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湖畔に立つ白亜の城のパーティーに招待されました

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私達はそれから湖畔を歩いて、お土産物屋で小物とはがきを買い、湖畔のレストランで名物のニジマス料理を食べて堪能した。

その湖畔には白亜の城が建っていた。

なんと王家の城とのことで、このあたりの政治の中心で、今はなんとカートらが滞在しているとのことだった。

「これがかの有名な、白鳥城ね」
ハンナが憧れの目で見ていた。

「白亜なる城に住まうね」
ベッキーが有名な詩の一部を口ずさんだ。

「良いわね。こんな所に滞在できるなんて」
ハンナがザカリーに羨ましそうに言った。

「良いのは外面だけだぞ。中はボロボロだよ。昨日なんてお湯が出なかったんだから」
ザカリーがぼやいた。

「古い建物は往々にしてそう言う事があるもんね」
プリシラが慰めるように言った。

「ハンナらが滞在させてもらっているベッキーの別荘の方が新しいし、余程良いよ」
「でも、古城に滞在するのもロマンがあるわよね」
ベッキーが柄にもないことを言う。

「恋するって人をも変えるのね。ベッキーがロマンなんて言うなんて」
私の代わりにエイミーが言ってくれた。

「そんなんじゃないって。私もロマンくらい言うわよ」
怒ってベッキーが言う。

「あれ、そうだっけ、先日、ロマンなんて金にならないって誰かに言われたような・・・・」
「年中頭が春なあなたに言われたくないわよ」
私はベッキーにやり込められた。

「年中春じゃない。ついこの前も泣いたところだし」
私がそう言ってカートを見ると、カートらは知らない人を囲んで何か相談しているみたいだった。
私は少しムッとしたが、なんかややこしいことを話しているみたいだ。

「取り敢えず、頼んでみるしか無いんじゃないか」
セドリックの言葉に私は嫌な予感を覚えた。

「リア」
猫なで声でカートが話してきた。この声は碌な事がない時だ。

「嫌だ」
私は聞く前に即答した。

「そこを何とか」
「絶対に嫌」
私は断固として言い切った。

「お願い、聞くだけ聞いて」
「聞いたらやらなければならないじゃない」
「いや、そんな事無いよ。聞くだけ」
カートは拝み込んできた。カートにそれをされると弱い私がいた。

「じゃあ聞くだけよ」
私は取り敢えず妥協した。

聞くのはただだ。でも絶対に碌なことはない。

「今回のリアらの活躍に対して、この地のサウス湖の地方政府の意向で、奴隷解放並びに、悪徳業者摘発に対してお礼のために、リア一行に対して城に招待したいそうだ」
「え、そんな面倒なことはいらないし、行きたくない」
リアは即答した。

「でも、今回は帝国も噛んでいるだろう。ルーカスとかエーレンとか。彼らも呼ばれていて、彼らとしてもぜひともリアにもう一度会ってお礼が言いたいそうなんだ」
「えっ、剣のおじちゃんは良いけどエーレンとはあんまり会いたくない」
カートの言葉に私のトーンが少し下がる。

「それは判るけど、今回は帝国としてもリアに手伝ってもらった手前、直接お礼が言いたいそうなんだ。だからぜひともリアにも来てもらいたいんだと」
カートが頼み込むようにしてくる。

私はハンナらを見る。

「リア、出来たらお受けしていただけるとありがたいんだけど」
ハンナは希望に膨らんだ瞳で言ってくる。その希望には答えてあげたい。

「でも、歓迎の式典かなにかあるんでしょ」
しかし、私も少しは賢くなったのだ。また、王子とかと絡むのは嫌だ。

「いや、そんな堅苦しいものではなくて、歓迎会みたいなものかな」
「それってパーティーでしょ。嫌だ」
私が断る。

「少しだけ我慢してくれないかな。そうしたら翌朝、塔からの朝焼けを見せてあげるから。リアお城の塔に登ってみたいって前に行ってたじゃん。この城の塔はリアが絶対に気にいるから」
「うーん、本当に?」
「そう、それに皆も来たそうにしているよ」
カートの言葉に後ろを振り返るとみんな、興味津々とこちらを見ていた。

「えっ、そんなに城に行きたいわけ」
私が聞くとハンナが頷いた。

ハンナにはいつも無理ばっかり言っているし、色々私の足りない所をフォローしてもらっていたりしている。他の皆も泊まりたそうだ。プリシラまでもが期待に膨らんだ顔をしているではないか。

「うーん、皆と一緒なら」
「やった、リアありがとう」


「でも、王子の相手は絶対に嫌だからね」
「でも、今回の主役はリアだよ。王子に会うのは仕方がないだろう」
「なんで」
「だって、勝手に帝国に行ったんだよ。下手したら色々外交問題になるところだったんだから。それをもみ消してくれたのも王子だよ」
それを言われると私も弱い。

「でも、踊るのは嫌だ」
私がそう言うと何故かカートが傷ついたような顔をする。何故に? 普通は好きな女が他の男と踊るのを嫌がるのではないのか?

私が少しムツとすると

「まあ、でも、リア、今回あなたが無理を通したんだから、社交儀礼よ。社交儀礼。今後も、またこんな問題起こるかもしれないじゃない。王子をヨイショしておけば、あなたにとってプラスになるかもしれないって」
なぜかベッキーまでもが王子の味方をしてきた。
ベッキーはセドリックに骨抜きにされたのだろうか? 何か解せない。

「じゃあ、最後に絶対にカートと踊る。なら良いわ」
「判った。それは王子に何とかねじ込んでおく」
「約束だからね。今度破ったら絶交だから」
私とカートは指切りした。

それを何故か残念なものを見るように女どもがしているのが、この時はよく判らなかった。
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