上 下
211 / 309
第四部 第四部 古の古代帝国公爵家の野望

王弟の息子視点3 邪魔な暴虐女を反省房に閉じ込めました

しおりを挟む
父たちはXデーを学園におけるサマーパーティーの日にしたようだ。
公国の大公が、留学している息子達の様子を見に来るのに合わせて決起しようとしたのだ。

父達はその日に向けて着々と手を打っていた。
もともと王弟として、配下の兵力は100名ほどしかいなかったが、昨年の侯爵反逆時に反逆して、許された元近衛の多くを雇って数は増えていた。
国王には「罪を憎んで人を憎まずですよ」とか調子のよいことを言っていたが、その実は決起時の戦力にするためだ。

今まで陰で雇っていた戦力の私兵の500も変装させて次々に王都に潜伏させていた。

更には当日は大公が200の兵に守られてやってくる。
それ以外に私兵を300旅人に紛れさせて連れてくる予定だった。

それ以外に父に付き従う、貴族たちが20、しかし、大半が男爵家や伯爵子爵家の二男三男だ。合わせたら彼らだけで千は越えるだろう。

ただ、クラリスの父のトラクレール公爵は味方に引き込むのは諦めたようだ。

事が成ってから味方にするらしい。

何しろその娘は完全に俺の手の内に下ってしまったのだから。


計画では、サマーパーティーの時に集まった国王とアドルフとシルヴァンを一網打尽にして、高位貴族を拘束、一気に事をなす予定だ。

侯爵の反逆が失敗したのは国王らを一気にやらなかったことにあると父は言っていた。
決起した時が、国王の叔父らが死ぬ時なのだ。
まあ、アドルフやシルヴァンには可哀そうだが、仕方があるまい。小さいころから王族、特に王太后にいじめられていた父はもうそこまで、屈折していた。
その横でぬくぬくしていた実の兄の国王も許せないみたいだ。まあ、俺から言わせれば王太后の前でぬくぬくしていたのは暴虐女だけだったが。


そして、当日会場にいる近衛と中央騎士団は連れて来た兵士らで制圧できるが、邪魔なのは暴虐女だ。
こいつは昨年、帝国が企てた侯爵の反逆時も、アルメリア王国の政変も、ズンダーラ教の教皇らもほとんど一人で制圧しているのだ。
エーリックの魔力量がこいつと匹敵する量だと聞いていても、一抹の不安があった。

当日はなんとしても王族やアドルフから離れさせる必要がある。

どうすれば二人は離れてくれるだろう?

観察してみると暴虐女は嫉妬深いみたいで、しょっちゅうアドルフと喧嘩していた。

試しにクラス対抗戦の時にクラリスをアドルフに近づけると即座に反応してくれた。
本当に単純で、馬鹿だ。

こんなに楽に離れてくれて良いのか?
と呆気にとられたが、試験を機にまた仲直りしてしまったらしい。
やはり片手間では無理だ。
俺は作戦を練り直すことにした。


取り合えず付き合いだした公爵家のクラリスを、こちら側に取り込むのは割と簡単だった。
旧帝国の魔道具魅了の髪飾りをクラリスにうまい具合にプレゼント出来たのだ。
そして、徐々に魅了して、今では完全に意のままに動くように魅了できた。

今まで、散々ルブランとラクロワのわがままな子供たちに翻弄されてきたクラリスは
「今まで大変だったね」と今までの労を労ってやると、
「私の事をそこまで褒めていただけたのは殿下が初めてです」
嬉々として、魅了にかかってしまったのだ。

そして、そのクラリスと、決起時に利用するわが屋敷と生徒会室をつなぐ転移装置のテストを行った時だ。

その時はテスト期間中で、絶対に誰も生徒会室にいないと思っていたのに、アドルフと暴虐女がいたのは驚いた。装置を設置したのを知られたかと一瞬青くなったが、キスをしていた二人の慌てようはそれ以上だった。

そうだ。これを利用しよう。俺は思いついたのだ。

「クラリス、酷いよね。あの二人は。俺達が必死に生徒会のことをしているのに、裸で抱き合っていたなんて」
「えっ、殿下、彼らは別にキスしていただけで」
戸惑ったクラリスが言うが、

「何言っているんだ。クラリス。確かにあの二人は裸で僕らの前で抱き合っていただろう」
「えっ、そうでしたっけ」
更に俺が言うと、クラリスは考え込むようになった。

「そうだったろう。僕らが外で必死に生徒会の仕事をしている時に、神聖な生徒会室であんな淫行をしていたんだよ」
「そうでした。本当に」
クラリスの目がぼうっとしてきた。

「許せないよね」
「本当です」
本気で怒り出したのだ。

「これは皆に言ってなんとかしてもらわないと」
「本当ですわ。殿下。神聖な生徒会室であんな事しているなんて停学になるんじゃないですか」
「いや、それは当然だが、反省房で反省してもらわないと」
俺は暴虐女をいざという時に出られない反省房に閉じ込めることにしたのだ。

あそこは、昔から酷いいたずらょした者が閉じ込められた由緒正しき反省房だった。

と言っても入れられたのが大半がルブラン家の人間だったが。血は争えないらしい。

最後は20年くらい前に、帝国の現皇帝の髪の毛を燃やしたとかで、今のルブラン公爵夫人が入れられたのが最後のはずだ。

強力なルブランの人間を閉じ込めても大丈夫なように強力な結界が張られているはずだ。
いくらあの凶暴女でも、あの中に入れられたら出られないはずだ。

あいつさえ閉じ込めておけばこちらには大公の子供達を始め強力な魔術師達もいる。万が一失敗する可能性はないだろう。

そして、国王さえ殺せば全ては成功するはずだった。

俺達はせっせと二人の淫行の噂話をばら撒いたのだ。

そして、アドルフが大公を迎える準備のために王宮に呼ばれている間に、事を起こすことにしたのだ。
いくらアドルフがあがいたところで、反省房に入れてしまえば、事を起こすまでに暴虐女を反省房から助け出すなんて無理だ。

俺達はアドがいない間に生徒会代表としてフェリシーのところに面会しに言ったのだ。

「なんですって、フランソワーズさんと殿下が生徒会室で裸で抱き合っていたですって」
フェリシーは一瞬で怒髪天になった。

「キスだけでも、反省帽ですのに、裸で抱き合っていたなど、許されることではありません。E組から100点減点します」
フェリシーは何か訳の判らないことを言ってくれた。E組から減点されて、何が悲しいんだろう?

でも、キスだけで、反省房になるのか?

そこは何か俺には理解できないことだったが、それならこんなに時間掛ける必要も無かったのだ。

俺は直ちに暴虐女の所にフェリシーを連れて行ったのだった

*********************************************************************

着々と進められる謀反の準備
捕まったフランの運命やいかに。
ここから最大の山場の開始です。

ついにこの物語の書籍の出版社からの出荷が、明日になりました。

本屋さんに並ぶのはその一日から三日後との事ですが、もうドキドキです。
ここまでこれたのも応援して頂いた皆様あっての事です。
本当にありがとうございました。
しおりを挟む
感想 334

あなたにおすすめの小説

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら

影茸
恋愛
 公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。  あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。  けれど、断罪したもの達は知らない。  彼女は偽物であれ、無力ではなく。  ──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。 (書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です) (少しだけタイトル変えました)

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

[完結連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ/ちゃんこまめ・エブリスタ投
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。