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第三部 ルートン王国交換留学編

閑話 クラリス・トルクレール公爵令嬢視点 後輩から引退した生徒会長の仕事を勝手に押し付けられて切れました

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第四部まで後少しです。

これは新学期登場するフランの後輩の公爵令嬢のお話です

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「な、何ですって!」
私は怒りの悲鳴を上げた。

ど、どういう事だ!

私の目が点になったその先に奴らの置き手紙があった。

私はその手紙を持ってわなわな震えていたのだ。

その手紙には、1つ下のシルヴァン殿下とジェラルドが所用につき、急遽ルートン王国に留学すると書かれていた。
別に中等部の後輩たちが留学するのは問題ない。普通は、勝手にしろで終わりだ。

問題なのはその二人が生徒会の会長と副会長である点で、その後釜として私を指名してきた点なのだ。

「あ、彼奴等今まで散々好き勝手にしてくれていたくせに、更に私に押し付けるなんてどういうことなの!」

私は完全に切れていた。


私はクラリス・トルクレール、この国に3っつしかない公爵家の令嬢だ。

そう、我がエルグラン王国には3っつの公爵家があるのだ。決して2つではない。

1つ目が武のルブラン公爵家。建国当初からある武の一門だ。魔の森に接していて、その武力は我が国一、建国当初から近隣諸国に武をもって鳴り響いている。当主は基本的に騎士団長を歴任している。現公爵も剣術では我が国では剣聖と並んでトップを張っていて、その妻はおそらく、世界最強魔術師、破壊の魔女だ。この二人がいる限り他国の侵略を許すわけはないと国民の多くに圧倒的に支持されている公爵家だ。

そして、もう一つが、文のラクロワ公爵家。
多くの文官を輩出しているこれまた建国当初からの名門だ。当主の多くは歴代宰相、外相、内相等を歴任している。現公爵はまだ、40と若くいずれは宰相になるのは確実だと言われている。その領地経営、国家運営の手腕はこれまた、近隣諸国に鳴り響いている。

多くの国民はこの2つの公爵家の事はよく知っているのだ。

でも、最後の一つ、我がトルクレール公爵家は知名度も今ひとつ。そんな公爵家あったっけと国民への知名度は本当に低いのだ。
はっきり言って上の2つの公爵家の知名度がありすぎるのだ。

我が公爵家は建国当初の王弟から始まったのだが、武のルブランと文のラクロワの2つに挟まれて本当に影が薄いのだ。
というか、この2つは性が合わないのか元々仲が良くなくて、しょっちゅう喧嘩しているのだ。それを仕方なしに、仲裁しているうちについたあだ名が調整のトルクレール。どうしようもない二つ名がついているのだ。

建国当初はこの二人がつかみ合いの喧嘩をしていたので、間にいた初代王弟殿下は本当に切り傷が絶えなかったとか。
大体いつも殴り合いになると一発目をその間にいた始祖の王弟が受け止めていたとか。本当に大変な家なんだけど。国王も両家の険悪さに嫌気が差して、その調整はわが家に丸投げだったと聞く。領地も険悪な両家の間にあって気苦労が絶えない。
先々代の時にルブラン公爵家の領地が半減された時も、(半減されたと言っても人の住む土地の話で、広大な魔の森は公爵家の領地のままで、10分の一くらいのことなのだが)、その領地は王家の所有になったのだが、実際に統治させられているのは我が家で、それはもう大変だったと聞いている。

他国から王族が来ても、2公爵家の間に立っている存在感のない我が公爵家は、そんな公爵家がありましたかとといつも認識さえしてもらえないのだ。

父上も、剣の腕はそこそこ、統治能力もそこそこなのだ。というか元々王弟から始まったのが悪いのか、いかんせんお淑やかすぎるのだ。役職にも殆どつかず、社交にもあまり力を使わないので、本当に目立たないのだ。
上位貴族が集まる会合でも、ルブラン家とラクロワ家が喧嘩しているのをどっちつかずで見ているしか能がないのが我が公爵家だ。いや、違う。いつも他の貴族らでは押さえられないので、父が呼ばれて二人の喧嘩のとばっちりを盛大に受けているのだ。
父が何か出来るわけではない。険悪になりそうな、二人の気を必死にそらして、話題を当たり障りのないものに必死に変えているのだ。そしていつも失敗して殴り合いの被害者になっているのだ。

私としては、父にもう少ししっかりしてほしかった。被害に合うまでは私もそう思っていたのだ。なんて頼りにならないお父様なんだって。

でも、私も彼らと付き合いだして、他人事にならなかった……

まあ、一番は私の年齢が問題なのだ。


まあ、元々、アドルフ殿下の婚約者選定のお茶会でも、私はフラン様の強引さに弾き飛ばされた口なのだ。

私はその時初めて王子様とお話できて喜んでいた。アドルフ様は本当に見た目から王子様だった。子供の私から見ても落ち着いていて見た目もイケメンだった。人に気も使えるし、笑顔もきれいだ。

その喜んでいた私達とお話していた殿下は
「ちょっと、あなた。良いところにいたわ」
と強引にフラン様に連れ出されたのだった。
残された私達は唖然としたのだ。私は一応公爵家の令嬢で地位も高いはずだったのに、その私は一瞬で弾き飛ばされたのだった。フラン様の強引さの前には私は文句さえ言えなかった。

連れ出された殿下は王家の青い薔薇を庭師よろしく使われてフラン様に切って渡されていた。
後で聞いた話では、フラン様の家の年老いた庭師が一度でいいから王家の青いバラを見てみたいと言われていたのをフラン様は思い出されたのだとか。

その後葉っぱで作ったボートレースをお二人はされだして、私たちは完全に蚊帳の外に追いやられたのだ。

私は到底この方には勝てないと子供心に思い知らされたのだ。


私の入った王立学園の中等部にも生徒会があるのだが、アドルフ殿下のいらっしゃる時は卒業までアドルフ殿下が生徒会長をされていた。
卒業されたらその1年下のフランソワーズ様かグレース様が生徒会長をされると思って安心していたのに、
「クラリス、お願い。私には無理だわ」
とフランソワーズ様には丸投げされて、
「クラリス様。元々生徒会長は今年は殿下が最後までされていましたが、本来は3年生ではなくて2年生がされるのが普通なのです」
とこんこんとグレース様に言われて仕方なしに、やらされのたのだ。

しかし、まあ、私が自分の考えで好きにできるのならば生徒会長も良いのだけれど…………

「クラリス様、これはおかしいですわ」
事ある毎にグレース様からは文句を言ってくるのだ。
「クラリスお願い。今度の遠足は洞窟探検が良い」
と無茶振りをフランソワーズ様からされて本当に大変だった。
なんで今から煩い小姑に2人も指図されて生徒会なんてやらなければいけないんだろうと、何度思ったことか。

「そんなに文句言うならあなたがやってよ」
余程言いたかった。二人が怖くて言えなかったけれど。

そして、お二人のされること、特にフラン様のされることは私達貴族令嬢にとっては突飛なことで、私がついていくのも大変だった。当然他の令嬢たちにとっても大変なことで、クレームは全部こちらに来るのだ。

フランソワーズ様は、歴代のルブラン公爵家の血をそのまま引かれたような方で、わが道をゆくという方で、独眼独歩、言い方を変えると傍若無人なのだ。周りの苦労などほとんど考えられないのだ。

いや、良い方は良い方なのだ。我が領地に敵が攻めてきたら先陣きって助けてはくれる。それは絶対に。その安心感はあるのだ。

でも、そのフラン様が行きたがった遠足先は王都の傍に新たに見つかった洞窟探検とかいうとんでもないものでだった。
そして、それを聞いた私のひとつ下の副会長のシルヴァン殿下と弟のジェラルドが嬉々として立案始めたのだ。

ちょっと待ってよ。勝手にやらないでよ。
私が叫ぼうとした時はもう遅かった。次々に具体的な計画が策定されていくのだ。
この二人は余計なことに事務的な作業は確実で的確なのだ。私が気がついた時にはもう全て決定されて予約された後だった。

そして、それを聞いたまともな貴族連中からは矢のようなクレームが全部生徒会長の私のもとに来るのだ。
先生方も含めて。
いやいや、ちょっと待ってよ、あなた達も文句はフラン様に言いなさいよ。

私は思ったのだが、ルブラン公爵家や王家を恐れた他貴族の令息、令嬢の文句が全部こちらに来たのだった。

ちょっと待ってよ。私も一応公爵令嬢なんだけど、誰も認めてくれないんだけど……

そして、私の一年下にはフランソワーズ様の弟君とシルヴァン第二王子殿下がいらっしゃったのだが、この二人がまた、ネックなのだ。

何しろこの二人が静かなのは、いや、違う、大人しいのはフランソワーズ様の前だけなのだ。
やることはあくどいことも平気でやるし、この二人とグレース様の間に挟まれて本当に私は大変だった。
私が3年生になってグレース様とフランソワーズ様がいらっしゃらなくなってお二人の間に入らなくなって、本当にほっとした。

生徒会もシルヴァン殿下とジェラルド君らの世代に引き継げたし、私もやっと学園生活を楽しもうとしたのだ。

しかし、しかしだ。

この二人、よくいなくなるのだ。それも行事とか大変な時に。何故かその姉のいる高等部に顔を出しているのだ。
その度に私が先生から呼び出されてグチグチ二人の文句をと言うか愚痴を言われるんだけど。
私はもう引退したのだ。私に言ってもらっても困ると私は言いたかったが、トルクレールの血なのか、捨てて置けず、色々聞いてしまって先生の代わりに二人に怒るのだけど、二人は絶対に右から左だ。

そして、今だ。何よりも許せないのは、この二人、生徒会長と副会長のくせに、3学期にいきなりフランソワーズ様とグレース様について留学してしまったのだ。

『クラリス先輩。後はよろしくお願いします』
の書き置きだけ残して。


「……」
私は絶句してしまった。
なんで王族でもないのに、生徒会長を3年生になってもやらないといけないのよ。

しかし、先生方に泣きつかれてどうしようもなかったのだ。
私は泣く泣く生徒会長を3学期の間させられたのだった。

彼奴等帰ってきたらただではおかんと憤りながら。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
新学期に入ってくる後輩のお話でした。

第四部新学期編ももうすぐ書き始める予定です。
遅くなってすいません。



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