悪役令嬢に転生させられた地味令嬢ですが、ヒロインの方が強くて虐められているんですけど……

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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多くの先生には前世の知識と古語が普通に読めるというチート能力で認められましたが、礼儀作法の先生には一切通用しませんでした

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 最悪なことに次の日からお妃教育が始まったのだ。
 これだけは避けたかったのに!
 私の公爵家の図書室での、のんびり引きこもり生活が無くなってしまった……
 私はがっかりした。

 それにお妃教育の時間割を見て、一番最初に数学があるのを見つけて私はうんざりした。
 数学は高校でも苦手だったのだ。

 王宮で私に宛がわれた部屋に入ってきた数学の先生は、目が釣り上がっているし、機嫌が悪いみたいだった。
 後でデジレに尋ねたら、私がお父様に我が儘言って首にした先生の一人だったらしい。
 最悪だ。

「では、最初にクラリス様がどこまでお出来になるかテストをします」
 数学のシュトラウス先生はニヤリと笑ってくれたのだ。
 このテストで出来ない私を笑おうとしてくれたのだろう。

 でも問題を見て、私は目が点になった。簡単な一桁の足し算が書かれているんだけど?
 バカにしているんだろうか?

「どうしたのですか? いきなり出来ないのですか?」
 馬鹿にしたようにシュトラウス先生は言ってくれるんだけど、いくら私が馬鹿でも解けるわよ。

 私は片っ端から解いていった。
 問題は段々難しくなっていき、二桁三桁の計算になって掛け算まで入ったりしたが、精神年齢二十歳の私には楽勝だった。
 その次は一次方程式でそれも楽勝だった
 でも、二次方程式まであるんだけど……
 本当に面倒臭い。

 でも、簡単に因数分解出来た。
 楽勝じゃない。

 私は目の前でシュトラウス先生が目を見開いて固まっているのに気づかなかったのだ。

「す、凄いです。クラリス様はどこで、このような事を勉強されたのですか?」
 シュトラウス先生は私を唖然として見ていた。

 失敗した!
 私はまだ五歳の我が儘令嬢のクラリスだった。こんなに出来るわけ無いのだ。でも、今さら否定できないし……

「ええええっと、家の図書室で勉強しました」
「なんと素晴らしい! クラリス様は天才です」
 手放しでシュトラウスは褒めてくれたんだけど……


 次の歴史のヘロドトス先生はシュトラウス先生の言葉を聞いて、半信半疑で来たみたいだ。まあ、見た目はお馬鹿なクラリスだ。私が数学の問題を解けたとは普通は信じられないだろう。
 それに歴史はまだ勉強し始めたところで、私はテストはほとんどできなかった。

 先生は何故か、眉が釣り上がっているし、あまりの私の馬鹿さ加減にさすがに切れたのかもしれない。
 これは怒られる!
 私が覚悟した時だ。

「クラリス様。ストーンヘンジの事を何故知っているのですか? それについては簡単な歴史の本には載っていないはずです」
 先生が指差しているのは下の方の問題で唯一私が判った問題だ。

「あの、エミール様の部屋の本に書いてあったので」
 私が恐る恐る答えると、
「はい? ストーンヘンジに書かれていた文章を書き写した本ですか?」
 先生が身を乗り出して聞いてくれるんだけど、確かそのように書かれていたはずだ。

「すみません。ひょっとして、あれは王太子殿下しか読んではいけない本でした?」
「いえ、あれは古語で書かれた物ですから。普通はクラリス様くらいの年齢の方は読めないのです」
「えっ、普通に読めましたけど?」
 私は思わず本当の事を言ってしまった。

「そんな馬鹿な。天才と呼ばれた王太子殿下ですらまだ、ほとんど読むことは難しいのですが」
「えっ!」
 私は知らなかったのだ。私が転生者だから、古語も何不自由無く普通に読めることを……
 だから、エミールは私がその本を取ったことに驚いていたのか!


「これはなんと書いてありますか?」
 先生が黒板に文字を書いてくれた。
「私は歴史が好きです」
「素晴らしい。古語も普通に読めるのですね」
 ヘロドトス先生は私の答えに喜んでくれた。
「これから、古語で一緒に歴史を勉強していきましょう」
 ヘロドトス先生はとんでもないことを言い出してくれたんだけど、普通の歴史も覚えていないんだから、そんなことはしなくて良いのに!


 シュトラウス先生とヘロドトス先生が褒めまくってくれたみたいで、領地の地理の先生も国語の先生も、私には一目置いてくれた。国語の先生は古語のテストで私が満点取れたのには唖然としていた。



 お妃教育は私がお馬鹿だから全然出来ないのではないかと私が危惧していたみたいにはならなかった。それどころか、私の能力以上に皆評価してくれるんだけど……


 ただ、唯一、ロッテンマイエル先生だけは違った。

「クラリス様。あなた様は古語や数学が出来ると、先生方に褒められて天狗になっていると聞き及んでいます」
 私の部屋に入ってくるなり、ロッテンマイエル先生は怒り出したんだけど……
 私は別に天狗になっていないのに!

「私は、かつて、陛下にすら、あなたは首よとは言われたことがないのです。後にも先にもあなた様だけですわ。その言葉を私に向けて吐き出されたお方は」
 そう言って笑うロッテンマイエル先生の目は笑っていなかった。
 これは絶対に根に持ってる。
 私はロッテンマイエル先生の敵意に満ちた目に睨まれて体が思わず縮み上った。

「それでは私を首にするほど能力のお高いクラリス様が、どれだけ礼儀作法が出来るか見せて頂きましょう」
 ロッテンマイエル先生は顎を高く上げて、両足を大きく広げて腕を組んで私を睨み付けてくれた。
 私は蛇に睨まれたカエルみたいだった。

「ではクラリス様まず礼をしてください」
「はい」
 私は聞き取れるかどうかというほど小さい声で返事した。
「声が小さい!」
「はい!」
「もう一度」
「はい!」
 私は思いっきり大きな声で返事していた。
「では、礼」
 私はロッテンマイエル先生の声に合わせて思わずピョこりと頭を下げたのだ。

「なんなのですか! その礼は! そんなのは礼ではありません。
 そのような恥ずかしい礼は平民でもしませんよ。もう一度」
 ロッテンマイエル先生の厳しい叱責の声が飛んできた。
 私はもう一度頭を下げようとして、
「返事がないです」
「はい!」
 私は大きな声で返事をした。
「礼」
 ピョこりともう一度礼をする。

「何をしているのですか? まずは気を付けの姿勢からして駄目です。両手を体の横にピシッと付けて」
 私は慌ててそうした。
「返事がない!」
「はい!」
「指を伸ばす」
「はい!」
「背筋を伸ばして」
「はい!」
 慌てて背筋を伸ばす。
「礼」
 私はそのまま頭を下げた。もう涙目だった。
「全然駄目です。もう一度」
「はい!」

 私はそれから延々と礼の練習をさせられたのだ。
 2時間ほとんど休む間もなく、ぶっ通しだった。

 やっと解放された時はもう本当に倒れそうなほどふらふらだった。

 こんなのがこれからずっと続くの?
 私はもう本当に泣きそうだった。いや既に涙が目からこぼれていた。
**************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
ここから毎日、恨み辛みの溜まった先生の授業が二時間も……果たしてクラリスは耐えられるのか?
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