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国王視点2 建国秘話の秘話はとても恥ずかしい話でした。

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私は馬車を飛ばしに飛ばしてなんとか王都に帰り着いた。

しかし、そこには凄まじい爪痕が残っていた。

王都の城壁がところどころ崩れ落ち、竜巻が通り過ぎたように、建物が壊れていた。そして、それは王宮まで続いていた。

王宮のあったところは瓦礫と化していたのだ。私は呆然とした。

しかし、呆然としている暇など私にはない。私は臨時王宮にて、慌てて状況を確認しようとした。このままではまずい。私は父に申し訳が立たないと思った。


しかし、王宮に残っていた王妃を始めとする連中は何も判っていなかった。

王太子らは、エルヴィーラの雷によって打倒されていた。今は症状は落ち着いたが、男性機能が不能になっていた。近衛20名、兵士20名、側近等60名もだ。

「あなた、私はもうハインツェルを許せません」
帰るなり王妃が何か叫んでいた。

「エルヴィーラは我が息子を雷撃の上、不能にしたのですよ。直ちに処刑を命ずべきです」
「陛下、問責使を派遣したところ、ハインツェルは拒否してまいりました。それも事もあろうに問責使を脅迫してきたのですぞ。こうなれば辺境伯を取り潰すしかございますまい」
「愚か者!」
私は二人を一喝した。
二人はビクリとする。

王妃に続いて内務卿まで何を言っているのだ。なりふり構わず謝れと申しつけたのに。コイツラは本当に馬鹿だ。ハインツェルと戦った所でどうやって勝つのだ。そもそも、毎年のように戦闘しているのはハインツェル軍で、王国軍はここ100年戦闘らしい戦闘はしていないのだ。いるのは有力貴族の子弟で、戦闘はからきしダメ、良いのは見目ばかりなり、そんなボンボンの軍隊で百戦錬磨のハインツェル軍に勝てると本気で思っているのか。それにそもそも我が王家はハインツェルに逆らうわけにはいかなかった。

「内務卿。貴様にはハインツェルになりふり構わず謝罪せよと命じたはずだ。それを問責使を派遣するなどどういうつもりだ」
私はまず、内務卿を叱責した。

「いや、しかし、陛下。王太子殿下がこのような状態になられてのですぞ」
「何を言う。元々、それは王太子の自業自得であろうが」
「いや確かに、殿下にも悪いところはございましたが」
「貴様らエルヴィーラ嬢が外見は穏やかな令嬢だから甘く見ているが、彼女も武の名門、ハインツェルの直系ぞ。そのような人間に対して公の場で婚約破棄すればどうなる。もし相手がエルヴィーラ嬢ではなくてクラウディア嬢だったならどうなったと思うのだ」
「その場で燃やされておりましょうな」
躊躇なく内務卿は答えた。考えるまでもなく明白だった。

「当然、エルヴィーラ嬢も日々そのように言われて育てられてきたはずだ」
そう、どいつもこいつもエルヴィーラ嬢のおっとりした見た目に騙されているのだ。彼女を怒らせるととんでもないことになる。それが未だにこいつらには判っていなかった。
私の言葉に内務卿は黙ってしまった。

「しかし、あなた、相手は王太子です」
「何をふざけたことを申しておる。もともとエルヴィーラ嬢との婚約は嫌がるハインツェル側に無理やり王家が頼み込んで交わした婚約なのだぞ。理解していないのか」
「えっ、それは方便なのでは」
「愚か者。我が父は何度も何度も前辺境伯に頭を下げて無理やり結んできたのだと私にはっきり言われたわ」
「私はそんな事は聞いておりませんわ」
私の言葉に王妃が言う。そうだった。王家の恥だと王妃には言っていなかった。

「それは言わなかった私にも非がある」
私の言葉に王妃が黙る。

「しかし、何故前陛下はそこまでされたのですか」
内務卿が聞いてきた。

「本当に。そもそも、ハインツェル領内では嘘の建国記が流布しているとか。それがハインツェル側を助長させているのではないのですか」
王妃が文句を言ってきた。

「それが事実なのだよ」
「えっ」
私の言葉にみんなぎょっとした顔で私を見た。

「それが事実なのだ」
私は再度言う。

「陛下、宜しいのですか。皆の前で申して」
司法長官のテールマンが心配して声をかけてきた。

「構わん。非常事態だ」
私は言い切った。もはや形振り構っている余裕はないだろう。

「司法長官。今回の件、エルヴィーラ嬢を何か罪に問えるか」
「いえ、何も」
即座に司法長官は答えた。

「なんですって。あやつは王太子を不能にしたのですよ」
「そもそも、殿下はハインツェルの直系を、公の場で婚約破棄するという行為をなされています。秘密条項第三項に抵触、不敬罪が適用されます」
「はぁぁぁ、何故王家が適用されるのです。逆でしょう」
王妃がキレた。

「だから申したろう。建国記はハインツェル側が正しいのだ」
私は静かに言った。

「まさか」
「そんな」
皆唖然としていた。

「もともとこの国はハインツェルの始祖、戦神エルザベート様が建てられたのだ」
「いや、わが王家の始祖がエルザベートを使ったのでは」
「愚か者。戦神を呼び捨てにするな」
私の声に王妃はビクッとする。

「王家の書物でも全てエルザベート様は様付けで書かれているはずだ。もともと王家はエルザベート様の家臣だったのだ」
「そんな・・・・」
「元々、女神エルザベート様には2人の寵臣、我が始祖オーバードルフとハインツェルの二人が寵を競い合っていたらしい。その最終競争に我が始祖は破れたのだ。その時にエルザベート様にねだったのだ。『貴方様のことは諦めましょう。しかし、諦める代わりにこの国を治めさせて欲しい』と」
「そんなバカな」
「それでは王家は振られたから国王につけたと言うことですか」
王妃が唖然として言った。

「そう言う事だ」
頷く私もとても恥ずかしいことだった。
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