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第一章 娘が生贄にされるのを助けるために地獄から脱獄します
地獄のルールにマーマ王国皇太子は納得できませんでした
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地獄では地界から一般人に神が消滅させられて送り返されてきたことに衝撃が走っていた。
「おのれ、シャラめ、もう許さん」
閻魔が拳を振り上げた。
「まあまあ、閻魔殿。シャラの件はゼウス様が復活をお約束されたというのもありますし、万が一連れ帰ってまた脱獄されると面倒なことになりますぞ。今回は天界にも不手際があったということで見逃されましたが、本来は閻魔殿の責任問題にもなりかねますまい」
「儂ならばいつでも代わるが。地獄ももう飽きた。ゼウスのように天界で美女に囲まれてのんびりしたいですな」
オオクニヌシのとりなしに閻魔は嫌味で返した。
「美女と言っても良いことばかりではありませんぞ。最近はヘラ様のご機嫌もあまり良くなく、とばっちりが私のような下々の者にも参りますからの」
ヘラの夫ゼウスに対する嫉妬によるヒステリーも最近は多いと聞く。下手に天界に行って二人の間に挟まれるのも面倒だ。
「取り敢えず、地獄の門の修繕は済みましたし、そろそろ囚人共の審判を始められてはいかがですか」
「そういたすしか仕方がありませんな」
閻魔は溜息をついて仕事に邁進することにした。
「ブラッドフォード・マーマだな」
一人目の囚人を呼び出す。
「閻魔様。今回私が殺された件については納得できません」
「はっ?貴様が地界で殺されたのは貴様の責任だろうが」
いきなりの囚人の喧嘩腰な反応に閻魔は切れそうになる。あのシャラ以来ロクな囚人が来ん。
閻魔は仕事初めから不機嫌になった。
「何をおっしゃるのですか。元々、私を殺したシャラはこの地獄の門を脱獄した囚人だ言うではありませんか。本来ならば地界にいなかった化け物です。管理に失敗された閻魔様の責任ではないですか」
いきなりの責任転嫁発現に、ついに閻魔も切れた。
「小僧!もう一度言ってみろ」
閻魔が一喝した。一応地獄の門を預かってからこの千年。脱獄を許したのはシャラのみ、それ以外の者は尽く従わせてきた地獄の閻魔なのである。威圧感は半端なかった。
その姿の前にブラッドフォードは何も話せなくなる。
後ろでそうだそうだと囃し立てていたブラッドフォードの部下たちも一瞬でしんとした。
「そもそも、今回のシャラの件は天界の主神ゼウス様が認められたことである。恨むならばシャラの娘クローディアを生贄にしたダレル王国側を恨め。そもそも貴様自身には戦場にて殺した兵士1536人の殺人罪が適用される」
「えっ、戦場での人殺しは合法では」
驚いてブラッドフォードが発言する。
「愚か者。貴様もシャラと同じことを申すのか。どこで殺そうが人殺しは人殺しじゃ」
「しかし、私は千人も斬り殺しておりませんが」
「貴様が指揮して殺しただろうが。当然その責任が指揮官にはある」
「そんな」
ブラッドフォードは絶句した。
「なら、1軍の将軍の罪はものすごく重いものになるのですか」
「当然じゃ。基本は無限地獄行きがいつも確定しておる」
諦めきれずに皇太子は言い募るが、閻魔は一顧だにしない。
「国家のためにやってそれはあんまりではないですか」
「何を言っておる。地界のルールはここでは適応せん。全ては神の定めたルールに則り処罰は決定されるのじゃ。1人殺せば1人分じゃ。それを命じても1人分じゃ」
「そんな馬鹿な」
ブラッドフォードは到底納得できなかった。
「次に生き返る時は気をつけるように」
そう言うと無限地獄行きのボタンを押す。
「ギャッ」
ブラッドフォードは納得行かないまま足元が崩れて無限地獄に落ちていった。
******************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
明日3話更新して完結となります。
「おのれ、シャラめ、もう許さん」
閻魔が拳を振り上げた。
「まあまあ、閻魔殿。シャラの件はゼウス様が復活をお約束されたというのもありますし、万が一連れ帰ってまた脱獄されると面倒なことになりますぞ。今回は天界にも不手際があったということで見逃されましたが、本来は閻魔殿の責任問題にもなりかねますまい」
「儂ならばいつでも代わるが。地獄ももう飽きた。ゼウスのように天界で美女に囲まれてのんびりしたいですな」
オオクニヌシのとりなしに閻魔は嫌味で返した。
「美女と言っても良いことばかりではありませんぞ。最近はヘラ様のご機嫌もあまり良くなく、とばっちりが私のような下々の者にも参りますからの」
ヘラの夫ゼウスに対する嫉妬によるヒステリーも最近は多いと聞く。下手に天界に行って二人の間に挟まれるのも面倒だ。
「取り敢えず、地獄の門の修繕は済みましたし、そろそろ囚人共の審判を始められてはいかがですか」
「そういたすしか仕方がありませんな」
閻魔は溜息をついて仕事に邁進することにした。
「ブラッドフォード・マーマだな」
一人目の囚人を呼び出す。
「閻魔様。今回私が殺された件については納得できません」
「はっ?貴様が地界で殺されたのは貴様の責任だろうが」
いきなりの囚人の喧嘩腰な反応に閻魔は切れそうになる。あのシャラ以来ロクな囚人が来ん。
閻魔は仕事初めから不機嫌になった。
「何をおっしゃるのですか。元々、私を殺したシャラはこの地獄の門を脱獄した囚人だ言うではありませんか。本来ならば地界にいなかった化け物です。管理に失敗された閻魔様の責任ではないですか」
いきなりの責任転嫁発現に、ついに閻魔も切れた。
「小僧!もう一度言ってみろ」
閻魔が一喝した。一応地獄の門を預かってからこの千年。脱獄を許したのはシャラのみ、それ以外の者は尽く従わせてきた地獄の閻魔なのである。威圧感は半端なかった。
その姿の前にブラッドフォードは何も話せなくなる。
後ろでそうだそうだと囃し立てていたブラッドフォードの部下たちも一瞬でしんとした。
「そもそも、今回のシャラの件は天界の主神ゼウス様が認められたことである。恨むならばシャラの娘クローディアを生贄にしたダレル王国側を恨め。そもそも貴様自身には戦場にて殺した兵士1536人の殺人罪が適用される」
「えっ、戦場での人殺しは合法では」
驚いてブラッドフォードが発言する。
「愚か者。貴様もシャラと同じことを申すのか。どこで殺そうが人殺しは人殺しじゃ」
「しかし、私は千人も斬り殺しておりませんが」
「貴様が指揮して殺しただろうが。当然その責任が指揮官にはある」
「そんな」
ブラッドフォードは絶句した。
「なら、1軍の将軍の罪はものすごく重いものになるのですか」
「当然じゃ。基本は無限地獄行きがいつも確定しておる」
諦めきれずに皇太子は言い募るが、閻魔は一顧だにしない。
「国家のためにやってそれはあんまりではないですか」
「何を言っておる。地界のルールはここでは適応せん。全ては神の定めたルールに則り処罰は決定されるのじゃ。1人殺せば1人分じゃ。それを命じても1人分じゃ」
「そんな馬鹿な」
ブラッドフォードは到底納得できなかった。
「次に生き返る時は気をつけるように」
そう言うと無限地獄行きのボタンを押す。
「ギャッ」
ブラッドフォードは納得行かないまま足元が崩れて無限地獄に落ちていった。
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
明日3話更新して完結となります。
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