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第三部 ルートン王国交換留学編
演劇で私は悪役令嬢をやることになりました
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「なあんだ、クラス対抗戦は学芸会なんだ」
「演劇よ!演劇!」
私の言葉にメラニーが文句を言うんだけど、
「何が違うのよ?」
私が聞くと
「全然違うわよ!」
メラニーが捲し立て始めた。
「良い! フラン! 学芸会って、前世の小学校のおままごとじゃない! 演劇は私達が心血注いで作るのよ!」
いつも冷めているメラニーが、こんなに熱く語るのを初めて見た。
何でもメラニーは前世にて、大学で学生劇団に所属していたそうで、演劇には一家言あるそうだ。
そうか、メラニーは大学に行けたんだ。病弱だった私には叶わなかったけど。
私が寂しそうに言うと、「だから、大学の本場の演劇をあなたに体験させて上げるわ!」
私がそうしたいと言う前に、嬉々として語り出したんだけど、余計なスイッチを押してしまったみたいだ・・
その日のホームルームは演劇の題目を考えると言うことだったが、私は何も考えていなかった。
「では、皆さん、色々と考えてきて貰ったと思いますが」
担任のウェスカ先生が皆を見渡した。
「はい、先生。僕は勇者ターザンが良いと思います」
ガスペルが言ってくれたんだけど。
「ターザンって?」
私がメラニーに聞くと、
「あんたが海賊退治で真似してたあれよ。何故かこの世界でも流行っていて、演劇で良くやっているのよ」
「そうなんだ。この世界でも流行っているんだ」
私は驚いたけど。
「私はフラン様が海賊退治される演劇が良いと思います。幸いな事に、このクラスにはご本人がいらっしゃいますし。他クラスには絶対に負けないと思います」
イネが言ってくれるんだけど、それは少し、恥ずかしいんだけど。
「賛成です」
「異議なし」
貴族の子らが叫んでくれるんだけど、なんか違う。
「あのう、先生宜しいですか?」
私は手を挙げた。
「どうぞ、フランソワーズさん」
「私はやれと頼まれれば何でもやりますが、今回の演劇は私が主人公というよりも、皆さんが主人公のほうが良いと思うんです。皆でやる演劇にしませんか? ねえ、メラニーさん」
「そうですね。劇に出るだけが全てではありませんが、せっかくだからできるだけ多くの人が出られた方が良いと思います。1年生の他クラスの状況で言うと、A組は王女殿下と公爵令息が主人公の演劇をやるようですが、ガスペルさんが言われたターザンをC組が既にやると決めています。B組とD組はフランの海賊退治をモチーフに作るみたいです。出来たら、全く違った物はどうでしょうか。
例えば、せっかくこのクラスには貴族と平民の方々が半々いるのですから、劇では貴族と平民の役割を入れ替えるとか」
「貴族と平民の役割を入れ替えるのですか」
先生がメラニーの意見を再度言ってくれた。
「あっ、それ面白そう。お互いにいろんな気づきがありそうだし。貴族には貴族の苦労が、平民には平民の苦労がそれぞれ判って良いんじゃない」
私が頷いた。
「それは、なかなか難しいんじゃないですか」
テオドラが言うけれど、
「私、貴族の礼儀作法はよくわからないし」
ルフィナも言うんだけど
「知らないから良いんじゃない。お互いに教えられるし」
私は言い切った。
「そうですね」
「それは面白いかも。さすがフラン様」
貴族の子たちが頷いてくれた。
「うーん、そうかな」
「まあ、やってみるのも面白そう」
テオドラ達平民の子らも頷いてくれた。
「で、先生、私考えてきた話があるんです」
メラニーが手を挙げて言った。
「既に考えてあるんですか?」
先生が驚いて聞き返すと
「はい。みんなで読んでもらえればと思って」
用意の良いことに複写した40枚の紙をメラニーが取り出した。
先生が唖然としている間にメラニーが皆に配りだす。
そこには『ルートンの薔薇』とデカデカと書かれていた。
「ちょっと、メラニー、何よこれ」
私はあらすじとその中の一場面を見て文句を言った。
「どうかした?」
白々しくメラニーが聞いてくるんだけど。
「主人公とかは全部王子様とか、ヒロインとか、伯爵令嬢1とか2とか書かれているけれど、悪役令嬢だけが何故私の名前が入っているの?」
「えっ、あなたヒロインやりたかったの?」
「いや、それはないけれど」
「じゃあ、良いじゃない。元々あんたは悪役令嬢なんだから、一度で良いからちゃんと悪役令嬢の役やらせたかったのよね」
おいおい、他の者が聞いても判らない説明するなよと私は思ったんだけど、メラニーの頭の中ではそれは決定事項みたいだった。
「じゃあ、貴族の方と、平民の方で分かれて、それぞれ配役決めてね。出ない人は衣装係とか大道具とか音響とかやることいっぱいあるからさっさと決めてね。貴族の方はオーレリアンがまとめて、私は平民の組の方を見るから」
そこに先生の入る余地もなく、先生が唖然としている間に、さっさと会議が進められていた。
当然私が反論する暇もなく、私は何一つ文句も言えずに、悪役令嬢役に決まってしまったのだ。
*******************************************************
テキパキやってしまうメラニーの前に何も出来なかったフランでした。
お忙しい中、ここまで読んでいただいてありがとうございます。
私の他のお話紹介します。
これ、あまり評価されていませんが、私の好きな作品の一つです。
『「神様、助けて!」現れた無敵の戦神は実は可憐な少女でした』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/359551746
コンセプトは題名の通り、大軍に捕まって磔にされた少女が命を賭けて神様にお祈りしたら、無敵の戦神シャラザールが転移してくるお話です。
『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952
のサイドストーリーですが、主要登場人物はそのまま出てきます。
弱きを助け強きを挫く勧善懲悪の物語。さくっと読めるので休憩時間にでもお読み下さい!
「演劇よ!演劇!」
私の言葉にメラニーが文句を言うんだけど、
「何が違うのよ?」
私が聞くと
「全然違うわよ!」
メラニーが捲し立て始めた。
「良い! フラン! 学芸会って、前世の小学校のおままごとじゃない! 演劇は私達が心血注いで作るのよ!」
いつも冷めているメラニーが、こんなに熱く語るのを初めて見た。
何でもメラニーは前世にて、大学で学生劇団に所属していたそうで、演劇には一家言あるそうだ。
そうか、メラニーは大学に行けたんだ。病弱だった私には叶わなかったけど。
私が寂しそうに言うと、「だから、大学の本場の演劇をあなたに体験させて上げるわ!」
私がそうしたいと言う前に、嬉々として語り出したんだけど、余計なスイッチを押してしまったみたいだ・・
その日のホームルームは演劇の題目を考えると言うことだったが、私は何も考えていなかった。
「では、皆さん、色々と考えてきて貰ったと思いますが」
担任のウェスカ先生が皆を見渡した。
「はい、先生。僕は勇者ターザンが良いと思います」
ガスペルが言ってくれたんだけど。
「ターザンって?」
私がメラニーに聞くと、
「あんたが海賊退治で真似してたあれよ。何故かこの世界でも流行っていて、演劇で良くやっているのよ」
「そうなんだ。この世界でも流行っているんだ」
私は驚いたけど。
「私はフラン様が海賊退治される演劇が良いと思います。幸いな事に、このクラスにはご本人がいらっしゃいますし。他クラスには絶対に負けないと思います」
イネが言ってくれるんだけど、それは少し、恥ずかしいんだけど。
「賛成です」
「異議なし」
貴族の子らが叫んでくれるんだけど、なんか違う。
「あのう、先生宜しいですか?」
私は手を挙げた。
「どうぞ、フランソワーズさん」
「私はやれと頼まれれば何でもやりますが、今回の演劇は私が主人公というよりも、皆さんが主人公のほうが良いと思うんです。皆でやる演劇にしませんか? ねえ、メラニーさん」
「そうですね。劇に出るだけが全てではありませんが、せっかくだからできるだけ多くの人が出られた方が良いと思います。1年生の他クラスの状況で言うと、A組は王女殿下と公爵令息が主人公の演劇をやるようですが、ガスペルさんが言われたターザンをC組が既にやると決めています。B組とD組はフランの海賊退治をモチーフに作るみたいです。出来たら、全く違った物はどうでしょうか。
例えば、せっかくこのクラスには貴族と平民の方々が半々いるのですから、劇では貴族と平民の役割を入れ替えるとか」
「貴族と平民の役割を入れ替えるのですか」
先生がメラニーの意見を再度言ってくれた。
「あっ、それ面白そう。お互いにいろんな気づきがありそうだし。貴族には貴族の苦労が、平民には平民の苦労がそれぞれ判って良いんじゃない」
私が頷いた。
「それは、なかなか難しいんじゃないですか」
テオドラが言うけれど、
「私、貴族の礼儀作法はよくわからないし」
ルフィナも言うんだけど
「知らないから良いんじゃない。お互いに教えられるし」
私は言い切った。
「そうですね」
「それは面白いかも。さすがフラン様」
貴族の子たちが頷いてくれた。
「うーん、そうかな」
「まあ、やってみるのも面白そう」
テオドラ達平民の子らも頷いてくれた。
「で、先生、私考えてきた話があるんです」
メラニーが手を挙げて言った。
「既に考えてあるんですか?」
先生が驚いて聞き返すと
「はい。みんなで読んでもらえればと思って」
用意の良いことに複写した40枚の紙をメラニーが取り出した。
先生が唖然としている間にメラニーが皆に配りだす。
そこには『ルートンの薔薇』とデカデカと書かれていた。
「ちょっと、メラニー、何よこれ」
私はあらすじとその中の一場面を見て文句を言った。
「どうかした?」
白々しくメラニーが聞いてくるんだけど。
「主人公とかは全部王子様とか、ヒロインとか、伯爵令嬢1とか2とか書かれているけれど、悪役令嬢だけが何故私の名前が入っているの?」
「えっ、あなたヒロインやりたかったの?」
「いや、それはないけれど」
「じゃあ、良いじゃない。元々あんたは悪役令嬢なんだから、一度で良いからちゃんと悪役令嬢の役やらせたかったのよね」
おいおい、他の者が聞いても判らない説明するなよと私は思ったんだけど、メラニーの頭の中ではそれは決定事項みたいだった。
「じゃあ、貴族の方と、平民の方で分かれて、それぞれ配役決めてね。出ない人は衣装係とか大道具とか音響とかやることいっぱいあるからさっさと決めてね。貴族の方はオーレリアンがまとめて、私は平民の組の方を見るから」
そこに先生の入る余地もなく、先生が唖然としている間に、さっさと会議が進められていた。
当然私が反論する暇もなく、私は何一つ文句も言えずに、悪役令嬢役に決まってしまったのだ。
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テキパキやってしまうメラニーの前に何も出来なかったフランでした。
お忙しい中、ここまで読んでいただいてありがとうございます。
私の他のお話紹介します。
これ、あまり評価されていませんが、私の好きな作品の一つです。
『「神様、助けて!」現れた無敵の戦神は実は可憐な少女でした』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/359551746
コンセプトは題名の通り、大軍に捕まって磔にされた少女が命を賭けて神様にお祈りしたら、無敵の戦神シャラザールが転移してくるお話です。
『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/129494952
のサイドストーリーですが、主要登場人物はそのまま出てきます。
弱きを助け強きを挫く勧善懲悪の物語。さくっと読めるので休憩時間にでもお読み下さい!
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