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第一部 学園始動編 モブでなく悪役令嬢だと判りました

球技大会4 さすがに優勝は無理でしたが、少しは善戦しました

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「やったーーー」
「勝ったーーー」
「これでB組はトイレ掃除1ヶ月だ!」
私達は皆抱き合って喜んだ。
私は横のイングリッドと抱き合い、エルダと抱き合い、その横のフィル様と抱き合い・・・・、

ええええ! やってしまった!

私に抱きつかれて、フィル様が少し驚いた顔をしている。

「す、すみません!」
私は慌てて真っ赤になって離れる。

「別に問題ないよ」
笑ってフィル様は言ってくれるけど、そんな訳ないだろう!
でも、やってしまったのは私だ。

それを許してくれるフィル様はやはり紳士だ。

でも、ダメダメダメ!

フィル様はこの国の王太子殿下であり、モブにすらなれなかった平民の私が好きになってはいけないのだ!

そうなのだ。親しく出来るのも今のうちだけ。

でも、少しだけ嬉しかったのは秘密だ。

他の皆も、お互いに近くの人と抱き合っていて、あんまり目立っていなくてほっとした。

すぐに次のものが抱きついてきて、私はそれどころではなくなった。

しかし、その私を射殺しそうに睨んでいる聖女の視線に私は気付かなかったのだ。

「アン、凄かったじゃない」
メリーが抱きついてきた!
「何言っているのよ。メリーこそ、最後の3ポイント凄かったわ」
「ありがとう。でも、本当にもう、決まってよかったよ。シュートする時は本当にドキドキで、決まらなかったらどうしようと思ったもの!」
「決まって本当に良かったね」
私たちはお互いに抱き合った。

一時期、筆入れを壊された時は、こんな風にメリーと抱き合えるなんて思ってもいなかった。

「アン!やったわね。秘密兵器炸裂で」
「ヒルダも!凄かったじゃない。シュートも成功したし」
私はドーソンさんとも抱き合う。彼女ともこんなふうに喜べるなんて思ってもいなかった。

「あなたに比べたら全然よ」
「何言っているのよ。全員の努力よ。私達皆頑張ったもの」
「ようし、このまま優勝目指して頑張りましょう」
「うん、お互いに」
私たちは手を取り合った。

この1ヶ月みんなで必死に頑張ってきたのだ。最初にあった私に対する垣根がなくなって本当に良かった。これも仲を取り持とうとしてくれたエルダとかイングリッドのおかげだった。
私は再度二人に抱きついていた。私達はまさに優勝したかのように喜んではしゃいでいた。

私は感激していたのだ。


そんな私を遠くから母が心配そうに凝視していたのを私は知らなかった。

私たちはそのまま食堂に流れ込んで、皆で喜びあった。



でも、そんな私達は、無謀にも食事の後に最強の3年生A組に挑んで、そして、惨敗した。

本当にもう手も足も出なかった感じなのだ。体力も魔力量も劣る私たちは、生徒会長や副会長の前に完敗だった。

でも、20対40と多少は善戦できたと思う。

ミニアンちゃんは何と12点も得点できたのだ。

まあ、最後は皆が必死にボールを私に集めてくれたからだ。

みんな、もうフラフラで、最後は何とか立っているだけだったが。

私達は力尽きて負けたが、やりきった感はあった。

決勝も3年A組が2年A組を圧倒していた。


「まあ、皆よくやったと思うよ」
「ご苦労様」
フィル様とイングリッドが皆をねぎらった。


そして、表彰式にはなんと国王陛下もいらっしゃったのだ。

「3年A組の皆、この度は優勝おめでとう。まあ小憎らしい程の強さで、3年生の力のあるものが当然のごとく他を圧倒したという感じだった。
準優勝の2年A組も、今年叶わなかった分を来年他を圧倒して頑張ってほしい。
そんな中、今年の1年生は善戦したと思う。特に聖女が中心となったB組とA組の対決は見ものだった。特にA組はいろんな工夫をして皆でつかんだベスト4だと思う。その中でも、末尾がeのアンさんの土人形というかちびっ子人形には驚いたし、その活躍には心躍るものがあった。3年生のA組には及ばなかったが、A組の一致団結した行動には今後の更なる躍進に期待している。
また、今日は力が及ばなかったと悔しがっている者は、後日の雪辱を期待している。努力は必ず報われれるのだから。
今日は皆も力を出し切ってくれて疲れ切っただろう。ゆっくり休んでほしい。
そして、明日からまた勉学に励んでほしい」
陛下の言葉が終わって皆一斉に拍手した。

「アン、陛下に名前を挙げられるなんて凄いじゃない」
エルダが言ってくれるが、私はまさか陛下に私の自己紹介の言葉が知られているとは思ってもいなかった。というか、こんなところで陛下から私の名前が出るとは思ってもいなかったのだ。

今日の活躍は生徒会長のイェルド様とか副会長のクリストフ様だったのに!
私は名前を出されるまでの活躍はしなかったと思う。

まあ、陛下は暇でもないはずなのに、1週間に1度はガーブリエル様のところに来ていて、私も会っていたけれど。絶対に私が一人で訓練している間に、ガーブリエル様が陛下に面白おかしく話したに違いない。私はガーブリエル様に少しムッとした。明日王宮に行った時に絶対にガーブリエル様に文句を言おうと私は心に決めたのだ。

母とはその後も急いでいるからとほとんど話せなかった。
「アン、これからも頑張るのよ」
「お母さんも元気で」
私は母に抱きついて別れを惜しんだ。これが母に何の躊躇いもなく抱きつけた最後の機会だったとは思ってもいなかった。


その日は夜遅くまで、私達は皆で食堂で騒いでいた。私もやっとクラスで溶け込めたと浮かれすぎていた。


でも、良いことの後には必ず悪いことがやってくるのだ。

私は少し目立ちすぎたらしい。そして、その事が私の命にかかることになるなんて、夢にも思っていなかったのだ。
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