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第四部 第四部 古の古代帝国公爵家の野望
閑話 アド視点5 フランと戦う前に動揺して負けてしまいました……
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デートでフランと夕日を堪能した後、俺は早速気になった叔父とトラクレール公爵家の件について探りを入れさせた。
「まだ、カミーユ殿下とクラリス嬢の婚約は書類では王宮には上がっていませんでした」
「それとなくトラクレール公爵の周りに探りを入れるとカミーユが何回か訪ねているみたいだ」
「貴族御用達のレストランを調べたら何軒か二人で訪ねているみたいだぞ」
側近たちが次々に報告してくれた。
叔父とトラクレール公爵家が仲良くなるのは平時には問題ないが、今この時が問題なのだ。
カミーユとクラリスは同い年だし、爵位的にも問題ない。王弟と公爵家は普通ならばお似合いだと歓迎すべき事なのだ。
公爵家は建国以来、武のルブランと文のラクロワの間を取り持ってくれている。3番目の目立たない公爵家だとか、あるかないか判らない公爵家だと巷では言われているが、このエルグラン王国が現在の力を持つに至ったのも、犬猿の仲の両家を宥めすかしてここまでしてくれた公爵家の力があってこそなのだ。
そして、片や良からぬ噂のある王弟と公爵家が仲良くなるのはとてもまずいのだ。
取り合えず、側近たちにはそのまま続けて情報を探るように指示すると俺はオーレリアンと一緒に学園に戻ったのだ。
デートでフランとの仲を深めたし、俺は学園ではフランとまた甘い学生生活を送れると思っていた。
しかし、だ。
俺がフランにカップケーキを食べさせていると
「ちょっと、待った!」
そこにクラス対抗戦委員会を終えて、メラニーが帰ってきたのだ。何か碌でもない事を考えていそうだ。
「はい、殿下。これより我が二年E組はクラス対抗戦モードに入ります。当然殿下も敵なので、出ていっていただけますか」
フランの親友のメラニーが言ってくれたんだけど……
「えっ、バロー嬢、ちょっと……」
俺は抵抗しようとしたが、あっさりと外に追い出されたのだ。
そして、それきり合わせても貰えなくなった。
いや、それはないんじゃないか? 学園で婚約者と一緒にいられないなんて……
オーレリアンになんとかしてくれと頼むが、
「メラニーがああ言ったら仕方がありません」
とあっさり、断られてしまった。
フランも諦めたみたいだ。
何でだ? 俺は第一王子なのに、何故か三枚目なんだけど……
そんな時だ。エーリックがフランのクラスメートのアルマンを剣術で傷つけたのは。
俺は直ちにエーリックを出場停止にさせるべきだと動こうとしたのだが、外務とシルヴァンたちに反対された。
外務は外交問題を起こしたくないと言うし、シルヴァンらは調子に乗せておけば調子に乗って尻尾を出すということだったが……俺はもう一つ納得行かなかった。
そして、なんと最悪なことにアルマンが怪我をしたことでフランが剣術戦に出ることになったんだが……
何故恋人同士が戦わなければならないのだ。
それに下手したらフランが勝ってしまうかもしれない。
身体強化魔術を使わなければ、フランとは互角の戦いのはずだが、万が一負けたら、周りがうるさいことこの上ないではないか。
尻に敷かれた第一王子だとかすでに色々外野からは言われているのだ。
「殿下とフラン様が戦ったらどうなると思う」
聞かなくても良いのに、側近のリシャールが俺がいないと思って他の側近共に聞いていた。
「フラン様一択で」
フランのクラスメートのオーレリアンが言うのはまだ許せた。
「俺もそう思う」
「ちょっと待てよ。皆そう思うのか」
「騎士団連中に聞いても絶対にみんなそう言うぜ」
おい、お前ら、それはないだろう!
魔術戦なら100%負けるが剣術は互角のはずだ。
「でも、剣術の腕は互角のはずだぞ」
リシャールが言ってくれた。さすが俺の側近最年長だ。
「でも、フラン様は絶対に練習の時に手を抜いているって」
「婚約者に華を持たせているよね」
「いやいや、フラン様がそこまで考えるか。単に食べ物がかかっていないからだって」
「負けたら、食事抜きだって言われたら絶対に殿下に勝つって」
「「「それは当然だろう」」」
おいおい、お前らそこで頷くな!
いや、俺も絶対にフランに勝てる気がしないんだけど……何故に?
「今回もメラニーに、優勝しないとフェリシー先生の補講を受けさせるとか言われていますからね。補講がかかったらフラン様は絶対に勝ちますよ」
「確かに」
「一番嫌っているフェリシー先生の補講だものな」
「可哀想に。アドは剣術でもフランソワーズ嬢に完敗か」
「また、周りから尻に敷かれる第一王子とか陰口言われるよな」
側近共が勝手に噂してくれるんだが……
お、お前らな!
俺が本気になったらどうなるか見ていろよ。
俺は部屋の影から誓ったのだ。絶対にフランには勝つと……
剣術戦の決勝の初戦は一年生だ。それもシルヴァンらと一緒に飛び級してきた三つ下の奴だった。
さすがにこれには完勝した。
俺の周りには女どもが群がって来た。面倒だが、偶にはいいだろう。フランがこちらを睨みつけているが、俺を近寄らせないフランが悪いと俺は思っていた。
しかし、次の試合に登場したフランは完全に切れていたのだ。
怒り狂ったフランの一撃は一瞬でアシルを弾き飛ばした。
そして、あろうことか、アシルはこちらに向かって飛んで来たのだ。
「きゃっ」
「ギャー」
女どもに囲まれていた俺は飛んで来たアシルに巻き込まれて女たち諸共地面に倒されていた。
そして、更に俺に抱きつこうとしたララの顔先の地面に、フランが離した剣がグサリと突き刺さったのだった。
「ギャッ」
目の前に剣が突き刺さってあまりのショックにララは泡を吹いて気絶していた。
「ちょっとフラン、どういう事だ! 危ないじゃないか」
俺は驚いて注意した。さすがにやり過ぎだ。
「ふんっ」
でも、フランは無視したのだ。
「えっ、今のはフランが悪いんじゃ」
俺はさすがに戸惑った。
「殿下は気付いていないみたいですけど」
「女を側に侍らせて完全にフランを怒らせる気満々でしたね」
司会とピンク頭が解説してくれた。
「はいっ?」
俺はフランの怒りがまだ良く判っていなかった。
「ちょっとフラン」
俺の言葉をフランは無視して自分のクラスの席にさっさと帰って行ったのだ。
「おい、フラン、どうしたんだ。クラスのためだと俺と話しもしてくれなかったのはお前の方だろう」
俺は慌ててフランの方に行こうとしたが、
「はい、殿下ここまでです」
「いや、メラニー嬢、なんでフランは怒っている。俺もクラスの皆といただけで」
悪くないと言おうとした俺をフランはじろりと一瞥して来たんだけど。何か怒りのオーラが凄い。
「女の子にタオルで汗を拭かれてにやけていらっしゃったかと」
「いや、あれは女の子らが進んでやってくれただけで」
「殿下の腕にフランにはない胸押し付けられて喜んでいらっしゃったように見えましたけど」
「えっ、いや、それは違うぞ。フラン」
胸が小さいのはフランの悩みの一つみたいで、俺はそんな事は気にしないのにフランの鬼門だ。
俺は青くなった。
「それでは次の試合始めます。アドルフさんとエーリックさん」
そんな時だ。審判に呼ばれたのは。
「いや、だからフラン、俺はだな、そんなつもりはなくて」
俺は必死に言い訳しようとしたが、
「殿下、審判の先生が呼んでますよ」
「いやこれは国の根幹に関わることで」
「殿下、早く」
俺は言い訳もできずに、三年A組の面々に会場に引っ張って行かれたのだ。
俺は試合どころではなかった。
あれだけ怒っていると後が怖い。
俺は動揺していた。今はエーリックとの試合どころではない。
そこをエーリックが猛攻を仕掛けてきたのだ。
俺は必死に躱そうとしたが、俺は態勢を立て直す間もなく、地面に叩きつけられていたのだ……
なんと、フランと対戦するまでもなく、その前の子爵家の息子にやられてしまっていたのだ。
これはちょっとないんじゃないか?
「殿下、大丈夫ですか?」
俺は女の子に抱えられるのを感じたのだが、とても柔らかいものを腕に感じた。
これは更にフランが切れるのでは……
俺は薄れ行く意識の中で思ったのだ。
**********************************************************
ここまで読んで頂いて有難うございます。
おかげさまで本屋さんでこの本の書籍売れています。
平積みされているこの本を見て感激しました。
イラストレーター11ちゃんさんの、凛々しいフランと戸惑うアドとそれに纏わりつくピンク頭のきれいな表紙付きです。
まだお買い求めて頂いていない方は買っていただけると嬉しいです!
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「それとなくトラクレール公爵の周りに探りを入れるとカミーユが何回か訪ねているみたいだ」
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カミーユとクラリスは同い年だし、爵位的にも問題ない。王弟と公爵家は普通ならばお似合いだと歓迎すべき事なのだ。
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デートでフランとの仲を深めたし、俺は学園ではフランとまた甘い学生生活を送れると思っていた。
しかし、だ。
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「ちょっと、待った!」
そこにクラス対抗戦委員会を終えて、メラニーが帰ってきたのだ。何か碌でもない事を考えていそうだ。
「はい、殿下。これより我が二年E組はクラス対抗戦モードに入ります。当然殿下も敵なので、出ていっていただけますか」
フランの親友のメラニーが言ってくれたんだけど……
「えっ、バロー嬢、ちょっと……」
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何でだ? 俺は第一王子なのに、何故か三枚目なんだけど……
そんな時だ。エーリックがフランのクラスメートのアルマンを剣術で傷つけたのは。
俺は直ちにエーリックを出場停止にさせるべきだと動こうとしたのだが、外務とシルヴァンたちに反対された。
外務は外交問題を起こしたくないと言うし、シルヴァンらは調子に乗せておけば調子に乗って尻尾を出すということだったが……俺はもう一つ納得行かなかった。
そして、なんと最悪なことにアルマンが怪我をしたことでフランが剣術戦に出ることになったんだが……
何故恋人同士が戦わなければならないのだ。
それに下手したらフランが勝ってしまうかもしれない。
身体強化魔術を使わなければ、フランとは互角の戦いのはずだが、万が一負けたら、周りがうるさいことこの上ないではないか。
尻に敷かれた第一王子だとかすでに色々外野からは言われているのだ。
「殿下とフラン様が戦ったらどうなると思う」
聞かなくても良いのに、側近のリシャールが俺がいないと思って他の側近共に聞いていた。
「フラン様一択で」
フランのクラスメートのオーレリアンが言うのはまだ許せた。
「俺もそう思う」
「ちょっと待てよ。皆そう思うのか」
「騎士団連中に聞いても絶対にみんなそう言うぜ」
おい、お前ら、それはないだろう!
魔術戦なら100%負けるが剣術は互角のはずだ。
「でも、剣術の腕は互角のはずだぞ」
リシャールが言ってくれた。さすが俺の側近最年長だ。
「でも、フラン様は絶対に練習の時に手を抜いているって」
「婚約者に華を持たせているよね」
「いやいや、フラン様がそこまで考えるか。単に食べ物がかかっていないからだって」
「負けたら、食事抜きだって言われたら絶対に殿下に勝つって」
「「「それは当然だろう」」」
おいおい、お前らそこで頷くな!
いや、俺も絶対にフランに勝てる気がしないんだけど……何故に?
「今回もメラニーに、優勝しないとフェリシー先生の補講を受けさせるとか言われていますからね。補講がかかったらフラン様は絶対に勝ちますよ」
「確かに」
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「可哀想に。アドは剣術でもフランソワーズ嬢に完敗か」
「また、周りから尻に敷かれる第一王子とか陰口言われるよな」
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俺は部屋の影から誓ったのだ。絶対にフランには勝つと……
剣術戦の決勝の初戦は一年生だ。それもシルヴァンらと一緒に飛び級してきた三つ下の奴だった。
さすがにこれには完勝した。
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怒り狂ったフランの一撃は一瞬でアシルを弾き飛ばした。
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「きゃっ」
「ギャー」
女どもに囲まれていた俺は飛んで来たアシルに巻き込まれて女たち諸共地面に倒されていた。
そして、更に俺に抱きつこうとしたララの顔先の地面に、フランが離した剣がグサリと突き刺さったのだった。
「ギャッ」
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「殿下は気付いていないみたいですけど」
「女を側に侍らせて完全にフランを怒らせる気満々でしたね」
司会とピンク頭が解説してくれた。
「はいっ?」
俺はフランの怒りがまだ良く判っていなかった。
「ちょっとフラン」
俺の言葉をフランは無視して自分のクラスの席にさっさと帰って行ったのだ。
「おい、フラン、どうしたんだ。クラスのためだと俺と話しもしてくれなかったのはお前の方だろう」
俺は慌ててフランの方に行こうとしたが、
「はい、殿下ここまでです」
「いや、メラニー嬢、なんでフランは怒っている。俺もクラスの皆といただけで」
悪くないと言おうとした俺をフランはじろりと一瞥して来たんだけど。何か怒りのオーラが凄い。
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「えっ、いや、それは違うぞ。フラン」
胸が小さいのはフランの悩みの一つみたいで、俺はそんな事は気にしないのにフランの鬼門だ。
俺は青くなった。
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そんな時だ。審判に呼ばれたのは。
「いや、だからフラン、俺はだな、そんなつもりはなくて」
俺は必死に言い訳しようとしたが、
「殿下、審判の先生が呼んでますよ」
「いやこれは国の根幹に関わることで」
「殿下、早く」
俺は言い訳もできずに、三年A組の面々に会場に引っ張って行かれたのだ。
俺は試合どころではなかった。
あれだけ怒っていると後が怖い。
俺は動揺していた。今はエーリックとの試合どころではない。
そこをエーリックが猛攻を仕掛けてきたのだ。
俺は必死に躱そうとしたが、俺は態勢を立て直す間もなく、地面に叩きつけられていたのだ……
なんと、フランと対戦するまでもなく、その前の子爵家の息子にやられてしまっていたのだ。
これはちょっとないんじゃないか?
「殿下、大丈夫ですか?」
俺は女の子に抱えられるのを感じたのだが、とても柔らかいものを腕に感じた。
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