上 下
124 / 309
第三部 ルートン王国交換留学編

王太子から赤いバラの花束を贈られて、ソニアに誤解されました

しおりを挟む
次の日も練習後に寮の部屋に謝りに行ってもソニアは会ってくれなかった。

「どうしよう、メラニー?」
「うーん、まあ、気長に通うしか無いんじゃない?」
私が気にして聞くと、メラニーは所詮他人事なのかあっさりと言ってくれた。

「王太子の私に謝るのってこんな感じなのかな?」
私が言うと

「フラン、やっと殿下の気持ちがわかってくれましたか?」
食堂の隣で食べていたオーレリアンが喜んでいってきたんだけど、
「アドじゃないわよ」
私がムッとして言った。

「えっ、王太子ってこの国の王太子殿下のことですか」
がっかりしてオーレリアンが言ってくれるんだけど、
「当然でしょ。私がなんでアドの心配しなくちゃいけないのよ」
「だって、ずうーーーーっと毎日グチグチ言われる身になって欲しい」
「ふんっ、アルメリアの女に抱きつかれて喜んでいるアドが悪いのよ」
オーレリアンの愚痴を私は一瞥して却下したのだ。

「もう、オーレリアンは、その事、黙っていたらフランは忘れるのに」
「あっ、そうだった、聞かなかったことにして」
メラニーの言葉にオーレリアンが言ってくるんだけど、はっきり聞いたっていうの!

「でも、あのソニアって人、どこかであったことがあるような気がするのよね」
突然、メラニーが言い出したのだ。
「そうかな」
私はあやふやに答えると、

「それもここ最近なんだけど」
「この学園に来てからじゃなくて?」
「もう少し前に」
「そうだっけ?」
私はメラニーが言う事がよく判らなかった。エルグランにソニアがいたという事だろうか? それならいくら私でも覚えていると思うのだ。


「フラン、花束」
そこになんとエドガルドが赤いバラの花束を持ってきたんだけど。

「えっ、私、バラの花買ってきてくれなんて言ったっけ?」
私は頓珍漢な事を聞いていた。

「いや、違うでしょ。気にするところは」
メラニーが言って
「エドガルド、フランに恋しちゃったわけ?」
テオドラの言葉にイネが食べかけのスプーンを落とすのが見えた。

「そ、そんな……。それは確かにフラン様は凛々しいですけれど」
「な、何を言っているんだ。そんなわけないだろう!」
エドガルドが慌てて否定するんだけど、
「じゃあなんでバラの花なんてフランに渡すのよ」
「いや、俺じゃないって、王太子殿下が俺に渡しておいてくれって渡されたんだよ」
テオドラの言葉にエドガルドが答えた。イネはホッとした顔をしているんだけど、私はげんなりした。

なんで、婚約者でもないのに私にバラの花なんて……この国ではお詫びするときに赤いバラを送るんだろうか?

「ちょっと、フラン、どういうつもりよ!」
シルビアの大声が食堂に響いた。またややこしいのがやってきた! 私はさらにげんなりした。

「どういうつもりもこうも私が聞きたいわよ! この国ではお詫びの時にバラの花を十二本も贈るの?」
「なわけ無いでしょ。十二本の赤いバラは最近プロポーズの時によく渡されるのよ」
「はああああ?」
シルビアの言葉に私は全然意味が判らなかった。

「あなた、いくら、婚約者があなたに嫌気がさして、他の女と親しくなっているからって、私のお兄様に手をだすってどういうことよ!」
「私は出していないわよ!」
「殿下。これ以上、アドルフ様とフラン様を揉めさせないで下さい」
私とオーレリアンが叫んでいた。

「あなたが手を出していなくても、甘い顔をするとかなんかお兄様相手にしたんでしょ」
「どこがよ。そんなのする訳無いでしょ」
「だってあなた、誘拐事件の時にお兄様に頼み込んでいたじゃない。その時にお兄様に媚びたんでしょう」
シルビアが飛んでもない事を言ってくれるんだけど。

「ええええ! フラン、私なんかのために自国の王太子殿下を諦めて我が国の王太子殿下に乗り換えてくれたの!」 
その横でテオドラがまたとんでもないことを言い出すんだけど。

「やっぱり、フラン、媚び売ったのね」
その言葉にシルビアが更に反応しているんだけど。

もうどうなっているのよ!
私は頭を抱えた。
いや、もうちょっと待ってほしいんだけど。

「そ、ソニア」
その時だ。シルビアが叫ぶのが聞こえた。
私は慌てて、声の方を見ると口元に手をおいて、驚いた顔をして突っ立っているソニアがいたのだ。

「ソニア、これは違うのよ。フランはお兄様には誘拐された平民の子のお礼を言っただけで」
「でも、十二本の赤いバラをフランソワーズ様に贈られたんですよね」
そう言うソニアは真っ青だったんだけど。

「それは、お兄様に媚を売ったフランが悪いのよ」
「ちょっと待って、私は媚なんて売っていないわよ」
そう叫んだ時にはソニアは後ろも振り返らずに、走り出したのだ。

『ちょっと待って!』
慌てて追いかけようとした私達はお互いに絡まってコケてしまったのだ。

「ちょっと、シルビアどきなさいよ」
「何言っているのよ。あなたこの前はソニアに骨折させたのも、お兄様を諦めさせるためなのね」
「いや、だから違うって」
私は必死に言い聞かせようとしたのだが、自分の考えを曲げない、シルビアは取り巻き連中とともに、
「絶対にあなたは許さないわ」
と叫んで、いなくなったんだけど。

ちょっと待ってよ。私は絶対に被害者だ。
なんで私がこんな目に会わないといけないよ!
私は大声で叫びたかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。 目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。  死にたくない。あんな最期になりたくない。  そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。