い。我がボールドウィン家の牛の乳で育っただけあって出るところは出ているぞ」
自慢して公爵は言ってくれた。


そう、その公爵自慢の孫娘が館についた時に出迎えてくれたのだ。

「お祖父様、お帰りなさい」
馬車が止まるか止まらないかのうちに扉を開けてその孫娘と思しき女の子が顔を出した。
でも、彼女は全くその公爵を見ていなかった。当然、私なんか眼中にもなかった。

「あれ、殿下は?」
「おいおいお客様の前で何だ。殿下ならあちらだ」
馬を飛び降りて慌ててこちらにかけてこようとしているクリフが目に付いた。

「あっ、殿下、お久しぶりです」
そんなクリフの腕に娘が抱きつかんばかりにすがりついたのだ。

そして、私にはその娘の大きな胸がクリフの腕にはっきりと押し付けられるのが見えたのだ。
なるほど、確かにボールドウィン産の娘の胸は大きくなるらしい……

心なしかクリフの目が驚いて見開かれたような気がした。

私はむっとしたのだ。
「閣下、早速、閣下の自慢の放牧場を見せてくださいませ」
私は公爵の手を取って上目遣いにお願いしたのだった。

「おう、良かろうて、ヒューム。この小娘が放牧場を見たいそうじゃ。一緒に来てくれるかの」
「はい、喜んで」
ヒューム騎士団長が進んで案内してくれることになったのだ。

公爵令嬢に胸を押し付けられたクリフは私達を追って来ようとしたが、娘に更に胸を押し付けられて立ち止まっていた。ふんっ、胸なしって私の事をけなしていただけあって、クリフは豊満な胸の女が好きらしい。

私は抱きつかんばかりに公爵に寄り添って放牧場に連れて行ってもらったのだ。

屋敷の中には広大な放牧場があった。
さすが、特産が酪農と馬のボールドウィン公爵家だ。広大な敷地には馬が放牧されていた。

のんびりと生えている牧草を食べていた。のどかな風景だ。

そんな私の方に早速放されたのかホワイトが駆け寄って来た。

「ホワイト」
ホワイトが顔を寄せて来たので、抱きしめる。

「ほう、ホワイトが懐くとは珍しい」
公爵が驚いて私をみてくれた。

「えっ、ホワイトって人懐こいですよね」
私が言うと
「何を言う小娘。こいつは悍馬での。中々人には懐かずに調教するのが大変じゃったのじゃ」
「えっ、そうなんですか?」
私にはいつも懐いてくれたホワイトが悍馬ってのが信じられなかった。
「そうじゃ。この騎士団長と他の皆がどれだけ苦労したことか」
顎を撫でて公爵が話してくれた。
「と言うかホワイトはこの公爵領で育てられたのですか?」
「そうだ。ホワイトとはこの牧場で出会ったんだよ」
そこに何故か、孫娘を腕にくっつけたクリフが現れた。

「そうなんだ。ホワイトは久し振りに故郷に帰って来れて嬉しいの?」
私はクリフは無視してホワイトに語りかけた。

ホワイトは心なしか頷いてくれたみたいだ。

「せっかく育てたこの悍馬を殿下に取られてしまいましたな」
横からヒューム騎士団長が言ってくれた。

「殿下。ホワイトを私にも紹介してください!」
横から孫娘が言ってくれた。

「紹介ってコーデリア嬢、ホワイトは元々君の所の馬だろう?」
「孫娘は滅多に牧場には近寄りませんでな」
公爵が言い訳してくれたんだけど、
「そうなのか? まあ、紹介するのはやぶさかでないが」
私はクリフの言葉に少しモヤっと来たが、ホワイトを撫でていた手を離してあげたのだ。

「ホワイト、こちらがこの牧場の孫娘のコーデリア嬢だ」
「ホワイト、よろしくね」
コーデリアが手を伸ばそうとすると

「ヒヒーン!」
といういななきを上げてホワイトが棹立ちになるんだけど……

私は唖然とした。

コーデリアなんてびっくりしてひっくり返っていた。

「おい、ホワイト!」
慌ててクリフが押さえようとするが、ホワイトは頭を振って暴れている。

「ホワイト!」
私が叫ぶと急に大人しくなって私に寄って来た。

「ほう、小娘は殿下よりもホワイトの扱いに慣れておるな」
公爵が感心して言ってくれるんだけど。

鼻を私に押し付けてくる。

「よしよし」
私はホワイトの頭を撫でてやった。

「ホワイト! 酷いじゃないか」
後ろからクリフが来るが私は無視した。

「あれ、アオイ、何か機嫌が悪そうだな」
「ふんっ、どうせ私は貧乳ですよ」
私が口を尖らせて言うと、
「何だよそれは」
クリフはそう言って少し困惑したようだが、ニヤリと笑ってくれた。

「えっ、ちょっとクリフ」
クリフは慌てる私を後ろから抱きあげてくれて、そのままホワイトの上に横座りで押し上げてくれると飛び乗ってくれたんだけど……

「ちょっと、クリフ、落ちるわ」
私は必死にクリフにしがみついた。

だって鞍も何もないのだ。普通は落ちる。

「大丈夫だ。俺にしがみついていろ」
そう言うと、クリフはホワイトを走らせ始めたのだ。

「いや、ダメ、怖い」
「大丈夫だったら」
クリフが言ってくれるが。
まあ、しっかりとクリフに抱きとめられて落ちることは無いと思うし、いつものホワイトだから問題ないと思うんだけど。

「きゃっ、怖い」
「大丈夫だ。ちゃんと抱いているから」
「キャッ、そんな事言ったって」
「大丈夫だったら」
でも、クリフは意地悪に私を抱いてホワイトを走らせるので揺れるのだ。
私はキャッキャッ言ってクリフにしがみついているしか出来なかった。
本当にクリフは意地悪だ。


そんな私達を孫娘がこちらを射殺すように睨んでいたのは知らなかったのだ。
*****************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
お気に入り登録、感想等まだの方はして頂けたら嬉しいです!
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

貴方を捨てるのにこれ以上の理由が必要ですか?

蓮実 アラタ
恋愛
「リズが俺の子を身ごもった」 ある日、夫であるレンヴォルトにそう告げられたリディス。 リズは彼女の一番の親友で、その親友と夫が関係を持っていたことも十分ショックだったが、レンヴォルトはさらに衝撃的な言葉を放つ。 「できれば子どもを産ませて、引き取りたい」 結婚して五年、二人の間に子どもは生まれておらず、伯爵家当主であるレンヴォルトにはいずれ後継者が必要だった。 愛していた相手から裏切り同然の仕打ちを受けたリディスはこの瞬間からレンヴォルトとの離縁を決意。 これからは自分の幸せのために生きると決意した。 そんなリディスの元に隣国からの使者が訪れる。 「迎えに来たよ、リディス」 交わされた幼い日の約束を果たしに来たという幼馴染のユルドは隣国で騎士になっていた。 裏切られ傷ついたリディスが幼馴染の騎士に溺愛されていくまでのお話。 ※完結まで書いた短編集消化のための投稿。 小説家になろう様にも掲載しています。アルファポリス先行。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました

平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。 騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。 そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。

処理中です...