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帝国皇子視点6 最後の乞食軍団に勝って、エルとの事を心配し始めました。

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翌日、エルは私は平身低頭しているウンガーから報告を受けていた。
プッツン切れていたエルだが、最後はウンガーに良いように丸め込まれていた。
あのチラシを見た結果王都は人っ子ひとりいなくなったらしい。結果が伴ったので、エルは何も言えなかったらしい。まあ、被害者が居なかったから良いんだけど。俺ならウンガーを1発や2発殴るところなんだが・・・・
エルは甘い。まあ、そこが可愛いところなんだけど・・・・。

「すげえーーー、さすが姫様の不能の力は偉大だな」
ヘルマンが更にエルの怒りに火を注いでいたが・・・・
ウンガーは結局お咎めなしだった。

元王都は本当に人っ子ひとりいなかった。

「うーん、何か釈然としない。血も涙もないお兄様やお姉様を怖れたのならいざしらず、私を怖れたってどういう事?」
エルがブツブツ怒っていた。

まあ、エルに逆らった者は尽く不能になっているので、それはそれで恐れるわな。
さすが戦神の宝剣と思わないまでもないけど、さすがの戦神も不能剣と呼ばれていると知ったらお墓の中で怒っているかもしれない。

「あっはっはっはっ、皆、エルの剣で不能になるのを怖れて逃げ出したのか」
「エル最高」
2巨頭は大声で笑っていた。

「まあ、この二人がエルに先を越されたと言って怒り出さなかっただけましか。笑い話ですんだし・・・・」
そう言ってエルを慰めたが、エルは何か納得していないみたいだった。

元王都には1週間もせずにまた人が戻ってきていた。

ウンガーがまたやってくれたみたいで、エルは怒っているが、まあ、これはいつものことだ。


そこへ、エルの昔の婚約者が軍を率いて迫っているとの報があった。

そうか、不能にされた王子が攻めてきたのか。
ちょうどよい。こいつには長年エルを取られたとショックを受けさせられて、本当に酷い目にあわされたのだ。幾晩寝られなかったことか。それなのにあっさりとエルに対して婚約破棄してくれて、それもゲフマンにエルを売ろうとしたなど、許せることではない。俺が切り捨ててやる。

俺は剣を掴んでいた。



第三騎士団を率いてエルと駆けつけた時、敵軍を見ておれはがっかりしたというかか驚いた。

それは軍と言うよりも剣を持った集団という感じで、100名もいなかったのだ。見た目はもうボロボロで、たった1週間しか経っていないのに、どうしたらこれだけボロボロになれるのかと言うほど汚らしい格好だった。それに見た目も覇気を感じられない。おそらくエルに不能にされた軍団なんだろう。やる気が見られなかった。おそらく他の兵士たちはエルを怖れて逃げ出したんだろう。
顔はやつれていて、食事もそんなに食べられていないのではないだろうか。

なんか、立っているだけでもやっとという集団なのだ。

でもその中で王太子一人が元気みたいだった。

「エルヴィーラ・ハインツェル。貴様らよくもやってくれたな」
一人元気な王太子が大声で話してきた。

「この反逆者共め。オーバードルフ王国王太子が成敗してくれるわ。俺と勝負しろ」
剣を抜いて、王太子が叫んでいた。

何か見ているだけで、もう死にそうな軍なんだけど。

それでもエルは相手をしてやろうとしていた。

俺は手でそれを制した。

「貴様なんぞ、エルの手を汚すまでもない。俺が一刀のもと斬捨ててやるよ」
俺は剣を構えた。そう言いつつも、なんだコイツらは。もはや軍と言うよりも野盗の集団で、装備もボロボロだった。大半の兵の目が死んでいるし、王太子の意地だけでここまで来たのだろう。
王太子自体、空元気、おそらく立っているのもやっとなんだろう。
もうこいつに対する恨みは見ていて可哀想になってしまった。
王太子は今でも既に不能なのだ。エルの宝剣とやると何が起こるか判らない。これ以上酷い目に合わせるのも忍びなかった。

「貴様が後ろにいるということは今回は帝国が示唆したのだな」
王太子は俺の憐情が判らなかいらしい。余計なことを言ってくれる。

「ほら、フェル、あんたがでてくるからこんな事言われるんじゃない」
エルが怒り出した。この王太子のボケナス、おれの憐れみが判らないのか。

俺達は適当に言葉をかわし、剣を構えた。

こいつ本人はまだ、王太子のつもりでいるらしい。

俺にはもう、今までの恨みつらみも無かった。あるのは憐れみのみだった。

一刀のもと地面に叩きつけてやった。それも峰打ちで。

王国の残党は王子が倒れたのを見て一瞬で全て降伏してきた。
というか、その場で全員がへたり込んでしまったのだ。

これが軍か。俺たちはそれを見て呆れてしまった。

「誰か、食事を恵んであげて」
仕方なしに、エルが命じていた。糧食を降参した兵士たちは貪るように食べていた。

何かこんな奴らと戦ってたかと思うと情けなくなったのだが・・・・

俺はそれよりもさっさとやらないといけないことを思い出していた。

そうだ。こんな奴らはどうでもいい。それよりもエルの気持ちをなんとしてでも自分の方に向けないと。

俺はどうしたら良いか、早速色々と悩みだした。







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