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第一部 学園始動編 モブでなく悪役令嬢だと判りました
王妃の言葉に絶望して友人の胸の中で泣きました
しおりを挟む――グラグラグラと激しく揺れる。
これは、このアヒルがわざと揺らしているのだろう。
そのせいで、水が中にどんどん入ってきて、徐々に身体が沈んでいく。
「やっ、やだ! なんで? 私を助ける為に、来てくれたんじゃないの!?」
『グァ"ア"ア"ーーグァァゲゲゲッ! グァア"ア"ゲゲゲッッ!!』
笑っている。いや、これは……嘲笑っている。
「そんな……! あなたは、自由に浮けるからいいじゃないっ! 私はそうじゃないの! 可哀想に思わないの!? 出来る人が、出来ない人を助けるのが当たり前じゃないっ!!」
大きく口を吊り上げ、嗤い、嗤い、嗤われる。
その嗤い顔や、声を聞きたくなくて。私は耳を押さえ、下を向く。
(嫌だ。こんなの……嫌、嫌、嫌。誰か、誰か、助けて……誰か……――)
その時――脳裏に、未来ちゃんの温かな笑顔が浮かぶ。
私は、凜々花たちにいじめられているのをいつも庇ってくれる、未来ちゃんにお礼を言ったことがあった。
すると――『そんな、お礼なんてしなくていいよ。あっ! でも、もし……私が悲しい時があったら一緒にいて欲しいな。それが、一番嬉しいよ』と未来ちゃんは、温かな笑顔を浮かべていた。
「あ……。悲しい、時に…………」
未来ちゃんは、泣いていた。ずっと、ずっと、悲しそうに泣いていた。
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――未来ちゃんが、私の代わりになると言ってから。凜々花たちに言われるまま、私は未来ちゃんから自然と離れていった。
未来ちゃんは傷ついたような、悲しそうな顔を浮かべて私を見ていたのに……。私はそれを分かっていて、見て見ぬふりをした。
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私は、私をずっと助けてくれた未来ちゃんを、ひどい方法で裏切ったのだ。
「ぁっ、あああああーーー!! 未来ちゃん、未来ちゃん、未来ちゃんっ!!」
今さら、今さらなことなのに……時間を戻してやり直したい。
なんで、今になって大事なことに気が付くのだと。むしろ、気が付きたくなかったと――苦しい胸を強く押さえながら、泣きわめく。
うるさいというように、グワリと足元が傾き。勢いよく水中に放り出された。
「ゲホッ、ゲホッ……!」
水が鼻に入り、ツンとする。
しかし、それが治る前に――身体が、強い流れに引っ張られる。
ゴゥゴゴゴゥウ……! と雷鳴に似た音。
私が引っ張り込まれた場所。そこは、渦潮の中であった。
ブクブクブクブクとたくさんの泡が視界を占めている。もみくちゃに回転して、浮上することなど到底無理だろう。
泡の隙間から顔を覗かせた、白いアヒルが『ギャボッ、ギャボッ、ギャボッ!!』と大きく口を開けて嗤っている。
口の中は、サメの歯のような何重にもなっている鋭い歯が、ビッシリと生えていた。
その白いアヒルに、ガブリと肩を齧られ。鋭い歯が、肌にめり込む――そして、じわじわじわと何かを体内に入れられている。
(……っ、いっ、痛っ、痛い、痛い、痛いぃ"い"い"!!)
身体中が焼けるように痛い。
体内を、ぐちゃぐちゃに掻き回されているような痛さだ。
そして直ぐに、私の身体がドロドロと溶けていく。
それを、悪い視界の中でも理解し。恐怖に叫ぼうと息を吸い込んだことで、ガボガボガボと水を大量に飲み込んでしまった――。
(助け……て、未来ちゃ……――)
私が、助けを求めた人物は――無情にも、己が裏切り、既にこの世を去ってしまった哀れな女の子であった。
21
『転生して悲劇の王女になったつもりが魔王でした!勇者から斬りつけられて素手で殴り返した、前世コミュ障引き籠りだった弱小王国王女の帝国建国物語』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/782706326
両親を幼い頃に殺された王女アンネローゼはその仇を討つために母国スカンディーナ王国に仲間とともにアンネローゼ王国を建国した。悲劇の王女として祖国に暖かく迎え入れられると思ったのに、周りの民の反応は疫病神に対するようで、その上、そこに現れた勇者と名乗る男に魔王と言われ、自分が前世のゲーム『スカンディーナの聖女』のラスボス魔王だと知るのだ。何でこうなった? 自分は悲劇のヒロインのはずが…ラスボスは両親の仇、悪逆非道の摂政ブルーノのはずなのに…。ブルーノが慈悲深い聖王だと…そんな訳あるか
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是非ともお読み下さい。
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