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第五部 小国フィーアネンの試練編
気が付いたら知らない国に転移して記憶喪失になっていました
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私は夢を見ていた。
母に酷いことをされる夢だ。
とても怖い森に一人でほっておかれるのだ。
見るからに恐ろしい魔物が襲ってくるのだ。
次々と……
でも、何故かその魔物を私が次々に殴り倒しているんだけど……何でだ?
そこではっと目が覚めたのだ。
どこか判らない天井が見えた。
とてもすすけた天井だ。
なんか、ずいぶんみすぼらしい所だ。
どこだろう、ここは?
「あ、あなた気付いたの?」
そんな時だ。
私の顔をとてもきれいな顔立ちの人が覗き込んだのだ。銀の長い髪と夢見るようなくりくりとした緑眼と整った顔立ちの女性だった。年は私より少し年上だろうか?
「ここはどこ?」
「ここはフィーアネン王国の王都よ。それよりもあなたは誰? いきなり私の上に現れたんだけど……」
奇麗な人が聞いてくれたんだけど、
「私は……あれれ? ええと私は……」
私は誰か思い出せなかったのだ。
「えっ、どうしたの?」
「ごめん、思い出せない」
私は焦って言った。
「えっ、記憶喪失なの? あなたはここに突然現れた時はボロボロだったから、襲撃か何かを受けた時に、ショックのあまり記憶を無くしてしまったのかもしれないわ」
女の人が言ってくれるんだけど。
「じゃあ、どこから来たのかもわからない?」
女の質問に私は頷くしかなかった。
「じゃあフィーアネン王国については知っている?」
「北大陸の北方にある小国よ」
私は何故かその国を知っていた。
「小国って言われるのはなんか少し悔しいけれど……」
女の人が少し残念そうに言う。
「あっ、ごめん」
私は素直に謝った。そういえば礼儀作法の先生に小国の人に小国なんて間違っても言ってはいけないと散々注意されていたんだった。その先生の名前は確か「ふ、ふ」
うーん、思い出せないというか、思い出したくない。とても嫌な記憶みたいだった。
「私の名前はカトリーナ・ハルスカンプよ」
女の人が名乗ってくれた。
「ああ、侯爵令嬢なんだ」
「えっ、何故、わかったの?」
女の人が不思議そうに聞いてきた。
なんでわかったんだろう?
でもその名前は侯爵令嬢とたしかに心に刻んでいたのだ。
自分の名前は忘れているのに……
私には良く判らなかった。
ノックの音がして
「お嬢様。お食事をお持ちしました」
男の人が入ってきた。この男は顔立ちの整った細身で執事服を着ているから執事か何かなんだろう。
「あっ、スヴェン。この子、気がついたみたい」
「それはようございました」
男は笑って言った。
「でも、この子、記憶喪失みたいで、自分の名前を覚えていないみたいなの」
「そうなのですか?」
スヴェンと言われた男は驚いて私を見た。
「でも、こちらの方はいらっしゃった時に『フラン』と大きく書かれた紙を持っておられたかと」
「ああ、そうだったわ。あなたの名前はフランっと言うのではなくて?」
私はそう言われても良く判らなかったが、そんな紙を持っていたのならそうかも知れない。
しかし、自分の名前を書いた紙をもって転移してくるっておかしくないだろうか?
そう思った時だ。
とても美味しそうな匂いが漂ってきたのだ。
グウウウウ
そのにおいを嗅いだ途端に私のお腹が盛大になったのだ。
私は真っ赤になった。
「お腹が減ったの? 良かったら大したものではないけれど、食べる?」
「えっ、良いの?」
カトリーナはスヴェンから受け取った食べ物の乗ったトレイを私の方に差し出してくれた。
「良いわよ。気がついて、いきなりこれだけ食べていいかどうかは判らないけれど。あなた3日も寝込んでいたのよ」
「頂きます」
私は手を合わせてそう言うと、いきなりスプーンを手にとって食べだした。
「美味しい!」
久々の食事に私は夢中で食べたのだ。食べ物を食べている時が私は一番幸せみたいだった。
でも、食事はパンとスープだけで、何か平民の食事よりも少ないような気がしたんだけど……
これはカトリーナの夜食なんだろうか?
「あなた食べる所作もとてもきれいね。どこかの貴族なのかしら」
カトリーナが私を見ていった。
「お嬢様。パンならありますけれど、食べられますか?」
「スヴェン、あなたは良いの?」
私はそんな二人の様子を見て、固まってしまった。
「ごめんなさい。カトリーナ。ひょっとしてあなた達の食事を取ってしまったの?」
私は食べたあとで慌てて聞いてみたのだ。
「大丈夫よ。フラン」
「そうです。お気に召されずに」
カトリーナとスヴェンは言ってくれるんだけど。
何か変だ。カトリーナは侯爵令嬢ではないのか? それにしては私の食べた食事はとても貧しくて、平民以下の食事のような気がしたのは気の所為なんだろうか?
「大丈夫よ。フラン。さ、詳しいことは明日聞くわ。今日はもう寝なさい」
私は素直にカトリーナの言うことをきくことにしたのだ。
何か訳アリぽいが、まだ目が覚めたばかりだし、詳しくは明日聞こうと思ってしまったのだ。
もう少し詳しく聞いておけばよかったと後で後悔したのだが、そのまま眠りに落ちたのだった。
その翌朝だった。
ドンドンドンドン
朝っぱらから大きなノックの音がしたのだ。
隣のベッドで寝ていたカトリーナが慌てて起き出して部屋を出ていったのだ。
私は様子を見るためにそっと扉から頭を突き出した。
「カトリーナ! あなた、夜な夜な男を取っ替え引っ替えこの離れに連れ込んでいるんですって」
そこには鬼の形相の黒髪の女が建っていた。
出たーー!
これが正しく悪役令嬢そのものだ。
私は何故かそう思ってしまったのだ。
*************************************************************
言いがかりをつけられたカトリーナ。
良く判っていないフランはどうする?
詳しくはまた明日!
このお話の第一巻がレジーナブックスから、1200もの全国の書店、アマゾン、楽天ブックス、その他ネット書店等々で絶賛発売中です。詳しくはこの下の方の表紙にリンク張ってます!
よろしくお願いします!
母に酷いことをされる夢だ。
とても怖い森に一人でほっておかれるのだ。
見るからに恐ろしい魔物が襲ってくるのだ。
次々と……
でも、何故かその魔物を私が次々に殴り倒しているんだけど……何でだ?
そこではっと目が覚めたのだ。
どこか判らない天井が見えた。
とてもすすけた天井だ。
なんか、ずいぶんみすぼらしい所だ。
どこだろう、ここは?
「あ、あなた気付いたの?」
そんな時だ。
私の顔をとてもきれいな顔立ちの人が覗き込んだのだ。銀の長い髪と夢見るようなくりくりとした緑眼と整った顔立ちの女性だった。年は私より少し年上だろうか?
「ここはどこ?」
「ここはフィーアネン王国の王都よ。それよりもあなたは誰? いきなり私の上に現れたんだけど……」
奇麗な人が聞いてくれたんだけど、
「私は……あれれ? ええと私は……」
私は誰か思い出せなかったのだ。
「えっ、どうしたの?」
「ごめん、思い出せない」
私は焦って言った。
「えっ、記憶喪失なの? あなたはここに突然現れた時はボロボロだったから、襲撃か何かを受けた時に、ショックのあまり記憶を無くしてしまったのかもしれないわ」
女の人が言ってくれるんだけど。
「じゃあ、どこから来たのかもわからない?」
女の質問に私は頷くしかなかった。
「じゃあフィーアネン王国については知っている?」
「北大陸の北方にある小国よ」
私は何故かその国を知っていた。
「小国って言われるのはなんか少し悔しいけれど……」
女の人が少し残念そうに言う。
「あっ、ごめん」
私は素直に謝った。そういえば礼儀作法の先生に小国の人に小国なんて間違っても言ってはいけないと散々注意されていたんだった。その先生の名前は確か「ふ、ふ」
うーん、思い出せないというか、思い出したくない。とても嫌な記憶みたいだった。
「私の名前はカトリーナ・ハルスカンプよ」
女の人が名乗ってくれた。
「ああ、侯爵令嬢なんだ」
「えっ、何故、わかったの?」
女の人が不思議そうに聞いてきた。
なんでわかったんだろう?
でもその名前は侯爵令嬢とたしかに心に刻んでいたのだ。
自分の名前は忘れているのに……
私には良く判らなかった。
ノックの音がして
「お嬢様。お食事をお持ちしました」
男の人が入ってきた。この男は顔立ちの整った細身で執事服を着ているから執事か何かなんだろう。
「あっ、スヴェン。この子、気がついたみたい」
「それはようございました」
男は笑って言った。
「でも、この子、記憶喪失みたいで、自分の名前を覚えていないみたいなの」
「そうなのですか?」
スヴェンと言われた男は驚いて私を見た。
「でも、こちらの方はいらっしゃった時に『フラン』と大きく書かれた紙を持っておられたかと」
「ああ、そうだったわ。あなたの名前はフランっと言うのではなくて?」
私はそう言われても良く判らなかったが、そんな紙を持っていたのならそうかも知れない。
しかし、自分の名前を書いた紙をもって転移してくるっておかしくないだろうか?
そう思った時だ。
とても美味しそうな匂いが漂ってきたのだ。
グウウウウ
そのにおいを嗅いだ途端に私のお腹が盛大になったのだ。
私は真っ赤になった。
「お腹が減ったの? 良かったら大したものではないけれど、食べる?」
「えっ、良いの?」
カトリーナはスヴェンから受け取った食べ物の乗ったトレイを私の方に差し出してくれた。
「良いわよ。気がついて、いきなりこれだけ食べていいかどうかは判らないけれど。あなた3日も寝込んでいたのよ」
「頂きます」
私は手を合わせてそう言うと、いきなりスプーンを手にとって食べだした。
「美味しい!」
久々の食事に私は夢中で食べたのだ。食べ物を食べている時が私は一番幸せみたいだった。
でも、食事はパンとスープだけで、何か平民の食事よりも少ないような気がしたんだけど……
これはカトリーナの夜食なんだろうか?
「あなた食べる所作もとてもきれいね。どこかの貴族なのかしら」
カトリーナが私を見ていった。
「お嬢様。パンならありますけれど、食べられますか?」
「スヴェン、あなたは良いの?」
私はそんな二人の様子を見て、固まってしまった。
「ごめんなさい。カトリーナ。ひょっとしてあなた達の食事を取ってしまったの?」
私は食べたあとで慌てて聞いてみたのだ。
「大丈夫よ。フラン」
「そうです。お気に召されずに」
カトリーナとスヴェンは言ってくれるんだけど。
何か変だ。カトリーナは侯爵令嬢ではないのか? それにしては私の食べた食事はとても貧しくて、平民以下の食事のような気がしたのは気の所為なんだろうか?
「大丈夫よ。フラン。さ、詳しいことは明日聞くわ。今日はもう寝なさい」
私は素直にカトリーナの言うことをきくことにしたのだ。
何か訳アリぽいが、まだ目が覚めたばかりだし、詳しくは明日聞こうと思ってしまったのだ。
もう少し詳しく聞いておけばよかったと後で後悔したのだが、そのまま眠りに落ちたのだった。
その翌朝だった。
ドンドンドンドン
朝っぱらから大きなノックの音がしたのだ。
隣のベッドで寝ていたカトリーナが慌てて起き出して部屋を出ていったのだ。
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「カトリーナ! あなた、夜な夜な男を取っ替え引っ替えこの離れに連れ込んでいるんですって」
そこには鬼の形相の黒髪の女が建っていた。
出たーー!
これが正しく悪役令嬢そのものだ。
私は何故かそう思ってしまったのだ。
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