5 / 57
諸悪の根源の大司教に天誅を下すことにしました2
しおりを挟む
「まあ、良い」
俺は首を振った。
「俺は仲間になるのはやぶさかではないのだが、一つだけ頼みがある」
「はああああ! あんた、自分の立場が判っているの? 私に賭けで負けたんだから私の下僕になったんでしょう。それがお願いって何よ」
ムッとししてキャロラインが文句を言ってきたが、
「いやまあ、そうなんだが、俺は大司教のエインズワースだけは許したくない。今回の横領も元々あいつが黒幕だったんだ。俺はこの後どうなってもいいので、あいつをやっつけるのに協力してほしい。俺はあいつを信じて、せっかく横領のことを教えてくれたフィンズベリーを結果として売ってしまったんだ。あいつには家族もいたはずだ。その家族のためにも仇を討ちたい。頼む。この通りだ」
俺は皆に頭を下げたのだ。
「ええええ! 聖教会の大司教を殺るっていうの?」
「何なら、手伝ってくれるだけでいい。殺るのは俺が殺る」
俺はキャロラインに言った。
「そんな事言ったってあなた無一文じゃない。そもそも、あなた今は私の下僕なのよ」
「まあまあ、お嬢様。剣聖様がおっしゃるのも最もです。教会のトップにあんな薄汚れた奴が居るのは全世界のためにもなりますまい」
ダニーが言ってくれた。
「でも、無一文の奴の依頼を受けるわけ?」
「まあ、今はお嬢様の下僕の位置にいますからな。その地位をかけさせて、騎士に格下げするというのはどうですかな」
ダニーがなにか変なことを言ってくれた。
どう考えても下僕のほうが騎士よりも下だろう。
「ちょっとダニー、なによ、それは! それじゃあ格上げじゃない」
キャロラインは至極当然なことを言った。
「まあまあ、お嬢様。帝国の貴族の中にはお嬢様の下僕になれれば金などいくらでも出すという輩もおりますからな。そいつ等から見たら十分な報酬ではないかと」
ダニーがとんでもないことを言ってくれているんだが……
「いや、これは俺の依頼だから。何だったら借金でもいいぞ」
「何言っているのよ。報酬の借金払いはないわよ」
俺の言葉をキャロラインが否定した。
「俺はセドにかけていいぜ。教会のトップが薄汚れた人間じゃ、よくないだろう」
リックが俺に賛成してくれた。
「まあ、仕方がないですね。足りない分は教会から分捕るということで」
会計のトムがなんか理由のわからないことを言っているが、大司教を殺って、どうやって教会からぶんどれるんだろう?
「えっ、ちょっとあんた達、何言っているのよ」
「お嬢。既にベックマンを殺った件からして、持ち出しです。少しくらい増えても問題なのでは」
トムが笑って言ってくれた。
確かにそうだ。後で聞いた所によると、どうやら、俺が何も出来なかったベックマンをやっつける件は勝手にキャロラインがやってくれたらしい。俺を調べるついでに横領の件を知ったので、
「とっちめようとしたら、斬り掛かってきたから教会もろとも燃やしてやったのよ」
冷静になったキャロラインはさも当然のように言ってくれたんだけど。
「本当にあんた達、馬鹿ね。どうなっても知らないからね」
この時は頭に血が登っていたのだろう。そう言うとキャロラインは怒って出て行った。
「お嬢様!」
慌てて侍女がついて言った。
「良かったな。セド」
トムが声をかけて来た。
「えっ? 俺にはどうなったかわからないんだが」
俺が素直に聞くと、
「多数決で大司教に天誅を下すということになったんだよ」
リックが教えてくれた。
そうか、この傭兵バスターズは厄災女の独裁ではなくて多数決で決まるらしい。
俺はエインズワースに天誅を下せるなら何でも良かったのだ。
まあ、その準備に厄災女にこき使われることになるんだけど、報酬の一部だと思えば安いものだった。
*******************************************************
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
お気に入り登録、感想等頂けたら嬉しいです。
私のお話『電子書籍化決定』
『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』
リンクはすぐ下に
表紙絵もはってあります。
8/26コミックシーモアにて先行配信予定です
俺は首を振った。
「俺は仲間になるのはやぶさかではないのだが、一つだけ頼みがある」
「はああああ! あんた、自分の立場が判っているの? 私に賭けで負けたんだから私の下僕になったんでしょう。それがお願いって何よ」
ムッとししてキャロラインが文句を言ってきたが、
「いやまあ、そうなんだが、俺は大司教のエインズワースだけは許したくない。今回の横領も元々あいつが黒幕だったんだ。俺はこの後どうなってもいいので、あいつをやっつけるのに協力してほしい。俺はあいつを信じて、せっかく横領のことを教えてくれたフィンズベリーを結果として売ってしまったんだ。あいつには家族もいたはずだ。その家族のためにも仇を討ちたい。頼む。この通りだ」
俺は皆に頭を下げたのだ。
「ええええ! 聖教会の大司教を殺るっていうの?」
「何なら、手伝ってくれるだけでいい。殺るのは俺が殺る」
俺はキャロラインに言った。
「そんな事言ったってあなた無一文じゃない。そもそも、あなた今は私の下僕なのよ」
「まあまあ、お嬢様。剣聖様がおっしゃるのも最もです。教会のトップにあんな薄汚れた奴が居るのは全世界のためにもなりますまい」
ダニーが言ってくれた。
「でも、無一文の奴の依頼を受けるわけ?」
「まあ、今はお嬢様の下僕の位置にいますからな。その地位をかけさせて、騎士に格下げするというのはどうですかな」
ダニーがなにか変なことを言ってくれた。
どう考えても下僕のほうが騎士よりも下だろう。
「ちょっとダニー、なによ、それは! それじゃあ格上げじゃない」
キャロラインは至極当然なことを言った。
「まあまあ、お嬢様。帝国の貴族の中にはお嬢様の下僕になれれば金などいくらでも出すという輩もおりますからな。そいつ等から見たら十分な報酬ではないかと」
ダニーがとんでもないことを言ってくれているんだが……
「いや、これは俺の依頼だから。何だったら借金でもいいぞ」
「何言っているのよ。報酬の借金払いはないわよ」
俺の言葉をキャロラインが否定した。
「俺はセドにかけていいぜ。教会のトップが薄汚れた人間じゃ、よくないだろう」
リックが俺に賛成してくれた。
「まあ、仕方がないですね。足りない分は教会から分捕るということで」
会計のトムがなんか理由のわからないことを言っているが、大司教を殺って、どうやって教会からぶんどれるんだろう?
「えっ、ちょっとあんた達、何言っているのよ」
「お嬢。既にベックマンを殺った件からして、持ち出しです。少しくらい増えても問題なのでは」
トムが笑って言ってくれた。
確かにそうだ。後で聞いた所によると、どうやら、俺が何も出来なかったベックマンをやっつける件は勝手にキャロラインがやってくれたらしい。俺を調べるついでに横領の件を知ったので、
「とっちめようとしたら、斬り掛かってきたから教会もろとも燃やしてやったのよ」
冷静になったキャロラインはさも当然のように言ってくれたんだけど。
「本当にあんた達、馬鹿ね。どうなっても知らないからね」
この時は頭に血が登っていたのだろう。そう言うとキャロラインは怒って出て行った。
「お嬢様!」
慌てて侍女がついて言った。
「良かったな。セド」
トムが声をかけて来た。
「えっ? 俺にはどうなったかわからないんだが」
俺が素直に聞くと、
「多数決で大司教に天誅を下すということになったんだよ」
リックが教えてくれた。
そうか、この傭兵バスターズは厄災女の独裁ではなくて多数決で決まるらしい。
俺はエインズワースに天誅を下せるなら何でも良かったのだ。
まあ、その準備に厄災女にこき使われることになるんだけど、報酬の一部だと思えば安いものだった。
*******************************************************
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
お気に入り登録、感想等頂けたら嬉しいです。
私のお話『電子書籍化決定』
『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』
リンクはすぐ下に
表紙絵もはってあります。
8/26コミックシーモアにて先行配信予定です
21
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
女を肉便器にするのに飽きた男、若返って生意気な女達を落とす悦びを求める【R18】
m t
ファンタジー
どんなに良い女でも肉便器にするとオナホと変わらない。
その真実に気付いた俺は若返って、生意気な女達を食い散らす事にする
ああ、もういらないのね
志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。
それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。
だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥
たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる