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帝国皇子がなにか告白しようとした時にお姉様が転移してきました
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帝国堂のパフェは本当に絶品だった。そこでお腹満帆に食べてしまった私は、これ以上お腹に入らないことを危惧して、歩くことにした。まだまだ食べたいものはたくさんあるのだ。
そう、歩くのは最高の腹減らしの運動なのだ。
通りはどこも活気にあふれていた。
噴水の前では恋人たちが、コインを後ろ向きに投げていた。
「ねえ、あれって」
そう、昔、フェルと二人で遊びでやっていたのだ。後ろ向きに噴水めがけて投げて、真ん中の円に入れば望みが叶うという奴を。
いつの間にかそれが定着してしまったらしい。
「これって、戦神様の頃からあるみたいよ」
彼女のほうが訳知り顔で言う。
いや違います。私とフェルが冗談でそう言い合っていたんです・・・・。とは到底言えなかった。
文房具のお店などを冷やかしながら歩いて、12時前にジルの店に来た。
ここは定食屋さんだ。昔から私が大好きな店でよく食べに来ていた。
「いらっしゃい!」
おばちゃんが大声で声をかけてきた。
名物おばちゃんだ。
「おばちゃん、相変わらず元気ね」
私が声をかける。
「おーっと、あんたはエルじゃないか。きれいになって」
私らのお忍びのお昼は必ずここで食べていた。
「ということは、そっちはその頃から過保護な兄ちゃんだね。あんたもメチャクチャ格好良くなって。その感じならもてるだろう」
「おばちゃん。俺はその時からエル一筋だ」
何か、フェルがとんでもないことを言っている。おばちゃんに合わせなくてもいいのに。
「そうだよのね。昔からあんたはエル一筋だもんね」
おばちゃんまでもが頷いている。
ま、何が一筋なのかわかんないけど。
「おばちゃん。いつもの定食ある」
「エルは芋三昧だったね」
「おばちゃん俺のは」
「はいはい、唐揚げ三昧もまだあるよ」
おばちゃんはそう言うと奥に戻っていった。
40人くらい座れる席の多くは既に埋まっている。
私達は窓側の定位置に座った。
ここは丘の上にあってここからは街並みがきれいに見えるのだ。
領都は昔来ていた頃よりも、活気にあふれていた。
最近特に人口の流入が激しいらしい。王国の他の地を捨ててこちらに入ってくる人間が多いらしいのだ。
「うーん、ここに座っていると領都に帰ってきたという実感が湧くわ」
私が伸びをしていった。
「そうだな。俺もこの店来るの3年ぶりか」
「私が王都に行く前に連れてきてくれたのよね」
「そうだったな」
フェルは感慨深げに周りを見ていた。
「どこに行っていたのかい? 全然来てくれなかったけど」
「王都に行っていたのよ」
「オーバードルフ王国のかい」
「そう」
おばちゃんの問に私が頷く。
「あっちは寂れているだろう。もうじきお館様が併合なさるみたいだよ」
「えっ、王国を」
「ああ、みんなそう言っているからね。併合したって利益はないけどって」
世間ではそのように言われているんだ。
「何でも向こうの王様がもう治めきれないんだろう。能力ないのに、いつまでも王様やっているから。まあ、もともと今の国王にはその器がなかったんじゃないのかい」
こんなの王都の奴らが聞いたら切れるしか無いと思うのだが、領都の皆の考えだった。
「はい、お待ち」
おばちゃんがアツアツを持ってきてくれた。私にはさつまいもづくしのお弁当が。フェルノは魚から野菜までの唐揚げ三昧だ。
それにプラス野菜サラダがついている。
「頂きます!」
私はさつまいもあげたのを口に含んだ。
「あっ、これ、この味よ」
私は熱々を口に入れてハフハフしながら食べる。
しばし無言で二人は食べた。
美味しいものを食べると無言になるというのは本当だ。
「あああ、食った食った」
店を出てフェルがお腹を押さえて言う。
「フェル、次は街の城壁に登りたい」
「どこから登る」
「城の横」
「了解」
私達は腹ごなしに適当に散歩しつつ、城壁のところに来た。
「これは姫様」
警備の兵に手をふると慌てて中に入れてくれた。
基本出来損ないの姫でも、兵士たちは皆私のことを知っている。一応歓迎してくれた。
私達は城壁を少し歩いた。
「うーん、ここから見るお城はめちゃくちゃキレイよね」
湖の光の中に城は聳え立っていた。
「あのう」
フェルが私を見て何か言おうとした。
「うん、どうかしたの?」
「いや、だから」
「だから何?」
私は不思議そうにフェルを見た。フェルが吃るなんて初めてだ。どうしたんだろう?
「ええい、もう、やけだ」
そこへいきなりフェルが跪いたのだ。
私は度肝を抜かれた。
「エル、俺は・・・・」
しかし、フェルはそれ以上話せなかった。
そこへいきなりお姉様が転移してきたのだ。跪いたフェルの上に。
「ギャ」
フェルが下敷きになって叫ぶ。
「大丈夫?」
「大丈夫なわけ無いでしょ」
「どうしたの? お姉様」
「王都から使者が来たのよ。で、すぐに城に帰ってくるようにですって」
お姉様の声に私達は慌てて帰ることにした。
何故かフェルはとても落ち込んでいた。
************************************************
タイミング最悪です・・・・・
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
お気に入り登録感想等いつもありがとうございます。
そう、歩くのは最高の腹減らしの運動なのだ。
通りはどこも活気にあふれていた。
噴水の前では恋人たちが、コインを後ろ向きに投げていた。
「ねえ、あれって」
そう、昔、フェルと二人で遊びでやっていたのだ。後ろ向きに噴水めがけて投げて、真ん中の円に入れば望みが叶うという奴を。
いつの間にかそれが定着してしまったらしい。
「これって、戦神様の頃からあるみたいよ」
彼女のほうが訳知り顔で言う。
いや違います。私とフェルが冗談でそう言い合っていたんです・・・・。とは到底言えなかった。
文房具のお店などを冷やかしながら歩いて、12時前にジルの店に来た。
ここは定食屋さんだ。昔から私が大好きな店でよく食べに来ていた。
「いらっしゃい!」
おばちゃんが大声で声をかけてきた。
名物おばちゃんだ。
「おばちゃん、相変わらず元気ね」
私が声をかける。
「おーっと、あんたはエルじゃないか。きれいになって」
私らのお忍びのお昼は必ずここで食べていた。
「ということは、そっちはその頃から過保護な兄ちゃんだね。あんたもメチャクチャ格好良くなって。その感じならもてるだろう」
「おばちゃん。俺はその時からエル一筋だ」
何か、フェルがとんでもないことを言っている。おばちゃんに合わせなくてもいいのに。
「そうだよのね。昔からあんたはエル一筋だもんね」
おばちゃんまでもが頷いている。
ま、何が一筋なのかわかんないけど。
「おばちゃん。いつもの定食ある」
「エルは芋三昧だったね」
「おばちゃん俺のは」
「はいはい、唐揚げ三昧もまだあるよ」
おばちゃんはそう言うと奥に戻っていった。
40人くらい座れる席の多くは既に埋まっている。
私達は窓側の定位置に座った。
ここは丘の上にあってここからは街並みがきれいに見えるのだ。
領都は昔来ていた頃よりも、活気にあふれていた。
最近特に人口の流入が激しいらしい。王国の他の地を捨ててこちらに入ってくる人間が多いらしいのだ。
「うーん、ここに座っていると領都に帰ってきたという実感が湧くわ」
私が伸びをしていった。
「そうだな。俺もこの店来るの3年ぶりか」
「私が王都に行く前に連れてきてくれたのよね」
「そうだったな」
フェルは感慨深げに周りを見ていた。
「どこに行っていたのかい? 全然来てくれなかったけど」
「王都に行っていたのよ」
「オーバードルフ王国のかい」
「そう」
おばちゃんの問に私が頷く。
「あっちは寂れているだろう。もうじきお館様が併合なさるみたいだよ」
「えっ、王国を」
「ああ、みんなそう言っているからね。併合したって利益はないけどって」
世間ではそのように言われているんだ。
「何でも向こうの王様がもう治めきれないんだろう。能力ないのに、いつまでも王様やっているから。まあ、もともと今の国王にはその器がなかったんじゃないのかい」
こんなの王都の奴らが聞いたら切れるしか無いと思うのだが、領都の皆の考えだった。
「はい、お待ち」
おばちゃんがアツアツを持ってきてくれた。私にはさつまいもづくしのお弁当が。フェルノは魚から野菜までの唐揚げ三昧だ。
それにプラス野菜サラダがついている。
「頂きます!」
私はさつまいもあげたのを口に含んだ。
「あっ、これ、この味よ」
私は熱々を口に入れてハフハフしながら食べる。
しばし無言で二人は食べた。
美味しいものを食べると無言になるというのは本当だ。
「あああ、食った食った」
店を出てフェルがお腹を押さえて言う。
「フェル、次は街の城壁に登りたい」
「どこから登る」
「城の横」
「了解」
私達は腹ごなしに適当に散歩しつつ、城壁のところに来た。
「これは姫様」
警備の兵に手をふると慌てて中に入れてくれた。
基本出来損ないの姫でも、兵士たちは皆私のことを知っている。一応歓迎してくれた。
私達は城壁を少し歩いた。
「うーん、ここから見るお城はめちゃくちゃキレイよね」
湖の光の中に城は聳え立っていた。
「あのう」
フェルが私を見て何か言おうとした。
「うん、どうかしたの?」
「いや、だから」
「だから何?」
私は不思議そうにフェルを見た。フェルが吃るなんて初めてだ。どうしたんだろう?
「ええい、もう、やけだ」
そこへいきなりフェルが跪いたのだ。
私は度肝を抜かれた。
「エル、俺は・・・・」
しかし、フェルはそれ以上話せなかった。
そこへいきなりお姉様が転移してきたのだ。跪いたフェルの上に。
「ギャ」
フェルが下敷きになって叫ぶ。
「大丈夫?」
「大丈夫なわけ無いでしょ」
「どうしたの? お姉様」
「王都から使者が来たのよ。で、すぐに城に帰ってくるようにですって」
お姉様の声に私達は慌てて帰ることにした。
何故かフェルはとても落ち込んでいた。
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