上 下
172 / 309
第四部 第四部 古の古代帝国公爵家の野望

婚約者が補講を代わってくれると言ったので、キスしたのに、更にひどい状態になってしまいました

しおりを挟む
本当にもう最悪だった。
せっかくアドがフェリシー先生の補講を無くしてくれたのに、メラニーの言うとおりにしたら、何と二週間も放課後補講になってしまったのだ。
もうやってられなかった。
そう文句を言ったら
「今回の延長は私は何も悪くないでしょ」
とメラニーに怒られてしまったけれど。
我慢しなかった私が悪いのは事実だったけれど。何も怒ることないじゃない!

その上、何故かアドの機嫌も悪くなって、やたらと私に構うようになって来たんだけど。
何で?

「どういう事だ、フラン。更に一週間もエーリックと一緒に補講なんて」
「知らないわよ。文句はエーリックに言ってよ」
不機嫌なアドに私は言い返した。最悪なのは私だし、アドは関係ないじゃない。

「元々エーリックとの決闘も見に来なかったくせに」
「仕方がなかっただろう。父に呼ばれていたんだから。それにフランがあんな奴に負けるとは思ってもいなかったし」
私が文句を言うとアドが言い返してきた。

でも、私は何も悪くないのだ。あのアホリックがあんなところで私に絡んでこなかったらこんなことにはなっていなかったのだ。

「そうだ、アドが私の代わりに出てくれたらいいのよ」
私は良いことを思いついたようにアドに言った。

「そんなの出来るわけないだろう」
アドが怒って言ったが、

「だって私は今回は巻き込まれただけよ。エーリックの攻撃は全部障壁で弾き飛ばしただけなんだから」
そうだ。本来、悪いのは完全に攻撃してきたエーリックのはずなのだ。
なのに、何故私が二週間も付き合わないといけないのだ。

「だからアドが代わってくれるって言ったら絶対にフェリシー先生は認めてくれるはずよ」
私は自信を持って言ったのだ。

「だから、なんで俺がフランの代わりに補講に出なければいけないんだよ」
「良いじゃない。たまには婚約者の頼みを聞いてくれても」
私はアドにダメもとで頼んでみた。

私の言葉に少しアドが考えていたけれど、
「じゃあ、キスしてくれたら考えてもいいよ」
アドが飛んでもないことを言ってきた。

「いや、何言っているのよ。そんなのできるわけないでしょ」
私は恥ずかしさのあまり真っ赤になった。そうだ。まだ、アドとはそんなにキスなんてしていない。
私達は健全な交際なのだ。

「キスくらい良いじゃないか。フェリシー先生の補講がなくなるのならば」
「それもそうね」
私は何をトチ狂ったのか、その通りだと思ってしまったのだ。
それだけ私はフェリシー先生の補講は嫌だった。
そうだ。フェリシー先生の補講が無くなるのならばアドにキスするくらいなんでもない。
補講いやさに私は思わずそう思ってしまったのだ。

私は何も考えずに、その勢いのまま、アドの頬にチュッとキスをしたのだ。

「えっ」
アドは驚いて目を見開いて私を見た。
何よ。あなたがそうしろって言ったんじゃない!
私が思った時だ。

「うそっ」
「キャーーーー」
「あの女、王子様にキスした」
いきなり食堂は黄色い悲鳴が巻き起こった。

そうだ。忘れていた。ここは学食だったのだ。
やってしまった。

メラニーらは呆れているけれど、一年生たちが驚いて見ていた。

「あの女何なの」
「いや、フラン様は王太子殿下の婚約者だから」
「でも、こんな公衆の面前でキスする何て」
「それだけお二人は熱々なんじゃない」

「何言っているんだか」
「この二人は昔からそうだよね」
うちのクラスの連中もなんか言っている。


「ちょっと姉上、何やっているんですか」
「兄上も離れてください」
そこに怒ったジェドとヴァンが飛んで来た。
二人は強引に私たちを引き離すと、

「一体、こんな公衆の面前で何やっているんですか」
「兄上も生徒会長の自覚を持ってください」
ぶつぶつ文句を言う二人の前で恥辱に染まって真っ赤になって私は震えていた。
アドは嬉しそうにニコニコしているし、もう最悪だった。


だが、そんな恥をかいてキスまでしたのに、私の補講はなくならなかったのだ。

アドはフェリシー先生に言ってくれたのだが、通らなかったらしい。

更には何故か、アドがその補講に加わってくれたんだけど……

「そうです。さすがアドルフさんです。素晴らしいです」
フェリシー先生はアドをべた褒めだった。もう絶賛の嵐だ。

そうだった。アドは昔からフェリシー先生のお気に入りだった。
姿勢もいいし、何故かその礼儀作法の所作がフェリシー先生の考えとぴったり合ったのだ。

私の見た目からはその動きは私とそんなに変わらないのに、なぜこうなる?

「さあ、フランソワーズさんもエーリックさんもアドルフさんを真似てちゃんとやってくださいね」
「俺と何が違うんだよ」
エーリックがぶつぶつ言うが、
「あんたのは見ただけで、違いが一目両全瞭然でしょ」
私がズバッと言った。

「お前と変わんないだろう」
「何言っているんですか。二人ともまだまだです」
私達の文句はフェリシー先生の一言でぶった切られた。

補講の間中、アドは褒められて私はけなされたのだ。
何なのよ。これ。さらに酷くなったじゃない!

私は二度とアドのいう事は聞かないようにしようと思ったのだ。


*****************************************************

すみません。補講ばかりで……
今回は珍しくアドに振り回されたフランでした。

次は街中デート編です。
ご期待ください。
明朝更新予定です
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

王子様は王妃の出産後すぐ離縁するつもりです~貴方が欲しいのは私の魔力を受け継ぐ世継ぎだけですよね?~

五月ふう
恋愛
ここはロマリア国の大神殿。ロマリア歴417年。雪が降りしきる冬の夜。 「最初から……子供を奪って……離縁するつもりだったのでしょう?」  ロマリア国王子エドワーズの妃、セラ・スチュワートは無表情で言った。セラは両手両足を拘束され、王子エドワーズの前に跪いている。 「……子供をどこに隠した?!」  質問には答えず、エドワーズはセラを怒鳴りつけた。背が高く黒い髪を持つ美しい王子エドワードの顔が、醜く歪んでいる。  「教えてあげない。」  その目には何の感情も浮かんでいない。セラは魔導士達が作る魔法陣の中央に座っていた。魔法陣は少しずつセラから魔力を奪っていく。 (もう……限界ね)  セラは生まれたときから誰よりも強い魔力を持っていた。その強い魔力は彼女から大切なものを奪い、不幸をもたらすものだった。魔力が人並み外れて強くなければ、セラはエドワーズの妃に望まれることも、大切な人と引き離されることもなかったはずだ。  「ちくしょう!もういいっ!セラの魔力を奪え!」    「良いのかしら?魔力がすべて失われたら、私は死んでしまうわよ?貴方の探し物は、きっと見つからないままになるでしょう。」    「魔力を失い、死にたくなかったら、子供の居場所を教えろ!」  「嫌よ。貴方には……絶対見つけられない場所に……隠しておいたから……。」  セラの体は白く光っている。魔力は彼女の生命力を維持するものだ。魔力がなくなれば、セラは空っぽの動かない人形になってしまう。  「もういいっ!母親がいなくなれば、赤子はすぐに見つかるっ。さあ、この死にぞこないから全ての魔力を奪え!」  広い神殿にエドワーズのわめき声が響いた。耳を澄ませば、ゴゴオオオという、吹雪の音が聞こえてくる。  (ねえ、もう一度だけ……貴方に会いたかったわ。)  セラは目を閉じて、大切な元婚約者の顔を思い浮かべる。彼はセラが残したものを見つけて、幸せになってくれるだろうか。  「セラの魔力をすべて奪うまで、あと少しです!」  魔法陣は目を開けていられないほどのまばゆい光を放っている。セラに残された魔力が根こそぎ奪われていく。もはや抵抗は無意味だった。  (ああ……ついに終わるのね……。)  ついにセラは力を失い、糸が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。  「ねえ、***…………。ずっと貴方を……愛していたわ……。」  彼の傍にいる間、一度も伝えたことのなかった想いをセラは最後にそっと呟いた。  

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。 真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。 そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが… 7万文字くらいのお話です。 よろしくお願いいたしますm(__)m

【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。 目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。  死にたくない。あんな最期になりたくない。  そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。