悪役令嬢に転生させられた地味令嬢ですが、ヒロインの方が強くて虐められているんですけど……

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
上 下
67 / 78

何人もの同情した男性からエスコートの申し出がありましたが、肝心の婚約者はお情けで衣装だけを送ってきたので拒絶しました

しおりを挟む
「申し訳ありません。クラリス様。私の教育不足です。どんな理由があろうと女性に手を上げるなど言語道断です」
 応接に呼ばれて行くと、騎士団長が立ち上って頭を下げてきて、その横にいたフェリスの頭を押さえつけて下げさせたんだけど……
 私はそのフェリスの顔を見てぎょっとした。
 フェリスの顔は騎士団長に殴られたのか、大きく腫れているんだけど……

「いや、あの、騎士団長。ご子息の顔が凄いことになっていますけれど」
 私が少し青ざめて言うと、

「ふんっ、こんなのは騎士団では普通です。お気に召されずに。そもそもどんな理由があれ、か弱いドッチモーア嬢に手を上げたなど言語道断です。騎士の風上にも置けません。本来ならばその場で土下座して謝る必要があったのに、それもしていないとは、許されることではございません」
「申し訳ありませんでした」
 フェリスが仏頂面で頭を下げてきた。
 うーん、でも、ちらちらと私の横のお兄様を見てくるんだけど。何でだろう?

「お兄様。どうかしたのですか?」
 私がお兄様に聞くと、
「いやなんでもない。フェリス君もこう言っているんだし、許してやればいいんじゃ無いか」
 お兄様がそう言うんだけど、なんか怪しい。
 普通はもっと文句を言うはずなのに、あまりに許すのが早いんじゃないだろうか?
 私は不審に思った。

「では、これからまだドッチモーア伯爵家に行って謝らねばなりませんので」
 そう言うや、騎士団長はフェリスを引き立てて連れて言った。
 そのフェリスの目が何故かお兄様をとても恨めしそうな目で見ていたような気がしたんだけど……
 何でだろう?


 翌日学園に行くと聖女に治してもらったのかフェリスの顔は元に戻っていてほっとした。
 聖女が何か私に言いたそうにしていてそれを必死にフェリスが止めていた。


 そんな時だ。

「クラリス嬢。もし良かったら私とパーティーに一緒に行って頂けませんか?」
 私はいきなり、留学生のマクシムからパーティーのエスコートの誘いがあったのだ。
「えっ?」
 私は驚いた。地味で内気だと王太子からも相手にされなくなった私を誘ってくれる人なんていないと思っていたのだ。
 隣国の留学生はとても優しいみたいだった。

「ちょっと、待った。それなら、私がクラリスさんのエスコートをしたい」
 何故かアニエスの取り巻きのジャックが言い出したんだけど。
 何故に?

「何だ、君は? 君は聖女の取り巻きの一人じゃないか? クラリス嬢をエスコートする振りをしてまたからかうつもりなのか」
 マクシムがそう指摘してくれたが、私はその通りだと思った。

「いや、決してそんなことはない。そもそもクラリス嬢は殿下の婚約者ではないか?」
「何を言っているんだ。殿下は婚約者を蔑ろにして聖女に夢中じゃないか? 我が国ではパーティーに婚約者をエスコートしない男など許されない。クラリス嬢が一人で参加されるなら、私がエスコートしたいと思っただけだ」
 マクシムの声に私はとても嬉しかった。

「いや、でも、それなら俺も」
「いや俺も」
 何か、ジャックだけじゃなくて、他の男の子達も立候補してくれるんだけど……

 皆、エミールに相手にされない、私のことを哀れんでくれたみたいだ。
 じゃないと地味で内気で面白みがないとエミールに言われる私なんて誘ってくれる訳は無いのだ。
 そんなに私は皆に同情されているんだろうか?

「クラリス、その方、パーティーにエスコートするものがいないという話ではないか。何なら俺がエスコートしてやっても良いぞ」 
 果ては王弟殿下の息子まで、私をエスコートしても良いと言い出してくれたんだけど……

「ふんっ、さすがクラリスさん。公爵家の権力にかこつけて皆からエスコートさせてほしいと言わすなんて凄いわね」
 アニエスからはそのように嫌みを言われたけれど。
「何言っているのよ。その大きな胸を使って周りに男達を集めているあなたが言うことじゃないわよ」
 それを聞いてフェリシー等がぶち切れて言い合ってくれるのは毎度のことだ。今度はフェリシーも取っ組み合いの喧嘩なんかしてくれなくて私はほっとしたけれど……



 テストがあっという間に過ぎて、パーティーの前日になった。

 その夜に私は何故か王家の仕立て工房の訪問を受けたのだ。

 マダム・キーラは王妃様の直属で多くのドレスを仕立てていた。私も王妃様に言われて作ったこともある。でも、今回は私は王妃様にそのようなものを頼んでもないし、既にドレスは出来ているのだ。
 今頃何の用何だろう?
 ひょっとして王太后様の件で悪いと思って寄越したんだろうか?
 あまり会いたくないと思ったが、会わない訳にも行かなかった。

「お待たせしました」
 私はマダム・キーラに会った。
「これはクラリス様。お久しぶりでございます。今回はこのキーラ渾身の作を王太子殿下にご注文賜りまして、このドレスをお持ちしました」
 そう言うとキーラは大きく胸の露出した青に銀の刺繍の入ったドレスを見せてくれたのだ。いかにもアニエスが好きそうなドレスだった。

「まあ、少し胸元がお寂しいですが、パットを使えばなんとかなるでしょう」
 なんかマダムがむかつくことをすらっと話してくれたが、
「あのう、マダム。お届け先はボラック男爵家ではございませんか?」
 私は親切にも一応聞いてあげたのだ。

「いえ、それは私も何度も確認いたしたんですけれど、殿下は一人でパーティー会場に向かわれる婚約者様に同情されたのか、ボラック男爵令嬢様に送られるものよりも数倍高価な衣装をお作りにならたのです」
「マダム。結構ですわ」
 私はマダムの言葉に完全に我慢の限度を超えていた。

「はい? 結構とはどういう事ですか?」
 マダムは理解できていないみたいだった。
「私、王太子殿下の愛人のついでに衣装を作ってもらうほど落ちぶれてはおりません」
「まあ、クラリス様。このマダム・キーラの衣装を断られるというのですか? 普通は1年以上待っていただくのに、今回は特別に作らせて頂いた王妃様の御用達の私共の店のドレスを受け取らないと言われますの」
 何かマダムが変なところで文句を言い出したんだけど。今回私が作ってほしいと頼んだのではない。
 何故、お情けでミールから衣装を受け取らないといけないのだ!

「もう結構です。代金は王太子殿下から受け取って下さい。私は二度と殿下からの衣装なんて受け取りませんから」
 私は言い切ったのだ。
 なんで、アニエスのついでに作ってもらった衣装なんて受け取らないといけないのだ。エミールも人を馬鹿にするにもほどがある!
 私はセバスチャンに命じて騒ぐキーラにお引き取り願ったのだった。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!

林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。  マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。  そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。  そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。  どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。 2022.6.22 第一章完結しました。 2022.7.5 第二章完結しました。 第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。 第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。 第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。

初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。 王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。 第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。 常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。 ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。 みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。 そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。 しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

処理中です...