145 / 174
第三部 隣国潜伏編 母の故国で対決します
侯爵令嬢の独り言2 領地で軟禁されてしまいました
しおりを挟む
ダーーーーン
私はその事を聞いた時、怒りのあまり父の執務室の扉を蹴破っていた。
「お父様! どういうことですの! これは」
私はドーソンからの速達便を手に父を睨みつけていた。
父は憤怒の形相の私を驚いていた。その横の兄は首をすくめていた。
これは絶対に何か知っていた顔だ。
「どういう事とは何がだ?」
「はああああ! アンが行方不明になった事ですわ」
私はしらじらしく対応してくれた父の机を思いっきり叩いていた。
「今、ドーソン伯爵令嬢から文が届きましたの。アンが王妃様に呼び出されたまま帰って来ないと」
「それはイングリッド、アン嬢と王家の話なのではないのか」
父がとぼけて言う。
「そんな事は百も承知しております。私が聞きたかったのは、こうなることは前もって知っていらっしゃったから、私達を学園からこの地に呼び戻したことについてですわ」
私は手を握りしめて言った。
「そのようなことは判っていなかったよ。と言うか、王家の呼び出しが何のことだか判らないよ、イングリッド。私がお前たちを呼び戻したのは疫病が流行りそうだから、危険だから領地に戻したのだ」
「何をおっしゃるのですか。うちの兄と公爵家のイェルド様に王国からオファーが来たのはダミーですわね。元々ブルーノの狙いはテレーサ王女の婚約者に王太子をすることだったのでしょう」
「それは私もブルーノではないから判らないよ」
「ふんっ、そんな訳ありませんよね。ブルーノに取っては元々前国王の忘れ形見のアンは目障りだった。そのアンが王太子と婚約しているという事実はブルーノに取ってとても邪魔なことです。そのアンを退けてあの偽物王女を王太子の婚約者にすげ替えれば言うことないですもの。今回の疫病の特効薬と引き換えにね」
私は父を睨み付けた。
「だからそれは判らないと言っているだろう」
「でも、元々その可能性があると判ってましたよね。その時に私達がアンの傍にいればアンを守ろうとするから邪魔になるから領地に戻したのですね」
私は涙目になっていた。
「いや、イングリッド、私もそこまで考えて戻したわではない」
「でも、でも、アンは私達が居なくて結局一人になったんです。王妃様にも一人では逆らえないではないですか。私は自分さえ良ければアンのことなんて何も考えなかったのです。自分さえ、イェルド様と婚約できればいいと思っていました。アンのことなんて何も考え無かったんです。一番大変なのはアンだったのに、自分のことしか考えていなかったのですわ」
私は泣き出していた。
そうだ。私は今、気付いたのだ。この機にアンを取り除こうとブルーノが画策した可能性があった。
「いや、イングリッド、お前が何も泣かなくても」
「そうです。私は泣く資格もないのです。親友のアンの危機に何も出来なかったのですから」
私は大泣きしていた。
「いや、イングリッド、ここはお前が泣くようなことは王家がしないだろう」
「そんなの判らないではないですか。あの鬼王妃なんです。下手したらアンは・・・・」
私は最悪のことを考えてしまった。
「大変だわ。こんなところで油を売っている暇はないわ」
私は慌てて立ち上がった。こんなところにいてはいられない。なんとしてもアンを見つけなくては。
「何処に行くつもりだ。イングリッド! 今は領地の館から出るのは許さないよ!」
いつもは優しい父のきつい言葉に私は驚いた。
「お父様! お父様は私に友達を見捨てろとそうおっしゃいますの?」
私はじろりと父を睨み付けた。
「いや、そうではないが、今は危険だから、領地でおとなしくしていろと言うのだ」
父は私に言いきった。
「お父様!」
「トム!」
私の言い訳も聞かずに領地の騎士団長を呼び出したのだ。
「イングリッドは自分の部屋でしばらくおとなしくしているんだ」
「お呼びですか」
「イングリッドを絶対に屋敷から出すな」
父は騎士団長に命じたのだった。
「そんな、お父様!」
「お嬢様、申し訳ありません」
私は騎士団長に謝られながら、自分の部屋に押し込まれたのだった。
私は後悔した。父の言うことなんて聞いて領地に戻って来るんじゃなかったと。
その上父が私を軟禁したことを許せなかった。
私は絶対に親友のアンを傍で守りたかったのに。
「もう二度と父の言うことは聞かない!」
私は心に決めたのだった。
私はその事を聞いた時、怒りのあまり父の執務室の扉を蹴破っていた。
「お父様! どういうことですの! これは」
私はドーソンからの速達便を手に父を睨みつけていた。
父は憤怒の形相の私を驚いていた。その横の兄は首をすくめていた。
これは絶対に何か知っていた顔だ。
「どういう事とは何がだ?」
「はああああ! アンが行方不明になった事ですわ」
私はしらじらしく対応してくれた父の机を思いっきり叩いていた。
「今、ドーソン伯爵令嬢から文が届きましたの。アンが王妃様に呼び出されたまま帰って来ないと」
「それはイングリッド、アン嬢と王家の話なのではないのか」
父がとぼけて言う。
「そんな事は百も承知しております。私が聞きたかったのは、こうなることは前もって知っていらっしゃったから、私達を学園からこの地に呼び戻したことについてですわ」
私は手を握りしめて言った。
「そのようなことは判っていなかったよ。と言うか、王家の呼び出しが何のことだか判らないよ、イングリッド。私がお前たちを呼び戻したのは疫病が流行りそうだから、危険だから領地に戻したのだ」
「何をおっしゃるのですか。うちの兄と公爵家のイェルド様に王国からオファーが来たのはダミーですわね。元々ブルーノの狙いはテレーサ王女の婚約者に王太子をすることだったのでしょう」
「それは私もブルーノではないから判らないよ」
「ふんっ、そんな訳ありませんよね。ブルーノに取っては元々前国王の忘れ形見のアンは目障りだった。そのアンが王太子と婚約しているという事実はブルーノに取ってとても邪魔なことです。そのアンを退けてあの偽物王女を王太子の婚約者にすげ替えれば言うことないですもの。今回の疫病の特効薬と引き換えにね」
私は父を睨み付けた。
「だからそれは判らないと言っているだろう」
「でも、元々その可能性があると判ってましたよね。その時に私達がアンの傍にいればアンを守ろうとするから邪魔になるから領地に戻したのですね」
私は涙目になっていた。
「いや、イングリッド、私もそこまで考えて戻したわではない」
「でも、でも、アンは私達が居なくて結局一人になったんです。王妃様にも一人では逆らえないではないですか。私は自分さえ良ければアンのことなんて何も考えなかったのです。自分さえ、イェルド様と婚約できればいいと思っていました。アンのことなんて何も考え無かったんです。一番大変なのはアンだったのに、自分のことしか考えていなかったのですわ」
私は泣き出していた。
そうだ。私は今、気付いたのだ。この機にアンを取り除こうとブルーノが画策した可能性があった。
「いや、イングリッド、お前が何も泣かなくても」
「そうです。私は泣く資格もないのです。親友のアンの危機に何も出来なかったのですから」
私は大泣きしていた。
「いや、イングリッド、ここはお前が泣くようなことは王家がしないだろう」
「そんなの判らないではないですか。あの鬼王妃なんです。下手したらアンは・・・・」
私は最悪のことを考えてしまった。
「大変だわ。こんなところで油を売っている暇はないわ」
私は慌てて立ち上がった。こんなところにいてはいられない。なんとしてもアンを見つけなくては。
「何処に行くつもりだ。イングリッド! 今は領地の館から出るのは許さないよ!」
いつもは優しい父のきつい言葉に私は驚いた。
「お父様! お父様は私に友達を見捨てろとそうおっしゃいますの?」
私はじろりと父を睨み付けた。
「いや、そうではないが、今は危険だから、領地でおとなしくしていろと言うのだ」
父は私に言いきった。
「お父様!」
「トム!」
私の言い訳も聞かずに領地の騎士団長を呼び出したのだ。
「イングリッドは自分の部屋でしばらくおとなしくしているんだ」
「お呼びですか」
「イングリッドを絶対に屋敷から出すな」
父は騎士団長に命じたのだった。
「そんな、お父様!」
「お嬢様、申し訳ありません」
私は騎士団長に謝られながら、自分の部屋に押し込まれたのだった。
私は後悔した。父の言うことなんて聞いて領地に戻って来るんじゃなかったと。
その上父が私を軟禁したことを許せなかった。
私は絶対に親友のアンを傍で守りたかったのに。
「もう二度と父の言うことは聞かない!」
私は心に決めたのだった。
0
お気に入りに追加
1,635
あなたにおすすめの小説
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。
そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。
そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。
「エレノア殿、迎えに来ました」
「はあ?」
それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。
果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?!
これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる