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第三部 ルートン王国交換留学編

私の物を隠そうとした准男爵令嬢は弟たちがやった悪戯防止装置が原因でインクで真っ黒になってしまいました

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それからが大変だった。

ミエレスさんはひたすら土下座して謝ってくるし、フェリシー先生には
「そもそもフランソワーズさんが身分を平民だと誤魔化していたのが問題なのではないですか。その上、男爵令息と決闘するとは何事ですか。決闘するとは! 
そもそも未来の王妃様になろうという方が決闘などする国がどこにあるのです・・・・」
怒り狂ったフエリシー先生はこうなったら、もう止めるのも無理だ。
横で見た目はしおらしく、実際はげんなりしているメラニーには悪いことをした。メラニーの出番はなかったし、怒られるためだけについてきたようなものだ。

平民として過ごしていたのが悪いって言うけれど、そんな事言ったって私が公爵令嬢だって知ったら絶対に皆本音では話さないし、平民と今みたいに友達になんてなれない。そもそも国民の99.9%は平民なのだ。それでは平民の気持ちが判らないではないか。

そうだ。ここはメラニーを使うしか無い。
私が思ったことをメラニーにフェリシー先生が納得するように翻訳してもらうのだ。

「先生、お怒りはごもっともですが、フランソワーズ様は未来の王妃様になるために、平民の方々がどんな事を考えられるか知るために色々工夫しておられるのです。たしかにその言動は突飛なことも多いですが、それが平民受けしているのも事実ではないですか」
「まあ、それはそうですが・・・・」
フェリシー先生が叱りつかれたすきをついて、メラニーが言い訳してくれた。
さすがメラニー、私が言ったらフェリシー先生の怒りの火に油を注ぐことしか出来なかったけれど、物は言いようでなんとかフェリシー先生を誤魔化した、いや、納得させたのだ。

Aクラスに移れというのを強引に断って、なんとか今のままでやらせてもらえることになった。

本当にメラニー様々だった。



でも、こんなの絶対に時間の問題だ。

ドミンゴは腫れが引くまで休むということで、3日間は猶予が出来た。3日間はバレない。

私はその3日間にかけたのだ。

「テオドラ、これ食べてみて」
私はアドが必死に作ったハッピ堂の私とアドの婚約10周年の焼き菓子を出したのだ。

持たせなくても良いのに、余ったからと言う理由で持たされたお菓子もこういう時に役に立った。

「あっ、美味しい」
ルフィナがほっぺをお菓子で膨らませて喜んでくれた。

「これひょっとしてハッピ堂のお菓子なの?」
早速、テオドラが食いついてきた。

「えっ、ハッピ堂ってテオドラがいつもおいしいって言っているお菓子屋さん?」
他の女の子らも食いついてきた。さすがお菓子は万国共通で、女の子には強い!

「さあ、どんどん食べて。いくらでもあるわよ」
私はどんどん配る。

「フラン、10年って書いてあるけど、これはなんのお菓子なの?」
ルフィナが聞いてきた。

「何かの記念みたいよ」
まさか、王太子と私の婚約10周年記念だとは言えない。

「何か、ハートマークだし、男と女の形しているんだけど」
「こっちの女、フランに似ていないか?」
ガスペルが余計なことに気付いてくれた。
そこは目にするなよと言いたかったんだけど。
メラニーらが吹き出しているし。

「えっ、メラニー、私達何か変なこと言った?」
ルフィナが聞いているし。

「何でも無いわよ。メラニーは笑い上戸なの」
私は必死に誤魔化したのだ。


そして、珍しく、誰の邪魔も入らずに平民の皆とお昼ご飯を完食できて、帰ってきた時だ。

「ギャッ!」
教室から大きな悲鳴が聞こえたのだ。

慌てて、私達が教室に入ると私の机の前でインクで真っ黒になった女がいた。

「?」
一瞬私はそれが誰か判らなかった。

「どうしたの? あなた誰?」
私が聞くと

「私はイネスよ」
女が泣きそうな声で言った。

顔が真っ黒だったから判らなかったが、イネスだったのか

「なぜ私の机の前で真っ黒になっているの? 仮装か何か?」
私が続いて聞くと、イネスは泣き出した。

「おい、平民女。イネスを泣かすとは酷いやつだな」
セブリアンが言ってくれるんだけど。

「知らないわよ。私達が昼から帰ってきたら悲鳴が聞こえたから、来てみたらこうなっていたのよ」
私が言い訳すると
「嘘つけ。絶対にお前が何か仕掛けていただろう」
「あっ、あんた、私の筆入れに悪戯しようとしたの?」
私は非難するようにイネスを見た。

「いや、でも」
「バカね。私の筆入れはヴァンとジェドが二人がかりで、悪意をもって私の筆入れに触るとインクが吹き出るようになっているのよ。どのみちどこかに隠そうとしたんでしょ」
私が呆れて言った。

「ああん、顔が真っ黒になってしまったわ。もうお嫁に行けない」
なんと本気で泣き出したんだけど。

人に悪戯しようとするからだ。

あの二人、こういう悪ふざけは天才的なのだ。

「フランソワーズさん!」
後ろから聞きたくない声が聞こえた。
後ろを恐る恐る振り返ると、そこには怒髪天の礼儀作法の先生が立っていたのだ。

「えっ、先生、私はやってませんよ」
私が慌てて言い訳したが、フェリシー先生は聞く耳持たずで延々と怒られる羽目になったのだった・・・・




その後、是非とも分解させてくれとガスペルは喜んで私の筆入れを分解して真っ黒になって喜んでいたんだけど。

「それちゃんと直してよね。それしか筆入れ持っていないんだから」
私の言葉にガスペルは結局徹夜して直してくれたんだけど。

なんか私が怒られるのおかしくない?
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