上 下
6 / 174
第一部 学園始動編 モブでなく悪役令嬢だと判りました

王太子と一緒にお昼ごはんを食べるはめになりました。

しおりを挟む
その後、ルンド先生は今後の学園生活について色々説明してくれた。
授業の取り方等々だ。1年生は大半は必須授業だが、一部選択授業があるのだ。
あと、3学期制で、テストは5回。それは日本と同じだ。私は定期テストは前世は受けたことがほとんどなかったけれど、今回は頑張らねば。

そして、説明が終わり、食事時間になった。

お昼はどうしよう? エルダは公爵令嬢だし、あんまり平民の私が側にいるのは良くないだろう。
と思って立ち上がろうとした時だ。

さっと横にエルダが来たのだ。

「さあっ、アン、食事に行くわよ」
私はエルダに手を掴まれた。

「早く行かないと、食いっぱぐれるの」
逃げようとした私はエルダにがっちり摑まれて、食堂に向かったのだ。

「えええ!、エルダ、殿下とかと一緒にいかなくてよかったの?」
「何でよ」
エルダが聞いてきた。
「だって殿下、婚約者いらっしゃらないんでしょ。あなた公爵令嬢だから釣り合うじゃない」
「何言っているのよ。私はこの学園に青春しに来たのよ。男を捕まえに来たのではないわ。それに私、殿下はパスだから」
「そうなの。でも平民の私とばっかりいるよりとあなたもまずいんじゃないの。お貴族様の付き合いとか」
「そんなのは学園出てからでもいくらでも出来るわよ。私は自分を包み隠さない、あんたが気に入っているの。アンも気を使わなくて良い私と一緒のほうが良いでしょ。だってあのクラス、ほとんど貴族よ」
「やっぱそうなんだ」
親の爵位を言わなかったのは、殿下に最初の挨拶に遠慮したからか。
でも、がさつな私はその中でやっていけるんだろうか?


エルダが心配したように、学食は既に凄まじい列だった。食堂の外にまで列が出来ている。
いつもは時間をずらしていたので、こんなに混むと思ってもいなかった。何しろお昼は1時間しか無くて、その時間に皆が学食に集中するのだ。600人が並ぶ姿は壮絶だった。

「すごい列ね、エルダ」
「本当に! 私もここまで凄いとは思わなかったわ」
私たちは唖然としていた。

でも、列が進むのは早い。何しろ定食は基本は肉か魚かなのだ。
食堂のおばちゃん達も次々にトレイに入れて渡していってくれる。
基本学食は全て同じだった。お貴族様も王太子もない。

でも、場所取りは更に大変だった。空いたしりから埋まっていく。
ここは、お貴族様のエルダに任してはおけないだろう。私が頑張ることにした。そして、私は空いているスペースを見つけたのだ。

そこには、私の前の席のアルフがいたのだ。

「ここ2つ空いている?」
私はアルフに聞いた。

「ああ」
戸惑ったようにアルフが答えた。

「エルダっ、こっちよ、空いているって」
私はエルダに大阪のおばちゃん宜しく声をかけた。

「本当にエルダさんを呼び捨てにしているんだ」
私は聞いたことのあるその声に固まってしまった。
慌てて横を見るとなんとそこには麗しのフィリップ殿下が座っておられたのだ。

1テーブル6人がけの席にクラスメートの男子が4人座っている。

「さすが、アン、よく空いている席を見つけられたわね」
そこへ食器のトレーを持って、エルダが来た。

「それも殿下の横を見つけるなんて凄いわ」
呆れてエルダが言った。

「いえ、空いている席がここしか無かったから」
「皆殿下の横で遠慮していたんじゃない?」

「いやもう、アンさんって最高」
私の後ろの席のバート・スンドグレーンが笑い出した。

「さっ、座って座って」
殿下らにそう言われて何故か私は殿下の横に座らされてしまった。

「で、エルダさんはいつからアンさんとお知り合いに?」
「昨日よ。この子、遅刻してきたのよ」
「えっ、でも、昨日は確か生徒会長自ら新入生の対応をしておられたよね」
「そうよ、アンったら、イライラしている兄の前で『最後がeのアンです』って言い切ったのよ」
「凄い」
「あの会長の前でやったんだ」
皆感心してくれた。いや、呆れられたと言うべきだろう。

「で、どうなったの?」
「どうなったもこうなったも、このまま放って置いておいたらまずいと思ったから、私が誤魔化してアンを寮の部屋に案内してあげたのよ。そこで友達になったの」

「そうなんだ。で、最初から名前呼び捨てなの?」
「そうよ」
「イヤだから、公爵令嬢だとは知らなくて」
エルダの笑いに、私が必死に言い訳する。

「でも、名前言ったんだろう?」
「上の名前だけね。だって公爵令嬢だって知られたら話もしてくれそうになかったんだもの。まあ、この子は私の名前聞いても私が公爵令嬢だとは気付かなかったと思うけど」
いたずらっぽく、エルダが言った。うーん、たしかに貴族の名前は全ては知らないから、気づかなかった可能性はある。

「じゃあ、アンさん、俺はアルフ、俺のこともアルフって呼んで」
「アルフさん」
「うーん、なんか変だな。じゃあ俺も君のことアンって呼ぶから俺の事もアルフって」
私が呼ぶと首を傾げてアルフが言う。

まあ、お父さんが騎士ならば、アルフは平民と変わらないだろうと私は思ってしまったのだ。

「じゃあアルフ」
「よし、これで俺たちも友達だね」
うーん、このアルフもなんか笑顔がきれいなんだけど。

「じゃあ、俺もバートで」
「バート様」
「えっ、何で俺だけ様付けなの。さん付けでもないし」
「だって伯爵家のご令息ではないですか」
バート・スンドグレーンは伯爵家の令息で宰相の息子だ。彼はゲームの攻略対象の一人だった。少し気難しいはずだった。

「いや、ちょっと待って、アルフも子爵家の息子だよ。親は騎士団長だし」
「えっ、そうなんですか。騎士だっていっていたから、お貴族様でないかと思っていました」
私は慌てた。また子爵令息様を呼び捨てにしてしまった。

「はい、でも、もうだめだからね」
「えっ、でも」
私は無しにしようとしたが、アルフのことは強引に呼び捨てにさせられることになってしまった。

バートはバートさんでなんとか許してもらった。
「じゃあ俺も、フィルって呼んでよ」
フィリップ殿下が言われる。いや、それは絶対に無理だから。

「そんな、恐れ多いこと出来ません」
「ええええ、でも、エルダさんも公爵令嬢だよ。公爵令嬢を呼び捨てに出来るんだから、王子も出来るよね」
私はプルプル首を振った。
私もまだ、王太子狙いの貴族の女の子らに殺されたくない。
その横で
「何で公爵と子爵がよくて伯爵がダメなんだ」
バートがブツブツ言っているが私は無視した。

結局殿下のことはフィルさんと呼ぶことで許してもらった。でも、絶対になにか違う。
と言うか、私お貴族様のご令嬢方から下手したら殺されるんじゃないだろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」  出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。  だがアーリンは考える間もなく、 「──お断りします」  と、きっぱりと告げたのだった。

聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件

バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。 そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。 志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。 そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。 「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」 「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」 「お…重い……」 「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」 「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」 過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。 二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。 全31話

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

処理中です...