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王妃のお茶会2 騎士の公爵令息がついてきてくれようとしましたが、近衛騎士団長に邪魔されました

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「よう、リア嬢」
前から聞き覚えのある大きな声がした。

「あっ、メイナードさん」
私は思わず手を振った。これはラッキーだ。

昔、私の特級もどきポーションで治した第一号の人で、セドリックのお兄さんだ。

「うそ」
「ウィンチェスター公爵家のメイナード様よ」
ブリトニーとドロシアが声を上げた。
流石に二人は上位貴族は覚えているらしい。もっともメイナードさんはイケメンで優しいし、貴族の令嬢たちには人気が高いはずだ。


「なんだ、この物々しい軍団は?」
呆れてメイナードさんが言ってくれた。

「私達これから王妃様のお茶会にお呼ばれしているんです。そのお出迎えに来ていただいたんですけど、20名もいらっしゃるって、やっぱり変ですよね」
私がメイナードさんに言う。周りの近衛たちが睨みつけるが、そんなので私はびくともしない。

まあ、20名くらい全然大したことはないのだが、いざという時にクラスメイトが40名もいるとそれを守りながら20名相手するのは大変なのだ。


「メイナード様。困ります」
マイクさんが困って言って来た。

「学生を連れて行くのに20名も近衛を貼り付けるなんて、近衛は余程暇なのか」
「貴殿につべこべ言われる筋合いはない」
近衛の一人が言った。

「ほう、貴様、第1師団に配属されたいと見える」
「何?」
「私は今回王弟殿下の命でここにいる。ついでに2、3人スカウトしてこいと言われているんだ。王宮がそんなに暇なら、貴殿には是非とも北方警備に携わってほしいね」

「・・・・」
男はそれきり黙ってしまった。

そらあそうだろう。第一騎士団の守る北方は侵略してくる他民族に対して常時戦闘状態にあり、死傷者も多々出ているのだ。一番死傷率の高い騎士団と言えた。こんな近衛なんて生易しい現場ではなかった。そこに配属されるとなるのは近衛の連中は忌避したいだろう。

「マイク君。王宮内で20名も近衛がつくなど仰々しすぎるだろう。半分は返し給え」
メイナード様が言う。

「し、しかし」
「代わりに私がリア嬢に付いて行こう」
メイナード様は私がしてほしいことを言ってくれた。

「宜しいんですか」
一応聞いてみる。ついてきてくれないと困るけど、確認は大事だ。

「別に陛下への報告など少しくらい遅れても構わんよ」
メイナード様はとんでもない事を言ってきた。

「いや、それは流石にまずいのでは」
マイクさんが確認する。

「我軍にとって最重要課題はリア嬢の安全だ。そこの近衛共は判っていないようだが」
ギロリとメイナードさんが近衛兵を見渡した。

皆鋭い眼光に怯む。

「それは言い過ぎではないですか。そこまでの重要性は私には無いと思いますけど」
私が否定した時だ。

「何を言われるのですか。リア嬢。あなたは私達の命の恩人なのです。そこの近衛共は戦場に立ってないから平然としていられるのだ。リア嬢がポーションを作られるまでは、言いたくはないが、あの気まぐれな破壊の魔女のポーションを飲んでいたのだ。貴様ら判るか。3回に1回は副作用に苦しくて七転八倒するポーションなのだぞ。おまえ、死にかけの時に七転八倒してみろ、どうなると思う」
メイナード様はマイクさんに噛み付いた。

「そらあ、死んでしまうのでは」
「そうだ。昔はそれで死んだやつもいたのだ。リア嬢が普通に作ってくれるようになってからだぞ。我軍で負傷してもまともなポーションが飲めるようになったのは。
それと、何でも噂では近衛が帝国のローマン商会のポーションを購入しようとしているそうだが、1つ言っておいてややろう。ローマン商会のポーションは薄められているのだぞ。効き目はリア嬢のポーションの10分の1だ。はっきり言ってあれはまがい物だぞ。前線で使ってひどい目にあった。
貴様ら我軍が安心して任務に当たれるのは、全てリア嬢が我々の要求するぶんだけポーションを作って渡していただけるからだ。それが貴様ら近衛は判っているのか。そもそもだな・・・・」

「あのう、メイナード様。あまり貴方様もお時間がないようですし、そろそろ妃殿下の所に参りませんと」
アビゲイル先生がメイナードを止めてくれた。

そうだ。メイナード様は私を褒めすぎるのが玉に瑕なのだ。たしかに12歳の時に作った特級まがいポーションでメイナード様を治したのは事実なのだが、もう4年も前の話だし、そこまで褒めてもらわなくても、普通に作るし。
しかし、母は酷いことをしていたのだなと私は呆れた。ポーション飲んで七転八倒するってどういう事? いくら自分があまり作りたくないからってそんな副作用するもの混ぜるなんて酷すぎる。


まあ、メイナード様が一緒に来ていただけるなら、いざとなればメイナード様に近衛の牽制をしてもらって、私が対処すれば良いだろう。私は安心した。

しかし、中庭の入り口でダニエル・オルコット近衛騎士団長が待っていたのだ。

彼はテレンスの父で王妃の兄だ。現侯爵でもある。

「これはこれはアビゲイル先生。ようこそお出でいただきました」
騎士団長が迎え入れた。

「王妃様が中でお待ちです。ところでメイナード君。陛下がお探しだったが・・・」
「ちぇっ」
メイナード様が舌打ちした。

「すぐに報告にあがったほうが良いと思うぞ」
「判りました」
メイナード様は私の知り合いのデミアンを残して報告に行った。
騎士団長がニヤリと笑うのが見えた。


「アビゲイル先生」
後ろから係官が走ってきた。

「どうされたのですか」
「すいません。学園から至急の連絡が入っています」
係官が息せき切って言った。

「何でも非常事態だそうで」
「しかし、」
「非常事態ならば仕方がないでしょう。ここは私がとりなしておきます」
近衛師団長が促す。

「よろしくおねがいします」
戸惑ったアビゲイル先生だが、慌ててついて行った。

えええ!

保護者が一人もいなくなったじゃない。
いよいよやばくなってきた。

私達は仕方無しに騎士団長について中に入ろうとした。

************************************************

ついに味方もなしに41人は王妃の前に連れ出されます。
リアの運命や如何に
続きは明朝です。
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