30 / 113
大国王妃視点 ついに小国に攻め入ることになりました
しおりを挟む
「な、何なのですか? その汚らしい者は」
私はその者を見て目が点になった。
なんかドロドロに汚れた男で、それも何か、据えたような匂いがしてくるのだ。
謁見の間が汚れるでは無いか!
「何故、そのような汚い者を連れてきた?」
クラークも怒ってくれた。
「も、申し訳ありません。この男、王宮の裏の畑の肥だめに落ちていたのですが」
「肥だめですって!」
私は悲鳴を上げた。
「直ちにつまみ出せ!」
クラークも汚物を見るような目で見てくれた。
「それが、この男、ドラクエ在駐インスブルク大使だと名乗りまして、親書を持っていると。前陛下の命により国からの使者はまず、何を置いてもここに連れてくるようにとなっており」
近衛騎士が報告した。
「なんとそのような命令が残っていたのか? これからはせめて風呂に入ってからここに来さすようにしろ」
不機嫌な声でクラークが叫んだ。本当にその通りだ。このような汚物を見せられるとは今日は本当に最悪だ。ここに来る男も男だ。せめてきれいになってから来れば良いのに!
私もとても不快になった。
「陛下、申し訳ありません。インスブルクの奴らにこのような目に合わせられまして」
ドラクエ子爵とおぼしき汚らしい汚物が何か叫んでいる。
私は言っては何だがとても気持ち悪かった。さっさとつまみ出してほしかった。
「それでインスブルクはなんと申してきたのだ」
「何も聞かずにここまで転移させられましたので、詳しくはこれに」
汚物が何か汚れた紙を差し出した。
侍従も嫌そうにそれを取って、クラークに渡した。
「直ちにドラクエを風呂にでも入れてやれ」
クラークは言ってくれたが、私としてはそのまま肥だめに返してほしかった。
王宮が汚れる。
汚物が部屋から連れ出されて私はほっとした。
しかし、インスブルクもなんてことをしてくれたのだ。本当にやることが下品だ。まああの小娘も礼儀作法は全然なっていなかったが……
クラークは鼻をつまんで封筒を開けて読んでいるが、どんどん顔が険しくなってきた。
私はそのように汚い物をよく読めると見ていたのだが、
「あなたどうなさったのですか?」
さすがに聞いてみた。
私が聞くとクラークが書面を私に寄越そうとした。
「いえ、そのような汚い物は」
私が思わず身を引いた。
クラークはそれを見て嫌そうにしたが、その紙を宰相に渡す。
宰相はそれをひっつかむように読み出した。
良く汚物に触れられると感心してみていると、
「な、なんとこれは、損害賠償として金貨100万枚を請求してきておりますぞ」
「な、何ですって! 金貨100万枚ですって!」
私は思わず叫んでいた。
「金貨100万枚など下手したら一国の一年間の予算ですぞ」
外務卿が驚愕していた。
「何という身の程知らずな」
「小国の考えは判りかねますな」
周りがざわめく。
「そもそも、今回の件はリディアーヌがしでかしたことではありませんか! 何故我々が損害賠償を払わないといけないのです」
私はヒステリックに叫んでいた。
そうだ。払うのならばインスブルク側だろう。
「インスブルク側は今回のリディアーヌ様の行いは全てエイベル様が作ったえん罪であると申しておりますな」
「何ですって! エイベルに全治三ヶ月の重傷を負わせながら何という戯れ言を言うのですか?」
冷静な宰相の言葉に思わず私は打擲しそうになった。
「許されませんな、そのような戯れ言を吐くなど」
「本当に」
周りの貴族達が私に賛同してくれた。
「インスブルク側はリディアーヌ様はアラベラ・トレント公爵令嬢を虐めたこともなく、襲わせようとしたことも無いと。全てはエイベル様とアラベラ様の作り出したえん罪だと申しております」
「何ですって。そんなわけは無いでしょう」
「そうです。娘はあの事件で傷つけられて部屋に閉じこもっておりますのにそのような事は言いがかりです」
トレント公爵も私の言葉に頷いてくれた。
「しかし、我々がしらべたところえん罪の可能性が高く」
「はああああ! 宰相、あなたいつからインスブルクの犬になったのです」
「そうだぞ! ムタース。襲われた娘はあの後リディアーヌを恐れて部屋から出れなくなったのだぞ」
私たちは宰相に食ってかかった。
「このシュタイン王国の王太子である我が息子が傷つけられたことには代わりあるまい。おのれ、インスブルクめ。素直に娘を差し出し、賠償金10万枚を渡せば穏便に事を済ませてやろうとしたものを、もう許さん!
何が元々前陛下が無理矢理婚約を結んだだ。王家が娘をどんなことがあっても守ると誓っただと! 笑わせるな。なんであのような粗暴な娘を我が国が求めたというのだ。ふざけたことを申しおって! このシュタイン王国に逆らったらどうなるか目に物を見せてくれるわ」
クラークが叫んでくれた。
「陛下、いかがなさるのですか?」
「決まっておるわ。インスブルクを征伐する」
「しかし、陛下。インスブルクは山多く攻め入るのは大変かと」
「ふん、ここまで虚仮にされたのだ。許すわけにはいかん。トレント!」
「はっ、御前に」
トレント公爵がクラークに跪いた。
「貴様に10万の軍勢を預ける。直ちにインスブルクに赴き、インスブルクを制圧し、リディアーヌの小娘等を予の前に引き出すのだ。予自ら成敗してくれようぞ」
「御意」
トレントが頭を下げた。
「軍務卿。直ちに侵攻する10万の軍勢を選び指示を出せ。人選等は任せる」
「御意」
周りは蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
「しかし、陛下!」
「ムタース、これはもう決定事項だ。その方も征伐に協力せよ」
「はっ」
あくまでも反抗しようとしたムタースは仕方なしに頷いていた。
「ふふふふ、これでリディアーヌも捕まえられるわ」
私は征伐の準備に右往左往する群臣を見ながら、エイベルを傷つけてくれた小娘をどのように料理して痛めつけるか考え出したのだった。
********************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
ついに戦争の勃発です。シュタインの大軍を前にインスブルクはどうするのか?
リディの運命やいかに?
続きが気になる方はお気に入り登録、感想等して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
私はその者を見て目が点になった。
なんかドロドロに汚れた男で、それも何か、据えたような匂いがしてくるのだ。
謁見の間が汚れるでは無いか!
「何故、そのような汚い者を連れてきた?」
クラークも怒ってくれた。
「も、申し訳ありません。この男、王宮の裏の畑の肥だめに落ちていたのですが」
「肥だめですって!」
私は悲鳴を上げた。
「直ちにつまみ出せ!」
クラークも汚物を見るような目で見てくれた。
「それが、この男、ドラクエ在駐インスブルク大使だと名乗りまして、親書を持っていると。前陛下の命により国からの使者はまず、何を置いてもここに連れてくるようにとなっており」
近衛騎士が報告した。
「なんとそのような命令が残っていたのか? これからはせめて風呂に入ってからここに来さすようにしろ」
不機嫌な声でクラークが叫んだ。本当にその通りだ。このような汚物を見せられるとは今日は本当に最悪だ。ここに来る男も男だ。せめてきれいになってから来れば良いのに!
私もとても不快になった。
「陛下、申し訳ありません。インスブルクの奴らにこのような目に合わせられまして」
ドラクエ子爵とおぼしき汚らしい汚物が何か叫んでいる。
私は言っては何だがとても気持ち悪かった。さっさとつまみ出してほしかった。
「それでインスブルクはなんと申してきたのだ」
「何も聞かずにここまで転移させられましたので、詳しくはこれに」
汚物が何か汚れた紙を差し出した。
侍従も嫌そうにそれを取って、クラークに渡した。
「直ちにドラクエを風呂にでも入れてやれ」
クラークは言ってくれたが、私としてはそのまま肥だめに返してほしかった。
王宮が汚れる。
汚物が部屋から連れ出されて私はほっとした。
しかし、インスブルクもなんてことをしてくれたのだ。本当にやることが下品だ。まああの小娘も礼儀作法は全然なっていなかったが……
クラークは鼻をつまんで封筒を開けて読んでいるが、どんどん顔が険しくなってきた。
私はそのように汚い物をよく読めると見ていたのだが、
「あなたどうなさったのですか?」
さすがに聞いてみた。
私が聞くとクラークが書面を私に寄越そうとした。
「いえ、そのような汚い物は」
私が思わず身を引いた。
クラークはそれを見て嫌そうにしたが、その紙を宰相に渡す。
宰相はそれをひっつかむように読み出した。
良く汚物に触れられると感心してみていると、
「な、なんとこれは、損害賠償として金貨100万枚を請求してきておりますぞ」
「な、何ですって! 金貨100万枚ですって!」
私は思わず叫んでいた。
「金貨100万枚など下手したら一国の一年間の予算ですぞ」
外務卿が驚愕していた。
「何という身の程知らずな」
「小国の考えは判りかねますな」
周りがざわめく。
「そもそも、今回の件はリディアーヌがしでかしたことではありませんか! 何故我々が損害賠償を払わないといけないのです」
私はヒステリックに叫んでいた。
そうだ。払うのならばインスブルク側だろう。
「インスブルク側は今回のリディアーヌ様の行いは全てエイベル様が作ったえん罪であると申しておりますな」
「何ですって! エイベルに全治三ヶ月の重傷を負わせながら何という戯れ言を言うのですか?」
冷静な宰相の言葉に思わず私は打擲しそうになった。
「許されませんな、そのような戯れ言を吐くなど」
「本当に」
周りの貴族達が私に賛同してくれた。
「インスブルク側はリディアーヌ様はアラベラ・トレント公爵令嬢を虐めたこともなく、襲わせようとしたことも無いと。全てはエイベル様とアラベラ様の作り出したえん罪だと申しております」
「何ですって。そんなわけは無いでしょう」
「そうです。娘はあの事件で傷つけられて部屋に閉じこもっておりますのにそのような事は言いがかりです」
トレント公爵も私の言葉に頷いてくれた。
「しかし、我々がしらべたところえん罪の可能性が高く」
「はああああ! 宰相、あなたいつからインスブルクの犬になったのです」
「そうだぞ! ムタース。襲われた娘はあの後リディアーヌを恐れて部屋から出れなくなったのだぞ」
私たちは宰相に食ってかかった。
「このシュタイン王国の王太子である我が息子が傷つけられたことには代わりあるまい。おのれ、インスブルクめ。素直に娘を差し出し、賠償金10万枚を渡せば穏便に事を済ませてやろうとしたものを、もう許さん!
何が元々前陛下が無理矢理婚約を結んだだ。王家が娘をどんなことがあっても守ると誓っただと! 笑わせるな。なんであのような粗暴な娘を我が国が求めたというのだ。ふざけたことを申しおって! このシュタイン王国に逆らったらどうなるか目に物を見せてくれるわ」
クラークが叫んでくれた。
「陛下、いかがなさるのですか?」
「決まっておるわ。インスブルクを征伐する」
「しかし、陛下。インスブルクは山多く攻め入るのは大変かと」
「ふん、ここまで虚仮にされたのだ。許すわけにはいかん。トレント!」
「はっ、御前に」
トレント公爵がクラークに跪いた。
「貴様に10万の軍勢を預ける。直ちにインスブルクに赴き、インスブルクを制圧し、リディアーヌの小娘等を予の前に引き出すのだ。予自ら成敗してくれようぞ」
「御意」
トレントが頭を下げた。
「軍務卿。直ちに侵攻する10万の軍勢を選び指示を出せ。人選等は任せる」
「御意」
周りは蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
「しかし、陛下!」
「ムタース、これはもう決定事項だ。その方も征伐に協力せよ」
「はっ」
あくまでも反抗しようとしたムタースは仕方なしに頷いていた。
「ふふふふ、これでリディアーヌも捕まえられるわ」
私は征伐の準備に右往左往する群臣を見ながら、エイベルを傷つけてくれた小娘をどのように料理して痛めつけるか考え出したのだった。
********************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
ついに戦争の勃発です。シュタインの大軍を前にインスブルクはどうするのか?
リディの運命やいかに?
続きが気になる方はお気に入り登録、感想等して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
418
この次の作品はこちら
『もふもふ子犬の恩返し・獣人王子は子犬になっても愛しの王女を助けたい』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/11945420
この前の作品はこちら
『男爵令嬢に転生したら実は悪役令嬢でした! 伯爵家の養女になったヒロインよりも悲惨な目にあっているのに断罪なんてお断りです』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/249911765
【書籍化】!
『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/302627913
2023年発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。

表紙絵をクリックしたらレジーナブックスのページに飛びます。
お気に入りに追加
1,193
あなたにおすすめの小説

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

乙女ゲームはエンディングを迎えました。
章槻雅希
ファンタジー
卒業パーティでのジョフロワ王子の婚約破棄宣言を以って、乙女ゲームはエンディングを迎えた。
これからは王子の妻となって幸せに贅沢をして暮らすだけだと笑ったゲームヒロインのエヴリーヌ。
だが、宣言後、ゲームが終了するとなにやら可笑しい。エヴリーヌの予想とは違う展開が起こっている。
一体何がどうなっているのか、呆然とするエヴリーヌにジョフロワから衝撃的な言葉が告げられる。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様・自サイトに重複投稿。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる