モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
上 下
70 / 174
第一部 学園始動編 モブでなく悪役令嬢だと判りました

泣いている所に王太子が来て慰めてくれました

しおりを挟む
私は母さんの態度の激変に驚いていた。小さい時から肉親は母さんだけだと思っていた。その母さんが他人行儀で話してくるのだ。

私のたった一人の母さんが・・・・母さんが・・・・

私はアンネローゼだろうが、なんだろうがどうでも良かった。

ただ、母さんがいなくなったことがショックだった。

私はいたたまれなくなって思わず部屋を飛び出した。



「アン!」
その廊下の机のところで寝ていた誰かが私に声をかけてきた。

でも、無視して、私はそのまま外に飛び出したのだ。

でも、王宮で知っているところなんて殆どない。

そのまま魔術の塔の裏庭に走り込んでいた。

そして、壁に手をついて私は泣いていた。

優しかった母さん。
厳しく叱ってくれた母さん。
針仕事の夜なべを遅くまでしていた母さん。
料理を教えてくれた母さん。
礼儀作法マナーを厳しく指導してくれる母さん。

特に礼儀作法マナーは厳しくて、何で貴族の礼儀作法マナーが私にいるのかよく判らなかった。母は、いつかこういう時が来るかもしれない、と私に知っている全ての知識を分け与えてくれたのだ。

そして、そんな母さんがいなくなってしまったのだ。私が余計な事を聞いたから


「アン」
後ろから声をかけられてて、慌てて私は振り向いた。

「えっ、フィル様!」
その場に立っている人物を見て驚いた。
そういえばさっきはよく見ていなかったけれど、部屋の前で寝ていた人は金髪だった。

えっ、フィル様が部屋の前で寝ずの番をしてくれていたの?
そんなの知らずに私は母の横でぐっすり寝ていた!


「どうしたの? アン、そんなに泣いて。自分がアンネローゼだと知ってそんなにショックだったの?」
心配してフィル様が聞いてきた。

「フィル様は私がアンネローゼだとご存知だったのですか?」
「いいや、はっきりとは分からなかった。アンネローゼではないかと思ってはいたのだけど」
そうか、フィル様も判っていたんだ。私がアンネローゼだと。判っていなかったのはひょっとして私だけだったとか。

皆、そう思っていたんだ。

「そんなに嫌なの。アンネローゼだったのが」
再度、心配してフィル様が聞いてきた。

「いえ、それは、今、わかったところで、私がアンネローゼであるという事は実感としては全然ないんです」
「そうか、じゃあ、アンネローゼだったと判って泣いていたんじゃなかったんだね」
フィル様はホッとしたみたいだった。でも、何故フィル様は私がアンネローゼということに拘られるんだろう? 私にはよく判らなかったが、

「ええ、母がいきなり敬語で話してきたことがショックで」
私は母に一線を引かれて話されたことを話した。

「そうだろう。敬語で話しかけられたらショックだろう! だから私には敬語でなくて普通に話してほしい」
フィル様がそう言うと一歩近づいてきた。

えっ、何故そうなる?

「えっ! だってあなたはこの国の王太子殿下ではないですか」
「そして、君は俺が探していた俺の婚約者だ」
私はフィル様の言葉に固まってしまった。

そうだった。アンネローゼはフィル様の婚約者だった。そう言えば馬車の中で、アンネローゼを探していると言われた記憶がある。

ええええ! 私、本当にフィル様の婚約者になってしまったのなの? 私は混乱した。

「ずっと、ずーーーっと君を探していたんだ」
フィル様がずいっと近づいてきた。

「えっ、フィル様、私はアンネローゼだと言っても今は平民です」
「そんなの関係ない。君がどうなっていようとも私の婚約者であるのは変わらないんだから」
フィル様が近づいてくる。

ちょっ、ちょっと待ってフィル様、そんなに近寄らないで。

私の手をフィル様に握られてしまった。

ウッソーーー! フィル様に憧れのフィル様に手を握られた・・・・
確かに今までダンスの稽古とかでフィル様に体に触れられることはあったけれど、こんな情熱的に迫られたことなど無かった。

「ちょっと、フィル様、近いです」
更にフィル様が私にドアップで迫ってくるんだけど・・・・

私の慌てふためくのにかかわらずにフィル様は私を抱きしめたのだった。

嘘っ! 私は憧れのフィル様に抱きしめられていのだ!

バチン
私はその瞬間、私は耐えきれなくて頭が沸騰してしまった。

気がつくとフィル様が私に弾き飛ばされて地面に転がっていたのだ。

「えっ」
私は唖然とした。フィル様を弾き飛ばしてしまったのだ。

「ひ、ひどいじゃないか。アン」
フィル様がムッとして抗議してきた

「いきなり抱きつくなんて無理です」
私が必死に言い募った。

「本当だ! フィル! いきなり迫りすぎ」
後ろからアルフの呆れた声を聞いて私は固まってしまった。

ホッとしたと同時にアルフに見られたと知って私は真っ赤になっていた。

「邪魔するな、アルフ! やっと、やっとアンネローゼに会えたんだぞ」
「いきなり迫ると逃げられるぞ。なあ、アン」
興奮しているフィル様にアルフが言ってくれた。

私はもう真っ赤になっていた。恥ずかしくて穴の中にこもりたかった。


しかし、次の瞬間私は正気に戻った。

「フィル、大変だ! 王妃様がアンの母親の部屋に我々が止めるのを無視して入っていかれた!」
バートがとんでもない情報を持ってきたのだ。

そうだ、私がフィル様に近付くのを好まない王妃様もいたんだった。

私は慌てて母さんの部屋に戻ったのだ。

しおりを挟む
script?guid=onここまで読んでいただいてありがとうございます。この話の続編始めました
『転生して悲劇の王女になったつもりが魔王でした!勇者から斬りつけられて素手で殴り返した、前世コミュ障引き籠りだった弱小王国王女の帝国建国物語』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/782706326

両親を幼い頃に殺された王女アンネローゼはその仇を討つために母国スカンディーナ王国に仲間とともにアンネローゼ王国を建国した。悲劇の王女として祖国に暖かく迎え入れられると思ったのに、周りの民の反応は疫病神に対するようで、その上、そこに現れた勇者と名乗る男に魔王と言われ、自分が前世のゲーム『スカンディーナの聖女』のラスボス魔王だと知るのだ。何でこうなった? 自分は悲劇のヒロインのはずが…ラスボスは両親の仇、悪逆非道の摂政ブルーノのはずなのに…。ブルーノが慈悲深い聖王だと…そんな訳あるか
弱小国の軍隊を率いて必至にあがく可憐な王女のはずが、素手で勇者を粉砕、付いた渾名が暴虐の山姥、とか赤髪の魔王、私を見ると皆逃げていくんだけど、なんで!前世コミュ障引きこもりだった私が気弱なふりをすればするだけドツボに嵌って…。隣国の暴虐令嬢の先輩と大魔術師、冷酷非道な内務卿に良いように振り回されて、いく国盗り物語です。


是非ともお読み下さい。
感想 44

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……

藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」 大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが…… ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。 「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」 エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。 エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話) 全44話で完結になります。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」  出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。  だがアーリンは考える間もなく、 「──お断りします」  と、きっぱりと告げたのだった。

処理中です...