上 下
16 / 144

畏れ多くも、第一王子に超特級ポーションを渡しに行きました

しおりを挟む
翌日授業の始まる前に、私達は3階の3年生の教室に行った。

「すいません。1年A組のハンナ・ドラモンドと申しますが、殿下はいらっしゃいますか」
班長のハンナが教室の入口で声をかけてくれた。

「ん、どうした」
そこへ一昨日の5人組が殿下を先頭に登校してきた。

「あのう、殿下。先日はトップ譲って頂いてありがとうございました。おかげでドラゴンの角手に入ったので、ホーション作ってきました」
私はポーチから梱包したポーション5本取り出した。

「えっ、本当に作ってきてくれたんだ。冗談で言ったんだが」
王子は驚いて言った。

「そうでしょう。すいません。余計なもの持ってきてしまって」
ハンナが慌てて言う。

「そうよ。あなた達。下級貴族や平民が殿下にお声をかけるなんて何考えているの。金曜日はたまたま殿下に譲ってもらったからといって、こんなところまでそんな下らないポーションなんて持ってきて」
横からどこかの令嬢が出てきて文句を言う。

「下らないポーションですって!」
私はプッツン切れた。私にも矜持がある。私のポーションは母には負けるが、そんじょそこらのポーションではないのだ。丹精を込めて薬草採取から言うと24時間もかけて作っているのだ。自分のポーションをけなされると私は我慢できなくなるのだ。伯爵を叩き出した母のように。

「そうでしょ。そんなポーション薬屋にいけばいくらでもあるわよ」
「何ですって。あなた良くも私のポーションけなしてくれたわね」
「チョッちょっとリア。彼女はヒューズ侯爵令嬢よ」
ハンナが必死に私を止めようとする。そうかこれがハンナに聞いてきた侯爵令嬢か。私は俄然闘志が湧いてきた。


「それがどうしたのよ。私は二度とヒューズ侯爵家には私のポーションは売らないから」
「何ですって生意気な。良いわよ。他から仕入れるから。と言うかあなた我が家を敵に回してやっていけるの」
私以外のベッキー達は青くなった。後で聞いたのだが、ヒューズ侯爵領は帝国との国境の一角を占めており、1万の私兵を抱えていたのだ。

「その勝負はお前の負けだ。ヒューズ侯爵令嬢」
それまで黙っていた第一王子殿下が言った。

「えっ」
ヒューズ侯爵令嬢コニーは驚いて殿下を見た。

「君のところの家は毎年リアの作ったポーションを仕入れているぞ」
「しかし、殿下。仕入先を変えれば済む話ではないですか」
コニーは不思議そうに殿下に聞いた。

「普通のポーションならばな。リアのポーションは特別だ」
「特別?」
「そうだ。普通のポーションは重傷者までしか効かない。手足の欠損は治せないのだ」
「そうなのですか?」
「我が国に欠損を直せるポーションを作れる薬剤師は2人しかいない。その一人がリアだ」
えっそうなの?私は知らなかった。私ってそんなに凄いんだ。母を見ているから全然気付かなかった。でも、私が売らないって言ったら、ひょっとしてそこの家は特級ポーションを手に入れられなくなるんじゃない・・・・


「ではもうひとりに頼めばいいだけでは」
コニーは当然のように言った。そう普通はそう思うだろう。

「それは無理だ」
殿下は即答した。そう私が売らないって言ったら手に入るのは無理なのだ。

「だってもうひとりはリアの母親だ」
「えっ」
殿下の一言でコニーは固まった。

「昔、セドリックの兄が魔獣に手を食われて、リアの母にポーションを分けてくれるように頼みに行ったことがあった。でも、その時リアの母は今は気分が乗らないから嫌だと断られた」
えっ、そんな事があったんだ。他人事宜しく私は聞いていた。

「その時ポーションを出してくれたのがリアだ」
殿下は思いも寄らない発言をした。

「えっ?」
私は何のことかよく判らなかった。

「『うまくいくかどうか解らないけれど』って予備だって自分の作った5本のポーションをくれたんだ」
そう言えばそんな事があった。

「さすがに1本ではうまく行かなかったが、光熱でうなされているメイナードに3本飲ませたら何とかなったんだ。だからセドリックは本来ならばリアに頭が上がらないはずだ」
「昨日は失礼な事言って申し訳なかった」
セドリックが頭を下げてくれた。

「いえ、その様な気にしていませんから」
私は慌てて言った。

「いや本当に申し訳なかった。兄貴に話したら頭をしばかれた」
更に頭を下げてきて困った。

「あの、でも、ポーショッンってカートに渡したんですけど・・・・」
何故王子があたかも見てきたように言うのかよく判らなかった。

「えっ、いや、それはカートに聞いたんだよ」
王子は慌てて言った。なんか怪しい。

しかし、そこに予鈴がなった。

やばい。

「では殿下、お約束のポーションです」
「でも、こんな高価なものもらって良いのか」
「良いんです。それとコニーさん。さっきの私の我儘発言忘れてください」
私は青くなって固まっているコニーに言った。

「えっ、でも」
「特級ポーションは私しか作れないって、私は知らなくて。私の我儘で困る人がいたら嫌です」
私が売らないって言ったらその領地で怪我して腕とか欠損した騎士の人とかそのまま失業しちゃうじゃない。そんなのは嫌だ。売らないって言い切る母は我儘すぎるのだ。

「良かったな。ヒューズ侯爵令嬢。リアがリアの母ほど我儘でなくて」
王子が笑って言った。

「あんな事言ってごめんなさい」
コニーは頭を下げてくれた。

「私こそ平民の分際ですいません。ただ、ポーションには思い入れが強すぎて」
私も頭を下げる。

これで少しはお貴族様の風当たりが弱まれば良いな、と私は甘いことを考えていた・・・・

****************************************************************

リアは10大貴族に絡まれてもびくともしません・・・・
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

【完結】 婚約破棄間近の婚約者が、記憶をなくしました

瀬里
恋愛
 その日、砂漠の国マレから留学に来ていた第13皇女バステトは、とうとうやらかしてしまった。  婚約者である王子ルークが好意を寄せているという子爵令嬢を、池に突き落とそうとしたのだ。  しかし、池には彼女をかばった王子が落ちることになってしまい、更に王子は、頭に怪我を負ってしまった。  ――そして、ケイリッヒ王国の第一王子にして王太子、国民に絶大な人気を誇る、朱金の髪と浅葱色の瞳を持つ美貌の王子ルークは、あろうことか記憶喪失になってしまったのである。(第一部)  ケイリッヒで王子ルークに甘やかされながら平穏な学生生活を送るバステト。  しかし、祖国マレではクーデターが起こり、バステトの周囲には争乱の嵐が吹き荒れようとしていた。  今、為すべき事は何か?バステトは、ルークは、それぞれの想いを胸に、嵐に立ち向かう!(第二部) 全33話+番外編です  小説家になろうで600ブックマーク、総合評価5000ptほどいただいた作品です。 拍子挿絵を描いてくださったのは、ゆゆの様です。 挿絵の拡大は、第8話にあります。 https://www.pixiv.net/users/30628019 https://skima.jp/profile?id=90999

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

【完結】契約結婚。醜いと婚約破棄された私と仕事中毒上司の幸せな結婚生活。

千紫万紅
恋愛
魔塔で働く平民のブランシェは、婚約者である男爵家嫡男のエクトルに。 「醜くボロボロになってしまった君を、私はもう愛せない。だからブランシェ、さよならだ」 そう告げられて婚約破棄された。 親が決めた相手だったけれど、ブランシェはエクトルが好きだった。 エクトルもブランシェを好きだと言っていた。 でもブランシェの父親が事業に失敗し、持参金の用意すら出来なくなって。 別れまいと必死になって働くブランシェと、婚約を破棄したエクトル。 そしてエクトルには新しい貴族令嬢の婚約者が出来て。 ブランシェにも父親が新しい結婚相手を見つけてきた。 だけどそれはブランシェにとって到底納得のいかないもの。 そんなブランシェに契約結婚しないかと、職場の上司アレクセイが持ちかけてきて……

愛が重いだけじゃ信用できませんか?

歩く魚
恋愛
【ヤンデレと戦えるのは遊び人である】 古庵瑠凪は、大学内における、いわゆる「何でも屋」に相当するサークルに所属している。 生徒を助け、浮かれたように遊び、大学生の青春を謳歌する、そんな毎日。 しかし、ある日「お見舞い」が自宅のドアにかけられていたことを皮切りに、彼の平穏な日々に変化が訪れる。 「好きだからです。世界中の誰よりも好きで好きでたまらないからです」 突然の告白。ストーカーの正体。 過去の一件から恋人を作らないと決意した瑠凪は、さまざまな方向に「重い」ヒロインたちのアプローチから逃れることができるのか?

冷酷非情の雷帝に嫁ぎます~妹の身代わりとして婚約者を押し付けられましたが、実は優しい男でした~

平山和人
恋愛
伯爵令嬢のフィーナは落ちこぼれと蔑まれながらも、希望だった魔法学校で奨学生として入学することができた。 ある日、妹のノエルが雷帝と恐れられるライトニング侯爵と婚約することになった。 ライトニング侯爵と結ばれたくないノエルは父に頼み、身代わりとしてフィーナを差し出すことにする。 保身第一な父、ワガママな妹と縁を切りたかったフィーナはこれを了承し、婚約者のもとへと嫁ぐ。 周りから恐れられているライトニング侯爵をフィーナは怖がらず、普通に妻として接する。 そんなフィーナの献身に始めは心を閉ざしていたライトニング侯爵は心を開いていく。 そしていつの間にか二人はラブラブになり、子宝にも恵まれ、ますます幸せになるのだった。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...