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家に帰ったら帝国の剣聖が土下座していました
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私は馬車に揺られていた。
ガタゴトガタゴト
馬車が走っている。
馬車の中は私一人だ。
剣のおじちゃんは私に気を使ってくれて一人にしてくれたのだ。
家の前で、心配して家の中までついてきてくれようとしたプリシラとは別れた。
一人で泣きたい気分だったのだ。
それに、プリシラはこのブライトン王国の大貴族の公爵令嬢だ。
彼女の付き合っているお相手はカートの、いや第一王子殿下の側近のメルヴィン様だ。彼女は今後も王族方と仲良くしていかなければならないのだ。
それにプリシラのお父様のアボット公爵も帝国の皇女を押しているのだ。
いつまでも私についていて良い人ではない。
元々私が仲良く名前を呼び捨てになんてしてはいけない人なのだ。もっとも、Sクラスのワイト侯爵家のレベッカも、最近は3年生の帝国との国境を守っているヒューズ侯爵家のコニーも呼び捨てだったが・・・・。
本来ならば、平民の私はヨーク男爵家のベッキー様とかベンフィールド子爵家のザカリー様とかお呼びしないといけないのだ。
そういつぞや言ったら、気持ち悪いから止めてくれとベッキーに言われ、「そんな事されたらこちらも学校の影の支配者オーレリア様とお呼びいただきましょうか」とザカリーにまで言われたのだが・・・・影の支配者ってなんだ?
ベッキーにしても、家は商会をしていて、この王国で商売をしていくには、私と親しくしていてはいけないだろう。何しろ私は帝国の皇女には恋敵認定されるのだ。両国の王族に睨まれて商売は出来ないだろう。
私はこの時、本当に参っていたのだと思う。だって、いつもなら王族のことなんて全く気にしていなかったのに。というか、平然と王族に反する行為をしておいて、今更だったのだが・・・・・。いつもの自分らしく無く、自らの行動を反省していたのだ。
私はこの国にいてはいけないのかもしれない。
それにこの国にいて、カートと他の女が親しくしているのを見るのは嫌だ。
王子の動向、ひいては未来の国王一家の動向は、いくら私が王族が嫌いだと言っても自然に入ってくるはずだ。
そんなの嫌だ。耐えられない。
私はこの国から出ていこうと思った。
そう決心して家の扉を開けたとたんだ。
こちらに向かって土下座している剣のおじちゃんを見つけたのだ。
「えっ」
私はびっくりした。
その後ろで呆然として突っ立っているハンスとラモーナを見つけたので、目で問うと首を傾けられた。
「ど、どうしたの剣のおじちゃん?」
やむを得ず、私は聞いた。
「この度の件、誠に申し訳ありません」
おじちゃんが謝ってきた。
「ま、何のことか判んないけど、取り敢えず、手を上げて」
「お許し頂けますか」
ぱっと喜色を浮かべて剣のおじちゃんが言った。
「えっ、いや、だから何のことか判らないけど、とりあえず、座ってよ」
本当は自分一人で泣きたい気分だったんだけど、いきなりのことでドキモを抜かれて、涙が、吹き飛んでしまったのだ。取り敢えず席に座ってもらった。こんなのが皆に知れたら、剣聖ですら土下座させた破壊女なんて二つ名が増えかねない。
私達の前に、ラモーナが紅茶を入れてくれた。
一口口に含む。
「美味しい」
ラモーナは紅茶を入れる腕も凄い。味なんて関係ないって思う私でも美味しいと感じてしまった。
「美味しいですな。さすが、エリザベス様の下で修行されただけはおありで」
剣のおじちゃんも笑顔で言ってくれた。私はほっとした。
「で、おじちゃん、お話って何?」
その途端ルーカスさんは真面目な顔に戻って、また頭を下げてきたのだ。
「この度の件、誠に申し訳ありません」
また、振り出しに戻った。
「いや、だから何のことなの?」
「重ね重ね申し訳ありません」
「いや、だから」
「本当に申し訳ありません」
「いや、ちょっと剣のおじちゃん。もう止めてよ」
「申し訳ありません」
埒が明かない。
私は止むを得ず、ハンスを部屋の端に引っ張っていって聞いた。
「ハンス、どういうことだと思う?」
「お前が泣いていた件だと思う」
「私が泣いていた? なんで知っているのよ」
「いや、お前の目を見れば判るよ。帝国の皇女がカートの婚約者に決まった件だと思うぞ」
「ああ、剣のおじちゃん帝国の人だからね」
私はやっと納得した。
しかし、ハンスまで王子の婚約者が決まった事を知っている。というかこいつもカートが王子だと知っていたんだ! 私は白い目でハンスを睨み付けた。ハンスは少したじろいだが、それだけだ。こいつはいつもそうだ。私は言いたい事は色々あったが、まずは剣のおじちゃんだ。
「おじちゃん。帝国の皇女殿下の件?」
私は椅子に戻るとおじちゃんに聞いた。
「本当になんとお詫び申していいか」
「でも、おじちゃんが決めたわけではないでしょ」
「それはそうですが、皇帝も今回の件は預かり知らぬところで動いておりまして、今回の件を受けて皇帝も激怒いたしまして、直ちに大使を南極送りにいたしました」
「えっ」
私は剣のおじちゃんが言っていることがよく判らなかった。南極って南の伝説の大陸で、確か氷に覆われていて、人は住んでいないんじゃなかったっけ。
「皇帝陛下が知らなかったって事は、王女様の婚姻の話なんて当初から無かったってこと」
「皇帝としてはどこへも嫁にやりたくないと申しておりまして」
えっ、ひょっとしてカートと帝国の皇女の件は端から無いということ・・・・。私は一瞬嬉しくなった。しかし、次の瞬間、カートが王国の第一王子で将来はこの国の国王になることが思い出された。そうだ、いずれ、カートの横には誰か私以外の人がつくのだ。
私の頭の中がぱーーーっと明るくなって、また暗くなった。
「リア様。今回の件は色々私どもがご迷惑をおかけいたしました。このまま国内におられても色々周りがうるさいでしょう。もし、よろしければ我が帝国に遊びに来られませんか」
いきなり剣のおじちゃんが昔私が断ったことを蒸し返してきた。
「えっ、でも」
「気分転換されたらまたらご気分も晴れるかと存じますが」
それは確かにそうだが、連れて行かれたらろくなことになら無いような。母も怒りそうだし・・・・
「うーん、でも」
「今回はお母様の許可も得ております。お母様が昔過ごされたところなどよろしければご案内させていただきますが」
えっ、母も納得しているの?あの母が?
「本当に! あの母が?」
「はい。アリシア様もやっと認めて頂きまして」
「でも、剣のおじちゃんもお忙しいでしょう」
「私が出来ないところは他のものに案内させます。無償が嫌だと申されるのでしたら、そうですな。貴重なリア様のポーションを少しいただければ」
「そんなのでいいの」
「リア様のポーションがいただければ言うことはございません」
「判った。本当に良いの?」
「はいっ、是非とも」
ちょろい私はあっさりと剣のおじちゃんに付いていくことにした。
どのみちどこかに行こうとしていたし、母が納得しているのならば、帝国でも良いかと言う軽い気持ちだった。
それが間違いだったと気づいたのは帝国に行ってからだった。
**************************************************
皆さん、ここまで読んで頂いてありがとうございます。
これから結末まで怒涛のごとく書いていく予定です。
是非ともお楽しみ下さい。
ガタゴトガタゴト
馬車が走っている。
馬車の中は私一人だ。
剣のおじちゃんは私に気を使ってくれて一人にしてくれたのだ。
家の前で、心配して家の中までついてきてくれようとしたプリシラとは別れた。
一人で泣きたい気分だったのだ。
それに、プリシラはこのブライトン王国の大貴族の公爵令嬢だ。
彼女の付き合っているお相手はカートの、いや第一王子殿下の側近のメルヴィン様だ。彼女は今後も王族方と仲良くしていかなければならないのだ。
それにプリシラのお父様のアボット公爵も帝国の皇女を押しているのだ。
いつまでも私についていて良い人ではない。
元々私が仲良く名前を呼び捨てになんてしてはいけない人なのだ。もっとも、Sクラスのワイト侯爵家のレベッカも、最近は3年生の帝国との国境を守っているヒューズ侯爵家のコニーも呼び捨てだったが・・・・。
本来ならば、平民の私はヨーク男爵家のベッキー様とかベンフィールド子爵家のザカリー様とかお呼びしないといけないのだ。
そういつぞや言ったら、気持ち悪いから止めてくれとベッキーに言われ、「そんな事されたらこちらも学校の影の支配者オーレリア様とお呼びいただきましょうか」とザカリーにまで言われたのだが・・・・影の支配者ってなんだ?
ベッキーにしても、家は商会をしていて、この王国で商売をしていくには、私と親しくしていてはいけないだろう。何しろ私は帝国の皇女には恋敵認定されるのだ。両国の王族に睨まれて商売は出来ないだろう。
私はこの時、本当に参っていたのだと思う。だって、いつもなら王族のことなんて全く気にしていなかったのに。というか、平然と王族に反する行為をしておいて、今更だったのだが・・・・・。いつもの自分らしく無く、自らの行動を反省していたのだ。
私はこの国にいてはいけないのかもしれない。
それにこの国にいて、カートと他の女が親しくしているのを見るのは嫌だ。
王子の動向、ひいては未来の国王一家の動向は、いくら私が王族が嫌いだと言っても自然に入ってくるはずだ。
そんなの嫌だ。耐えられない。
私はこの国から出ていこうと思った。
そう決心して家の扉を開けたとたんだ。
こちらに向かって土下座している剣のおじちゃんを見つけたのだ。
「えっ」
私はびっくりした。
その後ろで呆然として突っ立っているハンスとラモーナを見つけたので、目で問うと首を傾けられた。
「ど、どうしたの剣のおじちゃん?」
やむを得ず、私は聞いた。
「この度の件、誠に申し訳ありません」
おじちゃんが謝ってきた。
「ま、何のことか判んないけど、取り敢えず、手を上げて」
「お許し頂けますか」
ぱっと喜色を浮かべて剣のおじちゃんが言った。
「えっ、いや、だから何のことか判らないけど、とりあえず、座ってよ」
本当は自分一人で泣きたい気分だったんだけど、いきなりのことでドキモを抜かれて、涙が、吹き飛んでしまったのだ。取り敢えず席に座ってもらった。こんなのが皆に知れたら、剣聖ですら土下座させた破壊女なんて二つ名が増えかねない。
私達の前に、ラモーナが紅茶を入れてくれた。
一口口に含む。
「美味しい」
ラモーナは紅茶を入れる腕も凄い。味なんて関係ないって思う私でも美味しいと感じてしまった。
「美味しいですな。さすが、エリザベス様の下で修行されただけはおありで」
剣のおじちゃんも笑顔で言ってくれた。私はほっとした。
「で、おじちゃん、お話って何?」
その途端ルーカスさんは真面目な顔に戻って、また頭を下げてきたのだ。
「この度の件、誠に申し訳ありません」
また、振り出しに戻った。
「いや、だから何のことなの?」
「重ね重ね申し訳ありません」
「いや、だから」
「本当に申し訳ありません」
「いや、ちょっと剣のおじちゃん。もう止めてよ」
「申し訳ありません」
埒が明かない。
私は止むを得ず、ハンスを部屋の端に引っ張っていって聞いた。
「ハンス、どういうことだと思う?」
「お前が泣いていた件だと思う」
「私が泣いていた? なんで知っているのよ」
「いや、お前の目を見れば判るよ。帝国の皇女がカートの婚約者に決まった件だと思うぞ」
「ああ、剣のおじちゃん帝国の人だからね」
私はやっと納得した。
しかし、ハンスまで王子の婚約者が決まった事を知っている。というかこいつもカートが王子だと知っていたんだ! 私は白い目でハンスを睨み付けた。ハンスは少したじろいだが、それだけだ。こいつはいつもそうだ。私は言いたい事は色々あったが、まずは剣のおじちゃんだ。
「おじちゃん。帝国の皇女殿下の件?」
私は椅子に戻るとおじちゃんに聞いた。
「本当になんとお詫び申していいか」
「でも、おじちゃんが決めたわけではないでしょ」
「それはそうですが、皇帝も今回の件は預かり知らぬところで動いておりまして、今回の件を受けて皇帝も激怒いたしまして、直ちに大使を南極送りにいたしました」
「えっ」
私は剣のおじちゃんが言っていることがよく判らなかった。南極って南の伝説の大陸で、確か氷に覆われていて、人は住んでいないんじゃなかったっけ。
「皇帝陛下が知らなかったって事は、王女様の婚姻の話なんて当初から無かったってこと」
「皇帝としてはどこへも嫁にやりたくないと申しておりまして」
えっ、ひょっとしてカートと帝国の皇女の件は端から無いということ・・・・。私は一瞬嬉しくなった。しかし、次の瞬間、カートが王国の第一王子で将来はこの国の国王になることが思い出された。そうだ、いずれ、カートの横には誰か私以外の人がつくのだ。
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「はいっ、是非とも」
ちょろい私はあっさりと剣のおじちゃんに付いていくことにした。
どのみちどこかに行こうとしていたし、母が納得しているのならば、帝国でも良いかと言う軽い気持ちだった。
それが間違いだったと気づいたのは帝国に行ってからだった。
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皆さん、ここまで読んで頂いてありがとうございます。
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