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ハロルド視点5 キャサリンと古代竜にスノードニアの大軍と辺境伯領は殲滅されました

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古代竜が負けたのでキャサリンの家来になっただ? いやこれは完全にペットだ。

気づいたキャサリンと戯れているんだけど、何故か俺の前でキャサリンの胸の中に潜り込んでいって俺はムッとしてしまった。

これに気を良くしたのか、キャサリンは冒険者になる気満々になったのだが、

「何言っているのよ。龍ちゃんに勝ったのは私よ。十分にやっていけるでしょ」
「倒した後に気絶したやつが何言っているんだよ。これが冒険者のパーティーだったら、気絶している間に、貞操奪われているところだぞ。もっとも、遊んでいたお前ならもう関係ないかもしれないが」
「なんですって!」
キャサリンは俺の失言に切れると俺を張り倒してくれたのだ。
こいつは本当に女か?

「若、今のは流石に若が悪いですぞ」
エイブまでが俺を注意してきた。流石に謝ったが、許してくれない。伯爵領まではエイブがキャサリンを馬に乗せることになってしまった。



しかし、到着した伯爵領はとても寂れていた。ここまでひどかったか? 昔はもって発展していたように思うのだが。
それに、伯爵の態度がおかしかったので、俺たちは用心していた。

食事を少し食べてみると案の定、眠り薬の成分を感じた。毒ではないみたいだ。

一人が派手に薬に眠らされた真似をした。

俺たちも次々に倒れたふりをする。

それを見て伯爵が笑うと、ならず者と見受けられる奴らが入ってきた。

俺たちは縛られて転がされた。

キャサリンを別室に連れて行く。

縄を切って俺たちが見張りを退治した時だ。


ガオーーーー
大きな叫び声が響いて屋敷が崩壊したのだ。

瓦礫をなんとか回避した俺達の前に怒り狂った巨大な古代竜がいたのだ。

ならず者共は既に殲滅されたらしい。

古代竜はそのまま街に繰り出したのだ。

古代竜は俺たちのことは見向きもせずに怒りのあまり寂れた街を踏み潰仕出したのだ。

俺たちがどう対処しようか迷った時だ。

「龍ちゃん、お座り」
キャサリンが寝言で叫んだのだ。

「ピーーーー」
その瞬間だ。古代竜は小さくなってキャサリンの元に戻って来たのだ。

俺たちは唖然とそれを見ているしかなかった。


「若、これはもう、キャサリン様を妻として迎えるしかありませんな」
エイブなど、訳のわからないことをいってくる。

「そうすれば天下無敵です」
どこの国にこんな危険な女を妻にするんだよ。と思わないでもなかったが。
見た目はまだ可愛いが、暴れたら無敵というのはどうなのか?
そのペットも無敵だし。

でも、そのキャサリンの胸で戯れている竜を見るとムカつくのは何故なんだろう?

俺は自分の心を封印することにした。



しかし、辺境伯領にキャサリンを馬に乗せて連れて行った俺は、皆に興味津々の目で見られて狼狽えた。

辺境伯の妻のアデラインなんて
「まあまあ、やっと若様にも春がきたのですね」
とからかわれて真っ赤になった。

違う。俺は単なる護衛として雇われただけだから。
その伯爵家が良からぬことをして無くなったからここに連れてきただけだ。

そう言いはったのだが、みんなの生暖かい視線は変わらなかった。



その辺境伯領にまさか、スノードニアの大軍が攻め込んでくるとはその時は思いもしなかったのだ。

俺たちは完全に油断していた。

スノードニアの動きが怪しいのもいつものことだと思っていたのだ。
その夜までは。


夜中、俺は伝令で叩き起こされた。

スノードニアの2000が領内の食物倉庫に攻め込んだというのだ。

2000といえば砦の大半の兵力だ。何故? 不吉な予感がしたが、辺境伯は直ちに大半の兵力を率いて応援に駆けつけるという。

俺は留守を頼まれた。

「なあに問題ないと思いますが、いざという時はお願いします。何しろハロルド様は最強の彼女をお連れなのですから」
「その時は頼んでみるよ」
辺境伯も俺もまさかそれが本当になるなんて思ってもいなかったのだ。

それから1時間後だ。変な動きを察知して俺は慌ててキャサリンの所に向かった。

なんと兵士たちが館の中に侵入していたのだ。

何故だ?
俺は全軍に戦闘態勢に入らせた。

これは裏切り者がいる。

いざとなったらキャサリンを逃がそう。

そう思って部屋に入ったときには、敵兵共に見つかった。
俺は並み居る敵を切り捨てて、キャサリンを連れて外に出た。

廊下は血の海になっていた。
なんかキャサリンから怒りのオーラが伝わってくるんだが・・・・。


でも、屋敷の外に出たところで城門が開けられて、そこからは大軍が中に入ってこようとしていた。

最悪だ。 いくらキャサリンでもこれでは無理だ。
俺はキャサリンを血路を切り開いて逃がそうと思ったのだ。

しかしだ。

「もう許さない!」
キャサリンが切れていたのだ。

「いや、まて、いくらお前でも無理だ」
俺の言葉はしかし届かなかった。


「ハロルド、最悪、私をおぶって逃げてね」
キャサリンはそう言うと、俺の手を抜けて入ってこようとした、敵兵に向けて飛び出したのだ。

「おい、待てキャサリン」
「ウォーーーー」
俺の声を無視してキャサリンは雄叫びを上げて駆け出していた。

兵士たちは丸腰の女が飛び出してきたのだから兵士たちは驚いただろう。

馬鹿にした男たちが剣を抜いてキャサリンを制止しようとした。

しかし、
「行っけーーーー」
剣を向けた笑った男たちに向けてキャサリンは障壁を全開にしたのだ。

その光景に俺は圧倒された。

「ギャーーーーー」
一瞬で前にいた兵士たちが、吹っ飛ぶ。
文字通り瞬殺だった。

巨大な障壁の壁に激突したのだ。

「行っけーーーー」
更に叫ぶキャサリンの声のもと金色に光る障壁が兵士たちを巻き上げてどんどん広がっていく。
城門を突破した障壁は城門に沿って展開。
そのまま一気に敵兵をもと来た所へ追い返すように吹っ飛ばしだしたのだ。
途中にある木も岩も森も攻城兵器も関係なかった。
全て巻き込んで後方に弾き飛ばしていくのだ。
それも凄まじいスピードでだ。

俺は唖然としてみていた。

「この女ーーー」
しかし、既に中に潜り込んでいた敵兵士たちがキャサリンに群がってきた。俺一人では無理だ。
俺が焦った時だ。
俺の手の届かない兵士たちもキャサリンは瞬時に弾き飛ばしていたのだ。

何なのだ。このキャサリンの無敵さは。敵兵は2万くらいいるのではないか。大半の兵力をここに集結してきたのだ。それをキャサリンは全て弾き飛ばしていたのだ。森の彼方に・・・・

ここに、スノードニアの精鋭は消滅していた。

そして、ぐらりとキャサリンが傾いた。いつものごとく気を失ったのだ。
「キャサリン」
俺は慌てて駆け寄って抱き止める。



その瞬間だった。
「ガオーーーーー」
なんと怒り狂った巨大竜が現れるとスノードニアの方にドシンドシンと地響きをかけながら突っ込んでいったのだ。

俺はスノードニアの領民がかわいそうになったくらいだった。
後で報告を受けたのだが、スノードニアの国境の地は跡形もなく壊滅したのだった。

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