上 下
165 / 309
第四部 第四部 古の古代帝国公爵家の野望

またしても食堂の前で王太子に捕まって王妃様の所に連れて行かれることになりました

しおりを挟む
その日の授業は順調に始まった。
昨日は王妃様に呼ばれて授業に出られなかったから、二年生になって最初の授業だ。
最初の数学は流石に少しは難しくなってきたが、まだ、なんとかなる。
このまま、私の理解の能力の範囲で収まってほしいんだけど。

魔術理論は相も変わらず良く判らない。
魔術を使うには形が大切だと先生は何度も話してくれるんだけど、いつもは「えいや」で終わるのだ。詠唱の呪文なんて使った事なんてほとんどないし、魔術を放つ時の最初の形なんて気にしたこともない。私にとって魔術を理論で考えろなんて無理なのだ。
出来れば何でもいいと思うのにと後でメラニーに言ったら
「それはフランだけよ」
ムッとしてメラニーに言われたけれど、私だけってうちの両親もそうなんだけど……


そして、歴史の授業は最悪だった。
今日はエルグラン建国記だった。
戦いには全てに我がご先祖様が出てくる。
小さい時から散々聞かされているので、空で覚えているんだけど。

「この教科書に出ている剣ですがルブラン公爵家の初代様が使われた宝剣です」
歴史の先生が得意げに説明してくれるんだけど、
「あっ、その剣ってこの前公爵邸で見せてもらった、フランが殿下とチャンバラゴッコをして折った剣じゃないか」
「本当だ」
アルマンとバンジャマンの声にみんな一斉に教科書を見る。

「な、なんと、フランソワーズさんはこの歴史的宝剣を遊びで折られたのですか」
歴史の先生が怒っているんだけど、ちょっと子供の時の事を責めないでほしい。
「この横の鎧もフランが投げた剣で穴が開いていました」
更にアルマンが余計なこと言ってくれるんだけど。

「フランソワーズさん。歴史のある刀剣や鎧は大切に扱ってくださいね」
先生は涙ながらに言ってくれるんだけど。
文句は子供の私に言ってほしい……

先生の「歴史的遺物は大切にしてくださいね」と延々と泣かれ続けたんですけれど

「もう、アルマンもバンジャマンも余計な事を言わないでよね」
お昼休みに食堂に向かいながら私が文句を言うと、

「いやあ、つい口が滑って」
「しかし、フランとこのご先祖様も凄いよな。歴史に名前が出てくるんだから」
バンジャマンが感激して言ってくれているけれど。

「あんたら何言っているのよ。既にフランは歴史の教科書に名前が載るのが確定しているのよ」
メラニーが言い出したんだけど。

「ええええ! 私はまだ何も悪い事はしていないわよ」
驚いて私が言うと、
「悪いことをしたからって歴史の教科書に載らないわよ」
「だって、去年は近衛師団長が反逆しようとしたじゃない。それにアルメリア国王は宰相が反逆して乗っ取ったんでしょ。そんな事件は教科書に載るのは判るけれど」
グロヴレ侯爵の乱とかイエクラ20年の乱とかになるのだ。
でも、私は反逆なんてしていない。

「何言っているのよ。それを防いだのフランじゃない」
「えっ、私? まあ、私はみんなと一緒に防いだだれよ」
そうだ。断じて私一人がやったのではない。それでなくても問題起こすなって言われているのにこれ以上怒られたらたまったものではない。

「フランは見た目によらずに謙虚なんだな」
驚いてアルマンが言うんだけど。

「絶対に何か斜めに考えているだけだと思うけれど」
メラニーが何故か疑り深そうに見てくるんだけど。

「これ以上、私が怒られる要素を増やさないでよね」
「やっぱりフランの考えってそこなんだ」
メラニーが呆れて言うけれど、

「なんで、フランが怒られるの? ルートン王国からは勲章山のようにもらっているし、アルメリア国王からはこの国がまともになったのは全てフランソワーズ様のおかげだって感謝状が来たんでしょ」
ノエルが不思議そうに言う。

「そうよ、巷ではフランの人気は鰻登りよ」
「そうそう、私のクラスメートだって自慢したらみんなにとても驚かれたわ」
「サインもらってきてくれなんて頼まれてるんだから」
ソレンヌらが言ってくれるんだけど。

「えっ、そんなに人気あるの?」
私は嬉しくなった。

「そらあ、そうよ。近衛騎士団長の反乱を防いだのもフランだし、海賊を退治したのもフラン、海賊の親玉のアルメリア国王を退治したのもフランだもの」
「ターザンフランとか破壊女とか言われてもいるけれどな」
アルマンが余計なことを言ってくれた。
そうだ、危うく騙されるところだった。
巷にはこのまえの緑頭が言ったように絶対にあのターザンの雄叫びが広まっているのだ。
「ああああ、あんな映像広まったら私お嫁に行けないじゃない」
私は食堂の前で頭を抱えてしまった。

「な、何言っているんだ。フランは俺の婚約者だろうが、俺の所に嫁に来るに決まっているだろう!」
そこに会いたくもないアドが慌てて叫んできたんだけど。

「フンっ、あんた誰?」
私は無視した。

「ちょっと待てよ。フラン、本当に悪かったから」
アドが頭を下げてくるんだけど、そんなので許さない。
私は無視して食堂の中に入ろうとした。

「いや、フラン、母が呼んでいる」
私の腕を強引に掴んできたのでそれを振り払おうとした私にアドが囁いてきたのだ。

「ええええ! また?」
私は唖然とした。昨日怒られたところではないか。

「ひょっとしてあのいけ好かない子爵令嬢の件ですか?」
ノエルが殿下に聞く。
「おそらく」
アドが曖昧に頷くが

「すまん、フラン、余計なこと言ったばかりに」
アルマンとバンジャマンが謝ってくれるんかだけど、

「あなた達が悪いわけではないわ」
私は首を振った。
そうだ。
元々、この食堂を馬鹿にしたあの緑頭が悪いのだ。

「殿下。今度はきっちりとフランを守っていただけるのでしようね」
何かメラニーの視線が厳しいんだけど。

「当然だ」
アドはそう言うが、こいつはいつもこんな時は逃げるのがほとんどだし。
私が疑り深い視線をアドに向けると

「いや、本当だって」
アドが躍起になって言う。

「ふんっ、別に期待していないし」
私が言うと
「いや、絶対に守るから」
アドが言うんだけど。

本当だろうか?

私はそんなアドに引きずられるようにまた、王宮に連れて行かれたのだ。





しおりを挟む
感想 334

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

「聖女など不要」と言われて怒った聖女が一週間祈ることをやめた結果→

-
恋愛
国を守護する力を宿した、聖女のルイーゼ。 彼女は毎日祈りを捧げることで、 魔物に力を与える「魔窟」を封印しているのだ。 けれど長らく平和が続き、 巷では聖女などもはや不要だという空気が蔓延していた。 そんなある日、ルイーゼは王子であるニックに呼び出され「キミ、聖女やめていいよ」と言い渡されてしまう。 ルイーゼがいくらその必要性を訴えても、ニックは聞く耳を持たない。 ならばと、ルイーゼは一週間祈ることをやめ、聖女の力を証明しようと決意。 するとさっそく、不穏な出来事が頻発し始めて――

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。