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聖女視点5 偽聖女と闇の魔道具を抹殺することにしました

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私は悪役令嬢に首輪をつけられて虐められていた。後ろからムチを持った悪役令嬢に連れられて歩かされているのだ。そして、無情にも悪役令嬢は私を鞭打ってくるのだ。

ビシッ
「ギャッ!」

ビシッ
「ギャッ!」
そのたびに痛みが走り、私は悲鳴を上げた。

それを酷悪な表情を浮かべて悪役令嬢は笑っているのだ。

だめだ。このままでは殺される。

私は逃げようとした。
「逃さないわよ」
神を逆撫でて角を生やして悪役令嬢が追いかけてきたのだ。


「わああああ!」
私は思わず、目の前にいた男に抱きついていた。

それは鬼の騎士団長だった。

「えっ」
夢から目覚めて、起きた私は現実に騎士団長に抱きついているのに、気付いた。

「大丈夫ですか」
騎士団長が聞いてきた。赤くなっている。これ可愛い。

「あの女に殺されるの」
私は更に思いっきり騎士団長に抱きついていたのだ。

「はいっ?」
「ベルファストの偽聖女よ」
「偽聖女?」
「キャサリンよ」
「キャサリン様ですか」
「あの女に殺されるの。助けて、セドリック」
私は騎士団長の名前を読んだのだ。
ふふふ、もう私の腕の中に騎士団長はある。
私の魅力を使えばいくら堅物の騎士団長でも篭絡できないはずはなかった。

「あ、アデラ様、何をなさるのですか」
抵抗しようとする、その騎士団長の口を私の唇で防いだ。
もうこうなっては騎士団長も形無しだった・・・・。



騎士団長を篭絡した私は直ちに情報を確認した。
付近の大半の魔物は消滅していた。
黒い十字架を破壊したのはやはり、悪役令嬢らしい。

私は私をほって寝込んでいたエイベルを叩き起こすと、状況を知るために敵陣に乗り込んだのだ。



「あんた、誰?」
しかし、最初に悪役令嬢に言われた言葉がそれだった。こいつは何を言ってくれるのだ。

「何言っているのよ。私よ。私! 偉大なる聖女アデラ・ヘセイ様よ!」
私が言うと、
「えっ、あなたがアデラなの?」
こいつはあろうことか私を二度見してくれたのだ。どういう事だ。それも憐れみの目で見下してくれるんだけど。そんなに変なのか。このガサツ女に言われるほど・・・・。

魔物退治で、身の回りを気にする暇は無かったのよ!
私はこいつだけは許さないと再度キレた。


「で、何の用なのだ?」
ハロルドが切り出してくれた。

「あーら、これはいつの間にかベルファスト王国の王太子殿下になられたハロルド様ではありませんか」
私は女は無視して、逃した魚を改めてみた。こいつは先ほどモノにしたセドリックよりも整った顔をしていた。こいつを逃したのは本当に失敗だった。

まあ、良い。いずれは騎士団長のように篭絡して私のペットにしてやるわ。


「手短に要件を言ってもらおう」
ハロルドの視線が冷たい。さすが氷の騎士だ。今は氷の王太子か。

「我が国を出て行った、キャサリンが貴国で偽聖女を装い、闇魔道具を使って魔物を召喚して、我が国を襲わせたという噂があってだな。その確認に来たのだ」
エイベルがサイを投げてくれた。そうよ。これから偽聖女をあぶり出すのよ。

「これはこれは、またですか? 王子殿下ともあろうものが、証拠もなしに私を貶めるなど。前回の断罪失敗で身に沁みて判っていらっしゃると思ったのですが」
悪役令嬢が言ってくる。

この女! 

そうだ。お前のせいで私は王太子妃にすぐになれなかったのよ。お前のせいで! 
私は思わず拳を握りしめたのだ。その手をセドリックが上から握ってくれた。私は思わずセドリックに微笑んだ。そうだ。ここはしっかりしなくては。

「何を言うか。ハメたのはその方であろうが。私は強く押してもいないのに、私に突き落とされたと嘘をついたのは」
「何をおっしゃるのやら。その場にいらっしゃった方は皆さん、ご覧になっていたのですよ。あなた様が私を押されるのをはっきりとね。そうですよね。ハロルド殿下」
「そうだ。私もはっきりとこの目で見たし、司法長官も頷かれたぞ」
ハロルドの氷の視線がその女を見るときだけは緩むのは何故だ。なんか私はとてもむかついた。しかし、何故か微妙に怖れてもいる。

不毛な押した押さないの言い合いは決着しなかった。

「その事よりも今回の魔物のスタンピードがどうして起こったかではありませんか。聞く所によると貴国では、キャサリン様が聖女でもないのに、聖女と呼ばれているとか。それを神が怒って魔物を發生させたと申すものもおりましてよ」
私はやっと言いたいことが言えた。偽聖女が歪んだ顔をする。そうよ。どうするのよ、ニセ聖女。私はいやらしい笑みをその女に向けたのだ。


「アデラ様。そこは何をもってして聖女とするかでござろう。我が国の建国の聖女様と同じ装いのキャサリン様は我が国王自らが聖女と認定されたのです。それにケチを付けられるおつもりか」
「左様。これは下手をすると外交問題ですぞ」
なんか横から、偽聖女を援護射撃する奴らがいるんだけど。


「何をおっしゃっていらつしゃるのですか。聖女とは癒やしの担い手。キャサリン様はヒールはお使いになれないでしょう?」
そうだ。この女が高尚なヒールなんて使えるわけないのだ。ここで、偽聖女の化けの皮が剥がれるのだ。そう私は期待したのに、

「それはロンド王国の倫理だろう。聖女様とは必ずしもヒールを使えなくても宜しかろう。聖女の定義は基本は神に愛される心の清らかな方を言うものではございませんかな」
なんか、偽聖女の腰巾着はとんでもないことを言ってくれるんだけど。聖女がヒールを使えなくて聖女なわけないじゃない!

「いや、我が教会においては」
「貴国の教会云々はどうでも宜しかろう。我が国の陛下が認定されたのです」
「そ、そんな」
そんな馬鹿なことがあるのか! 聖女はヒールを使えてこそ聖女なのだ。コイツラなんてことを言うのだ。これだから本当の聖女のいない野蛮国は違うのだ。


「今回の魔物の大量発生はダンジョンに設置されていた闇の魔導器具が使われたと思われます。それを聖女キャサリン様が破壊して頂いたところ、魔物はいなくなりましたから」
「や、闇の魔道具ですか」
そうか、黒い十字架はこの女が壊したのか。私がせっかく大聖堂の地下室に封印してあるのを持ち出したのに。

「失礼ですが、ベルファスト王国には当初大量の魔物が出現したと聞いておったのですが、全て退治されたのですか」
「さよう。聖女キャサリン様のお力で多くの魔物を浄化されたのです」
「キャサリン様は浄化魔術を使われるのか」
騎士団長が驚いて言っていた。

「そんなバカな」
いやいやいやいや、この性悪女がそんな高尚なもの使えるわけ無いだろう。嘘を付くな。
私はこの女を睨みつけた。
偽聖女は不吉な笑みを浮かべて睨み返してきたのだ。


「後は、その十字架を誰が設置したかです」
腰巾着が言ってきた。

「本当に、どこの馬の骨がそのような無謀なことをしたのか」
「許せませんな」
私とエイベルが誤魔化して言うと、

「ものは完全に破壊されましたが、残骸はこちらで回収いたしました。王都で研究すれば誰が設置したかも判るかも知れません。残留魔術の行方を追えば判るやも知れませんし」

なんだと、残骸が残っているだ!

そんなのこちらの王国に問い合わせが来たら、大聖堂の地下に封印されていたのが、バレルではないか。それだけはなんとしても防がなければならない。

私は考慮の憂いを断つために、偽聖女と黒い十字架を抹殺することにしたのだ。
新たな私のペットになった騎士団長らを使って。

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