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第五部 小国フィーアネンの試練編
悪徳商人の独り言 娘とその侍女を拐わせようとしました
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私は大国バイエフェルトの商人、テュール・ブールセマだ。今はこの小国フィーアネン王国とバイエフェルトの貿易を中心に行っている。メインの活動拠点をこの小国において20年、順調に商売を伸ばしてきた。
こんな小国相手によくやると故国の同業者には馬鹿にされたが、小国も入り込めば旨味があるのだ。
特に旧帝国の貴族がたくさん残るこの地は地位の割には収入が少なく、どの貴族家も生活は厳しい。
貴族どもに金をチラつかせればいろんなことを教えてくれるのだ。それは大臣であっても例外ではなかった。機密情報を手に入れた俺は、それを元にこの国に食い込んで色々儲けさせてもらっているのだ。
それに、時には気に入った貴族の妻を支援を名目に抱くこともあった。
金は儲かって性欲も発散できるこれほどうまい商売は無いのだ。
そんな俺が気にいったのが、ケルクドリール伯爵家のお茶会で目にしたハルスカンプ侯爵夫人だった。その透き通るような白い肌とたれ目気味の緑眼に俺は目が釘付けになったのだ。これはものにするしかないと。
ハルスカンプ侯爵家もご他聞にもれず、侯爵の地位を守るためとその見栄のために金庫は火の車だった。さり気なく近づいて、その侯爵夫人に抱かせれば金を援助してやるとこちらから申し出てやったのだ。俺は夫人が泣いて喜んで俺の胸の中に飛び込んでくると思ったのに、
「汚らしい。二度と私の前に出てこないで」
俺はこっぴどく振られてしまったのだ。
そう、この国で大きな力を持つこの俺様が振られてしまったのだ。
俺はほうほうの体で謝って逃げ出した。
しかし、心の中は怒りで黒く染まっていたのだ。
こんな屈辱を受けたのは初めてだ。
ハルスカンプ侯爵家への出入りも禁止されてしまって、俺に対する悪い噂まで流れ出す始末だ。絶対にあの侯爵夫人のせいだ。
俺は仕返しすることにしたのだ。
侯爵家を調べると前領主に金遣いが荒いと勘当されて平民落ちしている弟がいることが判ったのだ。
俺はその弟に会うと兄に取って代わらないかと持ちかけたのだ。
弟はほとんど逡巡すること無く、すぐに飛びついてきた。
そして、弟を使嗾して破落戸を使ってバイエフェルトの国境で襲わせたのだ。
その妻は出来たら生きて俺の前に連れてこいと。散々生き恥をかかせた後に、帝国の娼館に売ってもいいだろう。
泣き叫んで許しを請わさせてやる。
俺はそう決意していたのだが、馬車の襲撃は上手くいったのだが、侯爵夫婦の乗った馬車は逃げる途中で道を大きく外して崖下に転落してしまったのだ。生存者は誰もいなかった。
まあ、事故で処理できたからましだったが。
後は侯爵家にその弟サンデルを入り込ませたのだ。もう侯爵家には娘しか残っていない。なんとでもなるはずだった。侯爵家を乗っ取れば更に商売にも弾みがつくだろう。
そして、その娘を見た時だ。俺は驚いた。姿かたちが母親そっくりだったのだ。
そして、心に決めたのだ。母親の代わりに俺の後妻にしてやると。
娘は俺をトカゲを見るような目で見てくれた。
その娘を自分の思うように屈服させて自由にするのだ。俺は楽しみになってきた。
あの世で母親も悔しがるだろう。
ただ、妻にするとなるといろいろと下工作もいる。
俺はいろんな貴族に会って着々と準備してきたのだ。
そして、ようやく一年経って俺がものにしようとした時だ。
侯爵家に変な女が現れたのだそうだ。
フランと名乗った娘は、きつそうな顔立ちの女で、口も立つそうだ。それがサンデルやその娘を口で言い負かしていい気になっているらしい。俺は準備のために故国に帰っていたので、対処するのが遅れてしまったのだ。
なあに、きついと言っても所詮女だ。大したことはないだろう。
俺はケルクドール伯爵夫人に指示して娘にお茶会を開かせてそのカトリーナを呼ばせたのだ。
何だったらそのまま力ずくで屋敷に連れて帰って既成事実を作っても良いと思っていたのだ。
力づくで迫ればそのフランとかいう女も俺の言う事を聞くだろうと思っていたのだ。
しかしだ。女は口だけでなく、体術でも体得しているのだろう。俺はあっさりと腕を捻り上げられて投げ飛ばされたのだ。
女に投げ飛ばされるとはこれほどの屈辱を味合わせられるとは思ってもいなかった。
大商人のブールセマ様をここまでこけにしてくれてただで済ますわけにはいかなかった。ケーキまみれになった俺は馬車に乗ると直ちに御者と一緒にいた破落戸を呼び出したのだ。
「これはこれはブールセマ様、お呼びですか」
破落戸の親分は嬉しそうに顔を出してきた。
「直ちにカトリーナの馬車を襲って拐え。そのまま俺の秘密の屋敷に連れ込むのだ」
「あのお屋敷にですか? 侯爵令嬢様もお可哀想に」
「ふん、あの母親も同じだが、素直に言うことをきかないからだ。ただし今度は生かして連れてこいよ」
「そこはお任せを。御者は買収しておりますし、いるのはあの執事の息子一人ですからな」
「カトリーナについている女が少しやるぞ」
「ふんっ、所詮女の付け刃ですよ。刀でも見せればすぐに言うことを聞きますぜ」
破落戸は下卑た笑いをしてくれたのだ。
まあ、いくら気の強い娘でもその道の者相手では手も足も出ないだろう。
こうなったらその娘も破落戸共に好きにさせた後で娼館にでも叩き売ってやろう。
俺は泣き叫ぶ娘を想像することで溜飲を下げたのだった。
*******************************************************
さあて、悪巧みする商人。
どうなるカトリーナ? フランに襲いかかる破落戸の運命や如何に????
次は明朝更新予定です。
こんな小国相手によくやると故国の同業者には馬鹿にされたが、小国も入り込めば旨味があるのだ。
特に旧帝国の貴族がたくさん残るこの地は地位の割には収入が少なく、どの貴族家も生活は厳しい。
貴族どもに金をチラつかせればいろんなことを教えてくれるのだ。それは大臣であっても例外ではなかった。機密情報を手に入れた俺は、それを元にこの国に食い込んで色々儲けさせてもらっているのだ。
それに、時には気に入った貴族の妻を支援を名目に抱くこともあった。
金は儲かって性欲も発散できるこれほどうまい商売は無いのだ。
そんな俺が気にいったのが、ケルクドリール伯爵家のお茶会で目にしたハルスカンプ侯爵夫人だった。その透き通るような白い肌とたれ目気味の緑眼に俺は目が釘付けになったのだ。これはものにするしかないと。
ハルスカンプ侯爵家もご他聞にもれず、侯爵の地位を守るためとその見栄のために金庫は火の車だった。さり気なく近づいて、その侯爵夫人に抱かせれば金を援助してやるとこちらから申し出てやったのだ。俺は夫人が泣いて喜んで俺の胸の中に飛び込んでくると思ったのに、
「汚らしい。二度と私の前に出てこないで」
俺はこっぴどく振られてしまったのだ。
そう、この国で大きな力を持つこの俺様が振られてしまったのだ。
俺はほうほうの体で謝って逃げ出した。
しかし、心の中は怒りで黒く染まっていたのだ。
こんな屈辱を受けたのは初めてだ。
ハルスカンプ侯爵家への出入りも禁止されてしまって、俺に対する悪い噂まで流れ出す始末だ。絶対にあの侯爵夫人のせいだ。
俺は仕返しすることにしたのだ。
侯爵家を調べると前領主に金遣いが荒いと勘当されて平民落ちしている弟がいることが判ったのだ。
俺はその弟に会うと兄に取って代わらないかと持ちかけたのだ。
弟はほとんど逡巡すること無く、すぐに飛びついてきた。
そして、弟を使嗾して破落戸を使ってバイエフェルトの国境で襲わせたのだ。
その妻は出来たら生きて俺の前に連れてこいと。散々生き恥をかかせた後に、帝国の娼館に売ってもいいだろう。
泣き叫んで許しを請わさせてやる。
俺はそう決意していたのだが、馬車の襲撃は上手くいったのだが、侯爵夫婦の乗った馬車は逃げる途中で道を大きく外して崖下に転落してしまったのだ。生存者は誰もいなかった。
まあ、事故で処理できたからましだったが。
後は侯爵家にその弟サンデルを入り込ませたのだ。もう侯爵家には娘しか残っていない。なんとでもなるはずだった。侯爵家を乗っ取れば更に商売にも弾みがつくだろう。
そして、その娘を見た時だ。俺は驚いた。姿かたちが母親そっくりだったのだ。
そして、心に決めたのだ。母親の代わりに俺の後妻にしてやると。
娘は俺をトカゲを見るような目で見てくれた。
その娘を自分の思うように屈服させて自由にするのだ。俺は楽しみになってきた。
あの世で母親も悔しがるだろう。
ただ、妻にするとなるといろいろと下工作もいる。
俺はいろんな貴族に会って着々と準備してきたのだ。
そして、ようやく一年経って俺がものにしようとした時だ。
侯爵家に変な女が現れたのだそうだ。
フランと名乗った娘は、きつそうな顔立ちの女で、口も立つそうだ。それがサンデルやその娘を口で言い負かしていい気になっているらしい。俺は準備のために故国に帰っていたので、対処するのが遅れてしまったのだ。
なあに、きついと言っても所詮女だ。大したことはないだろう。
俺はケルクドール伯爵夫人に指示して娘にお茶会を開かせてそのカトリーナを呼ばせたのだ。
何だったらそのまま力ずくで屋敷に連れて帰って既成事実を作っても良いと思っていたのだ。
力づくで迫ればそのフランとかいう女も俺の言う事を聞くだろうと思っていたのだ。
しかしだ。女は口だけでなく、体術でも体得しているのだろう。俺はあっさりと腕を捻り上げられて投げ飛ばされたのだ。
女に投げ飛ばされるとはこれほどの屈辱を味合わせられるとは思ってもいなかった。
大商人のブールセマ様をここまでこけにしてくれてただで済ますわけにはいかなかった。ケーキまみれになった俺は馬車に乗ると直ちに御者と一緒にいた破落戸を呼び出したのだ。
「これはこれはブールセマ様、お呼びですか」
破落戸の親分は嬉しそうに顔を出してきた。
「直ちにカトリーナの馬車を襲って拐え。そのまま俺の秘密の屋敷に連れ込むのだ」
「あのお屋敷にですか? 侯爵令嬢様もお可哀想に」
「ふん、あの母親も同じだが、素直に言うことをきかないからだ。ただし今度は生かして連れてこいよ」
「そこはお任せを。御者は買収しておりますし、いるのはあの執事の息子一人ですからな」
「カトリーナについている女が少しやるぞ」
「ふんっ、所詮女の付け刃ですよ。刀でも見せればすぐに言うことを聞きますぜ」
破落戸は下卑た笑いをしてくれたのだ。
まあ、いくら気の強い娘でもその道の者相手では手も足も出ないだろう。
こうなったらその娘も破落戸共に好きにさせた後で娼館にでも叩き売ってやろう。
俺は泣き叫ぶ娘を想像することで溜飲を下げたのだった。
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さあて、悪巧みする商人。
どうなるカトリーナ? フランに襲いかかる破落戸の運命や如何に????
次は明朝更新予定です。
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