上 下
30 / 62

新しい友人と休日にお出かけする約束をしました

しおりを挟む
次の日はさすがにちゃんと目覚ましで起きられた。

食堂に行くと結構混んでいた。
周りを見るとライラは男爵家の連中と食事していた。
私を見ても完全無視してくれたのだ。

私はムッとして他を探す。

ヨーナスらは騎士の朝練が長引いているのかいなかった。
仕方なしに空いてるところに座って食べていると

「こちら、座ってもいいかしら?」
同じクラスの緑髪の女の子が声をかけて来た。スレンダーな感じで結構美人だ。確か、この子も私と同じ平民だったような気がする。

「ええ、大丈夫よ」
「良かった。結構朝から混んでいるわよね」
ほっとして女の子が言った。
「私はノーラよ」
女の子が名乗ってくれた。
「私は」
「知っているわよ。ニーナさんでしょ」
ノーラが呼んでくれた。

「えっ」
驚いて私がノーラを見ると
「何驚いているのよ。あなたの事を知らない生徒なんかいないわよ。歓迎パーティーで、今まで誰一人エスコートしたことのない殿下にしてもらったり、水魔法でヴィルタネン先生を吹き飛ばしたり、ペトラ先生の授業に二回連続遅刻してきたり、あなたの事を知らなかったら潜りよ」
ノーラは笑って言ってくれた。

「そうなんだ」
私は適当に笑って誤魔化した。
そうか、そこまで有名なんだ……
私はショックだった。

「えっ、どうしたの? ひょっとしてそこまで有名になっているって知らなかったの」
「だって私、地味で大人しい性格だし」
「何言っているのよ。大人しい人がヴィルタネン先生を水魔法でぶっ飛ばしたりしないわよ」
「いやだからあれは失敗して」
「良く言うわね。完全に狙ってやったでしょ」
「……」
ノーラに言われて、私は何一つ言い返せなかった。でも、ほとんど初対面の人にそこまで言われるいわれはないはずだけど……

「まあまあ、そんなに怒らないで。私、そんなニーナさんとお近づきになりたいなって思っていたんだけど、ライラさんがずうーーーーっと傍にいたから中々話しかけられなかったのよ。でも、今日はニーナさんが一人でいらしたから、話しかけてもいいかなって」
「別に話しかけてくれるのはいつでもいいわよ。私たちクラスメートなんだし」
別にライラがいても話しかけてくれて良いのだ。ライラとは絶賛喧嘩中だし。

「有難う。それでね。ニーナさんは甘いものはお好き?」
「それは好きよ」
ノーラがいきなり聞いて来たので、私は頷いた。

「王都に『お菓子の家』っていうカフェがオープンしたのよ。そこのアップルパイが絶品なんだって」
「へえ、そうなんだ」
アップルパイか、今世ではまだ食べたこともない。
でも、前世では私の好物でもあったのだ。出来たら食べたいと思ってしまった。

「明日は土曜日で学園は休みじゃない。実は友達と行くんだけど、良かったらあなたも一緒に行かないかなって」
いきなりノーラが誘ってくれたんだけど。

「えっ、本当に? でも、私が一緒に行っても良いの?」
「大丈夫よ。二人とも気さくな方だから」
私の質問にノーラが笑って答えてくれた。甘いものに私は惹かれてしまった。

「そうね」
でも、ノーラとはまだそんなに親しくないが、今はライラとは絶賛喧嘩中だ。週末の予定もないし。
私はなんか視線を感じたのでそちらの方をちらりと見たら、何かライラがこちらを睨みつけているんだけけど……何故に?

「どうする? とても人気の店なのよ」
「行くわ」
ノーラの誘いに私は思わず頷いてしまっていたのだ。

ライラがなんか言ってきそうだったが、ライラは自分の友達らと仲良くしたらいいし、私はほかの友達とも仲良くなりたかった。

「また、詳しくは連絡するわ」
ノーラの言葉に頷くと私は友達がもう一人できて浮かれていた。


私はお昼休みに、会長に帝国語を教わりながら、新しく友達が出来たことを会長に話したのだ。

「その子に明日、皆と新しく出来た『お菓子の家』に行こうって誘われたんです」
私が嬉しそうに話すと、
「『お菓子の家』か。王都に出来た人気のカフェだよな。若手の貴族とかが良く利用している」
「えっ、会長まで知っているんですか?」
「それはそうだろう。とりあえず、王都のことは父親から任されているから、色んな情報は仕入れるようにしているんだ」
会長は言ってくれたんだけど

そう言えば会長は王子様だった。
父親って当然陛下で、その陛下に任されているってどれだけ凄いのかこの時は知らなかった。

「会長は王都のことは詳しいんですか?」
単純な私は喜んで聞いていたのだ。

「それはニーナ嬢に比べれば当然詳しいよ。俺は地元だしな」
「そうですか。私は安いお出かけ用の服とかもう少し準備したいんですけど」
「安い服なら、下町エリアに多いけれど、治安が悪いところもあるからな。行くならちゃんとした奴らと一緒に行けよ」
「そうですね。そうします」
ノーラらなら平民だし、詳しいだろう。私はノーラに相談しようと思ったのだ。

会長は貴重な昼休みを私の帝国語のために潰してくれたのだ。それもお菓子付きで。
本当に感謝しか無かった。

私は最後にウィル様への手紙を渡して喜んでその場を離れたのだ。

そんな私をライラが物陰から睨んでいるなんて知らなかったのだ。
*****************************************************

今日はここまでお付き合い頂いてありがとうございました。

続きは明日更新予定です。

よろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました

白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。 「会いたかったーー……!」 一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。 【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】

モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~

咲桜りおな
恋愛
 前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。 ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。 いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!  そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。 結構、ところどころでイチャラブしております。 ◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆  前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。 この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。  番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。 「小説家になろう」でも公開しています。

大国に乗っ取られそうな王女の侍女は後ろ盾を探すために異国に留学しますが、気付かぬうちに超大国の方々と仲良くなっていました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
ソニアは敬愛する王女と幼馴染で王女の騎士のルドラが抱き合っているのを見て失恋する。このままここにいて二人のイチャラブを見ていらなくて新興大国のボフミエ魔導国に留学することに。ソニアの仕える王女の弟は大国マエッセンの血筋を受け継いでおり、王女は廃嫡の危機どころか命の危険と隣合わせていた。ボフミエは魔術大国でなおかつ今は超大国の皇太子連中が運営しており、ソニアはできれば知り合って王女を助けたいと願うが、なかなか知り合う機会もない。そんな中で、平民の友達のクリスやその仲間から魔術や剣術を習うソニアだが、本国ではとんでもないことが起こって・・・・・ 明るいソニアが異国の地で精一杯生きていく留学物語。一発逆転、ハピエンをご期待下さい。 「皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!」のサイドストリーです。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952?preview=1 これだけで楽しめるとは思いますが、別視線は上記物語に載っています。 多少話は違いますがそこはお許し下さい。 小説家になろう カクヨム連載中

処理中です...