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帝国の皇女殿下は鏡の中にいました

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「転移準備」
中に入ると次々に指示確認する魔道士達の声が響いてきた。

「座標合わせ終了。目的地・・・・王宮・中庭・臨時転移門」
「王宮転移門より承諾あり」
「転移用意」
「カウントダウン開始します」
「5,4,3,2,1、転移」

その瞬間凄まじい力が体にかかった。地の底に引きずり込まれそうに感じた。

なんかお腹がどっかへ持っていかれそうだった。

周りが真っ白にホワイトアウトする。



そして、気づいた時はふわっと石畳に降り立っていた。

ここは先程の部屋に比べると狭かった。

王都のほうがチャチ、いや、でもなんか王宮とかいう不吉な言葉を聞いたような気もした。

「転移終了」
アナウンスが終わり、扉が開けられた。

外に出ると目の前には広場があった。

「オーレリア様。お待ちしておりました」
私の目の前には10名ほどの侍女と思しき人々がいて私に向かって礼をしてくれた。

えっ、やっぱり王宮に転移している? これって・・・・

私は慌てて剣のおじちゃんを見た。

「リア様。彼女はリア様付きの侍女ディアナです」
「まあ、あなたアリシアの娘なの。見た感じが本当にそっくりだわ」
「えっ、ディアナさん、母を知っているんですか」
私はディアナさんが母の知り合いだと知って嬉しくなった。でも、なんで王宮にいるのか聞きそびれてしまった。

「帝国学園で同じクラスだったのよ。あの子元気にしている?」
「元気にはしていると思いますよ。最近娘なんてほっておいて遊び歩いています」
「ま、あの子らしいわよね」
ディアナさんは笑って言った。母は昔からあんな感じだったんだ。


「では、リア様。私は少し野暮用がありまして、1時間ばかり外します。後はディアナ、よろしく頼む」
「えっ」
「さ、リア様、どうぞこちらに」
私はちょろいと自分でも思う。なんか誤魔化されてそのまま大きな部屋に連れて行かれてしまった。


「さ、リア様。長旅でお疲れでしょう。本来ならばお風呂に入ってもらって旅塵を落として頂けるのですが、今日はお時間がないとのことで、服装だけ替えいただければと」
「えっ、衣装替えるんですか。まだきれいなんですけど」
私は驚いて聞いた。

「ま、本当にアリシアそっくりだこと。まあまあ、ここはディアナに任せて下さい」
そして、あっという間に服を脱がされて着替えさせられていた。
ん、でもこれ、プリシラが着るようなお貴族様の服だ。
なんかそれよりも、もっと立派な服のような気がするんだけど。
なんでこんな服来なければならないのだろう?

「あのう、ディアナさん。この衣装って皇女様が着るみたいで私にはもったいないんですけど」
「えっ・・・・・まあ、リア様、そのようなことはございませんわ。とてもお似合いです」
ディアナさんは私の言葉に一瞬戸惑っていた。周りを見てパトリシアを見ると慌てて言葉を続けたけど、なんか変だ。

でも、この衣装ピンクのフリフリ衣装でなんか、ちょっと恥ずかしいような気がするんだけど、気のせいかな。

プリシラとかはもう少し落ち着いた感じの衣装だったんだけど。私が子供っぽいからだろうか・・・・。

皇女と言えば皇女様がいるんだった、この王宮には。
でも、そんな所に恋敵の私が来て良かったんだろうか。
私は急に居心地が悪くなった。考えたら、うまいこと剣のおじちゃんに誤魔化されてここまで来たような気がする。
そもそも、もし私が皇女ならば恋敵の平民なんかに会えのは嫌だ。

それに考えたら世間には意地悪な皇女様とかもいて、平民の恋敵をさんざんいびって楽しむとかいうのをどこかで聞いたことがあるような。

そうだ、母がよく読み聞かせで聞かせてくれたのだ。でも、その子はいじめてくる皇女をたしかしばいていたような、今から考えるとなんともすごい話だった。
よくよく考えるに、母の聞かせてくれた話はこんな話が多くて、大体いじめてくる高貴な人を平民の女の子がやっつけるのだ。
普通の貴族社会ではありえない話じゃないか。考えたら小さい時からさんざんそんな話を聞かされてきたから、レベッカとかコニーとかのお貴族様に平気で言い返したり、仕返ししたり出来るんではないだろうか。普通は畏れ多いとか感じるのに、全く感じないから。

最も我が家は恐怖の元は母だから、貴族なんて、全然口だけで怖くないのだけど。
だって母は本当に怖くって、小さな私相手にも平気でしばい来たし、その自衛用に障壁が完璧になったのかもしれないが。そもそも母は、貴族相手には平気で攻撃系魔術を使うのだ。怪我したらその後ポーション使って治していたが・・・・。

小さい時から母に攻撃される高位貴族を見慣れているから、だから高位貴族見てもびくともしないのかもしれない。

帝国の皇子見ても別にって感じだったし、だって母のお気に入りの話が、悪逆非道の帝国の皇帝とか皇子を正義の魔女がボコボコにする話なのだ。それがたまに正義の騎士に変わったりしたが。第一皇子を見てもこいつがいつもボコボコにされている皇子かって感じだっのかもしれない。


でも、せっかくここまで来たのなら皇女殿下に会っておいたほうが良いのかも・・・・
どんな女がカートの隣に座るのか気になるし、もう二度とチャンスはないんだから。

「オーレリア様。とてもお美しいです」
髪を結い終えたディアナさんが褒めてくれた。

「いやあ、猫にも小判てすかね。ディアナさんがうまく着せてくれるから」
「そんな事はありませんよ。お若い方の着付けをするのは久しぶりですから。なんか、アリシアが帰ってきたみたいで、とても嬉しいのです」
「宜しいですか。ルーカス様が来られていますが」
別の侍女が声をかけてきた。

その言葉に私は頷いた。

「これはリア様。とてもお美しい」
剣のおじちゃんが手放しで褒めてくれた。

「で、おじちゃん。こんなに着飾って私はどうすればよいの?」
私は剣のおじちゃんに聞いた。

「いえ、リア様は普通しておられれば宜しいのです」
「そんなわけには行かないでしょう。こんな服を着させて。誰かに会えってことよね」
「さすがリア様。お察しが良いですな」
「皇帝陛下にはお会いしたくありません」
私は剣のおじちゃんの機先を制した。

「えっ」
剣のおじちゃんは残念そうな顔をしている。

「でも、せっかくきちんとした服装になったのですから、出来たら皇女殿下にはお会いしておきたいです」
「宜しいのですか」
驚いて剣のおじちゃんが聞いてきた。
でも、なんか周りの視線が微妙だ。どういう事だ?

「二度とお会いできないかもしれませんし、最初にどんなお方かお目見えしたいです」
「そうですな。それが一番早いかもしれませんな。リア様。ではこちらにどうぞ」
部屋の外に案内されると思った私は、部屋の奥の方に案内される。

そこにはカーテンが引いてあった。

ひょっとしてこの奥にいらっしゃるとか。まさか・・・・
隠れてみていらっしゃったのか・・・・・

「覚悟は宜しいですか」
覚悟ってなんだ。やっぱり会うとなにかあるというのだろうか。

私の心臓は早鐘のように早くなっていた。

そして、剣のおじちゃんはカーテンを勢いよく開けたのだ。

でも、そこには別の部屋などではなくて、巨大な鏡の中に戸惑っているきれいなお姫様がいた。


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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
続きは明朝です。
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