上 下
193 / 309
第四部 第四部 古の古代帝国公爵家の野望

後輩に物理を教えることになってしまいました

しおりを挟む
「ちょっとあんた達、何を私を馬鹿にしてるのよ!」
「ローズ、そんな事よりもあなたも勉強しなさいよ」
「そんな事って何よ! この聖女様を馬鹿にするなんて許されないんだから……」
頭にきたピンク頭とそれを嗜めるグレースにらを無視して、我がクラスは皆、必死に勉強する体制に入ったのだ。

テストまで3週間、今年もA組に勝てるのだろうか?

私も人のことは言えない。
礼儀作法と魔導理論と物理さえ出来たらなんとかなるのだ。

でも、礼儀作法……考えるだけで蕁麻疹が出るから無理!

魔術理論……何回も言うように何も考えずに出来るのに、理論を考えるなんて無駄だと心の底から思っているので無理!

残るは物理だ。

物理……

何でこんな科目あるんだろう?

ゲーム制作者が余程物理が好きだったのか? あるいは嫌味で入れたのか?

本当にこの世に物理の授業があるのが信じられない!

今学期の単元は熱力学なんだけど、熱力学って何? 比熱って何?

だめだ、完全に判らない。

こういう時のアド頼みだ。

私は今はアドを許していないんだけど、この前も教えてくれたし、絶対にアドは教えてくれるはずだ。

ということで私は一人で図書館に行ったのだ。去年は図書館にいたし……

まだ、アドは許していないど、クラスのためには必要なことだ。
と自分を言いくるめながら探したのだ。

図書館の中に入ると、流石にまだ一年生はほとんどいないが、必死に勉強している多くの三年生がいた。それも、アドのAクラスではなくて、下位貴族のB組や平民のC組からE組の生徒が大半だ。何しろ三年の成績が就職に直結するのだ。
就職しなくても良い領主やその妻になるのが決まっている高位貴族と違って、低位貴族や平民は試験の成績で王宮に雇ってもらえるのか、それとも大手の商会に雇ってもらえるのか等々決まってくるのだ。

皆、目の色が違う。
必死に勉強していた。

そんな中、アドを探したのだが、いなかった。

もっともアドは王太子だから就職する必要はないし、考えたらここにいるはずはなかった。
そもそも、アドは天才なのだからテスト勉強しなくてもトップは決まりだった。おそらく。
努力しないと点数取れない私と違うのだ。

そう思うと、自分の出来なさかげんにうんざりしてくる。
よく考えたら、そもそも、アドが図書館なんかにいるわけはないのだ。
生徒会か王宮の執務室にいるのだろう。
王太子のアドはいつも忙しいのだ。

それを思うと、こんなところで学園生活を謳歌していて良いのか? と思わず思ってしまった。

まあ、学園生である今のうちだけだし、友人知人をたくさん作ることは絶対に将来の役に立つはずだ!
もっとも前世で学園生活を謳歌できなかったので、今一生懸命楽しんでいるだけなのだが……

そう、私は目一杯頑張っている……そう思うことにした。



図書館の一番上まで来てアドがいないことを知って私はがっかりした。

仕方がない、こうなれば自分で勉強するか……私は空いている図書館の座席の一角を見つけてそちらに座ろうとした。

その席の横で頭を抱えて物理の教科書を開いている生徒がいる。

見ている単元は去年のわたしと同じところだ。ということは一年生だ。

なかなか難しいよね、そこ!

私はその生徒に親近感を持った。

「ここ座っても良い?」 
「はい」
頷いた生徒は私を見上げて固まっていた。

「フラン先輩!」
「ヴァネッサさん!」
そこには私が初めて寮に案内した一年E組の女生徒がいたのだった。
思わず私達がおおきな声を上げると
「「しーーーー」」
周りから怒りの声が飛んで来た。

「「すみません」」
思わず私達は謝っていた。

「どうしたの? 頭を抱えて」
私が小声で聞くと

「物理が全然わからないんです」
ヴァネッサが頭を抱えていた。

「物理は難しいわよね」
「先輩は優秀だから良いと思うのですが、私このまま行くと赤点取りそうで」
青くなってヴァネッサは言う。

「何言ってるのよ。私も赤点取りそうだったのよ」
「本当ですか」
私の言葉に思わずハイテンションでヴァネッサが答えてしまって
「「「しーーーー」」」
更に皆に白い目で見られてしまった。
さすが人生のかかっている三年生は怖い!


「場所を変えようか」
私達はその場を離れると開いていた個室に入った。

「でも、フラン先輩はどうやって勉強したんですか?」
ヴァネッサが熱心に聞いてきた。

「アドにノート見せてもらって」
「えっ、それってよく出来る人なんですか?」
「そうよ、それで教えてもらったの」
アドといってもすぐには誰か判らなかったみたいで、私はホッとした。
今は喧嘩している身だし、あんまり知られたくない。

「いいなあ、先輩は教えて貰える人がいて」
羨ましそうにヴァネッサが言ってきたのだ。

「何なら私が教えてあげようか」
自分の勉強誰で手一杯で、そんな時間がないのに、可愛い後輩の悩みに私は思わず提案してしまったのだ。
先輩という立場と後輩に教えるという魅力に負けてしまったのだ。

それからしばらく、私なりに物理を教えることになったのだが、私はそう言ってしまった事をとても後悔したのだった

****************************************************************
フランの心躍る先輩生活はいつまで続くのか?
今夜更新予定です

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

王子様は王妃の出産後すぐ離縁するつもりです~貴方が欲しいのは私の魔力を受け継ぐ世継ぎだけですよね?~

五月ふう
恋愛
ここはロマリア国の大神殿。ロマリア歴417年。雪が降りしきる冬の夜。 「最初から……子供を奪って……離縁するつもりだったのでしょう?」  ロマリア国王子エドワーズの妃、セラ・スチュワートは無表情で言った。セラは両手両足を拘束され、王子エドワーズの前に跪いている。 「……子供をどこに隠した?!」  質問には答えず、エドワーズはセラを怒鳴りつけた。背が高く黒い髪を持つ美しい王子エドワードの顔が、醜く歪んでいる。  「教えてあげない。」  その目には何の感情も浮かんでいない。セラは魔導士達が作る魔法陣の中央に座っていた。魔法陣は少しずつセラから魔力を奪っていく。 (もう……限界ね)  セラは生まれたときから誰よりも強い魔力を持っていた。その強い魔力は彼女から大切なものを奪い、不幸をもたらすものだった。魔力が人並み外れて強くなければ、セラはエドワーズの妃に望まれることも、大切な人と引き離されることもなかったはずだ。  「ちくしょう!もういいっ!セラの魔力を奪え!」    「良いのかしら?魔力がすべて失われたら、私は死んでしまうわよ?貴方の探し物は、きっと見つからないままになるでしょう。」    「魔力を失い、死にたくなかったら、子供の居場所を教えろ!」  「嫌よ。貴方には……絶対見つけられない場所に……隠しておいたから……。」  セラの体は白く光っている。魔力は彼女の生命力を維持するものだ。魔力がなくなれば、セラは空っぽの動かない人形になってしまう。  「もういいっ!母親がいなくなれば、赤子はすぐに見つかるっ。さあ、この死にぞこないから全ての魔力を奪え!」  広い神殿にエドワーズのわめき声が響いた。耳を澄ませば、ゴゴオオオという、吹雪の音が聞こえてくる。  (ねえ、もう一度だけ……貴方に会いたかったわ。)  セラは目を閉じて、大切な元婚約者の顔を思い浮かべる。彼はセラが残したものを見つけて、幸せになってくれるだろうか。  「セラの魔力をすべて奪うまで、あと少しです!」  魔法陣は目を開けていられないほどのまばゆい光を放っている。セラに残された魔力が根こそぎ奪われていく。もはや抵抗は無意味だった。  (ああ……ついに終わるのね……。)  ついにセラは力を失い、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。  「ねえ、***…………。ずっと貴方を……愛していたわ……。」  彼の傍にいる間、一度も伝えたことのなかった想いをセラは最後にそっと呟いた。  

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。 目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。  死にたくない。あんな最期になりたくない。  そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。