モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
上 下
65 / 174
第一部 学園始動編 モブでなく悪役令嬢だと判りました

母を取り戻すために馬車ターミナルに行きました

しおりを挟む
母が拐われた。
私には何故母が拐われなければならないのか、意味が判らなかった。平民の母を拐ってどうしようというのだ? 私の家は平民で身代金を払うお金など殆どない。
皆の嫌がらせで、母を拐ったのだろうか? でも、わざわざアベニウスまで人を派遣して拐うとなると、とんでもない手間と時間がかかる。そんな事するくらいなら、私を拐かしたほうが早いだろう。

聖女がやったみたいに、人に頼んでも良いのだ。
この前私を襲わせて上手くいかなかったから、今度は母を拐ったというのだろうか?
私にはこの意味は良く判らなかった。


私は取り敢えず、着換えて教室に戻った。

「どうしたの? アン。授業に遅刻して」
授業の後にドーソンが聞いてきた。

「ちょっと部屋に忘れ物をしてしまって、取りに行ったのよ」
「それなら良いけれど、B組の奴ら、動きが怪しいのよね。何だったら絞めるから、酷いことされたら、ちゃんと言ってよ。男どもは当てにならないから」
ドーソンが言ってくれた。うーん、ドーソンに絞められたら、クリスティーン様ほどではないにしても、大変なことになるのは目に見えていた。まあ、まだ我慢出来るから、取りあえずは黙っていてあげようと思った。

「いや、そんなことはないぞ」
「ルンド先生が席変えのことを言ったときも、アンを庇わなかったじゃない」
アルフが言い訳するが、ドーソンはそれを一刀両断した。
「・・・・」

「あのう、アンさん。俺は母にはっきりと言うよ」
その後ろからフィル様が乗り出してこられた。

「あのう、殿下」
「フィル!」
「何言っているんですか。王妃様に殿下とは話すなとアンは言われているんですよ。そんなの言えるわけ無いでしょう」
ドーソンがはっきりと言ってくれた。

「判った。その点も含めてはっきりと言ってくる」
フィル様はそう言って、立ち去ろうとされた。

「で、殿下!」
私は思わずフィル様に頼ろうとしてしまった。

「どうかした? アンさん」
フィル様は私を心配そうに見てくれた。私はその姿を心の中に焼き付けることにした。
そう、ここはフィル様を巻き込んではいけない。私は心の中で首を振ったのだ。

「なんでもありません。今までいろいろとありがとうございました」
私はフィル様に頭を下げた。

「えっ、ちょっと待って。俺は君を諦めたわけではないからね」
「すいません。何を仰っていらっしゃるか良く判らないのですが」
諦めたわけないって何をだ?

「殿下。そう言うことは王妃様を納得させてから言ってもらえますか」
「本当に最低ですよ」
ドーソンやメリーがなにか言っているけれど・・・・。

まあ、私がフィル様を見るのが最後になるかもしれないから、一応お礼を言っておいただけなのだ。

「俺は必ず、母を納得させてくるから」
殿下はそう言って慌てて出て行かれた。

殿下のきれいな金髪を靡かせて・・・・。

私は教室もグルッと見た。

3ヶ月弱ここで授業を受けたのだ。

もう見納めかもしれない。

部屋に帰るとエルダとイングリッドに置き手紙を残した。
彼女らが帰ってくるのは3日後だ。
でも、私がもし授業に出なかったら誰かが見てくれるだろう。
私は脅迫状も同じように置いておいた。

そして、私は部屋に鍵をかけると馬車ターミナルに向かった。

本来なら、ガーブリエル様に相談するのが筋かもしれないし、最善の策かもしれないけれど、敵はどこから見ているか判らなかった。何しろ女子寮の中にも平気で入れるくらいなのだから。
母の命はなんにも増して大切だった。


私はスクール馬車で待ち合わせの所まで行こうとした。
「やあ、お嬢ちゃん。今日はどうしたんだい?」
顔見知りになった御者さんが私を見て聞いてきたくれた。

「田舎から母が出てくるの。それを迎えに行くのよ」
私は御者さんに嘘をついた。でも、私がいなくなったと知れば皆調べるだろう。その時にこう言っておけば、母のことも調べくれるだろう。
「そうか。良かったね。お母さんと会うのは久しぶりだろう」
御者さんが言ってくれた。
「まあねこの前の球技大会を見に来てくれたんだけど、その時色々話す暇もなくて」
「そうなんだ。お母さんは王都内のホテルにでも泊まられるのかい」
「多分そう」
「多分そうって、外泊届は出してきたんだろう。書くところがあったはずだけど」
えっ、そうなんだ。知らなかった。

「今日は遅くに帰るから大丈夫よ」
「そうなのかい。せっかく会えるのに」
「母も忙しい人だから」
「残念だな。最終は20時だからね。遅れないようにするんだよ」
御者さんは親切に言ってくれた。

「着いたよ。お嬢ちゃん。馬車はもう着いているんじゃないかな?」
親切にも御者さんが言ってくれた。
母は実際はその馬車には乗っていないのだが。

「ありがとう。探してみるわ」
私は御者さんにお礼を言って馬車を降りた。

ゆっくりとターミナルを歩く。

母を連れて相手はこんなところに来るだろうか?
おそらく母を何処かに監禁して、私だけを連れ去ろうとするはずだった。
ここに連れてきてくれればまだやりようはあるが・・・・。
私は周りを見回した。

私と一緒に降りた、上級生が私の後ろに来た。

「右手の馬車に何も言わすに乗れ」
そして、囁いたのだ。
右手の馬車の扉が開いた。

私は後ろの男に押し込められるように中に乗せられたのだ。

中にはにこやかに笑うベントソン商会会長がいた。
しおりを挟む
script?guid=onここまで読んでいただいてありがとうございます。この話の続編始めました
『転生して悲劇の王女になったつもりが魔王でした!勇者から斬りつけられて素手で殴り返した、前世コミュ障引き籠りだった弱小王国王女の帝国建国物語』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/782706326

両親を幼い頃に殺された王女アンネローゼはその仇を討つために母国スカンディーナ王国に仲間とともにアンネローゼ王国を建国した。悲劇の王女として祖国に暖かく迎え入れられると思ったのに、周りの民の反応は疫病神に対するようで、その上、そこに現れた勇者と名乗る男に魔王と言われ、自分が前世のゲーム『スカンディーナの聖女』のラスボス魔王だと知るのだ。何でこうなった? 自分は悲劇のヒロインのはずが…ラスボスは両親の仇、悪逆非道の摂政ブルーノのはずなのに…。ブルーノが慈悲深い聖王だと…そんな訳あるか
弱小国の軍隊を率いて必至にあがく可憐な王女のはずが、素手で勇者を粉砕、付いた渾名が暴虐の山姥、とか赤髪の魔王、私を見ると皆逃げていくんだけど、なんで!前世コミュ障引きこもりだった私が気弱なふりをすればするだけドツボに嵌って…。隣国の暴虐令嬢の先輩と大魔術師、冷酷非道な内務卿に良いように振り回されて、いく国盗り物語です。


是非ともお読み下さい。
感想 44

あなたにおすすめの小説

冤罪で処刑されたら死に戻り、前世の記憶が戻った悪役令嬢は、元の世界に帰る方法を探す為に婚約破棄と追放を受け入れたら、伯爵子息様に拾われました

ゆうき
恋愛
ワガママ三昧な生活を送っていた悪役令嬢のミシェルは、自分の婚約者と、長年に渡っていじめていた聖女によって冤罪をでっちあげられ、処刑されてしまう。 その後、ミシェルは不思議な夢を見た。不思議な既視感を感じる夢の中で、とある女性の死を見せられたミシェルは、目を覚ますと自分が処刑される半年前の時間に戻っていた。 それと同時に、先程見た夢が自分の前世の記憶で、自分が異世界に転生したことを知る。 記憶が戻ったことで、前世のような優しい性格を取り戻したミシェルは、前世の世界に残してきてしまった、幼い家族の元に帰る術を探すため、ミシェルは婚約者からの婚約破棄と、父から宣告された追放も素直に受け入れ、貴族という肩書きを隠し、一人外の世界に飛び出した。 初めての外の世界で、仕事と住む場所を見つけて懸命に生きるミシェルはある日、仕事先の常連の美しい男性――とある伯爵家の令息であるアランに屋敷に招待され、自分の正体を見破られてしまったミシェルは、思わぬ提案を受ける。 それは、魔法の研究をしている自分の専属の使用人兼、研究の助手をしてほしいというものだった。 だが、その提案の真の目的は、社交界でも有名だった悪役令嬢の性格が豹変し、一人で外の世界で生きていることを不審に思い、自分の監視下におくためだった。 変に断って怪しまれ、未来で起こる処刑に繋がらないようにするために、そして優しいアランなら信用できると思ったミシェルは、その提案を受け入れた。 最初はミシェルのことを疑っていたアランだったが、徐々にミシェルの優しさや純粋さに惹かれていく。同時に、ミシェルもアランの魅力に惹かれていくことに……。 これは死に戻った元悪役令嬢が、元の世界に帰るために、伯爵子息と共に奮闘し、互いに惹かれて幸せになる物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿しています。全話予約投稿済です⭐︎

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」  出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。  だがアーリンは考える間もなく、 「──お断りします」  と、きっぱりと告げたのだった。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!

鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……! 前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。 正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。 そして、気づけば違う世界に転生! けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ! 私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……? 前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー! ※第15回恋愛大賞にエントリーしてます! 開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです! よろしくお願いします!!

処理中です...