282 / 309
第五部 小国フィーアネンの試練編
エルグラン国王視点 アドの居場所を聞こうとしても破壊の魔女は教えてくれませんでした
しおりを挟む
「一体全体どうなっているのだ?」
私は中央騎士団長相手に怒鳴り散らしていた。
でも、怒鳴られた騎士団長にしても、たまったものではなかっただろう。
しかし、怒鳴らないと本当にもうやってられなかった。
元々、フランソワーズ嬢が王宮の補講に現れないと王妃のアデライドらが騒ぎ出したのが最初だった。
その時は補講のあまりの多さに、フランソワーズ嬢がサボタージュを起こしたのだろうと、私は大して気にもとめなかったのだ。
確かにフランソワーズ嬢は大雑把でがさつな面はあるし、礼儀作法を苦手としている面もあったが、最低限の礼儀作法は出来ている。友人関係も良好で、学園では優秀な平民や下級貴族の子らを組織建てしていろいろとやってくれる優秀な令嬢なのだ。
平民受けも圧倒的に良いし、軍の受けも良い。
多少礼儀作法が出来なくても我が国に文句言えるような国はないのだ。
恐れていた古のルートン王国への留学でも、ちゃんと成果を残してくれた。友人もたくさん出来たと聞く。
多少暴走してアルメリア王国を転覆させたのはどうかとは思うが、アルメリアの海賊が制圧されて商人はとても喜んでいた。南の大陸の諸国からも我が国に好を結びたいという申し出が増えたのだ。
全てはフランソワーズ嬢の功績だ。
多少の無作法に目くじらなど建てなくても良いと元々私は思っていたのだ。
しかしだ!
それが公爵家のタウンハウスが崩壊しただの、フランソワーズ嬢が行方不明になっただの大変な情報が王家の影からもたらされたのだ。
それからてんやわんやの騒ぎになった。
たかだか一公爵令嬢の失跡だったが、相手は第一王子の婚約者で未来の王妃なのだ。
それに武のルブランの後継者でもある。
直ちに情報収集したのだが、良くわからない。
シルヴァンらも色々動き出したようだが、中々、行方が掴めていないようだった。
アドルフがフランの行方を聞くためにルブラン領に行くと言われて不吉な予感がしたのだが、息子の必死の形相に許さざるを得なかった。
だが、案の定、今度はそのアドルフが行方不明になった。
なんと、フランの母の公爵夫人はアドルフらを側近もろとも魔の森の試練を課したと言うのだ。
もうめちゃくちゃだった。
魔の森の試練にフランソワーズ嬢は5歳で乗りきったというのは聞いていたが、それはフランソワーズ嬢だからだ。
一般人は普通は無理だ。
まして、いくらアドルフが剣術に秀ているとはいえ、普通未来の国王にそんな試練は課すまい!
「あなた、アドルフが行方不明って本当ですの」
そこへ、更にややこしいことに半狂乱になった王妃がやってきたのだ。
これにそんな事を言った日には気絶するで済むかどうか。
王妃には秘密の任務を与えて行かせたのだと適当に言って追い返したのだ。
そんな時だ。
アドルフの側近の一人のジルベールから通信が入ったのだ。
「陛下申し訳ありません」
「ジルベール、大丈夫か?」
画面のジルベールは見た目は傷だらけ、服はボロボロの半死半生の体だった。
「何とか生きております」
息も絶え絶えにジルベールは答えてくれた。
「フランソワーズ嬢がこれを5歳の時にされたというのがいまだに信じられません」
ジルベールは呆然としていた。
「アドルフはどうしたのだ?」
「殿下は私よりも先に魔の試練は突破されたそうです」
「そうか。で、今はどこにいるのだ?」
「それは私では判りかねますが、公爵夫人に聞かれるのが確実かと」
「その公爵夫人が捕まらんからこうして貴様に聞いているのだ」
私はついかっとして言ってしまった。
「夫人はこちらにいらっしゃいますよ」
ジルベールが画面を横に向けると
なんとそこには散々探して見つからなかった夫人がいたのだ。公爵夫人は周りに次々と指示していた。
「アンナ! 此度のことはどういう事だ!」
私は思わず大声で叫んでいた。
「陛下、私は今忙しいのです」
むっとしてアンナが言ってくれた。
「忙しいも何も息子のアドルフはどこにいるのだ?」
「殿下ですか? 本当にエルグラン王家を継がれる方があの体たらく、どうしようもありませんわ。始祖が見られたらどれだけ嘆き悲しまれるか」
私の問いには答えずに夫人は愚痴ってくれたが、
「始祖も魔の森の試練は受けておらんだろうが!」
私は大声で怒鳴っていた。
「ふんっ、王家はいつも我がルブラン公爵家におんぶにだっこですものね。嘆かわしい」
嫌味ったらしくアンナが言ってくれるのだが。
「陛下。フランはこの魔の試練を5歳の時にやり遂げたのです」
「それは知っている」
「その横に立とうとしている殿下が弱すぎては様にならないでしょう。側近の方々もです。だから私が珍しく、特訓させてあげたのです。私としては陛下に感謝していただきたいくらいですわ。この私自らが稽古をつけることなど、めったにないことなのですよ」
恩着せがましく言ってくれるが、それはおかしいだろう!
「しかし、彼らには彼らの役割が」
「確かにそうでしょう。でも、いつもフランが守れるとは限らないのです。現に侯爵の反逆のときも殿下を守れませんでしたでしょう。そちらの影は役立たずにも全く兆候も掴めていなかったようですが」
破壊の魔女は嫌なことを思い出させてくれた。
あの時は本当にフランソワーズ嬢が良くやってくれたのだ。
「だから殿下らも少しでも、強くなっていただくことに越したことはないのです」
「それはそうだが、いきなり魔の森の試練は」
「たしかに厳しいでしょう。だから私は2匹の古代竜とフェンリルに護衛をさせたのです。だからこうして弱いジルベールも生きているではないですか」
恩に着せたようにアンナは言うのだが、それは何かが違うのではないだろうか!
「で、アドルフはどこにいるのだ」
「殿下ですか? フランのところに行きたいと泣いて頼むものだから、仕方無しに送って差し上げました」
「で、それはどこなのだ」
「さあ」
「さあだと!」
私は思わず怒鳴っていた。
「少しはご自分で調べられたらどうですか。では……」
「おい、アンナ! どこなのだ」
「…………」
魔導通信はいきなり切られたのだった。
私は中央騎士団長相手に怒鳴り散らしていた。
でも、怒鳴られた騎士団長にしても、たまったものではなかっただろう。
しかし、怒鳴らないと本当にもうやってられなかった。
元々、フランソワーズ嬢が王宮の補講に現れないと王妃のアデライドらが騒ぎ出したのが最初だった。
その時は補講のあまりの多さに、フランソワーズ嬢がサボタージュを起こしたのだろうと、私は大して気にもとめなかったのだ。
確かにフランソワーズ嬢は大雑把でがさつな面はあるし、礼儀作法を苦手としている面もあったが、最低限の礼儀作法は出来ている。友人関係も良好で、学園では優秀な平民や下級貴族の子らを組織建てしていろいろとやってくれる優秀な令嬢なのだ。
平民受けも圧倒的に良いし、軍の受けも良い。
多少礼儀作法が出来なくても我が国に文句言えるような国はないのだ。
恐れていた古のルートン王国への留学でも、ちゃんと成果を残してくれた。友人もたくさん出来たと聞く。
多少暴走してアルメリア王国を転覆させたのはどうかとは思うが、アルメリアの海賊が制圧されて商人はとても喜んでいた。南の大陸の諸国からも我が国に好を結びたいという申し出が増えたのだ。
全てはフランソワーズ嬢の功績だ。
多少の無作法に目くじらなど建てなくても良いと元々私は思っていたのだ。
しかしだ!
それが公爵家のタウンハウスが崩壊しただの、フランソワーズ嬢が行方不明になっただの大変な情報が王家の影からもたらされたのだ。
それからてんやわんやの騒ぎになった。
たかだか一公爵令嬢の失跡だったが、相手は第一王子の婚約者で未来の王妃なのだ。
それに武のルブランの後継者でもある。
直ちに情報収集したのだが、良くわからない。
シルヴァンらも色々動き出したようだが、中々、行方が掴めていないようだった。
アドルフがフランの行方を聞くためにルブラン領に行くと言われて不吉な予感がしたのだが、息子の必死の形相に許さざるを得なかった。
だが、案の定、今度はそのアドルフが行方不明になった。
なんと、フランの母の公爵夫人はアドルフらを側近もろとも魔の森の試練を課したと言うのだ。
もうめちゃくちゃだった。
魔の森の試練にフランソワーズ嬢は5歳で乗りきったというのは聞いていたが、それはフランソワーズ嬢だからだ。
一般人は普通は無理だ。
まして、いくらアドルフが剣術に秀ているとはいえ、普通未来の国王にそんな試練は課すまい!
「あなた、アドルフが行方不明って本当ですの」
そこへ、更にややこしいことに半狂乱になった王妃がやってきたのだ。
これにそんな事を言った日には気絶するで済むかどうか。
王妃には秘密の任務を与えて行かせたのだと適当に言って追い返したのだ。
そんな時だ。
アドルフの側近の一人のジルベールから通信が入ったのだ。
「陛下申し訳ありません」
「ジルベール、大丈夫か?」
画面のジルベールは見た目は傷だらけ、服はボロボロの半死半生の体だった。
「何とか生きております」
息も絶え絶えにジルベールは答えてくれた。
「フランソワーズ嬢がこれを5歳の時にされたというのがいまだに信じられません」
ジルベールは呆然としていた。
「アドルフはどうしたのだ?」
「殿下は私よりも先に魔の試練は突破されたそうです」
「そうか。で、今はどこにいるのだ?」
「それは私では判りかねますが、公爵夫人に聞かれるのが確実かと」
「その公爵夫人が捕まらんからこうして貴様に聞いているのだ」
私はついかっとして言ってしまった。
「夫人はこちらにいらっしゃいますよ」
ジルベールが画面を横に向けると
なんとそこには散々探して見つからなかった夫人がいたのだ。公爵夫人は周りに次々と指示していた。
「アンナ! 此度のことはどういう事だ!」
私は思わず大声で叫んでいた。
「陛下、私は今忙しいのです」
むっとしてアンナが言ってくれた。
「忙しいも何も息子のアドルフはどこにいるのだ?」
「殿下ですか? 本当にエルグラン王家を継がれる方があの体たらく、どうしようもありませんわ。始祖が見られたらどれだけ嘆き悲しまれるか」
私の問いには答えずに夫人は愚痴ってくれたが、
「始祖も魔の森の試練は受けておらんだろうが!」
私は大声で怒鳴っていた。
「ふんっ、王家はいつも我がルブラン公爵家におんぶにだっこですものね。嘆かわしい」
嫌味ったらしくアンナが言ってくれるのだが。
「陛下。フランはこの魔の試練を5歳の時にやり遂げたのです」
「それは知っている」
「その横に立とうとしている殿下が弱すぎては様にならないでしょう。側近の方々もです。だから私が珍しく、特訓させてあげたのです。私としては陛下に感謝していただきたいくらいですわ。この私自らが稽古をつけることなど、めったにないことなのですよ」
恩着せがましく言ってくれるが、それはおかしいだろう!
「しかし、彼らには彼らの役割が」
「確かにそうでしょう。でも、いつもフランが守れるとは限らないのです。現に侯爵の反逆のときも殿下を守れませんでしたでしょう。そちらの影は役立たずにも全く兆候も掴めていなかったようですが」
破壊の魔女は嫌なことを思い出させてくれた。
あの時は本当にフランソワーズ嬢が良くやってくれたのだ。
「だから殿下らも少しでも、強くなっていただくことに越したことはないのです」
「それはそうだが、いきなり魔の森の試練は」
「たしかに厳しいでしょう。だから私は2匹の古代竜とフェンリルに護衛をさせたのです。だからこうして弱いジルベールも生きているではないですか」
恩に着せたようにアンナは言うのだが、それは何かが違うのではないだろうか!
「で、アドルフはどこにいるのだ」
「殿下ですか? フランのところに行きたいと泣いて頼むものだから、仕方無しに送って差し上げました」
「で、それはどこなのだ」
「さあ」
「さあだと!」
私は思わず怒鳴っていた。
「少しはご自分で調べられたらどうですか。では……」
「おい、アンナ! どこなのだ」
「…………」
魔導通信はいきなり切られたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。