聖女として召喚されたのに王宮を追放されて我儘貴公子の奴隷にされました。でも、いつの間にか溺愛されるシンデレラ物語

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
上 下
6 / 115

第一皇子視点 聖女召喚が行われると聞いて見に行って召喚された少女を連れ帰りました

しおりを挟む
俺はクリフォード・モンターギュ、このモンターギュ帝国の第一皇子だ。

モンターギュ帝国はこの大陸の北半分を支配するこの大陸最大の帝国だ。人口は二千万を超える。人口でも大陸最大の帝国だった。
この大陸には他にも国があったが、唯一キンロス王国のみが我が国に近い人口を誇っていた。領土の広さは十分の一だったが。
それとは別に我が帝国が唯一気を使うのが、帝国の南に接する山岳国家のアリストン王国だった。人口50万人にも満たない小国だったが、大陸の大半の民が信じる女神教の総本山があったのだ。そして、そこには聖女がいて、聖女が女王として君臨するのだ。
その王配は国境を接する4カ国が交互に出してきた歴史があった。
そして、丁度今回は我が国がその順番に当たっていたのだ。
基本的に我が帝国は長男が国を継ぐのが基本だが、聖女の王配に当たる時だけは皇帝にならずにアリストン王国に下って女王の王配になるのが習わしだった。

俺は6歳の時にその時の聖女と婚約したのだ。相手はすでに16歳だった。異世界から召喚されたという聖女はとても儚げに見えた。俺は姉のような聖女と婚約したのだ。
聖女は婚約者と言うよりは年の離れた姉といった感じで、良く俺の面倒を見てくれた。
会えたのは小さい時は年に一回だったが、俺が一人で馬に乗って遠乗り出来るようになってからは、良く城を抜け出しては聖女に会いに行った。
聖女の王配としてきめられた俺は、皇帝となるべく育てられた弟と違って、ある程度の自由が認められていたのだ。
父は呆れていたが。

そんな聖女が死んだのは俺がそろそろ聖女に嫁ごうとした18の時だった。
何でも馬車の事故にあったらしい。

俺は信じられなかった。
聖女だ。当然聖なる力も一番あって自分の怪我も治せるはずなのに。
だから、俺には信じられなかった。俺が婚約者だった聖女に会いに行った時には、聖女は既に荼毘に処せられた後だった。

それからの俺は荒れた。

聖女が死んだと知った時に、初めて聖女が好きだったと判ったのだ。婚約者だった聖女は、時折、とても悲しそうな顔をしていた。考えたら、最後の一年間は寝台に臥せっている方が多かった。

そんな聖女が何故、宮殿を出たんだろう? 事故に遭った時は帝国との国境近くだったと言う。俺に会いに来てくれたんだろうか? 何か相談したい事でもあったのかもしれない。
最近は俺も学園の卒業間近で、レポートやら仕事やらで、忙しくしていて、聖女にもあまり会いに行けなかった。俺はそんな彼女になにもしてやれなかったのだ。俺は無力感に包まれた。


そんな俺が新たに聖女が召還されることを聞いた。俺はもう王配になるつもりはなかった。母は俺に新たな婚約者を見繕いたかったみたいだか、俺は拒否していた。婚約者がすぐに死んで、新たな婚約などすぐに出きるわけはなかった。

帝位継承も微妙になってきた。
元々、帝位を継ぐことになっていた弟の母親はキンロス王国の王女で、俺と異母兄弟だったのだ。帝臣の中にはキンロスの血筋が帝位に付くのは良くないと思うものも多く、俺を押す声も少なくなかったのだ。俺の婚約者がいなくなって、その声はますます強くなってきた。
俺としては元々この国を出ていくつもりだったから、帝位を継ぐ気はなく、弟に任せようと思っていたのだ。そんな俺が高位貴族の令嬢と婚約すれば、それは帝位争いの火種になる。
俺としても、婚約者を無くしたばかりで、新たな婚約者を迎えるつもりはなかった。


そんな状況に嫌気が指したのもあって、俺は気分転換に新しい聖女を見にでも行くかと、思ってしまったのだ。
俺は昔から、聖女の王配になると決まっていたので、ある程度自由だった。聖女が死んでからは、母達が途端にうるさくなったが、知った事ではなかった。
俺はいつものごとく宮殿を飛び出したのだ。



愛馬のホワイトに強化魔術をかけて、飛ばせば国境までは2日、国境からは山道なので1日で、アリストンの王都に着いた。

そこで、たまたま王宮から放り出された子供が破落戸に絡まれているところを助けたら、聖女召還された片割れだったのだ。でも、この子は俺の婚約者だった聖女と同じ感覚がするんだけれど。
もう一方が聖女だと判断したのなら、この子は聖女ではないのだろう。
まあ、勝手に召還したのに、そのまま何もせずに放り出すというのはよく理解できなかったが、将来が決まっていないのは俺と同じだった。

俺は急に親密さを感じて、その子に守りの首輪をつけてやったのだ。

これは帝室に伝わる家宝で、大切な者を守るための首輪なのだそうだ。もらった時は、こんな首輪を着けるやつなんていない。婚約者の聖女になんて恥ずかしくて、こんな首輪なんてつけられるものかと思っていたが、その聖女は死んでしまった。
何があるか先は一寸先は闇だ。俺は今回はその二の舞いは嫌だったのだ。
そいつには秘宝だとは言わずに単なる奴隷の首輪だとしか伝えなかったので、ブツブツ文句を言っていたが……。

俺は取り敢えず、その子を国に連れて帰ることにしたのだった。

その子はとてもてのかかる子供だったが、俺はペットを一匹見つけた気分だった。

俺にぶつぶつ文句も言ってきたが、俺に意見してくるなんて命知らずだ。だが、それも新鮮だった。
見た目は前の聖女には及びもしなかったが、そのちょこまかした行動は結構楽しませてもらった。釣りをさせた時なんて、喜んでちょこまか動いて、全然釣れないとぼやいていた。「もう少し、じっくりと待たないと」
そう教えたのだが、言うことを聞かずにダボハゼを釣って喜んでいた。

「不味いぞ」
「自分で釣ったから美味しいの……」
無理して食べていたが……

そんな奴が、少し目を離した隙にティラゴンに襲われそうになっていた。
俺は躊躇せずに、アオイの前に出た。守りの首輪に任せておけば良かったのかもしれないが、俺は二度と可愛がっているものが死ぬのは嫌だった。

ティラゴンの一撃を強化した釣竿で受けたが、さすがに無理だった。

釣竿は一瞬で粉砕されて、肩から腹を切り裂かれたが、最後の力を振り絞って、ティラゴンに爆裂魔術を浴びせて倒したのだ。

しかし、そのまま俺は気を失ってしまったのだ。



俺は夢を見ていた。

亡くなった聖女の夢だ。
聖女は悲しそうに俺を見ていた。

その聖女がいつの間にかアオイに変わっていた。
アオイは傷付いた俺にヒールをかけてくれたのだ。

そして、次の瞬間、そのアオイの悲鳴が俺の頭に響いて、俺は飛び起きだのだ。

「殿下、良かった」
俺を見て看病してくれていたらしい若い女が女が言った。
確か辺境伯の娘だ。

「アオイ、アオイはどうした?」
俺が娘に聞くと

「アオイ様ですか? どなたか良く判りませんが」
辺境伯の娘では埒が明かない。
俺が慌てて立ち上がろうとした時だ。
「殿下。まだ急に動かれるとよくはありません」
女が俺に抱きついて止めようとした。
それどころじゃない。アオイが危険なのだ。

「殿下、気づかれましたか!」
扉を開けて俺の近衛の護衛騎士のケンが顔を出した。

「ケン! アオイはどうした?」
俺は慌てて立ち上がりつつ言った。

「アオイとは、あの殿下を魅了しようとした、スパイですか?」
ケンが見当違いなことを言っている。

「何を言っている。あいつは俺の命の恩人だ。どこにいる? すぐに案内しろ」
俺は焦っていた。今のは守りの首輪が反応したのだ。
すぐにアオイの元に向かわねば……

「えっ、命の恩人?」
しかし、ケンは戸惑ったみたいだ。こいつでは埒があかない

「グズグズ言わずにすぐに案内しろ!」
俺の怒声が建物内に響き渡った。この地を守る辺境伯が飛んでくるのに時間はかからなかった。
*********************************************************
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
果たしてアオイは無事なのか。
今日は後3話更新予定です
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件

バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。 そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。 志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。 そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。 「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」 「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」 「お…重い……」 「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」 「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」 過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。 二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。 全31話

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます! 会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。 一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、 ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。 このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…? 人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、 魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。 聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、 魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。 魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、 冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく… 聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です! 完結まで書き終わってます。 ※他のサイトにも連載してます

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

処理中です...