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第三部 隣国潜伏編 母の故国で対決します
プロローグ 辺境の村の農民A 疫病が心配で帰ったら見たこともない赤毛の女が妻に看病されていたので、叩き出そうとしたら、妻に逆ギレされました
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ムオニオ村はヴァンドネル伯爵領の端の村だ。本当に田畑しか無い寂れた村だ。
俺はこの地で田畑を耕して40年になるが何も代わり映えのしない村だ。
20年くらい前、領主様の遠縁のアンネ様が王妃様になられた時には村も明るくなって少しは暮らし向きも良くなるかと思ったが、現女王様の夫である摂政様に殺されなさって以来村は更に貧しくなった。現当主様になってからは税も重くなって更に暮らし向きが悪くなってきた。
何でもアンネ様の遠縁であるということで摂政様からの締め付けも厳しいらしい。
それでなくても暮らしは厳しいのに、その上の重税は堪えた。別に我らは上がどうなろうが、雲の上のことで勝手にしてほしいのだが。
最近は訳の判らない病気まで流行りだして、伯爵領と他領との交流までもが禁止されたのだ。
兵士たちが領地の境目に関所を設けて、行動を規制している。
疫病が収まるまでだという話だが、この疫病がどのようなものなのかは判っていなかった。どんなふうに感染していくのか、はたまたどれだけの人が死ぬのか。
俺はとても不安だった。
「ヘイモ、大変だ!」
畑仕事をしている俺に、隣の家のハッリが息せき切って駆け寄ってきた。
「どうした? ハッリ」
「村長さんの所の家令が領都に行ってきたんだが、何でも領都では疫病が流行って沢山の人が亡くなっているそうだぞ」
「そうなのか」
俺は驚いた。謎の疫病が少し流行理だしたとしか、俺は聞いていなかったのだ。
「何でも、毎日人がバタバタと倒れて死んでいるそうだ」
「そんなに酷いのか」
俺は瞠目した。
「ああ、月曜日に家令は帰ってきたそうなんだけど、昨日から高熱を出されて寝込んでいると俺の親戚の侍女の子が教えてくれたんだ」
「そうなのか」
「ああ、この村の中で流行るのも時間の問題かもしれない。だからお前のところも気をつけたほうが良いぞ」
俺はそれを聞いて、慌てて家に帰った。
家族に気をつけるように注意するつもりだったのだ。見知らぬものにはむやみに話しかけてはいけないし、知り合いと、あまり頻繁に会うのは止めろと。
しかし、そこで生き倒れた赤毛の女を看病している家内のヒルッカを見て、俺は切れてしまったのだ。
「ヒルッカ、お前は何をしているんだ。見も知らない女を連れてきて、看病するなんて。この女が流行り病だったらどうするんだ。すぐに外に追い出せ!」
俺は家内の性格も何も考えずに啖呵を切っていた。
「何言っているんだい、あんた! こんないたいけない女の子を叩き出すなんぞ、私の目の黒いうちは許さないよ。出ていくならあんたが出ていきな」
しかし、逆ギレしたヒルッカによって、蹴倒されて家の外に弾き飛ばされたのだ。
「ひ、ヒルッカ、何するんだ亭主に向かって」
「私の亭主はね、生き倒れた旅の女の子を見捨てるような恥ずかしい男は、御免だね」
そう言うとヒルッカは俺の目の前の扉を閉めようとした。
「いや、ちょっと待て、ここは俺の家だぞ」
「それがどうしたんだい!反省するまで、絶対に入れないからね」
ビシッ。
俺は扉を止めようとしたが、怒り狂ったヒルッタに眼の前で締め出されてしまった。
な、何で疫病を心配した俺が叩き出されるんだ! 絶対におかしい。
しかし、ヒステリーを起こした家内に勝てるわけもなく、厩で夜を明かすことになってしまったのだ。
更に、厩にいる俺の様子を見に来た実の母にまで言われたのだ。
「ヘイモ。今回はあんたが悪いよ、さっさとヒルッカに謝りな」
何故だ。絶対に俺はおかしくないはずだ!
でも、娘も息子も誰も俺には味方してくれなかったのだ。
俺はこの地で田畑を耕して40年になるが何も代わり映えのしない村だ。
20年くらい前、領主様の遠縁のアンネ様が王妃様になられた時には村も明るくなって少しは暮らし向きも良くなるかと思ったが、現女王様の夫である摂政様に殺されなさって以来村は更に貧しくなった。現当主様になってからは税も重くなって更に暮らし向きが悪くなってきた。
何でもアンネ様の遠縁であるということで摂政様からの締め付けも厳しいらしい。
それでなくても暮らしは厳しいのに、その上の重税は堪えた。別に我らは上がどうなろうが、雲の上のことで勝手にしてほしいのだが。
最近は訳の判らない病気まで流行りだして、伯爵領と他領との交流までもが禁止されたのだ。
兵士たちが領地の境目に関所を設けて、行動を規制している。
疫病が収まるまでだという話だが、この疫病がどのようなものなのかは判っていなかった。どんなふうに感染していくのか、はたまたどれだけの人が死ぬのか。
俺はとても不安だった。
「ヘイモ、大変だ!」
畑仕事をしている俺に、隣の家のハッリが息せき切って駆け寄ってきた。
「どうした? ハッリ」
「村長さんの所の家令が領都に行ってきたんだが、何でも領都では疫病が流行って沢山の人が亡くなっているそうだぞ」
「そうなのか」
俺は驚いた。謎の疫病が少し流行理だしたとしか、俺は聞いていなかったのだ。
「何でも、毎日人がバタバタと倒れて死んでいるそうだ」
「そんなに酷いのか」
俺は瞠目した。
「ああ、月曜日に家令は帰ってきたそうなんだけど、昨日から高熱を出されて寝込んでいると俺の親戚の侍女の子が教えてくれたんだ」
「そうなのか」
「ああ、この村の中で流行るのも時間の問題かもしれない。だからお前のところも気をつけたほうが良いぞ」
俺はそれを聞いて、慌てて家に帰った。
家族に気をつけるように注意するつもりだったのだ。見知らぬものにはむやみに話しかけてはいけないし、知り合いと、あまり頻繁に会うのは止めろと。
しかし、そこで生き倒れた赤毛の女を看病している家内のヒルッカを見て、俺は切れてしまったのだ。
「ヒルッカ、お前は何をしているんだ。見も知らない女を連れてきて、看病するなんて。この女が流行り病だったらどうするんだ。すぐに外に追い出せ!」
俺は家内の性格も何も考えずに啖呵を切っていた。
「何言っているんだい、あんた! こんないたいけない女の子を叩き出すなんぞ、私の目の黒いうちは許さないよ。出ていくならあんたが出ていきな」
しかし、逆ギレしたヒルッカによって、蹴倒されて家の外に弾き飛ばされたのだ。
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そう言うとヒルッカは俺の目の前の扉を閉めようとした。
「いや、ちょっと待て、ここは俺の家だぞ」
「それがどうしたんだい!反省するまで、絶対に入れないからね」
ビシッ。
俺は扉を止めようとしたが、怒り狂ったヒルッタに眼の前で締め出されてしまった。
な、何で疫病を心配した俺が叩き出されるんだ! 絶対におかしい。
しかし、ヒステリーを起こした家内に勝てるわけもなく、厩で夜を明かすことになってしまったのだ。
更に、厩にいる俺の様子を見に来た実の母にまで言われたのだ。
「ヘイモ。今回はあんたが悪いよ、さっさとヒルッカに謝りな」
何故だ。絶対に俺はおかしくないはずだ!
でも、娘も息子も誰も俺には味方してくれなかったのだ。
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是非ともお読み下さい。
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