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第五部 小国フィーアネンの試練編
【これラノ2023ノミネート記念】アドが倒れたと聞いて王宮まで駆け通して、アドの胸の中で寝てしまいました
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私はせっかく子爵たちを叩き潰そうとしたのに、エクちゃんを構えた私を見て慌てて動き出したアベラール男爵たちの前に、ほとんど何もやる事は無かった。
折角こんな遠くまで来たのに、私のした事といえば呪いの十字架を叩き壊しただけだった。
まあ、ジスランにはとても感謝されたけれど……
その翌日にはジェドらが遅れてやってきて、後始末をいろいろ始めてくれた。
後は帰るだけだ、と思った時だ。私は何かを忘れている気がしたのだ。
そう言えば、いつもは煩いアドがいないんだけど……
「ジェド、アドはどうしたの?」
変だ。絶対にいつもならもう着いているはずなのに……何も言わないで出て来たから怒っているんだろうか?
私は少し不安になって来た。
「ああ、殿下なら王宮の女官と仲良くやっていましたよ」
笑みを浮かべてジェドが言ってくれたんだけど。
何、それ。私は顔が引きつるのを自分でも思った。
「何言っているんですか。ジェラルド様。殿下はフラン様を追いかけようとして無理をして倒れられて……」
オーレリアンが途中で話していた口を押さえた。まずいことを言ったと顔に書いてあった。
「えっ」
アドが無理して倒れた……考えたらこの前の襲撃の傷がまだ完全に治っていなかったのかもしれない。私は青くなった。
「いや、フラン様。殿下からは大したことがないから黙っていろと……」
「姉上。あんなの全然大したことないよ」
ジェドが余計なことを言ってくれたが私は無視した。
「メラニー、後はお願いするわ」
私は立ち上がってメラニーに頼んだ。
「えっ、フラン、どうするのよ」
メラニーが慌てて聞いて来たが、後はメラニーらに任せておけば大丈夫だろう。
「帰るわ」
私はそう言うと駆けだしたのだ。
「フラン様!」
「ちょっとフラン、もう夜だから……」
そんなのは関係なかった。私が勝手に出て来たからアドはまた無理をしたのだ。病み上がりなのに……
私は自分自身の自分勝手さにムカついた。
せっかくアドの命が無事だったのだからもう少し自重すればよかった。
「ウォーーーー」
私は自分自身が許せなかった。
さらに加速する。
夜道もくそもなかった。
出来る限り人通りのない道を突き進んだつもりだ。
途中でなんか弾き飛ばした気もするが、あれは弾き飛ばしても大丈夫だと私の本能が言うので無視した。
後で聞いたところでは子爵領に駐屯しようとしてやってきた帝国軍を殲滅、村を襲おうとしていた山賊の大半を後ろから跳ね飛ばし、馬車を襲っていた夜盗団をこれまた壊滅させたそうだ。
夜盗団から逃げていた御者が見たのは、後ろから雄叫びをあげて飛んでくる金髪の化け物を見て夜盗団の一部が対処しようとしたそうだ。その一団をその化け物は一瞬で跳ね飛ばして慌てて逃げ去ろうとした残りの夜盗団も跳ね飛ばし、次は自分らだと青ざめていたら何もしないで駆け抜けていったそうだ。その時の恐怖が忘れられないとか言っていたとかいないとか……
それ以来、帝国軍や盗賊たちには、夜に雄叫びを上げて走ってくる山姥を見たら逃げろだとか、金髪の化け物伝説だとかの話が伝わって夜の襲撃が減ったんだとか……
私はそんな事は知らずにただひたすら走ったのだ。
そして、王宮の裏庭から潜入して、アドの部屋に突撃したのだ。
アドの部屋の扉はちょっと強く当たり過ぎたみたいで吹っ飛んだみたいだったが、それどころではなかった。
「アド!」
「フラン!」
そこには音に驚いて起き上がったアドがいたんだけど。
「良かった」
私はそのままアドに抱きついたのだ。流石に勢いは落ちていたと思う……
「どうしたんだフラン」
「倒れたって聞いたから心配で飛んで来た」
私がそう言ってアドを見上げると、
「どこから来たんだよ。本当に。大したことは無いのに。ちょっと無理しただけで」
「もう、無理しないで」
「フランがいきなり飛び出すからだろう」
むっとしてアドが言うので
「ごめん」
私は素直に謝った。
「えっ」
アドが驚いた顔をするんだけど。
「どうしたの?」
私が聞くと
「いや、フランが謝って来たと思って」
「私も悪いと思った時は謝るわよ」
私はそう言うとアドの胸にもたれた。
何か心地よい暖かさだ。
そう言えばずうーーーーっとかけ通しだった。
「アド、少しだけ寝ても良い?」
「ああ、いいよ、フラン」
アドが軽く背中を抱きしめてくれた。
私はアドに抱かれて、そのまま寝てしまったのだ。さすがの私も疲れ切っていた。
そのまま爆睡してしまったのだった。
後で王妃様やフェリシー先生からまた、延々と怒られることになるのだが、この時はアドの胸の中の心地よさを満喫していたのだった。
***********************************************************
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
一応、久々の甘々なふたりでした……少し違うような気もしますが……
さて、この書籍が上から5番目にノミネートされた【次にくるライトノベル大賞2023】
の投票が本日12月6日の17時59分までです。
https://tsugirano.jp/
まだの方は是非とも投票して頂けたら嬉しいです!
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まあ、ジスランにはとても感謝されたけれど……
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「ジェド、アドはどうしたの?」
変だ。絶対にいつもならもう着いているはずなのに……何も言わないで出て来たから怒っているんだろうか?
私は少し不安になって来た。
「ああ、殿下なら王宮の女官と仲良くやっていましたよ」
笑みを浮かべてジェドが言ってくれたんだけど。
何、それ。私は顔が引きつるのを自分でも思った。
「何言っているんですか。ジェラルド様。殿下はフラン様を追いかけようとして無理をして倒れられて……」
オーレリアンが途中で話していた口を押さえた。まずいことを言ったと顔に書いてあった。
「えっ」
アドが無理して倒れた……考えたらこの前の襲撃の傷がまだ完全に治っていなかったのかもしれない。私は青くなった。
「いや、フラン様。殿下からは大したことがないから黙っていろと……」
「姉上。あんなの全然大したことないよ」
ジェドが余計なことを言ってくれたが私は無視した。
「メラニー、後はお願いするわ」
私は立ち上がってメラニーに頼んだ。
「えっ、フラン、どうするのよ」
メラニーが慌てて聞いて来たが、後はメラニーらに任せておけば大丈夫だろう。
「帰るわ」
私はそう言うと駆けだしたのだ。
「フラン様!」
「ちょっとフラン、もう夜だから……」
そんなのは関係なかった。私が勝手に出て来たからアドはまた無理をしたのだ。病み上がりなのに……
私は自分自身の自分勝手さにムカついた。
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「ウォーーーー」
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夜道もくそもなかった。
出来る限り人通りのない道を突き進んだつもりだ。
途中でなんか弾き飛ばした気もするが、あれは弾き飛ばしても大丈夫だと私の本能が言うので無視した。
後で聞いたところでは子爵領に駐屯しようとしてやってきた帝国軍を殲滅、村を襲おうとしていた山賊の大半を後ろから跳ね飛ばし、馬車を襲っていた夜盗団をこれまた壊滅させたそうだ。
夜盗団から逃げていた御者が見たのは、後ろから雄叫びをあげて飛んでくる金髪の化け物を見て夜盗団の一部が対処しようとしたそうだ。その一団をその化け物は一瞬で跳ね飛ばして慌てて逃げ去ろうとした残りの夜盗団も跳ね飛ばし、次は自分らだと青ざめていたら何もしないで駆け抜けていったそうだ。その時の恐怖が忘れられないとか言っていたとかいないとか……
それ以来、帝国軍や盗賊たちには、夜に雄叫びを上げて走ってくる山姥を見たら逃げろだとか、金髪の化け物伝説だとかの話が伝わって夜の襲撃が減ったんだとか……
私はそんな事は知らずにただひたすら走ったのだ。
そして、王宮の裏庭から潜入して、アドの部屋に突撃したのだ。
アドの部屋の扉はちょっと強く当たり過ぎたみたいで吹っ飛んだみたいだったが、それどころではなかった。
「アド!」
「フラン!」
そこには音に驚いて起き上がったアドがいたんだけど。
「良かった」
私はそのままアドに抱きついたのだ。流石に勢いは落ちていたと思う……
「どうしたんだフラン」
「倒れたって聞いたから心配で飛んで来た」
私がそう言ってアドを見上げると、
「どこから来たんだよ。本当に。大したことは無いのに。ちょっと無理しただけで」
「もう、無理しないで」
「フランがいきなり飛び出すからだろう」
むっとしてアドが言うので
「ごめん」
私は素直に謝った。
「えっ」
アドが驚いた顔をするんだけど。
「どうしたの?」
私が聞くと
「いや、フランが謝って来たと思って」
「私も悪いと思った時は謝るわよ」
私はそう言うとアドの胸にもたれた。
何か心地よい暖かさだ。
そう言えばずうーーーーっとかけ通しだった。
「アド、少しだけ寝ても良い?」
「ああ、いいよ、フラン」
アドが軽く背中を抱きしめてくれた。
私はアドに抱かれて、そのまま寝てしまったのだ。さすがの私も疲れ切っていた。
そのまま爆睡してしまったのだった。
後で王妃様やフェリシー先生からまた、延々と怒られることになるのだが、この時はアドの胸の中の心地よさを満喫していたのだった。
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