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第三部 ルートン王国交換留学編
脅迫状が来ました
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ソニアは私たちを渡り廊下に案内してくれた。
この渡り廊下の下が海岸になっていて、飛び越えたらすぐに砂浜だ。
いつもは海の中なのだが、引き潮の今は砂浜になっている。
渡り廊下の柵が一部壊れていて、降りようと思えば降りられるのだ。
そして、砂浜伝いに学園の外に出ようと思えば今の時間は引き潮で潮位が低くて出来るのだ。
「足跡があるわ」
そして、渡り廊下の端の柵の壊れた所の下に複数の足跡がはっきりと残っていた。
私は飛び降りると直ちにその足跡を追跡する。
時間が勝負だ。
でも、砂浜から外に出たところで馬車の轍がはっきりと残っているのが見えた。
「ここで馬車に乗ったみたいね」
「どうする。この先の追跡は難しいぞ」
アルマンが言った。轍を辿るとそのまま大通りに合流していたのだ。その先は辿りようがなかった。
なんてこった。
やむを得ない。
私達は直ちに教室に戻った。
教室に戻ると学内が騒然としていた。騎士や先生らがせわしく行き交っていたのだ。
メラニーらが先生に知らせてくれたらしい。何しろ、白昼堂々と生徒が行方不明になったのだ。下手したら完全に学園の責任問題だった。
私は直ちに学園の警護の騎士達から尋問されたが、今追跡しようとして失敗したこと以外私は何も知らなかった。
ソニアによると船乗り風の三人の男と一緒にテオドラは歩いていたそうだ。
「何故、テオドラさんはそんな方々について言ったのですか?」
イザベル先生が聞いてきたが、私がテオドラではないので判らなかった。
普通は基本的に怪しい奴らがいたら不審に思うはずだ。
でも、ここは王立学園。皆は中が安全だという認識がある。誰かの家族か何かだろうと良いように解釈した可能性が高い。そこに、美味しいお菓子のお店を知らないかとか言われて自分の家を案内していたのではないかと思ってしまったのだ。
彼らの目的が何かは判らないが、我がクラスのメンバーが攫われたのならば十中八九狙いは私だ。
敵は私にコンタクトしてくるだろう。
でも、それを待っているのも嫌だ。
王太子も慌ててやって来て
「このようなことになって申し訳ない。今騎士団が調査しているのでもう少し待ってもらいたい」
と言って慌てて現場を指揮するためか出て行った。
フェリシー先生からは
「フランソワーズさん。あなたはこの国ではお客様なのです。絶対に勝手に動いてはいけませんよ」
と釘を刺されているが、それを聞くつもりは毛頭ない。
私の友達を誘拐したということは私に喧嘩を売ったということだ。それが例えどこの誰だろうと二度とこんな事をしないように思い知らせる必要がある。
まあ、エルグランと違って捜査権はないが、いやいや、元々エルグランでも捜査権はないのだが、アドといろいろ首を突っ込んでいる関係で、今は中央騎士団はいざとなれば私の指揮下にあると言っても過言でなかった。全員丸坊主にさせたし、反乱を事前に防いだ功績もあるし、基本は黙認してもらえる。
この国では絶対に無理だが。
しかし、この国には我が領地の騎士を三十人近く連れてきているのだ。
それとヴァンがいるから、この国の大使館の諜報員も使える。
アドにはくれぐれも自重するように言われているけれど、人命がかかっているのだ。ここはそんなの構っていられない。
クラスの皆は心配で顔が白いが、女の子らには夜間は出歩かないように徹底させた。
男連中は五人一組で交代で見回らせることにした。
どこにアルメリアの手下がいるかわかったものではなかった。
騎士も信じるなと騎士団長の息子のエドガルドには申し訳ないが言い聞かせてある。
そんな中、学園にヴァンとジェドがやって来た。
「なにか情報は掴めた?」
「姉上。そんなにすぐには無理だよ」
ジェトがまず言ってきた。
「取り敢えず、アルメリアの大使館に怪しい動きがないかどうか、調べさせていますよ」
「コフレンテス伯爵家は」
「馬小屋の世話係に騎士の1人を潜り込ませましたけれど、まだ潜入したところでわかりません」
これはヴァンが言ってきた。
「何ならその息子に真実の薬を使う?」
嬉々としてヴァンが言うんだけど。
「廃人にしたら元も子もないじゃない」
私がムッとして言うと
「今は薬も改良されていて、廃人にはならないよ」
ヴァンが言うんだけど、こういう時のヴァンはあてにはならない。
「まさかこんなにすぐに直接的な誘拐に走るとは思ってもいなかったから、情報が少なすぎるよ」
「犯人がアルメリアと決まったわけじゃないし」
ジェドとヴァンが言うんだけど、まあ、このあたりの事は二人に期待するしかない。
「あなた達二人には期待しているからよろしくお願いするわね」
「義姉上こそ、勝手に1人で動かないでよ。絶対に敵は接触してくるはずだから」
「連絡するようにするわ」
私は心配する二人に約束した。
そして、早速、敵は接触してきたのだ。
私が自分の部屋に帰るとメモが扉の下に挟まっていたのだ。
『友達を預かった。友達の命が惜しければ、今夜22時に誰にも知られずに渡り廊下に来い』
メモにはそう書かれていた。
この渡り廊下の下が海岸になっていて、飛び越えたらすぐに砂浜だ。
いつもは海の中なのだが、引き潮の今は砂浜になっている。
渡り廊下の柵が一部壊れていて、降りようと思えば降りられるのだ。
そして、砂浜伝いに学園の外に出ようと思えば今の時間は引き潮で潮位が低くて出来るのだ。
「足跡があるわ」
そして、渡り廊下の端の柵の壊れた所の下に複数の足跡がはっきりと残っていた。
私は飛び降りると直ちにその足跡を追跡する。
時間が勝負だ。
でも、砂浜から外に出たところで馬車の轍がはっきりと残っているのが見えた。
「ここで馬車に乗ったみたいね」
「どうする。この先の追跡は難しいぞ」
アルマンが言った。轍を辿るとそのまま大通りに合流していたのだ。その先は辿りようがなかった。
なんてこった。
やむを得ない。
私達は直ちに教室に戻った。
教室に戻ると学内が騒然としていた。騎士や先生らがせわしく行き交っていたのだ。
メラニーらが先生に知らせてくれたらしい。何しろ、白昼堂々と生徒が行方不明になったのだ。下手したら完全に学園の責任問題だった。
私は直ちに学園の警護の騎士達から尋問されたが、今追跡しようとして失敗したこと以外私は何も知らなかった。
ソニアによると船乗り風の三人の男と一緒にテオドラは歩いていたそうだ。
「何故、テオドラさんはそんな方々について言ったのですか?」
イザベル先生が聞いてきたが、私がテオドラではないので判らなかった。
普通は基本的に怪しい奴らがいたら不審に思うはずだ。
でも、ここは王立学園。皆は中が安全だという認識がある。誰かの家族か何かだろうと良いように解釈した可能性が高い。そこに、美味しいお菓子のお店を知らないかとか言われて自分の家を案内していたのではないかと思ってしまったのだ。
彼らの目的が何かは判らないが、我がクラスのメンバーが攫われたのならば十中八九狙いは私だ。
敵は私にコンタクトしてくるだろう。
でも、それを待っているのも嫌だ。
王太子も慌ててやって来て
「このようなことになって申し訳ない。今騎士団が調査しているのでもう少し待ってもらいたい」
と言って慌てて現場を指揮するためか出て行った。
フェリシー先生からは
「フランソワーズさん。あなたはこの国ではお客様なのです。絶対に勝手に動いてはいけませんよ」
と釘を刺されているが、それを聞くつもりは毛頭ない。
私の友達を誘拐したということは私に喧嘩を売ったということだ。それが例えどこの誰だろうと二度とこんな事をしないように思い知らせる必要がある。
まあ、エルグランと違って捜査権はないが、いやいや、元々エルグランでも捜査権はないのだが、アドといろいろ首を突っ込んでいる関係で、今は中央騎士団はいざとなれば私の指揮下にあると言っても過言でなかった。全員丸坊主にさせたし、反乱を事前に防いだ功績もあるし、基本は黙認してもらえる。
この国では絶対に無理だが。
しかし、この国には我が領地の騎士を三十人近く連れてきているのだ。
それとヴァンがいるから、この国の大使館の諜報員も使える。
アドにはくれぐれも自重するように言われているけれど、人命がかかっているのだ。ここはそんなの構っていられない。
クラスの皆は心配で顔が白いが、女の子らには夜間は出歩かないように徹底させた。
男連中は五人一組で交代で見回らせることにした。
どこにアルメリアの手下がいるかわかったものではなかった。
騎士も信じるなと騎士団長の息子のエドガルドには申し訳ないが言い聞かせてある。
そんな中、学園にヴァンとジェドがやって来た。
「なにか情報は掴めた?」
「姉上。そんなにすぐには無理だよ」
ジェトがまず言ってきた。
「取り敢えず、アルメリアの大使館に怪しい動きがないかどうか、調べさせていますよ」
「コフレンテス伯爵家は」
「馬小屋の世話係に騎士の1人を潜り込ませましたけれど、まだ潜入したところでわかりません」
これはヴァンが言ってきた。
「何ならその息子に真実の薬を使う?」
嬉々としてヴァンが言うんだけど。
「廃人にしたら元も子もないじゃない」
私がムッとして言うと
「今は薬も改良されていて、廃人にはならないよ」
ヴァンが言うんだけど、こういう時のヴァンはあてにはならない。
「まさかこんなにすぐに直接的な誘拐に走るとは思ってもいなかったから、情報が少なすぎるよ」
「犯人がアルメリアと決まったわけじゃないし」
ジェドとヴァンが言うんだけど、まあ、このあたりの事は二人に期待するしかない。
「あなた達二人には期待しているからよろしくお願いするわね」
「義姉上こそ、勝手に1人で動かないでよ。絶対に敵は接触してくるはずだから」
「連絡するようにするわ」
私は心配する二人に約束した。
そして、早速、敵は接触してきたのだ。
私が自分の部屋に帰るとメモが扉の下に挟まっていたのだ。
『友達を預かった。友達の命が惜しければ、今夜22時に誰にも知られずに渡り廊下に来い』
メモにはそう書かれていた。
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