上 下
71 / 144

道に迷って変な館に連れ込まれました

しおりを挟む
言ってしまった。
言うつもりはなかったのに。

「大嫌い」って。

だって、パーティーでカートを待っていたのに。いきなり別の人間が来るって絶対におかしいよ。

そう、楽しみに待っていたのに・・・・

やっと妹ポジションから脱却出来て、カートの恋人になれる、いやそこまでいかなくてもせめて妹以上恋人未満の存在になれたと思ったのに・・・・

カートは私に対して本当に酷いことしたと思う。

そう思っていなかったのも許せなかった。

私の目には涙が溢れ、前がよく見えなかった。

「カートのバカ野郎!」
私は叫んでいた。もうどうにでもなれって感じだった。

私はダンジョンに潜ることによって培われた勘によって前も見ずに走っていた。

途中で誰かを弾き飛ばしたような気がしたが、そんな事にかまっている余裕はなかった。



「はあ、はあ、はあ」
さすがの私も30分も走ると息が切れてきた。

いつの間にか湖岸から離れて、林の中に入っていたみたいだった。


あれ? ここはどこだろう?

私は急に心配になって、涙を拭いて周りを見渡した。

周りに人影は見えなかったが、まあそんなに遠くには来ていないはずだと思う。
迷ってしまっていたらどうしよう!

まあ、ポーションがあるから10日は飲まず食わずで生きていけるはずだ。伊達に小さい時からダンジョンに潜ってはいない。

とは言うものの何か手がかりは・・・・。


私がキョロキョロしていると、視界には珍しい薬草が写った。

「えっ、コマクサって高山植物でなかなかないのよね」
私は少しもらうことにした。

周りを見ると更に先にもある。

「あっ、これはカゲミ草だ」
少し先に行くと更に珍しい高山植物のカゲミ草が生えていた。うそ、こんな所に。

私の悪い癖で薬草を見ると夢中になってしまうのだ。
私はドンドン奥に入っていった。


「あなた、こんな所で何してるの? 」
私はいきなり後ろから声をかけられて驚いた。後ろを振り返るとかごを背負った女の人が立っていた。

「どうやって敷地の中に入って来たの?」
「えっ?」
私はまずいと思った。いつの間にか他人様の敷地に入って薬草を採っていたらしい。

「ごめんなさい。つい夢中になってしまって」
私は慌てて採取した薬草を女の人に差し出した。

「それはどうでもいいから、他の人に見つからないうちに早く出ていきなさい」
女の人は私のことを心配していってくれた。

「ラーナ、そちらはどなたかな?」
後ろから声がかかった。

ラーナと呼ばれた女の人がびくりとした。私が勝手に入って薬草採っていたので、私のせいで怒られるのを怖れているのだろうか?

「すいません。薬草採っていたら、知らない間にお宅の敷地に入っていたみたいで、本当にすいません」
私はラーナが怒られないように、先に謝った。

「いや、それは構いませんよ。あなたも薬剤師の方なんですか?」
「ということはおじさんも薬剤師?」
「いや、私は違うが、彼女ラーナは薬剤師だよ」
「そうなんだ。ここは薬草園なんですか」
「そうだね。標高が高いから高山植物の薬草園だよ」
「それでなんですね。王都にはあんまりない薬草が沢山あるんで、つい入ってしまいました。すいません」
「もし良かったら、倉庫にも色々あるので見て行ったらどうだい?」
男の人は親切そうに言ってくれた。

「えっ、良いんですか?」
私は喜んで言った。自分の店以外の倉庫を見たことがなかったのだ。これは色々参考になるかもしれない。
ラーナは男を怖れているようだったが、何を怖れているのだろうか?親切な良い人知じゃないか。
倉庫にはどんな薬草があるんだろう。ラーナが何か私に合図してるが私は無視して男の人についていくことにした。

男の後についていくと、大きな倉庫が現われた。鍵を開けて中に入れてくれる。

「うわー、凄い」
私は周りを見回していった。
中には乾燥した薬草の他、完成した薬や、ポーションが棚ごとにきちんと整頓されて置かれていた。

こんな大きな倉庫は始めてみた。
文字は帝国語が書かれているのが多い。ここは帝国の系列なんだろうか。
キョロキョロしていた私は、気になる風邪薬ポーションを見た。
「あれーー、これチェスターの風邪薬って書かれているんですけど」
私は驚いて言った。

なんかきれいな文字で『チェスターの風邪薬』と書かれているが、チェスターの風邪薬は私が子供の頃作ったから、子供の文字でそれもすべてひらがなで書かれているのだ。私はそれを直していなかった。それに、なんか薬の色が黄色っぽいんですど、私の風邪薬は苦さを見た目にも出すために、濃い緑色なのだ。苦さを増すために、中に入れた薬草の色なのだ。

「そう、王都で有名な薬屋の風邪薬だよ。お嬢さんよく知っているね」
男は笑って言った。そう言えば男の顔をよく見ると徐々に悪人顔に見えてきた。
ラーナさんを見ると首を振ってきた。

あまり触れるなって言ってくれたんだろう。でも、そう言うわけにもいかない。

「変ですね。チェスターの風邪薬ってもっと濃い緑なんですけど」
「お嬢さんはよく知っているね。教えてくれてありがとう。次からはそうするよ。まあ、お嬢さんには関係なくなる話だが・・・・」
男はニヤニヤ笑ってきた。これはわざと私の偽薬を作っているのは決定的だった。
そして、その男の後ろから人相の悪い大柄な男達が5人ばかり出て来たのだ。

カートらを置いて走って来るんじゃなかった。私は大いに後悔した。


**********************************************

絶体絶命のリア? 続きは今昼更新予定です。

お気に入り登録まだの方はぜひともお願いします。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との
恋愛
「彼が亡くなった?」 突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。 「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて! 家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」 次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。 家と会社の不正、生徒会での横領事件。 「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」 『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。 人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

処理中です...