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王女の侍女は両親が殺される夢を見ました

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私は真っ暗な空間にいた。

いやに風がきつい。

よく目を凝らすと林の中の夜道に立っていた。

雲がかかっているのか暗かった。


その中、蹄の音がしてきた。

なんだろう、そう思って音のする方を見ると遠くから馬車が走ってくるのが見えた。

10騎の騎士に守られた豪華な馬車が走って来る。

あれは王家の馬車だ。

そして、その先頭を馬をかって走っているのはよく知った顔だった。

「父さん」
私は思わず声を出した。懐かしかった。とても。
何故死んだ父さんがいるんだか。私には判らなかった。

父さんの繰る馬がどんどん大きくなってくる。

そして、父さんが目の前に大きくなった時だ。

先頭の父さんにいきなり矢がブスリと突き刺さったのだ。

「えっ」
慌てて周りを見ると馬に乗った男たちが両側からと飛び出してくる。

30騎以上いる。

「王妃殿下をお守りしろ」
父が叫んでいた。

その父に向けて兵たちが群がる。

「父さん!止めて」
私は叫んで飛び出した。
群がる兵士たちと父さんとの間にに障壁を張ろうとするが何も出来ない。

出来なかったのだ。

父は兵士たちに切り刻まれて襤褸布のように地面に投げ出されていた。

嘘。私は呆然とした。


「あなた!」
その時に馬車から顔を出した母の悲鳴が聞こえた。

「兵士たちは1人も生かすな。王妃だけは生きて捕まえろ。後は好きにして良いぞ」
男の首領と思しき男が叫んでいた。黒装束の中でも目には黒い眼帯をしているのが判った。

「おう!」
黒ずくめの男たちが喜んで駆け回る。

騎士たちは大半が殺されていた。

止められた馬車の扉が開けられる。

「ぎゃ」
その開けた男が叫んだ。顔にナイフが切りつけられたのだ。母がやったのだ。

「このあまあ」
男は叫ぶと刀を母に突き刺していた。

「止めてーーーー」
私は大声を上げていた。


はっとして飛び起きる。

それはベッドのある客室のようだった。

「しっかりしろ」

そこにはアルがいて私の肩を揺すってくれていた。

私は唖然としていた。

夢だったのだ。

おそらく現実に起こったことなのだろう。

昨日アレクの言葉を聞くまでは母たちは馬車の事故で死んだと思っていた。

それは嘘だったんだ。おそらく、公表できないと王家が判断したのだろう。

起きる前に馬車の中でナイフを胸に突き刺している王妃の姿も見えた。

私は涙が止まらなかった。

震えて仕方がなかった。

「すいません。父と母が殺される夢を見ていました」
私は顔を両手で抑えて震えて言った。

「大丈夫か」
アルは優しく言ってハンカチを渡してくれた。

「すいません。涙が止まらなくて」
私は借りたハンカチで涙を拭いた。

その肩をアルが抱いてくれた。

そんな事されたのは母が生きていたときくらいだった。
その優しさが嬉しかった。

「すいません。こんな事されたの、両親が生きていた時くらいで」
私はつまりつまりながら言った。涙は止まらなかった。

止めようと必死にしたのだが、止めようとすればするほど止まらなくなった。

アルは優しく肩を抱くと胸の中に抱いてくれた。

「気にしなくてもいいよ。好きなだけ泣いていいから」
「すいません。本当にすいません」
そう言いながら私は思いっきり好きなだけアルの胸の中で泣いてしまった。

そして泣きつかれるとあるの胸の中で寝てしまった。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。

次は明朝更新予定です。
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