上 下
45 / 68

アルバート視線4 アルバートは泣いている王女の侍女を抱きしめました

しおりを挟む
俺は障壁に吹っ飛ばされて地面に叩きつけられた。

そして、侍女に負けたことに呆然とした。

まさか、小国のほとんど魔術も使えなかった者に負けるなんて。


「うそーーー。アルバートが負けた」
遠くで呆然としたジャンヌが見えた。

まさかこんなことになるなんて思ってもいなかったのだろう。

「ソニア!」
クリス様の悲鳴が聞こえる。

慌てて駆け寄ると、魔力切れでソニアは倒れていた。

俺は責任とって気絶したソニアを今日寝ていた王宮の部屋に運ぶことにした。

こいつも2日連続で魔力切れで気絶するなんてなんて奴だと思いながら。

部屋に運ぶと医師が見に来てくれたが、単なる魔力切れだと言われた。

俺は責任取る意味で。ソニアが気づくまで側にいることにした。

しかし、まさか、障壁を縦に伸ばして攻撃してくるなんて思ってもいなかった。

とんでもないやつだ。

ここまで完璧にやられるともう笑うしか無かった。


でも、戦闘職種でもない侍女にやられるなんて。後で周りのやつになんて言われるやら。

途中で見舞いに来たクリス様についてきたその弟のウイルには、馬鹿にされて笑われた。

この事が年の離れた兄貴らに知られるとまた何を言われることになるやら。

父に知られれば、一から特訓だといってかいって猛特訓になるかも知れない。

それを考えると本当に憂鬱だった。




ソニアは中々起きなかった。

途中何回もうなされていた。

涙を流しながら。

ソニアは父と母を幼い頃にマエッセンの奴らに殺されて、もう、縁者もいないそうだ。主の王女が縁者みたいなものだとクリス様もおっしゃっていらっしゃった。

ソニアも、王女を守る為に必死だったのだろう。

しかし、暴風王女と赤い死神に頼るなんてなんて奴だ。

まあ、本人は優秀な友だちに頼んだつもりなのかも知れないけれど。いや、絶対に気付いていない。

そして、俺がまさかの敗北を喫してしまったから、暴風王女も赤い死神も手伝わざる負えなくなってしまった。

ふんっ、人を代わりに戦わせるからだ。

しかし、マエッセンはこれで確実に詰んだ。絶対に。

暴風王女と赤い死神に楯突いて、無事な国なんてなかなか存在しない。マエッセンの淫乱暴虐王らにしたら、赤い死神と暴風王女がインダル側についたなんて夢にも思っていないだろう。インダルなんて小国の侍女が世界最強の後ろ盾を連れてくるなんて。


それも、本人のソニアですらその事に気づいていない。少し考えれば判るはずなのに。

近衛の俺より強いやつってボフミエでもそんなにいないのだが。

そもそもそのソニアの友達がこの国最強の筆頭魔導師様って事も知らないし。

近衛の俺がついているだけで、本来気づいても良いことなのに、本当にソニアは天然だ。

本当にソニアらしい。

俺はなぜか笑っていた。




「止めてーーーー」
次の日の夜中にソニアがまたうなされた。

「大丈夫だ」
俺は手をのばしたソニアの腕を掴んでやる。

なんてか細い手なんだ。

俺はその手を握ってやった。

ソニアが目を開けて飛び起きた。

「しっかりしろ」
俺はソニアの肩を抱いていった。

ソニアは泣いていた。

そして、震えてした。

「すいません。父と母が殺される夢を見ていました」
ソニアは顔を両手で抑えて震えて言った。

「大丈夫か」
俺はハンカチを渡した。

「すいません。涙が止まらなくて」
ソニアは俺のハンカチで涙を拭いた。

俺は震えるソニアの肩を抱きしめて慰めてやりたくなった。

俺は優しく肩を抱くと胸の中に抱いた。

「すいません。こんな事されたの、両親が生きていた時くらいで」
ソニアはつまりつまりながら言った。

その背中をトントンと軽くたたいてやる。

「気にしなくてもいい。好きなだけ泣いていいから」
俺は慰めていった。そんなこと言ったのは初めてだった。でも、ここですげなく冷たくするなんてことは出来なかった。

「すいません。本当にすいません」
そう言いながらソニアは俺の胸の中で思いっきり泣いていた。

俺はソニアが泣きつかれて眠ってしまうまでその柔らかい躰を優しく抱きしめていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら

風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」 伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。 男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。 それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。 何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。 そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。 学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに! これで死なずにすむのでは!? ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ―― あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

【完結】想い人がいるはずの王太子殿下に求婚されまして ~不憫な王子と勘違い令嬢が幸せになるまで~

Rohdea
恋愛
──私は、私ではない“想い人”がいるはずの王太子殿下に求婚されました。 昔からどうにもこうにも男運の悪い侯爵令嬢のアンジェリカ。 縁談が流れた事は一度や二度では無い。 そんなアンジェリカ、実はずっとこの国の王太子殿下に片想いをしていた。 しかし、殿下の婚約の噂が流れ始めた事であっけなく失恋し、他国への留学を決意する。 しかし、留学期間を終えて帰国してみれば、当の王子様は未だに婚約者がいないという。 帰国後の再会により再び溢れそうになる恋心。 けれど、殿下にはとても大事に思っている“天使”がいるらしい。 更に追い打ちをかけるように、殿下と他国の王女との政略結婚の噂まで世間に流れ始める。 今度こそ諦めよう……そう決めたのに…… 「私の天使は君だったらしい」 想い人の“天使”がいるくせに。婚約予定の王女様がいるくせに。 王太子殿下は何故かアンジェリカに求婚して来て─── ★★★ 『美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~』 に、出て来た不憫な王太子殿下の話になります! (リクエストくれた方、ありがとうございました) 未読の方は一読された方が、殿下の不憫さがより伝わるような気がしています……

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

処理中です...