上 下
105 / 309
第三部 ルートン王国交換留学編

演劇で私は悪役令嬢をやることになりました

しおりを挟む
「なあんだ、クラス対抗戦は学芸会なんだ」
「演劇よ!演劇!」
私の言葉にメラニーが文句を言うんだけど、

「何が違うのよ?」
私が聞くと
「全然違うわよ!」
メラニーが捲し立て始めた。

「良い! フラン! 学芸会って、前世の小学校のおままごとじゃない! 演劇は私達が心血注いで作るのよ!」
いつも冷めているメラニーが、こんなに熱く語るのを初めて見た。

何でもメラニーは前世にて、大学で学生劇団に所属していたそうで、演劇には一家言あるそうだ。

そうか、メラニーは大学に行けたんだ。病弱だった私には叶わなかったけど。

私が寂しそうに言うと、「だから、大学の本場の演劇をあなたに体験させて上げるわ!」
私がそうしたいと言う前に、嬉々として語り出したんだけど、余計なスイッチを押してしまったみたいだ・・



その日のホームルームは演劇の題目を考えると言うことだったが、私は何も考えていなかった。

「では、皆さん、色々と考えてきて貰ったと思いますが」
担任のウェスカ先生が皆を見渡した。

「はい、先生。僕は勇者ターザンが良いと思います」
ガスペルが言ってくれたんだけど。

「ターザンって?」
私がメラニーに聞くと、
「あんたが海賊退治で真似してたあれよ。何故かこの世界でも流行っていて、演劇で良くやっているのよ」
「そうなんだ。この世界でも流行っているんだ」
私は驚いたけど。

「私はフラン様が海賊退治される演劇が良いと思います。幸いな事に、このクラスにはご本人がいらっしゃいますし。他クラスには絶対に負けないと思います」
イネが言ってくれるんだけど、それは少し、恥ずかしいんだけど。

「賛成です」
「異議なし」
貴族の子らが叫んでくれるんだけど、なんか違う。

「あのう、先生宜しいですか?」
私は手を挙げた。

「どうぞ、フランソワーズさん」
「私はやれと頼まれれば何でもやりますが、今回の演劇は私が主人公というよりも、皆さんが主人公のほうが良いと思うんです。皆でやる演劇にしませんか? ねえ、メラニーさん」
「そうですね。劇に出るだけが全てではありませんが、せっかくだからできるだけ多くの人が出られた方が良いと思います。1年生の他クラスの状況で言うと、A組は王女殿下と公爵令息が主人公の演劇をやるようですが、ガスペルさんが言われたターザンをC組が既にやると決めています。B組とD組はフランの海賊退治をモチーフに作るみたいです。出来たら、全く違った物はどうでしょうか。
例えば、せっかくこのクラスには貴族と平民の方々が半々いるのですから、劇では貴族と平民の役割を入れ替えるとか」
「貴族と平民の役割を入れ替えるのですか」
先生がメラニーの意見を再度言ってくれた。

「あっ、それ面白そう。お互いにいろんな気づきがありそうだし。貴族には貴族の苦労が、平民には平民の苦労がそれぞれ判って良いんじゃない」
私が頷いた。

「それは、なかなか難しいんじゃないですか」
テオドラが言うけれど、
「私、貴族の礼儀作法はよくわからないし」
ルフィナも言うんだけど
「知らないから良いんじゃない。お互いに教えられるし」
私は言い切った。

「そうですね」
「それは面白いかも。さすがフラン様」
貴族の子たちが頷いてくれた。
「うーん、そうかな」
「まあ、やってみるのも面白そう」
テオドラ達平民の子らも頷いてくれた。

「で、先生、私考えてきた話があるんです」
メラニーが手を挙げて言った。

「既に考えてあるんですか?」
先生が驚いて聞き返すと
「はい。みんなで読んでもらえればと思って」
用意の良いことに複写した40枚の紙をメラニーが取り出した。

先生が唖然としている間にメラニーが皆に配りだす。

そこには『ルートンの薔薇』とデカデカと書かれていた。

「ちょっと、メラニー、何よこれ」
私はあらすじとその中の一場面を見て文句を言った。
「どうかした?」
白々しくメラニーが聞いてくるんだけど。

「主人公とかは全部王子様とか、ヒロインとか、伯爵令嬢1とか2とか書かれているけれど、悪役令嬢だけが何故私の名前が入っているの?」
「えっ、あなたヒロインやりたかったの?」
「いや、それはないけれど」
「じゃあ、良いじゃない。元々あんたは悪役令嬢なんだから、一度で良いからちゃんと悪役令嬢の役やらせたかったのよね」
おいおい、他の者が聞いても判らない説明するなよと私は思ったんだけど、メラニーの頭の中ではそれは決定事項みたいだった。

「じゃあ、貴族の方と、平民の方で分かれて、それぞれ配役決めてね。出ない人は衣装係とか大道具とか音響とかやることいっぱいあるからさっさと決めてね。貴族の方はオーレリアンがまとめて、私は平民の組の方を見るから」

そこに先生の入る余地もなく、先生が唖然としている間に、さっさと会議が進められていた。

当然私が反論する暇もなく、私は何一つ文句も言えずに、悪役令嬢役に決まってしまったのだ。



*******************************************************
テキパキやってしまうメラニーの前に何も出来なかったフランでした。


お忙しい中、ここまで読んでいただいてありがとうございます。

私の他のお話紹介します。
これ、あまり評価されていませんが、私の好きな作品の一つです。

『「神様、助けて!」現れた無敵の戦神は実は可憐な少女でした』

https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/359551746

コンセプトは題名の通り、大軍に捕まって磔にされた少女が命を賭けて神様にお祈りしたら、無敵の戦神シャラザールが転移してくるお話です。

『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952

のサイドストーリーですが、主要登場人物はそのまま出てきます。

弱きを助け強きを挫く勧善懲悪の物語。さくっと読めるので休憩時間にでもお読み下さい!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります

彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。 目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。 ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。 たが、それに違和感を抱くようになる。 ロベルト殿下視点がおもになります。 前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!! 11話完結です。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。

112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。 目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。  死にたくない。あんな最期になりたくない。  そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。

【完結】あなただけが特別ではない

仲村 嘉高
恋愛
お飾りの王妃が自室の窓から飛び降りた。 目覚めたら、死を選んだ原因の王子と初めて会ったお茶会の日だった。 王子との婚約を回避しようと頑張るが、なぜか周りの様子が前回と違い……?

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした

カレイ
恋愛
 子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き…… 「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」     ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。

曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」 「分かったわ」 「えっ……」 男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。 毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。 裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。 何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……? ★小説家になろう様で先行更新中

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。