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閑話 桜並木を帝国皇子と歩きました
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帝国からの申込みが正式に来て、私はフェルの婚約者になった。
うーん、何かフェルとは昔から一緒にいるので、婚約者と言っても今までと何が違うのって感じなんだけど。
今は4月。
そういえば恋人と一緒に行きたい所があったのを思い出した。
4月はフェルはいつも忙しくしていてそこに行った事は無かったのだ。
本来ならば辺境伯としてすぐにもオーバードルフに入らないといけないのだけど、無理言って1日だけ待ってもらった。
そして、早朝から厨房に無理言って作ってもらったものをもって、私はこちらも準備に忙しいフェルを伴って目的の場所に急いだ。
準備に忙しい中、ウンガーには、2時間だけ時間がほしいと言うと、散々嫌味を言われた。
「たまには良いじゃない」
私が言うと
「姫様はいつもじゃないですか」
と怒られてしまった。
それはフェルに言って欲しい。やたら二人の時間をフェルが取りたがるからだ。
私がいない分、あんたの好きにできるじゃない、とウンガーに思わないでもなかったが、それを言うと、またお小言の時間が増えそうで、無視して出てきた。
その目的の河原の土手には満開の桜が咲いていたのだ。
「きれい」
私はただ、その桜に見とれていた。
川原沿いは時間が早いからかまだ人通りは少なかった。
ゆっくりとフェルと手を繋いで歩く。
うーん、恋人とこの桜並木を歩いてみたかったのだ。
こうしているとフェルと恋人になったんだって実感できた。
私はギュッとフェルの手を繋いだ。
フェルがこちらを見た。
私たちは目を合わせた。
フェルの顔が近い。フェルの手が軽く腰に回されて、抱き寄せられる。
これはひょっとして生まれて初めてキスされるのだろうか。
私の胸はドキドキして破裂しそうだった。
フェルの唇が私の唇に触れようとした時だ。
私はフェルの頭上になにかの出現を感じて、
「えっ」
思わず止まってしまった。
そのフェルの上にヘルマンを連れたお姉様が転移してきのだ・・・・・
フェルは私の目の前でものの見事に二人の下敷きにされてしまった。
「姉上、どういう事ですか。せっかくエルと二人で良いところだったのに」
なんとか立上ったフェルが怒って言った。
「いやあ、悪い悪い」
全然悪くは思っていないであろうお姉様が棒読みで謝っている。
「ヘルマンが二人はキスするわけはないって賭けけてきたので、私はキスする方に賭けたのよ」
人のファーストキスを賭け事の対象にするな、私は思いっきり言いたかった。
でも、キスしそうだったのは本当だし、何も言えないで赤くなっていた。
「でも、キスしていなかったから俺の勝ちですよね」
ヘルマンが喜んで言った。
「えっ、何言っているのよ。まさにするところだったじゃない」
「でもしていないでしょ」
「ちょっと、二人共、今やりなさいよ」
お姉様は無茶を言う。
「そんなの人の前でできるわけ無いでしょ」
フェルが怒って言う。
「いや、私たちは離れて見ているから」
「良いです。僕らのことはほっておいて下さい」
フェルはお姉様達を無視して、私の手を取るとずんずん歩いていった。
「えっ、ちょっとお二人さん」
お姉様が呼びかけるが私たちは無視した。
本当にお姉様も、たちが悪い。せっかく生まれての初めてのファーストキスだったのに・・・・
私もぶすっとしていた。
少し歩くとベンチに出た。
いつもは満員なんだが、朝が早いからまだほとんど人はいなかった。
「少し休もうか」
フェルはそう言うとベンチの上にハンカチをしいてくれた。
うーん、今までは気にせずに座っていたけれど、恋人になると違うんだ。
私はちょっとだけ嬉しくなった。
そして、フェルに持ってきてもらった、荷物を解く。
中には花見団子と桜餅が入っていたのだ。
「これこれ、花より団子よね」
私は言ってしまって思わず口に手を当てた。この発言は絶対に恋人の前で入ってはいけないやつだ。
それを見てフェルが吹き出した。
「何、手で押さえているんだよ。何年の付き合いだと思っているんだ。そんなの判っているよ」フェルが笑って言った。
「うーん、でも恋人の前で言うのは違うと思うんだよね」
私が言うと、
「じゃあ食べるの止める?」
フェルが意地悪なことを言う。
そんな、私はがっかりした。
「無理でしょ」
そうフェルが言うと串を1本取った。
「えっ」
食べたそうに見た私の口の中にフェルが入れてくれる。
私は1つ食べた。
「うーん、美味しい」
その残りの団子にフェルが食べる。
残った1つは私の口に入れてくれた。
私は笑みを浮かべてもう一本の串を取ると最初はフェルの口の中に入れた。
そして、2つ目は私が食べる。
きれいな桜を見ながら、私たちは団子を食べさせあった。
まあ、キスは今度に取っておこう。
これからはずうーっとフェルと二人だし。
まあ、邪魔者は周りに多いけど。
ヘルマンに賭けで負けて悔しがっているお姉様が絶対にどこかで見ているはずだ。
気持ち良い風が吹いてきて、桜が舞った。
桜吹雪の中で肩を寄せ合って私たちはしばし佇んでいたのだ。
うーん、何かフェルとは昔から一緒にいるので、婚約者と言っても今までと何が違うのって感じなんだけど。
今は4月。
そういえば恋人と一緒に行きたい所があったのを思い出した。
4月はフェルはいつも忙しくしていてそこに行った事は無かったのだ。
本来ならば辺境伯としてすぐにもオーバードルフに入らないといけないのだけど、無理言って1日だけ待ってもらった。
そして、早朝から厨房に無理言って作ってもらったものをもって、私はこちらも準備に忙しいフェルを伴って目的の場所に急いだ。
準備に忙しい中、ウンガーには、2時間だけ時間がほしいと言うと、散々嫌味を言われた。
「たまには良いじゃない」
私が言うと
「姫様はいつもじゃないですか」
と怒られてしまった。
それはフェルに言って欲しい。やたら二人の時間をフェルが取りたがるからだ。
私がいない分、あんたの好きにできるじゃない、とウンガーに思わないでもなかったが、それを言うと、またお小言の時間が増えそうで、無視して出てきた。
その目的の河原の土手には満開の桜が咲いていたのだ。
「きれい」
私はただ、その桜に見とれていた。
川原沿いは時間が早いからかまだ人通りは少なかった。
ゆっくりとフェルと手を繋いで歩く。
うーん、恋人とこの桜並木を歩いてみたかったのだ。
こうしているとフェルと恋人になったんだって実感できた。
私はギュッとフェルの手を繋いだ。
フェルがこちらを見た。
私たちは目を合わせた。
フェルの顔が近い。フェルの手が軽く腰に回されて、抱き寄せられる。
これはひょっとして生まれて初めてキスされるのだろうか。
私の胸はドキドキして破裂しそうだった。
フェルの唇が私の唇に触れようとした時だ。
私はフェルの頭上になにかの出現を感じて、
「えっ」
思わず止まってしまった。
そのフェルの上にヘルマンを連れたお姉様が転移してきのだ・・・・・
フェルは私の目の前でものの見事に二人の下敷きにされてしまった。
「姉上、どういう事ですか。せっかくエルと二人で良いところだったのに」
なんとか立上ったフェルが怒って言った。
「いやあ、悪い悪い」
全然悪くは思っていないであろうお姉様が棒読みで謝っている。
「ヘルマンが二人はキスするわけはないって賭けけてきたので、私はキスする方に賭けたのよ」
人のファーストキスを賭け事の対象にするな、私は思いっきり言いたかった。
でも、キスしそうだったのは本当だし、何も言えないで赤くなっていた。
「でも、キスしていなかったから俺の勝ちですよね」
ヘルマンが喜んで言った。
「えっ、何言っているのよ。まさにするところだったじゃない」
「でもしていないでしょ」
「ちょっと、二人共、今やりなさいよ」
お姉様は無茶を言う。
「そんなの人の前でできるわけ無いでしょ」
フェルが怒って言う。
「いや、私たちは離れて見ているから」
「良いです。僕らのことはほっておいて下さい」
フェルはお姉様達を無視して、私の手を取るとずんずん歩いていった。
「えっ、ちょっとお二人さん」
お姉様が呼びかけるが私たちは無視した。
本当にお姉様も、たちが悪い。せっかく生まれての初めてのファーストキスだったのに・・・・
私もぶすっとしていた。
少し歩くとベンチに出た。
いつもは満員なんだが、朝が早いからまだほとんど人はいなかった。
「少し休もうか」
フェルはそう言うとベンチの上にハンカチをしいてくれた。
うーん、今までは気にせずに座っていたけれど、恋人になると違うんだ。
私はちょっとだけ嬉しくなった。
そして、フェルに持ってきてもらった、荷物を解く。
中には花見団子と桜餅が入っていたのだ。
「これこれ、花より団子よね」
私は言ってしまって思わず口に手を当てた。この発言は絶対に恋人の前で入ってはいけないやつだ。
それを見てフェルが吹き出した。
「何、手で押さえているんだよ。何年の付き合いだと思っているんだ。そんなの判っているよ」フェルが笑って言った。
「うーん、でも恋人の前で言うのは違うと思うんだよね」
私が言うと、
「じゃあ食べるの止める?」
フェルが意地悪なことを言う。
そんな、私はがっかりした。
「無理でしょ」
そうフェルが言うと串を1本取った。
「えっ」
食べたそうに見た私の口の中にフェルが入れてくれる。
私は1つ食べた。
「うーん、美味しい」
その残りの団子にフェルが食べる。
残った1つは私の口に入れてくれた。
私は笑みを浮かべてもう一本の串を取ると最初はフェルの口の中に入れた。
そして、2つ目は私が食べる。
きれいな桜を見ながら、私たちは団子を食べさせあった。
まあ、キスは今度に取っておこう。
これからはずうーっとフェルと二人だし。
まあ、邪魔者は周りに多いけど。
ヘルマンに賭けで負けて悔しがっているお姉様が絶対にどこかで見ているはずだ。
気持ち良い風が吹いてきて、桜が舞った。
桜吹雪の中で肩を寄せ合って私たちはしばし佇んでいたのだ。
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