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第二部 学園波乱編 隣国から多くの留学生が来ました

この身を引いたのに、近衛に槍で串刺しにされました

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フィル様と別れろ!

いきなり王妃様に決断を迫られて私は呆然としていた。

確かに私は平民のアンだ。いずれは別れなくては行けないと心の底では思っていた。

でも、こんなに急に決断を迫られるなんて・・・・

「すみません。王妃様。少しだけ考える時間を頂けませんか」
私は言ってみた。

「アン、考えるって何を考えるのですか? あの子はもう危篤状態なのです。あなたの決断が遅くなればなるだけ、助かる可能性が減るのが理解できないのですか」
王妃様は畳み掛けるように言ってきた。

でも、そんな。少しくらい、考えさせてくれてもいいのに。

でも、王妃様も必死みたいだった。私もフィル様が死ぬのは嫌だ。

でも、こんな風に脅迫されて別れさせられるなんて!


元々、元王女の私がフィル様の婚約者のままいれば、こんなことがあるのは考えられたことだった。
スカンディーナの奴らが考えそうな事だった。
それを私が後回しにして考えてこなかったのが行けなかったのかもしれない。


「判りました。王妃様。私を婚約破棄してください」
「あなたから婚約辞退するのではなくてですか」
「王家から婚約破棄してもらったほうが諦めが付きます」
私は、もうそう言うしか無かった。

「そうですか。本当に申し訳ないわ。アン。それにプラスして更にあなたの学園からの退学もスカンディーナは要求しているの。でもこれは流石に・・・・」
「いえ、もうフィル様には二度とお会いしたくないので退学にして頂いて結構です」
婚約破棄された私がフィル様に会える訳なんて無いじゃない!
これは私の最後に残った矜持だ。

私はそう言うと、抜け殻のようになって王妃様の部屋を出た。


外には、フリーダもメリーもいなかった。

でも抜け殻のようになった私は夢遊病者のように、歩いていたので深く考えられなかった。



そのまま私は乗ってきた馬車に乗せられた。私はこの先のことは何も考えていなかったのだ。
というか、到底考えられる余裕がなかった。


学園に入学してからこの半年強の間、私は前世も含めて一番楽しかった。

前世ではいじめられて不登校になっていたし、友達もこんなにいなかった。本当に。楽しかったのだ。


入学してエルダと知り合って、クラスで、前世からの憧れのフィル様と隣どおしになって感激したこと。フィル様に思わず嫌いな人参を食べさせしたこと。教科書が無くなったけれど、フィル様の教科書を二人で観て授業を受けられたこと。

私は前世も含めて好きな男の子と1つの教科書で勉強するなんて初めての体験だったのだ。

周りからの顰蹙を買ったけれど、そんな私をフィル様は守ってくれた。

その後、色々あったけれど、皆で一致団結して球技大会を戦えた。

その中でもフィル様は私を気にしてくれた。

ブルーノの襲撃の後も保健室でずうーっと私の面倒を見てくれた。

夏休みはフィル様にお祭りに連れて行ってもらったし、フィル様は苦労して私に花輪を作ってくれたんだった。

本当に楽しかった。

二学期になっても、演劇でクラスの皆とワイワイやれて良かった。

お別れする時にフィル様に頬にキスしてもらって、恥ずかしかったけど、とても嬉しかった。

でも、それも、これも、もう全部終わりなんだ。

そう、もう終わりだ。皆に会うこともない。

そう思うと私の目から次々に涙が出てきた。そして、涙が止まらなくなった。

こんな事になるのなら、フィル様と一緒に行けばよかった。フィル様がどれだけ反対しようとも、行こうと思えば行けたんだから。

本当に私は馬鹿だった。もっとがままになって、聖女とか偽物王女みたいに駄々こねてみれば良かった。


でも、もう終わりだ。全て終わった事だ。

私は涙に暮れた。

空から雨が振ってきた。空は私の気持ちと同じで、いつの間にか真っ暗になって凄まじい雨になっていた。

その雨の中、私は泣き続けたのだ・・・・


私が泣き疲れた時だった。

馬車がいつの間にか止まっていた。


そして、ズボッとと大きな音がしたのだ。

最初は何が起こったか判っていなかった。

よく見ると私の胸に槍が突き刺さっていたのだ。

私は一瞬何が起こったか、判らなかった。

ズブリ

続いてもう一本。槍に貫かれいた。

凄まじい痛みが体を走った。

血が吹き出る。

うそ・・・・。

外を見ると近衛騎士が槍を構えていた。

近衛騎士に殺されるの? 私・・・・。

王妃様が私に頭を下げていたのは、私を殺すことに謝っていたんだとその時、初めて判った。


私は朦朧とした意識の中でフィル様のことを思った。

「フィル様!」
私の頭の中には元気に微笑むフィル様の笑顔が見えた。

次の瞬間だ。馬車を中心として巨大な火の玉が出現してあたり一面を焼き尽くしたのだ。
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