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第五部 小国フィーアネンの試練編

食事していたら騎士たちが乗り込んできました

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折角暴れられると思ったのに……

ここまでの食べ物の恨み徹底的に晴らしてやろうと思ったのに!
それに、久し振りにアドと暴れられると思ったのに!

私はとても不満だった。

でも、ラウラ・フィーアネン女王に頭を下げられたらどうしようもなかった。

今回の件、責任の所在も含めて徹底的に捜査し、関係者を処断するという言葉に頷くしかなかったのだ。


「さあ、こんな小国で大したものは準備できませんでしたが、食事をご用意いたしました」
女王の言葉と共に、私達の前には大量の食事が置かれていたのだ。

嘘! 見るからに普段私が食べられない豪華なものだ。

なんで、こんな小国の料理がこんなに豪勢で、我が一応大国のエルグランの武の公爵家のルブラン家の食事の方が貧しいんだろう?

まあ、クラスメートによるとうちの食事の貧しさはクラス一だそうで、昼食を除けばオリーブによると孤児院の食卓よりも貧しいそうだ。
孤児院って我が家も援助しているよねって執事のクリストフに聞いたら、お嬢様は孤児院の子供たちがひもじい思いをしていいと思われるのですか? と逆に言われてしまった。
まあ、それはそうだけど、孤児院の子供たちは両親はいないのだ。その点は可哀そう……いや、待てよ、うちの母はいない方が私は幸せだけど……

そんな子たちに飢えさせろとは言わない。
でも、援助している孤児院の食事よりも領主の家の食事が貧しいってどうなの?
と思わないでもないんだけど私が悪いのだろうか?

まあ、量だけはあるからまだ良いんだけど……

私は仕方なしに食べ物の前で我が家の正式な挨拶をしたのだ。

「フィーアネンの領民の皆さんのおかげでこのような食事のできることを感謝して、頂きます」
私は合掌したのだ。

「まあ、フランソワーズ様はいつもそのように領民に感謝して食べておられるのですか?」
「はい」
私は素直にうなずいていた。

いつもは面倒だから頂きますだけで済ませているのだ。

本来ならば神に祈るところなのだが、帝国教の悪事を暴いてルブラン領から叩き出してから我が家は領民に感謝することにしたのだ。

まあ、事実お米が食べられるのはお米を作ってくれる農民の皆が働いてくれるからで、領主はそれに乗っかっているだけなのだ。農民からしたら税金を取っていく領主なんて本来はいない方が良いのだろう。
まあ、我が家は税は三割と他の領主に比べて極端に低いので、領民からはそれなりには感謝されている。領地半減された時は、半減された領地の領民が税を上げられると反乱を起こしそうになり、トルクレール公爵が特別に三割のまま据え置くと約束して何とか収めたのだ。
なにしろ、我が領地は魔の森に面しているので魔物に襲われた時の為に領民にも戦闘訓練を課しているので、他領と違って強いのだ。

そんな事を思いながら私は必死に食べた。
久々の食事だ。次はいつ食べられるか判らないし。

少し変な味がしたけど、食べられれば良いのだ。

アドが手を付けようとしたので、私はアドの手に自分の手を添えたのだ。

アドがぎょっとした顔をする。

私はオレンジの皮を剥いて、一つ口に含む。

これは普通の味だ。

それをそのままアドに口づけして与えたのだ。

アドが固まっているんだけど。

「フランソワーズさんとアドルフ殿下はアンナとテオドール様のように仲が宜しいのですね」
呆れて女王が言ってくれるんだけど。

「両親をご存じなんですか?」
私は聞いていた。

「ええ、私とアンナはクラスメートだったんです。アンナは親切にしてくれて本当に色々助けてくれました」
女王が懐かしむように言ってくれるんだけど、あの母が親切にするなんて絶対に禄な事がないと思ってしまうのは私だけだろうか?

アドも訝しげにしているし

「デ・ブリュネ男爵位の件も公爵夫人が」
「そうなの。バイエフェルトが攻めて来た時にわざわざ助けてくれたの」
女王は感謝して言うが、私からしたら絶対に母は力を誇示したかっただけなのだ。
思いっ切り魔力を放出したかっただけだと思う。人の為にあの女がやるなんてあり得ない。
今もこうして虐められているし……

まあ、攻めて来たバイエフェルトは殲滅されたのだろう。可哀想にとは同情はしないけれど。

そう思った時だ。

「何だ貴様らは?」
「ギャッ」
外で大きな音と剣戟がした。

そして、扉が大きく開いて、騎士たちがなだれ込んで来たのだ。

「何事ですか」
女王が慌てて立ち上がった。

「陛下。陛下の元にいる偽のエルグラン王子殿下一行を排除するために参りました」
剣を抜いた騎士団長が叫んだのだった。

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ここまで読んで頂いて有難うございます。
続きは今夜。
フラン達の運命や如何に!
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