106 / 144
王妃のお茶会2 騎士の公爵令息がついてきてくれようとしましたが、近衛騎士団長に邪魔されました
しおりを挟む
「よう、リア嬢」
前から聞き覚えのある大きな声がした。
「あっ、メイナードさん」
私は思わず手を振った。これはラッキーだ。
昔、私の特級もどきポーションで治した第一号の人で、セドリックのお兄さんだ。
「うそ」
「ウィンチェスター公爵家のメイナード様よ」
ブリトニーとドロシアが声を上げた。
流石に二人は上位貴族は覚えているらしい。もっともメイナードさんはイケメンで優しいし、貴族の令嬢たちには人気が高いはずだ。
「なんだ、この物々しい軍団は?」
呆れてメイナードさんが言ってくれた。
「私達これから王妃様のお茶会にお呼ばれしているんです。そのお出迎えに来ていただいたんですけど、20名もいらっしゃるって、やっぱり変ですよね」
私がメイナードさんに言う。周りの近衛たちが睨みつけるが、そんなので私はびくともしない。
まあ、20名くらい全然大したことはないのだが、いざという時にクラスメイトが40名もいるとそれを守りながら20名相手するのは大変なのだ。
「メイナード様。困ります」
マイクさんが困って言って来た。
「学生を連れて行くのに20名も近衛を貼り付けるなんて、近衛は余程暇なのか」
「貴殿につべこべ言われる筋合いはない」
近衛の一人が言った。
「ほう、貴様、第1師団に配属されたいと見える」
「何?」
「私は今回王弟殿下の命でここにいる。ついでに2、3人スカウトしてこいと言われているんだ。王宮がそんなに暇なら、貴殿には是非とも北方警備に携わってほしいね」
「・・・・」
男はそれきり黙ってしまった。
そらあそうだろう。第一騎士団の守る北方は侵略してくる他民族に対して常時戦闘状態にあり、死傷者も多々出ているのだ。一番死傷率の高い騎士団と言えた。こんな近衛なんて生易しい現場ではなかった。そこに配属されるとなるのは近衛の連中は忌避したいだろう。
「マイク君。王宮内で20名も近衛がつくなど仰々しすぎるだろう。半分は返し給え」
メイナード様が言う。
「し、しかし」
「代わりに私がリア嬢に付いて行こう」
メイナード様は私がしてほしいことを言ってくれた。
「宜しいんですか」
一応聞いてみる。ついてきてくれないと困るけど、確認は大事だ。
「別に陛下への報告など少しくらい遅れても構わんよ」
メイナード様はとんでもない事を言ってきた。
「いや、それは流石にまずいのでは」
マイクさんが確認する。
「我軍にとって最重要課題はリア嬢の安全だ。そこの近衛共は判っていないようだが」
ギロリとメイナードさんが近衛兵を見渡した。
皆鋭い眼光に怯む。
「それは言い過ぎではないですか。そこまでの重要性は私には無いと思いますけど」
私が否定した時だ。
「何を言われるのですか。リア嬢。あなたは私達の命の恩人なのです。そこの近衛共は戦場に立ってないから平然としていられるのだ。リア嬢がポーションを作られるまでは、言いたくはないが、あの気まぐれな破壊の魔女のポーションを飲んでいたのだ。貴様ら判るか。3回に1回は副作用に苦しくて七転八倒するポーションなのだぞ。おまえ、死にかけの時に七転八倒してみろ、どうなると思う」
メイナード様はマイクさんに噛み付いた。
「そらあ、死んでしまうのでは」
「そうだ。昔はそれで死んだやつもいたのだ。リア嬢が普通に作ってくれるようになってからだぞ。我軍で負傷してもまともなポーションが飲めるようになったのは。
それと、何でも噂では近衛が帝国のローマン商会のポーションを購入しようとしているそうだが、1つ言っておいてややろう。ローマン商会のポーションは薄められているのだぞ。効き目はリア嬢のポーションの10分の1だ。はっきり言ってあれはまがい物だぞ。前線で使ってひどい目にあった。
貴様ら我軍が安心して任務に当たれるのは、全てリア嬢が我々の要求するぶんだけポーションを作って渡していただけるからだ。それが貴様ら近衛は判っているのか。そもそもだな・・・・」
「あのう、メイナード様。あまり貴方様もお時間がないようですし、そろそろ妃殿下の所に参りませんと」
アビゲイル先生がメイナードを止めてくれた。
そうだ。メイナード様は私を褒めすぎるのが玉に瑕なのだ。たしかに12歳の時に作った特級まがいポーションでメイナード様を治したのは事実なのだが、もう4年も前の話だし、そこまで褒めてもらわなくても、普通に作るし。
しかし、母は酷いことをしていたのだなと私は呆れた。ポーション飲んで七転八倒するってどういう事? いくら自分があまり作りたくないからってそんな副作用するもの混ぜるなんて酷すぎる。
まあ、メイナード様が一緒に来ていただけるなら、いざとなればメイナード様に近衛の牽制をしてもらって、私が対処すれば良いだろう。私は安心した。
しかし、中庭の入り口でダニエル・オルコット近衛騎士団長が待っていたのだ。
彼はテレンスの父で王妃の兄だ。現侯爵でもある。
「これはこれはアビゲイル先生。ようこそお出でいただきました」
騎士団長が迎え入れた。
「王妃様が中でお待ちです。ところでメイナード君。陛下がお探しだったが・・・」
「ちぇっ」
メイナード様が舌打ちした。
「すぐに報告にあがったほうが良いと思うぞ」
「判りました」
メイナード様は私の知り合いのデミアンを残して報告に行った。
騎士団長がニヤリと笑うのが見えた。
「アビゲイル先生」
後ろから係官が走ってきた。
「どうされたのですか」
「すいません。学園から至急の連絡が入っています」
係官が息せき切って言った。
「何でも非常事態だそうで」
「しかし、」
「非常事態ならば仕方がないでしょう。ここは私がとりなしておきます」
近衛師団長が促す。
「よろしくおねがいします」
戸惑ったアビゲイル先生だが、慌ててついて行った。
えええ!
保護者が一人もいなくなったじゃない。
いよいよやばくなってきた。
私達は仕方無しに騎士団長について中に入ろうとした。
************************************************
ついに味方もなしに41人は王妃の前に連れ出されます。
リアの運命や如何に
続きは明朝です。
前から聞き覚えのある大きな声がした。
「あっ、メイナードさん」
私は思わず手を振った。これはラッキーだ。
昔、私の特級もどきポーションで治した第一号の人で、セドリックのお兄さんだ。
「うそ」
「ウィンチェスター公爵家のメイナード様よ」
ブリトニーとドロシアが声を上げた。
流石に二人は上位貴族は覚えているらしい。もっともメイナードさんはイケメンで優しいし、貴族の令嬢たちには人気が高いはずだ。
「なんだ、この物々しい軍団は?」
呆れてメイナードさんが言ってくれた。
「私達これから王妃様のお茶会にお呼ばれしているんです。そのお出迎えに来ていただいたんですけど、20名もいらっしゃるって、やっぱり変ですよね」
私がメイナードさんに言う。周りの近衛たちが睨みつけるが、そんなので私はびくともしない。
まあ、20名くらい全然大したことはないのだが、いざという時にクラスメイトが40名もいるとそれを守りながら20名相手するのは大変なのだ。
「メイナード様。困ります」
マイクさんが困って言って来た。
「学生を連れて行くのに20名も近衛を貼り付けるなんて、近衛は余程暇なのか」
「貴殿につべこべ言われる筋合いはない」
近衛の一人が言った。
「ほう、貴様、第1師団に配属されたいと見える」
「何?」
「私は今回王弟殿下の命でここにいる。ついでに2、3人スカウトしてこいと言われているんだ。王宮がそんなに暇なら、貴殿には是非とも北方警備に携わってほしいね」
「・・・・」
男はそれきり黙ってしまった。
そらあそうだろう。第一騎士団の守る北方は侵略してくる他民族に対して常時戦闘状態にあり、死傷者も多々出ているのだ。一番死傷率の高い騎士団と言えた。こんな近衛なんて生易しい現場ではなかった。そこに配属されるとなるのは近衛の連中は忌避したいだろう。
「マイク君。王宮内で20名も近衛がつくなど仰々しすぎるだろう。半分は返し給え」
メイナード様が言う。
「し、しかし」
「代わりに私がリア嬢に付いて行こう」
メイナード様は私がしてほしいことを言ってくれた。
「宜しいんですか」
一応聞いてみる。ついてきてくれないと困るけど、確認は大事だ。
「別に陛下への報告など少しくらい遅れても構わんよ」
メイナード様はとんでもない事を言ってきた。
「いや、それは流石にまずいのでは」
マイクさんが確認する。
「我軍にとって最重要課題はリア嬢の安全だ。そこの近衛共は判っていないようだが」
ギロリとメイナードさんが近衛兵を見渡した。
皆鋭い眼光に怯む。
「それは言い過ぎではないですか。そこまでの重要性は私には無いと思いますけど」
私が否定した時だ。
「何を言われるのですか。リア嬢。あなたは私達の命の恩人なのです。そこの近衛共は戦場に立ってないから平然としていられるのだ。リア嬢がポーションを作られるまでは、言いたくはないが、あの気まぐれな破壊の魔女のポーションを飲んでいたのだ。貴様ら判るか。3回に1回は副作用に苦しくて七転八倒するポーションなのだぞ。おまえ、死にかけの時に七転八倒してみろ、どうなると思う」
メイナード様はマイクさんに噛み付いた。
「そらあ、死んでしまうのでは」
「そうだ。昔はそれで死んだやつもいたのだ。リア嬢が普通に作ってくれるようになってからだぞ。我軍で負傷してもまともなポーションが飲めるようになったのは。
それと、何でも噂では近衛が帝国のローマン商会のポーションを購入しようとしているそうだが、1つ言っておいてややろう。ローマン商会のポーションは薄められているのだぞ。効き目はリア嬢のポーションの10分の1だ。はっきり言ってあれはまがい物だぞ。前線で使ってひどい目にあった。
貴様ら我軍が安心して任務に当たれるのは、全てリア嬢が我々の要求するぶんだけポーションを作って渡していただけるからだ。それが貴様ら近衛は判っているのか。そもそもだな・・・・」
「あのう、メイナード様。あまり貴方様もお時間がないようですし、そろそろ妃殿下の所に参りませんと」
アビゲイル先生がメイナードを止めてくれた。
そうだ。メイナード様は私を褒めすぎるのが玉に瑕なのだ。たしかに12歳の時に作った特級まがいポーションでメイナード様を治したのは事実なのだが、もう4年も前の話だし、そこまで褒めてもらわなくても、普通に作るし。
しかし、母は酷いことをしていたのだなと私は呆れた。ポーション飲んで七転八倒するってどういう事? いくら自分があまり作りたくないからってそんな副作用するもの混ぜるなんて酷すぎる。
まあ、メイナード様が一緒に来ていただけるなら、いざとなればメイナード様に近衛の牽制をしてもらって、私が対処すれば良いだろう。私は安心した。
しかし、中庭の入り口でダニエル・オルコット近衛騎士団長が待っていたのだ。
彼はテレンスの父で王妃の兄だ。現侯爵でもある。
「これはこれはアビゲイル先生。ようこそお出でいただきました」
騎士団長が迎え入れた。
「王妃様が中でお待ちです。ところでメイナード君。陛下がお探しだったが・・・」
「ちぇっ」
メイナード様が舌打ちした。
「すぐに報告にあがったほうが良いと思うぞ」
「判りました」
メイナード様は私の知り合いのデミアンを残して報告に行った。
騎士団長がニヤリと笑うのが見えた。
「アビゲイル先生」
後ろから係官が走ってきた。
「どうされたのですか」
「すいません。学園から至急の連絡が入っています」
係官が息せき切って言った。
「何でも非常事態だそうで」
「しかし、」
「非常事態ならば仕方がないでしょう。ここは私がとりなしておきます」
近衛師団長が促す。
「よろしくおねがいします」
戸惑ったアビゲイル先生だが、慌ててついて行った。
えええ!
保護者が一人もいなくなったじゃない。
いよいよやばくなってきた。
私達は仕方無しに騎士団長について中に入ろうとした。
************************************************
ついに味方もなしに41人は王妃の前に連れ出されます。
リアの運命や如何に
続きは明朝です。
0
お気に入りに追加
583
あなたにおすすめの小説
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
【完結】強制力なんて怖くない!
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のエラリアは、十歳の時に唐突に前世の記憶を取り戻した。
どうやら自分は以前読んだ小説の、第三王子と結婚するも浮気され、妻の座を奪われた挙句、幽閉される「エラリア」に転生してしまったらしい。
そんな人生は真っ平だと、なんとか未来を変えようとするエラリアだが、物語の強制力が邪魔をして思うように行かず……?
強制力がエグい……と思っていたら、実は強制力では無かったお話。
短編です。
完結しました。
なんだか最後が長くなりましたが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる