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第五部 小国フィーアネンの試練編
アド視点2 魔の森の試練は想像以上に過酷でした
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そして、俺たちは魔の森に案内されたのだ。
愛用の剣と盾を持たされて。
俺一人では大変だろうからという事で側近の四人も一緒に行けることになったのだが、
「で、殿下、私もやるのですか?」
オーレリアンが必死に聞いてくるんだけど。
「当たり前だろう。フランは5歳でクリアしたんだ。俺たちは5人でやるのだ。問題はないだろう」
「でも、殿下フランは別格ですよ。5歳でフェンリルを犬と間違えて『めっ』って言って黙らせたんですよ。殿下は、今、フェンリル相手に口だけで従わせることが可能なんですか?」
「いや、5歳のフランが出来たのなら出来るだろう」
俺は強がりを言った。
「でも、アドルフ、お前、古代竜相手に殴り倒すことは出来ないだろう。フラン嬢みたいに」
「それは、そうだ。そんな事出来るのは世界広しと言えどもフランの親子だけではないのか」
俺はジルベールの問いに答えた。
「でも、俺たちの後ろに控えているのはその古代竜の2匹じゃないのか」
俺は後ろを見て唖然とした。
そこには牙を向いたギャオちゃんとギャオギャオが居たのだ。
ど、どういうことだ?
「公爵夫人。後ろの古代竜は何なのだ」
「この二匹は殿下らの護衛ですわ。いくら私でも護衛もつけずにこの魔の森に殿下らを入れるわけには行きませんので」
「本当か?」
俺は信じられずに聞いた。なんか、ギャオギャオの鼻息が荒いんだけど。
「では殿下宜しいですか。この矢印の方に我が屋敷はございますので」
夫人がニコリと笑って言うや、転移していったのだ。
「おい、どうするんだ」
「行くしか無いだろう」
リシャールの声に俺は叫んだ。
「で、殿下、後ろ変ですよ」
「な、何だと」
オーレリアンの慌てた声に後ろを振り返ると、ギャオギャオが咆哮するのが同時だった。
ギャオーーーーー
凄まじい咆哮とともに、俺たちはその放たれたブレスによって四方八方へ弾き飛ばされたのだった。
俺は気付いた時は森の中にいた。
側近たちは誰もいなかった。あの魔女の野郎、絶対に最初から俺たちをバラバラにするつもりだったのだ。
矢印の距離を見るとあと100キロだ。1時間に6キロ休まずに歩いて16時間だ。
途中で野宿する必要もあろう。
それに、途中で魔物に出会って倒す手間を考えるとその時間で行けるわけはなかった。
魔物は俺が起きて行動を始めると即座に襲ってきたのだ。
最初のうちは剣だけで処理していたが、それだけではおっつかない。途中からは衝撃波も併用した。
しかし、魔術の併用は俺の体力を奪って行った。
これをフランが五歳の時にクリアしたというのが信じられなかった。
あの王宮の屋上で目を輝かせてはしゃいでいた可愛いフランがこんな過酷な状況をクリアしたなんて。
でも、フランは今どこにいるんだろう? あの破壊の魔女の事だから、もっと過激な事をさせられているのかもしれない。頑張らないと。
しかし、俺はあっという間に、疲労困憊になってしまったのだ。
しかし、次から次に魔物たちが襲ってくる。
休む間もないのだ。
俺は傷だらけになっていた。
いや、まだまだ大丈夫だ。
俺は気力を振り絞って歩き出した。
気付いたら魔物の襲撃が減っていた。
でも、まだ80キロもある。ほとんど減っていなかった。
行かねば……
そう思って歩こうとするが、疲労で目がかすんで来た。
歯を食いしばって歩く。
ダメだ。
しかし、俺は途中で気を失ってしまったのだ。
ギャオーーーー
ギャオギャオの雄叫びを聞いたような気がしたが……
俺は夢を見ていた。
フランと食べ歩きをしているのだ。これは王都だった。
ハッピ堂のカフェだ。俺が自分のをフランに食べさせるとフランは嬉しそうに、微笑んでくれたのだ。俺はそれを見て幸せだった。
しかし、そこに悲鳴が起こっていきなり魔物たちが襲ってきたのだ。
俺は体が何故か動かなかった。
魔物たちがフランに群がって……
「フラン!」
俺は自分の叫び声に慌てて飛び起きた。
そこは森の中だった。森全体を白い霧が覆っていた。
魔の森だ。
そうだ。こうして入られない。フランが危機に瀕しているのだ。
フランの試練はこんなものではないだろう。急がねば。
俺は疲れきっている体に鞭打って歩き出したのだ。
**********************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この話の第一巻がレジーナブックスから好評発売中です。
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手にとって見て頂けたら嬉しいです!
愛用の剣と盾を持たされて。
俺一人では大変だろうからという事で側近の四人も一緒に行けることになったのだが、
「で、殿下、私もやるのですか?」
オーレリアンが必死に聞いてくるんだけど。
「当たり前だろう。フランは5歳でクリアしたんだ。俺たちは5人でやるのだ。問題はないだろう」
「でも、殿下フランは別格ですよ。5歳でフェンリルを犬と間違えて『めっ』って言って黙らせたんですよ。殿下は、今、フェンリル相手に口だけで従わせることが可能なんですか?」
「いや、5歳のフランが出来たのなら出来るだろう」
俺は強がりを言った。
「でも、アドルフ、お前、古代竜相手に殴り倒すことは出来ないだろう。フラン嬢みたいに」
「それは、そうだ。そんな事出来るのは世界広しと言えどもフランの親子だけではないのか」
俺はジルベールの問いに答えた。
「でも、俺たちの後ろに控えているのはその古代竜の2匹じゃないのか」
俺は後ろを見て唖然とした。
そこには牙を向いたギャオちゃんとギャオギャオが居たのだ。
ど、どういうことだ?
「公爵夫人。後ろの古代竜は何なのだ」
「この二匹は殿下らの護衛ですわ。いくら私でも護衛もつけずにこの魔の森に殿下らを入れるわけには行きませんので」
「本当か?」
俺は信じられずに聞いた。なんか、ギャオギャオの鼻息が荒いんだけど。
「では殿下宜しいですか。この矢印の方に我が屋敷はございますので」
夫人がニコリと笑って言うや、転移していったのだ。
「おい、どうするんだ」
「行くしか無いだろう」
リシャールの声に俺は叫んだ。
「で、殿下、後ろ変ですよ」
「な、何だと」
オーレリアンの慌てた声に後ろを振り返ると、ギャオギャオが咆哮するのが同時だった。
ギャオーーーーー
凄まじい咆哮とともに、俺たちはその放たれたブレスによって四方八方へ弾き飛ばされたのだった。
俺は気付いた時は森の中にいた。
側近たちは誰もいなかった。あの魔女の野郎、絶対に最初から俺たちをバラバラにするつもりだったのだ。
矢印の距離を見るとあと100キロだ。1時間に6キロ休まずに歩いて16時間だ。
途中で野宿する必要もあろう。
それに、途中で魔物に出会って倒す手間を考えるとその時間で行けるわけはなかった。
魔物は俺が起きて行動を始めると即座に襲ってきたのだ。
最初のうちは剣だけで処理していたが、それだけではおっつかない。途中からは衝撃波も併用した。
しかし、魔術の併用は俺の体力を奪って行った。
これをフランが五歳の時にクリアしたというのが信じられなかった。
あの王宮の屋上で目を輝かせてはしゃいでいた可愛いフランがこんな過酷な状況をクリアしたなんて。
でも、フランは今どこにいるんだろう? あの破壊の魔女の事だから、もっと過激な事をさせられているのかもしれない。頑張らないと。
しかし、俺はあっという間に、疲労困憊になってしまったのだ。
しかし、次から次に魔物たちが襲ってくる。
休む間もないのだ。
俺は傷だらけになっていた。
いや、まだまだ大丈夫だ。
俺は気力を振り絞って歩き出した。
気付いたら魔物の襲撃が減っていた。
でも、まだ80キロもある。ほとんど減っていなかった。
行かねば……
そう思って歩こうとするが、疲労で目がかすんで来た。
歯を食いしばって歩く。
ダメだ。
しかし、俺は途中で気を失ってしまったのだ。
ギャオーーーー
ギャオギャオの雄叫びを聞いたような気がしたが……
俺は夢を見ていた。
フランと食べ歩きをしているのだ。これは王都だった。
ハッピ堂のカフェだ。俺が自分のをフランに食べさせるとフランは嬉しそうに、微笑んでくれたのだ。俺はそれを見て幸せだった。
しかし、そこに悲鳴が起こっていきなり魔物たちが襲ってきたのだ。
俺は体が何故か動かなかった。
魔物たちがフランに群がって……
「フラン!」
俺は自分の叫び声に慌てて飛び起きた。
そこは森の中だった。森全体を白い霧が覆っていた。
魔の森だ。
そうだ。こうして入られない。フランが危機に瀕しているのだ。
フランの試練はこんなものではないだろう。急がねば。
俺は疲れきっている体に鞭打って歩き出したのだ。
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