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アルバート視線5 大国侯爵令息は王女の侍女との仲を皆にからかわれました

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翌朝、俺は食堂に行った。毎朝、クリス様の、護衛騎士と事務官と侍女が集まって打ち合わせと食事会を兼ねて行っているのだ。
しかし、今日は何故か俺に対する女性たちの視線が生暖かった。

「聞いたわよ。アルバート。ついに氷の貴公子、実際は気になる女の子の前だとあまり話せない残念貴公子のアルバートについに春がきたんですって」
ドラフォード王国の侯爵家令嬢でクリス様の事務官やっているイザベラが食器を持ってきていった。

俺は思わず食べていた食事を吹き出した。

こいつの親と俺の親は親しくて小さい時からの幼馴染だ。こいつは容赦がない。

「汚いわね。何やっているのよ」
イザベラが軽蔑した視線を俺に向ける。

「私も聞いたわ。ついに朴念仁のアルバートに彼女が出来たって」
近衛の仲間でこいつはドラフォードのウィンザー将軍の孫娘のナタリーも言う。こいつの祖父とうちの父も友人だ。

「何を言っている。俺は単にクリス様のご友人の女の子の世話をしていただけだ」
俺は正々堂々と言い訳する。

「ふうん。お世話するのに抱きしめるんだ」
イザベラの爆弾発言に俺は固まった。誰にも見られていないはずなのに、何故それを知っている?

「いや、そんな事はしていな・・・・」
俺は必死に誤魔化そうとした。

「はいっ、私、クリス様と一緒にアルバートとソニアが抱き合っているのを見ました」
イザベラの後ろからクリス様の侍女のミアが手を上げていってくれた。
こいつが原因か。

あれ見られていたの?それもクリス様にも。

俺は真っ赤になった。

「まあまあ、皆。からかうのはその辺りで止めてあげて。二人を暖かく見守ってあげないと駄目よ」
クリス様も食器を持って来て座る。ここの王宮の食堂は他の国と違ってセルフサービスなのだ。

「いや、クリス様。あれはですね。ソニアがうなされて泣いていたので、慰めるためにですね」
俺は必死に言い訳しようとしたが、

「アルバート。泣いているか弱い女の子を慰めるのは騎士として当然のことよ。私は可哀そうなソニアが泣いているのをあなたが抱きしめて慰めてくれてとても嬉しいわ」
クリス様がニコリと笑って言った。

「ソニアはご両親をマエッセンのハマー国王がインダル王妃に懸想して、誘拐しようとした時に殺されたみたいなの。本当に酷いことをするわね。それが事実かどうかイザベラ調べておいてくれるかしら」
「判りました」
「もし事実なら私にも考えがあるわ」
にこっとした表情でクリス様が言った。でも、クリス様の目が笑っていない。この人がこんな顔した時は碌なことがない。

「本当にインダルのりーな王女を助けられるのですか」
俺は思わず聞いてしまった。
「何言っているのよ。それをやると約束したのはジャンヌお姉さまとアレク様とあなたでしょ」
「・・・・」
俺は絶句した。そうでした。賭けで負けたのは私達でした。

あの2人がインダルに加勢するとなるとマエッセン王国もただではすまないだろう。
良くてこのボフミエに併合、最悪だと王都一つが火の海になって地図から消える。

「負けたのはあなたじゃない。あなた、あんな可哀そうなソニアとの約束破るつもりなの」
クリス様の機嫌が急降下した。

「いや、そんな事はありませんが、今は人手が不足して他国まで手が回らないのではありませんか」
俺は懸念事項を言った。

「その時はオウがやってくれるわ。そう言う事務面はオウに任せておけば安心よ。ねえ、オウ」
こういう時のクリス様は鬼畜だ。今でも忙しい皇太子が更に忙しくなるだろう。

「任せておいて」
オウが朝食をとりながら言う。こいつはクリス様には甘い。

「オーウェン、そんなの人手が足りないだろう」
「俺達を殺すつもりですか」
事務官のヘルマンとシュテファンが文句を言う。

「いや、その時はクリスが手伝ってくれるから。ね、クリス」
こいつ、絶対に一緒に仕事がしたいがために頷いたんだ。まあ、確かにクリス様の事務処理能力も皇太子並に高いけど。

「ええ、もちろんよ。即戦科の女の子やマーマレードからも誰か人をもっと連れてくるわ」
「本当ですか」
ヘルマンらは女の子と聞いて現金にも喜んだ。そんなに簡単に使えるようになるのか。彼奴等が。俺は頭の悪そうなクラスメートのことを考えた。あれなら前留学していたマーマレードの学生の方が余程ましだ。
そんな事でいいのか。まあ、賭けに負けた俺には言うべき言葉はなかった。
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