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第一王子視点5 第一王子は側近たちにリアに対する想いを話しました

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翌週の月曜日に登校した俺に

「あのう、殿下。先日はトップ譲って頂いてありがとうございました。おかげでドラゴンの角手に入ったので、ホーション作ってきました」
とリアがポーションを取り出してくれた。

俺は喜んで受け取ろうとしたが、セドリックの視線が痛い。そう言えば王子は臣下に無理言って無償で譲ってもらったりしてはいけないんだった。ついいつもの癖で受け取りそうになった。

「えっ、本当に作ってきてくれたんだ。冗談で言ったんだが」
俺はセドリックの前なので取り敢えずそういうしか無かった。

「そうでしょう。すいません。余計なもの持ってきてしまって」
ドラモンド子爵令嬢が慌てて言う。いやそう言うわけではなくて・・・・

「そうよ。あなた達。下級貴族や平民が殿下にお声をかけるなんて何考えているの。金曜日はたまたま殿下に優しくしてもらったからといって、こんなところまでそんな下らないポーションなんて持ってきて」
帝国との国境を守っているヒューズ侯爵令嬢が余計なことを言ってくる。おい、お前のところの領地の騎士たちもリアの世話になっているだろう。思わず俺は言いそうになった。

「下らないポーションですって!」
自分の作ったポーションをバカにされたリアが切れていた。

「そうでしょ。そんなポーション薬屋にいけばいくらでもあるわよ」
「何ですって。あなた良くも私のポーションけなしてくれたわね」
「チョッちょっとリア。彼女はヒューズ侯爵令嬢よ」
ドラモンド子爵令嬢ハンナが必死に止めようとする。でも、リアが貴族だと聞いて止めるわけ無かった。何しろ10大貴族相手に大立ち回りするあのアリシアの娘なのだ。

「それがどうしたのよ。私は二度とヒューズ侯爵家には私のポーションは売らないから」
「何ですって生意気な。良いわよ。他から仕入れるから。と言うかあなた我が家を敵に回してやっていけるの」
ヒューズ侯爵令嬢が言っていた。

「その勝負はお前の負けだ。ヒューズ侯爵令嬢」
こうなったら俺が注意するしか無いだろう。このままでは侯爵家の騎士たちが困る。

「えっ」
ヒューズ侯爵令嬢は驚いて俺を見た。

「君のところの家は毎年リアの作ったポーションを仕入れているぞ」
「しかし、殿下。仕入先を変えれば済む話ではないですか」
侯爵令嬢は不思議そうに殿下に聞いた。
大馬鹿野郎。この国でリア母娘以外に作れないんだよ。

俺が言葉を尽くして説明すると侯爵令嬢は青くなった。

「昔、セドリックの兄が魔獣に手を食われて、リアの母にポーションを分けてくれるように頼みに行ったことがあった。でも、その時リアの母は今は気分が乗らないから嫌だと断られた」

「その時ポーションを出してくれたのがリアだ」
俺は昔の話をした。

「えっ?」
リアは何のことかよく判っていないらしい。

「『うまくいくかどうか解らないけれど』って予備だって自分の作った5本のポーションをくれたんだ」
俺はリアがしてくれたことを言った。

「さすがに1本ではうまく行かなかったが、光熱でうなされているメイナードに3本飲ませたら何とかなったんだ。だからセドリックは本来ならばリアに頭が上がらないはずだ」
「昨日は失礼な事言って申し訳なかった」
セドリックが頭を下げた。そうだ。俺のリア、いやまだ俺のリアじゃないけど、をお前らももっと認めろ。俺の将来隣に立たせる令嬢のことを。

「あの、でも、ポーショッンってカートに渡したんですけど・・・・」
あっ、またやってしまった。今は王子だった。

「えっ、いや、それはカートに聞いたんだよ」
俺は慌てて誤魔化そうとした。

「では殿下、お約束のポーションです」
「でも、こんな高価なものもらって良いのか」
「良いんです。それとコニーさん。さっきの私の我儘発言忘れてください」
リアは青くなって固まっているコニーに言った。

「えっ、でも」

「特級ポーションは私しか作れないって、私は知らなくて。私の我儘で困る人がいたら嫌です」

「良かったな。ヒューズ侯爵令嬢。リアがリアの母ほど我儘でなくて」
俺は笑って言った。そうだ。リアは優しいのだ。

その昼休み、今度はカートとしてリアに会いに行った。

何故お忍びの茶髪黒目の格好しているんだとセドリックを煙に巻くの失敗した。まあ、もう良いだろう。俺はセドリックらを連れて行くことにした。


「やっと会えた。全然会えなかったから本当にここの学生なのかと心配したじゃない。朝も第一王子殿下のクラスに行ったのにいなかったでしょ!」
リアは俺を見ると嬉しそうに言ってくれた。

「悪い。今日は遅刻寸前で」
そう言えばリアが来た時にクラスにはカートはいなかった。というか王子とカートは二人同時に存在することは出来ない。

「ねえねえ、リア、誰そのイケメン」
ヨーク子爵令嬢が聞いてきた。

「彼が私の友達のカートよ。第一王子殿下のクラスメートで、冒険者なの。金曜日はダンジョン一緒に潜ってポーションの材料の薬草取るの手伝ってくれたの」
その言葉に後ろでセドリックが固まっていた。

「どうも、リアの幼友達のカートです」
俺は微笑んだ。今日はリアの限りなく彼氏に近い友人とししてリアの周りに出没する男どもに牽制するために来たのだ。

俺はリアの女友達と少し話をした。みんな、気の良い令嬢のようだった。リアの周りにいるに値するだろう。俺は少し安心した。リアの事をちゃんと考えてくれて、貴族たちの攻撃を少しは防いでくれそうだった。


「そして、君がお父さんが騎士のオーガストくんに農家の出で官僚目指しているベンジャミンくんだろ」
俺は本題の男達への牽制に入った。

「まあ、リアは考え無しでいろんな事して君たちに迷惑かけるから大変だと思うけど宜しく頼むよ」
「ちょっとカート、それどういう意味よ」
リアは怒ったが、ここは牽制しておかないと。
皆の前でリアとの中の良さをアピールする。俺はリアとダンジョンに潜って貫徹するほど仲が良いのだと。

「まあ、君たちも大変だけど、リアのこと宜しく頼むよ」
俺の牽制に
「あなたに言われなくても、リアは友達だからちゃんと見ますよ」
ブスッとしてオーガストとか言う騎士の卵が反論してきた。

こいつは将来的に役に立つかも。

俺は勝手に胸算用した。



その後セドリックに

「どうするつもりなんだ。お前毎月あの子と一緒にダンジョンに潜っていたのか」
と詰め寄られた。

「平民の女と第一王子のお前がうまくいくわけ無いだろう」
セドリックの言うことは正論だった。そう、正論なのだ。でも、元々絶望していた俺を救ってくれたのはリアなのだ。俺はリアを諦めるつもりはなかった。

今回は側近たちに俺の心を知らせるのが目的の一つでもあった。まず俺の心を知ってほしかった。

「俺は昔、彼女に命を救われたんだ。

俺が今まで必死にやって来たのはあの子の横に立てるようになりたいからなんだ」
俺の言葉にセドリック達は絶句していた。まさか、俺がそこまで思っているとは思っていなかったのだろう。

「今まで隠していて悪かった。でも、これは俺の本心なんだ。今すぐとは言わない。少しでも彼女のことを認めてくれたら嬉しい」
そう、今日はまず、その事をこいつらに知ってもらえれば良いんだ。

先は長いけれど、俺はリアを諦めるつもりはなかった。
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