上 下
148 / 309
第三部 ルートン王国交換留学編

イエクラ国王視点 アルメリア国王夫妻を弑逆しました

しおりを挟む
俺はディエゴ・イエクラ、代々宰相を輩出する侯爵家の四男だった。当然四男なので、家を継ぐ気はなかった。

伯爵家の令嬢サラ様を見るまでは。

たまたま彼女とは学園の同学年だったのだ。同じクラスになった私はあっという間に可憐な彼女の虜になったのだ。しかし、彼女は人気があり、侯爵家とはいえ四男の私では太刀打ちできそうになかった。

私は彼女に言ったのだ。絶対に侯爵家を継げるようになるよう頑張るから、それまで待ってほしいと。
なんと、彼女はほのかに頷いてくれたのだ。
私は天にも昇る気持ちだった。

私はそれから必死に頑張った。

学業では学年の主席になり、領地の経営も必死に学んだ。

しかし、宰相の父は忙しく、私に目も向けてくれなかった。



私がその男を知ったのはたまたまだった。

屋敷の中でたまたま兄が怒り声を上げているのに、出くわしたのだ。

その怒られている相手がこの男だった。

黒っぽい衣装を身に纏った目立たない男だった。でも、それからよくこの男に会うようになった。

男は兄の部下だったが、兄はいつもその男を見下すように接していた。

俺は言ったのだ。

「あんな兄の下にいると大変だな」
と。

「いえいえ、仕事ですから」
男はそう言ったが、それから色んな事を折に触れて教えてくれるようになった。

その頃、学園の花となっていたサラに兄が懸想しているのもその男から教えてもらった。

それを知って俺は怒り狂ったのだ。
でも、侯爵家の跡取りの兄と四男の俺ではどちらに歩があるかは明白だった。

「兄上が憎たらしいですか?」
「当たり前だ。殺したいくらいだ」
男の質問に俺は思わずそう言ってしまったのだ。

「やりますか」
男がぽろりと言ってくれた。

「えっ」
俺は驚いて男を見た。

「その覚悟があればやりますよ。でもその代わり、若様には当主になってもらわねば困ります。その覚悟がありますか」
「なれるのならば是非なりたい」
それは俺の希望でもあったのだ。

それから俺とその男は悪巧みの仲間になった。
男はこの家の影、というか隠密だったのだ。
俺はその男と組んで、兄を馬車の事故と見せかけて殺したのだ。
兄は冷血で四男の俺など歯牙にもかけていなかったから、いい気味だった。

二男三男はあまり、覇気もなく、俺の敵ではなかった。


俺は侯爵家を継げる目処が立ってサラに会いに行ったのだ。

しかし、サラは既に国の王太子と婚約することが決まっていたのだ。

俺はサラに約束が違うと詰ったが、約束なんてしていないとサラは冷たく言い放った。



俺は自暴自棄になった。酒に走り、使用人に当たり散らした。

そんな俺に、男は言ったのだ。
「何年かかっても良いのならば、あの子をあなたのものにしてあげますよ」

俺はそれを聞いて、もう一度初めからやり直すことにしたのだ。

父について政治の勉強を初めたのだ。

父に言われて、最初は辺鄙な地方の役所の勤務から始めたのだ。

地方の役所は人が居なくて雑用はすべて1人でやらされた。

こんな雑用が何になると思ったこともあるが、殆どの事を1人でこなすという事は無理矢理にでもやり方を覚えざるを得ない事で、俺は多くのことを覚えた。

そして、三年間、地方できっちり勤め上げて、中央に帰ってきたのだ。

そこからはトントン拍子に出世して、30の時には内務省の部局長になり、外務卿等を経て、父の宰相の跡を四十手前で継いだのだ。

俺は何食わぬ顔で憎き王太子、今は国王について政治を行っていった。

しかし、国王は優柔不断で海賊対策も碌に出来ず、遊び呆けていた。
そんな王に対して商人たちの不満が溜まっていた。

一方、私の影として男は勢力拡大に努めてくれた。

ありとあらゆるところに諜報網を築いてくれたのだ。

俺は影の活躍で多くの貴族たちを助け、あるいは弱みを握り、味方にしていった。

俺はそんな影に言って海賊共をも手懐けていったのだ。

そして、四十でサラを奪った国王を毒殺することに成功したのだ。

俺は嬉々としてサラに会いに行った。

「あなたが陛下を殺したの?」
しかし、サラは目を吊り上げて俺を詰って来たのだ。

俺は黒い欲望のまま、サラを抱こうとした。

しかし、サラは抵抗してナイフで俺を刺してきたのだ。

腕にナイフを刺された俺は逆上してしまった。

気付いたら俺はサラをメッタ刺しにしていたのだった。
*********************************************************************

ここまで読んで頂いて有難うございます。
第三部完結まで後少しです。
最後までお楽しみ頂ければと思います。
今夜フランの全力攻撃が炸裂します。
お楽しみに!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【完結】私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

我儘王女は目下逃亡中につき

春賀 天(はるか てん)
恋愛
暴君と恐れられている父王から 愛妾である母と同様に溺愛されている 第四王女は、何でも自分の思い通りに になるのが当たり前で、 その我儘ぶりから世間からも悪名高い 親子として嫌われていた。 そんなある日、突然の父の訃報により 自分の周囲が一変し国中全てが敵になり、 王女は逃げる、捕まる、また逃げる。 お願いだから、もう放っておいてよ! 果たして王女は捕まるのか? 【別サイト**~なろう(~読もう)さん でも掲載させて頂いてます**休止中】

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。